イベントレポート

Lenovoアジア太平洋地域プレジデント会見レポート

~VAIO、富士通、東芝の合同についてはノーコメントも脅威ではないと示唆

Lenovo アジア太平洋地域プレジデント ロードリック・ラピン氏

 Lenovoは本誌の読者にはお馴染みの世界最大のPCメーカーだが、Samsung、Appleに次ぎ世界3位の座を同じ中国のHuaweiと激しく争っているスマートフォン大手でもある。MWCにも数年前から参加しており、成長市場向けにLenovoブランドのスマートフォンを、成熟市場向けにはGoogleから買収したMotorolaブランドのスマートフォンを展開している。

 そのLenovoのアジア太平洋地域(中国を除く東アジア、東南アジア、南アジアおよびオセアニア)プレジデントとしてアジア太平洋地域のビジネスを統括しているのが、ロードリック・ラピン氏だ。現職に就任する以前は、日本法人の社長を務めていたことでも知られる同氏に、今年の日本のPC市場への展望、噂される東芝と富士通、VAIOによる新PC会社についての見解などについて伺ってきた。

日本へのスマートフォンの展開戦略は2015年と変わっていない

 今回、LenovoはMWCに併せて新端末となる「VIBE K5 PLUS」および「VIBE K5」の2製品を投入した(別記事参照)。前者は5型フルHD液晶+Snapdragon 616、後者は5型HD+Snapdragon 415を搭載したスマートフォンで、それぞれ149ドル(1ドル=112円換算で、約17,000円)、VIBE K5が129ドル(同、約14,000円)という価格設定になっている。

 こうしたLenovoのブランドのスマートフォンはまだ日本には投入されていないが、Motorolaブランドの製品に関しては「Moto X Play」が、販売代理店(シネックスインフォテック、NTTレゾナント)経由で販売されることが既に発表(僚誌ケータイ Watchの記事を参照)されている。Lenovoは、本格的な参入、つまりキャリアからの販売を目指していたはずだが、その点はどうなったのか?

Motorolaのブランドで日本で販売されるMoto X Play

 ラピン氏は「販売代理店経由でMoto X Playを販売できるようになった。昨年(2015年)もお話したとおり、日本のスマートフォン市場は通信キャリアが主導している市場ではあり、そこに入らない限り本格的な参入は難しいが、まずはMVNOやSIMロックフリーと呼ばれている市場から参入していくことになった」と述べ、通信キャリアへの採用の働きかけは続けていく戦略を続けていき、それと平行してSIMロックフリー機のビジネスを進めていくとした。

 また、ラピン氏は「現在アジア太平洋地域では、インドやインドネシアのように急成長しているスマートフォン市場があり、そうした市場は参入障壁が小さい。従って、まずはそうした市場での成長を目指している段階。例えばインドには、Lenovoブランド、Motorolaブランド両方の製品を組み立てる工場を既に構築している。こうした成長市場では、多くの人々にとってスマートフォンが1台目のデバイスであることが多く、その後にPCを買うというフェーズになる。従ってスマートフォン市場でLenovoのブランドを知ってもらうことはPC市場での認知度向上に繋がっていく」と述べる。

 日本市場に関しては「本格的に参入を目指していきたいという弊社の方針に変更はなく、今後通信キャリアなどへの働きかけを強めていきたい」と、引き続きMotorolaブランドのスマートフォンを通信キャリアなどに売り込みを続けていく意向を示した。

MWCで発表されたVIBE K5とVIBE K5 PLUS

日本のPC市場は回復傾向にあり今四半期から徐々に復調していく

 昨年の日本におけるPCの出荷台数は、一昨年の1,500万台規模から1,000万台規模に減少している(別記事参照)。

 これについてラピン氏は「2つのことが言える。1つ目として現在起きていることは、Windows XPからの買い替え需要と消費税増税前の駆け込み需要の反動だ。確かに昨年は大きな減少になっているが、我々は今期から売り上げは戻ってくると考えており、元の数字にまで戻ることはないと思うが回復基調にはある。

 そしてもう1つは、これはグローバルのデータだが、IDCの統計によれば2~3年前は2億9,000万台のPCが出荷されていたのに対し、昨年は2億5,000万台に減っている。4,000万台は確かに大きな減少だが、よく見てみるとそこには3,000万台のWindowsタブレットが含まれていない。それを足せば、2億8,000万台になり、ほぼフラットだと言っても差し支えがないと思う。日本にも同じことが言えるのではないだろうか」と、PC市場の減少に関してWindows PCからWindowsタブレットへの置きかえ分が入っていないことを指摘した。

 このほかラピン氏は「弊社はYOGAシリーズで2in1デバイスの市場を主導してきた。お客様はそうした新しい形のデバイスを欲しがっており、ThinkPad X1 Tabletのようなモジュールを追加することで機能を拡張するタブレットもCESで発表した。今後もラインナップを拡充していきたい」とする。

 そして、現在日本PC市場で最も注目の集まる話題である、富士通、東芝、VAIOの3社による新しい統合PC企業誕生の憶測報道ついて「噂にはコメントしないのでノーコメントだ。ただ、1つだけ言えることは、PCビジネスには規模感が必要だと言うことだ。アジア太平洋地域には、そこを本拠地とするPCメーカーとして、かつてはAcer、ASUS、LG、Samsung、NEC、富士通、東芝、ソニーがあったが、NECは我々とジョイントベンチャーの道を選び、ソニーはPCビジネスをやめ、そして残ったメーカーは生き残りの道を探っていると非常にタフなビジネスだ」と述べ、新会社が設立されたとしてもグローバルでの規模が十分ではないため、さほど脅威ではないということを示唆した。

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(笠原 一輝)