イベントレポート

「ThinkPad Helix」や「TAB S8」が披露されたLenovo発表会

 LenovoはIFAの会場において記者会見を開催し、同社の年末商戦向け製品を発表した。発表内容に関してはすでに2つの記事でお伝えしているので、本稿では記者会見の内容と会場に展示された実機のレポートをお伝えする。

調達力とサプライチェーン、商品力ブランドを活用して成熟市場を攻める

Lenovo EMEA社長兼Lenovoグループ上席副社長のAymar De Lencquesaing氏

 Lenovo EMEA社長兼Lenovoグループ上席副社長のAymar De Lencquesaing氏は、同社の現状について「グローバルなPC事業では他を大きく引き離しての1位。市場シェアは約20%で差を広げている状態。EMEA(欧州、中東、アフリカ地域のこと)ではシェア18%で第2位だが、首位の差を縮めていっている。この好調さを、タブレットやスマートフォンにも持ち込んでおり、タブレットでもグローバルに第3位になった。IBM System X事業、Motorola Mobilityの買収などで、これからもさらに成長できるだろう」と好調さをアピールした。

 それを受けて登場したLenovo モバイルビジネス事業部グローバルセールス担当上席副社長 コリン・ジェルス氏は、モバイルビジネスについての現状を説明。「スマートフォンビジネスは2011年に中国で始めたが、2014年の第2四半期にはすでに中国でシェア1位になっている。そして現在は新興国を中心に36カ国でビジネスを展開しており、2013年第2四半期からグローバル市場シェア4位を維持している」と述べ、スマートフォン市場におけるLenovoの成長の早さをアピールした。

 さらに、「PCビジネスにおける成功をモバイルに持ち込むことができた。多くの人は“Lenovoは中国の会社”だと思っているが、すでに国際的な企業になっている」と述べ、世界各国でビジネスを展開するグローバルな企業に脱皮しているとした。

 今年の1月に発表したLenovoによるMotorola Mobilityの買収の進行具合についても触れ、「取引は現在順調に進行しており、2014年末には完了する見通し。Lenovoはこの買収でMoto-XやMoto-360などの魅力的な製品だけでなく、優秀な開発チームなども手に入れることができる。Motorolaは米国や欧州などの成熟市場、Lenovoのスマートフォンは成長市場で強いブランドを持っている。この2つの組み合わせは最強だと考えている」と、Motorolaのブランド力とLenovoが持つ調達力やサプライチェーンを活用して、成熟市場でもシェア拡大を図っていく方針を明らかにした。

LenovoのPC市場における市場シェア。HPを抜き1位になり、さらに差をつけつつある
EMEAにおけるLenovoのシェアも急成長しており、現在は18%で第2位。ドイツだけに限ると第1位だと言う。ちなみに、LenovoはドイツのローカルメーカーであるMEDIONを子会社化している
タブレット市場でも急成長を遂げており、現在世界でのシェアは第3位
中国から始まったLenovoのスマートフォンは、現在は新興国市場を中心に36カ国で展開されている
さらなる成長のために、今年に入ってIBMのSystem x部門(x86サーバー部門)とMotorola Mobilityの買収を発表した
Lenovo モバイルビジネス事業部グローバルセールス担当上席副社長 コリン・ジェルス氏
Lenovoのスマートフォンビジネスの歴史。2011年に中国で販売を開始してから、短い期間でグローバルに市場シェアが第4位になった
Motorola Mobilityの買収プロセスは予定通り進行しており、2014年末には完了の見通し
現在のLenovoはグローバルのスマートフォン市場でシェア第4位だが、Motorola Mobilityを合わせると、3位に浮上する。成熟市場をMotorola Mobilityブランド、成長市場をLenovoブランドと役割分担をしつつ、Lenovo全体での調達力やサプライチェーンを活用するというのが戦略となる。次にAppleやSamsungに襲いかかるのはLenovoかもしれない……

ThinkPad 10の11.5型/Core M版として使えそうなThinkPad Helixのタブレット

 今回の発表会でLenovoが公開したThinkPad Helixについて、詳しくは既報の通りだが、ここで簡単にまとめておくと、Core Mプロセッサ(以下Core M)を搭載し、タブレットの重さは798gと、従来の第3世代Coreプロセッサベースの製品とほぼ同じ重さながら、より薄くなった。企業向けのセキュリティソリューション(指紋認証リーダ、スマートカード、TPM搭載)などに対応しており、よりビジネス向けのイメージが強い製品となっている。また、ThinkPad 10と共通のドッキングステーションが利用できるほか、2種類のキーボードドックが用意されており、それを利用することで5つのモードで利用できることが最大の特徴だ。

 この実機を触ってみて分かったこともあるので、写真とともにお伝えしていきたい。

 まずサイズだが、11.5型フルHD液晶(1,920×1,080ドット)で厚さ9.6mmと、従来モデルの11.6mmから薄型化した。CPUが第3世代CoreからCore Mに変更されたことにより、熱設計などが簡素化可能になったことでより薄くすることができたと考えることができる。

 なお、展示されていた製品にはCore M-5Y70(0.8GHz)が搭載されていることをWindowsのシステムプロパティから確認できた。ただ、液晶のベゼルの部分はやや大きく、最近流行の狭ベゼルの製品に比べると、デザイン面ではやや古い印象を否めない。オプションでデジタイザペンも用意されており、ペンはThinkPad 10と共通になっている。

 ThinkPad 8/10と同じような「QuickShotカバー」も用意されている。QuickShotカバーは、カメラのレンズに当たる部分が折れ曲がる構造になっており、カメラ部分の蓋を開けると、自動でカメラアプリが起動してすぐに撮影できるオプションだ。これはWindowsがロックされていても有効なので、ビジネスユーザーのようにロックすることが必須のユーザーでも、取り出してQuickShotカバーの蓋を開くだけですぐに撮影することができる。なお、ThinkPad 10のQuickShotカバーと同じように、途中で折り曲げてQuickShotカバー自体をスタンドとして使うことができる。

 ThinkPad 10と同じようにフルサイズのUSBポートが用意されていることも特徴だ。これにより、USBメモリなどを変換ケーブルなく利用することができる。そのほかに、microSDカードスロット、SIMカードスロット(SKUによってはない)、Micro HDMI出力、ThinkPad 10と同じ40WのACアダプタを装着するためのポートが用意されている。

 本体の裏面にはカメラが用意されているほか、オプションで指紋認証リーダが用意されており、指紋認証でログインできるのは便利だ。最近では前面カメラを利用した顔認証などのソリューションも揃いつつあるが、認識率で言えば指紋認証の方が圧倒的に正確で(顔認証などは暗いところではうまく働かない場合も多い)、その点ではビジネスユーザーには嬉しい選択肢だ。なお、スマートカードリーダもCTOオプションで設定されており、その場合は背面が膨らむ形となる。

 大きな特徴はドッキングソリューションが豊富に用意されていることで、ThinkPad 10と共通の「ThinkPad Tablet Dock」がそのまま利用できるほか、ThinkPad Helix用に用意されている「ThinkPad UltraBook Keyboard」、「ThinkPad UltraBook Pro Keyboard」が用意される。ThinkPad UltraBook Keyboardはドッキングというよりはタブレットを上に置いて使うスタンド型のキーボードで、重量が600gと軽量だ。キーボード側にUSBポートが用意されているほか、ペンも収納できる。TrackPointは用意されておらず、タッチパッドのみとなる。

 ThinkPad UltraBook Pro Keyboardに関しては、本体とドッキングするための機構が用意されており、Yogaシリーズのようにクラムシェルモード、テントモード、スタンドモード、タブレットモードに加えて、タブレットの向きを逆にするビューワモードにも対応している。ただ、重量はやや重めで、900gとタブレット本体よりも重く、合計で1.7kgになってしまうのはやや残念だ。やや重めだと感じる人は、市販のBluetoothキーボードなどと組み合わせて利用するといいだろう。

 こうして見ていくと、ThinkPad Helixは、全体的な印象としてはThinkPad 10の11.5型でCore Mを搭載したPCという趣がする製品になっている。キーボードに関してはやや重めなのは残念だが、Core Mの性能を考えると有力な選択肢になるだろう。

ThinkPad Helix、左側がThinkPad Tablet Dockに乗った状態、右はThinkPad UltraBook Pro Keyboardに取り付けてテントモードになっている状態
ThinkPad UltraBook Pro Keyboardに取り付けてクラムシェルモードになっている状態
ThinkPad UltraBook Pro Keyboardにはペンを内蔵する場所がないので、このようにホルダーが付属している
タブレット単体にして縦位置にしたところ
ThinkPad UltraBook Pro Keyboardのドッキングコネクタ部分、前後どちらの方向でも取り付けることができる
本体の右側面にはThinkPad 10と共通の40W アダプタを装着するポートがある
本体の左側面、microSDカードスロット、USBポート、Micro HDMIポートが用意されている
本体を横にしたところ、最新のタブレットとしてはややベゼルが広い気がする
システムのプロパティの表示。CPUはCore M 5Y70と表示されている
オプションのQuickShotカバー
カメラ部分だけ折り曲げると、カメラアプリが自動で起動する
このように折り曲げるとスタンドのように利用できる
ThinkPad 10と共通のThinkPad Tablet Dock
背面には指紋リーダを搭載可能
ThinkPad UltraBook Keyboardは基本置くだけの簡単構造、ペンを格納できる。TrackPointは用意されていない
左側面にはUSBポートも用意されている

さっと持って動ける軽量を実現した19.5型の「Horizon 2s」

 Lenovoから発表されたもう1つの注目製品は「Horizon 2s」だ。Horizon 2sは、19.5型/フルHD(1,920×1,080ドット)のIPS液晶を搭載した液晶一体型デスクトップだ。こうした液晶一体型PCは、ノートPCより重めという製品が大半で、持って動けなくはないがちょっと重い、というのが一般的だった。しかし、このHorizon 2sは重量が2.5kgと、15.6型液晶くらすのA4サイズノートPCと同じかやや軽い程度の重量で、家庭内であれば気軽に持ち運べるサイズと言えるだろう。

 机の上に水平に置いてテーブルトップPCとして利用できるほか、背面に用意されているスタンドを利用して自立も可能になっており、その場合は液晶を横にしたタブレットPCとして利用できる。また、オプションとして用意されるスタンド(充電も可能)を利用すると、一般的な液晶一体型PCのように使うことも可能だ。例えば、普段は書斎の机の上にデスクトップPCとして使うようにスタンドの上に置いておき、リビングでテーブルトップPCとして使う時や寝室で使う時には外して持って行く、そんな利用シーンが想定されるだろう。本体には2.5時間の駆動が可能なバッテリも内蔵されている。

 なお、同時に発表されたHorizon 2eは21.5型/フルHD(1,920×1,080ドット)のIPS液晶を搭載した液晶一体型PC。こちらはスタンドは背面に用意されているモノを利用する。スタンドは本体内に格納できるので、やはりテーブルトップPCとしても活用できる。Lenovoは近年Horizonシリーズの製品展開に熱心で、タッチで操作できるゲームに利用できるストライカーなどをオプション提供しているが、それらもHorizon 2s/2eで利用することができる。

 このほか、Bay Trailを搭載したAndroidタブレットとなる「TAB S8」、本体後部に「ThinkCentre Tiny PC」を合体できる23型液晶「ThinkCentre Tiny-in-One 23」、新型スマートフォンとなる「VIBE X2/Z2」などを発表展示して注目を集めた。

LenovoのHorizon 2s。スタンドに取り付けると、一般的な液晶一体型PCのように見える
オプションで用意されているスタンド
背面には自立するためのスタンドも用意されている
内蔵のスタンドを利用した場合でも、液晶一体型PCのような使い方ができる
側面にはUSBポートとACアダプタのポートが用意されている
デバイスマネージャの表示、CPUは第4世代Coreプロセッサ(展示機はCore i3 4030Uを搭載)
こちらは21.9型のHorizon 2e
Bay Trailを搭載したTAB S8
Lenovoの5型スマートフォンVIBE X2。MediaTekの「MT6595m」の最初の製品となる。オプションのスピーカーやシートバッテリなども用意されている
Lenovoの5.5型スマートフォンVIBE Z2。64bit ARM命令に対応しているSnapdragon 410を採用しており、Android Lがリリースされた暁には64bit版へアップグレードが可能
ThinkCentre Tiny PCを合体できる23型液晶ディスプレイのThinkCentre Tiny-in-One 23。PC自体の寿命と、モニターとしての寿命が異なるという液晶一体型PCの宿命を避けることができる

(笠原 一輝)