イベントレポート
TrackPointの物理ボタンが復活した2015年型ThinkPad
(2015/1/9 09:32)
Lenovoは2015 International CESに出展し、同社の最新製品を多数発表した。中でも同社の企業向けノートブックPCとなるThinkPadは、9月のIFAで発表された「ThinkPad Helix」を除きほぼ全製品が新しい製品に切り替えられるなど、大きな発表が相次いだ。
本レポートではそうしたThinkPadの各種製品を、写真付きで紹介していきたい。その中で気になったのは、ThinkPad X1 Carbonで昨年(2014年)話題を呼んだアダプティブキーボードが廃止され、通常のファンクションキーに戻ったこと、そしてTrackPointの物理ボタンの復活という2点だ。
物理ファンクションキーボードとTrackPointの物理ボタンが復活
今回のLenovoの発表は非常に大規模で、昨年の9月に発表された新しいThinkPad Helixを除き、ほぼ全てのラインナップが新製品に切り替わっている。いわゆるClassic ThinkPadと呼ばれるThinkPad X250/T450/T450s/T550/W550、低価格向けのThinkPad E(E550/E450)など新製品に切り替わったほか、ThinkPad X1 Carbonが第3世代になった。
これらの2015年型ThinkPadには大きく言って2つの特徴がある。1つはThinkPad X1 Carbonの2014年型(第2世代)で採用されていたアダプティブキーボード(適用型キーボード)と呼ばれていた、タッチスクリーンでソフトウェア的にスクリーンを実現する機能が廃止され、通所のファンクションキーに戻されていることだ。
これについて、Lenovo PC事業部 マーケティング・デザイン担当副社長のディリップ・バティア氏は「昨年のThinkPad X1 Carbonを出したところ、コンシューマのお客様からはポジティブな意見を頂いたが、エンタープライズ顧客からは元の物理キーボードに戻して欲しいという意見を多数頂いた。言うまでもなくThinkPadのメインのお客様はエンタープライズなので、お客様のご意見ということで戻すことにした」と述べ、顧客のフィードバックを勘案した結果、物理的なキーボードに戻すことにしたということだった。このアダプティブキーボードの廃止により、ThinkPad X1 Carbon(第3世代)のキーボードは、ほかの2015年型ThinkPadと同じく通常の6列配列に戻っている。
そしてもう1つの大きな変化は、ThinkPadの特徴とも言うべきTrackPointの物理ボタンが復活したことだ。ThinkPad T30以来、ThinkPadにはTrackPointとTrackPadの2つのポインティングデバイスが装備されている。従来はTrackPointとその物理的なボタン、タッチパッドという構成になっていたのだが、ThinkPad X240など2013年型からTrackPointの物理的なボタンが廃止され、タッチパッドの上部がそのボタンの代わりになっていたのだ。Windows 8になってから、タッチ操作の重要性が増し、タッチパネルを備えないPCの場合はタッチパッドを利用したジェスチャー操作を行なうため、タッチパッドのスペースを大きくとるために、TrackPointのボタンがタッチパッドの上部で兼ねる仕様になっていた。
TrackPointをあまり使わずタッチパッドを中心に使っているユーザーにとってはその変更で良かったと思うが、TrackPointが理由でThinkPadを選択するユーザーにとってはむしろ改悪として受け取られた。「TrackPointボタンを復活させたのも、やはり顧客からのフィードバックで、戻して欲しいという声が多かったから」(バティア氏)としている。
ただ、その結果として、大きくなったタッチパッドは再びサイズが若干小さくなり、痛し痒しと言ったところだが、Windows 10ではスタートメニューが復活するなど基本的にはタッチでなくても使いやすい方向に改善されるので、その意味ではこれでいいとも言える。いずれにせよ、TrackPointがThinkPadを選ぶ理由だったユーザーにとって、この“改良”は歓迎と言っていいのではないだろうか
新キーボードと復活したTrackポイントボタンが特徴となるX1 CarbonとX250
ThinkPad Xシリーズには、新しい「ThinkPad X1 Carbon」、「ThinkPad X250」という2製品が発表されている。
14型の液晶を搭載した新しいThinkPad X1 Carbonは、本体サイズは331×226.5×17.7mm(幅×奥行き×高さ)、重量は1.31kgとなっており、CPUは第5世代Coreプロセッサ、メモリは最大8GB、ストレージは最大PCI Express接続の512GB SSD、液晶ディスプレイは最大2,560×1,440ドット表示/タッチ対応、OSはWindows 8.1となる。最大の特徴は前述の通り、アダプティブキーボードが廃止され、6列キーボードが復活したことで、またTrackPointの物理ボタンも復活している。ワールドワイドに1月に販売される予定で、価格は1,249ドルからとなっている。
なお、呼び方としては“新しい”ThinkPad X1 Carbonとだけ示されており、昨年の新しいThinkPad X1 Carbonとやや区別しにくい状況になっている。このため、Lenovoの関係者も第3世代とか、2015年型などと呼んでいるので、新しいThinkPad X1 Carbon(第3世代ないしは2015年型)などと書くと分かりやすいかもしれない。
もう1つのThinkPad X250は、ThinkPad X240の後継となる、12型液晶を搭載した製品となる。形状などはThinkPad X240に近くなっており、見た目での大きな違いはTrackPointの物理ボタンが復活したぐらいになる。
内蔵バッテリ+本体後部に装着できるバッテリという構成も同様で、オプションないしはCTOなどで選択できる大容量バッテリを選択するとバッテリが72Whの容量になり、最大で20時間のバッテリ駆動が可能になる。CPUは第5世代Coreプロセッサとなり、メモリは最大8GB、ストレージは最大512GB SSDまたは1TB HDD、液晶が1,366×768ドット表示/1,366×768ドット表示対応IPS/1,920×1,080ドット(フルHD)表示対応12型などを選択でき、OSはWindows 8.1。
いずれの製品も日本での発売は未発表だが、前モデルが販売されていることを考えれば、さほど遠くない次期に日本でも販売が開始される可能性が高いと言えるだろう。
TrackPointの物理ボタンが復活して正常進化を果たしたThinkPad Tシリーズ
ThinkPad Tシリーズは、特にビジネスユースでのニーズが高い14型、15型の液晶を搭載したA4サイズのノートPCで、従来はT440およびT440s(14型)、T540(15型)の3製品が提供されてきた。今回発表されたのはその後継となるT450およびT440s(14型)、T550(15型)となる。いずれの製品も、第5世代Coreプロセッサを搭載し、内蔵バッテリと着脱可能なバッテリという構成に変わりは無い。また、ほかの2015年型ThinkPadと同じように、TrackPointの物理ボタンが復活していることが見た目で従来製品との大きな違いとなる。
T450sは、後ろに“s”がついていることからも分かるように、Tシリーズとしては薄型軽量なモデルとなっており、X1 Carbonほどの薄さ軽さはいらないので、交換できるバッテリが欲しいというニーズに応える製品となる。着脱可能なバッテリに、大容量バッテリ(6セル)を装着した場合には最大で17時間駆動が可能になる。CPUは第5世代Coreプロセッサ、最大12GBメモリ、最大512GBのSSD、最大でフルHD(1,920x1,080ドット)のタッチ液晶を選択することができる。本体サイズは331×226×21mm(幅×奥行き×高さ)、重量は1.58kg、価格は1,099ドルからで、米国での発売は2月を予定している。
なお、今回同時に"s"がつかないThinkPad T450、ThinkPad T550も発表されているが、今回LenovoのブースではT550は展示されていなかった。このほか、バリュー価格帯向けとなるThinkPad E550/450、ThinkPad L450などが発表され、E550がブースに展示されていた。
12型、15型が追加され、14型もリフレッシュされたThinkPad YOGAシリーズ
ThinkPad YOGAは、一昨年(2013年)のIFAで発表された、いわゆるYOGA型と呼ばれるヒンジが360度回転する変形機構を備えた2-in-1デバイスで、一昨年のIFAでは14型の製品だけが発表されていた。今回のCESではそれに加えて12型、15型が追加され、ユーザーの選択肢が一挙に増えた。
現在Lenovoは全社を挙げてYOGA型の2-in-1デバイスを推進する形となっており、力を入れている。このThinkPad YOGAシリーズは、企業向けの2-in-1デバイスということで、通常はクラムシェル型ノートPCと使い、プレゼンテーションなどの時にはスタンドモードやテントモードで使い、飛行機の中でコンテンツを見るときにはタブレットモードで使うという多彩な使い方が可能になる。
ThinkPad YOGAと、通常のコンシューマ向けのYOGAシリーズとの違いは、よりビジネス向けPCとしてThinkPad基準の強度で作られていることだし、タブレットモードにした時にはキーボードが無効になるだけでなく、キーボード自体が沈降して押せなくなるという物理的な機構も入っていることだ。
追加された15型のYOGA15は、左側にテンキーが用意されているタイプになっており、数字入力などが多いユーザーには嬉しい仕様になっている。12型のYOGA12は1.58kgとほかの製品(YOGA14なら1.9kg、YOGA15なら2.3kg)であるのに比較して軽くなっていることが特徴。会社の中で据え置きで使うならYOGA15だし、持ち運ぶことが多いならYOGA12、会社で使うのがほとんどだが、出張時などには持って行くというのであればYOGA14あたりが選択肢になるのではないだろうか。
CPUは14/15型が第5世代Coreプロセッサ、12型がPentium、メモリは12型/14型が最大8GB、15型が16GB、ストレージは最大で1TBないしは256GB SSD、ディスプレイの解像度はいずれも最大でフルHD(1,920x1,080ドット)となり、OSはWindows 8.1となる。発売は12型と15型が2月で、14型が5月。価格は12型が999ドルより、14型と15型が1,199ドルよりとなる。やはり日本での発売は現時点では未定とのことだが、第4世代Coreプロセッサを搭載した14型製品は日本でも発売されているので、12型、15型も含めて発売されることに期待したいところだ。
積み重ねて使えるHDD/Wi-Fi AP/バッテリ/BTスピーカーなどが展示される
このほか、今回ThinkPad関連の発表では魅力的な周辺機器に関しても紹介されている。中でもユニークなのが、「ThinkPad Stack」と呼ばれる複数重ねて使うことができる周辺機器だ。Bluetoothスピーカー(2W×2スピーカー)、モバイルバッテリ(10,000mAh、USBの出力端子が2つ)、ストレージ(1TB HDD)、IEEE 802.11 a/b/g/n/ac対応のWi-Fiアクセスポイント(有線に加え、USB端子にLTEモデムなどのモデムを挿してWANとして利用可能)となっている。それぞれ接続部分にマグネットと給電端子を備えており、重ねて合体可能となっているが、単体で利用することも可能だ(もちろん給電のためにモバイルバッテリは必要になる)。さすがに毎日持ち歩くと言う用途には車で移動する人でも無い限りはあれだが、例えば出張時に必要な部分だけ持って行くなどの使い方が考えられるだろう。
もう1つは、ThinkPad用のオプションとしては定番となっているUSB 3.0ドックの新バージョンで、従来通りUSB 3.0ポート×4(背面)、USB 3.0ポート×2(前面)、Gigabit Ethernetがあるのは一緒なのだが、ディスプレイの出力が従来製品ではDVI-Iとなっていたのが、HDMIとDisplayPortに変更された。これに合わせて内蔵されているUSBディスプレイのコントローラが最新版になり、4K出力対応となったのが大きな特徴となっている(ただし30Hzのみ)。従来製品では、2Kまでの対応となっていただけにこれは嬉しい変更で、2K以上の解像度のディスプレイでの利用を考えているユーザーであれば検討の余地がありそうだ。