イベントレポート

Appleの開発者会議「WWDC 2014」が2日に開幕

〜iOS 8およびOS X 10.10のプレビューなどが確実視

会期:6月2日〜6月6日(現地時間)

会場:米サンフランシスコ Moscone Center West

 米Appleが開催するWWDC(Worldwide Developers Conference:世界開発者会議)が、2014年も目前に迫った。米サンフランシスコ市内中心部にあるMoscone Center Westを会場にして、6月2日から6日まで5日間に渡って開催される。ストリーミングでも中継される予定の基調講演は、現地時間の2日午前10時(日本時間3日午前2時)から約2時間に渡って行なわれる。

次期OSのプレビュー以外に想定できるトピックスは?

2013年に引き続いて、Moscone Center Westの正面に位置する複合商業施設のMetreonにもバナーが掲出された。「Write the Code. Change the World.」(コードを書けば、世界は変わる)

 かつては故スティーブ・ジョブズCEO、現在はティム・クックCEOなど同社のエグゼクティブが華々しく登壇してスピーチすることから、WWDCが新製品発表の場と誤解している向きも一向に減ることがないが、WWDCはその名称の通り、本来は開発者会議の場だ。もっとも5日間に渡る会期の内、記事として公開が可能なのはその華々しい基調講演の部分だけで、本流であるセッションの方は公開することができないので、そうした認識も致し方ないという気はする。

 毎年繰り返して書いているが、WWDCは必ずしもエンドユーザーに向けた製品発表と直接結びついているわけではない。とは言え、ここ数年はMac製品のアナウンスが続いている。2012年は「MacBook Pro Retina Displayモデル」が登場し、iPhoneに続いてMac製品のRetina化に端緒を付けた。2013年はMacBook Airに加え、Mac Proをプレビュー公開した。同社が正式発表前の製品を公開するのは極めて異例で、WWDCで同様のプレビューがあったのは1998年の初代iMac以来の出来事になった。

 あえて予測をすれば、2014年のWWDCで可能性があるとしたら「iMac」だろう。正確にはデスクトップ環境におけるディスプレイのRetina化と言うべきかも知れない。MacBook Pro Retina Displayモデルでスタートを切り、昨年(2013年)末には4K映像編集に特化したとも言うべきMac Proを出荷した。足りないのは4K映像を表示する高精細パネルとは考えられないだろうか。

 同社の純正ディスプレイは、2010年発売の「Apple Thunderbolt Display」で足踏みをしている状態だ。Mac製品のUSBインターフェイスがUSB 3.0となり、Thunderboltもプロ向け製品ではThunderbolt 2の採用が始まった。ポータブル機の電源コネクタも、MagSafeからMagSafe2へとすでに移行している。今、旧世代のインターフェイスを満載する現行製品が「Apple Thunderbolt Display」にほかならない。iMacと同様に27型パネルを搭載するこの製品へ共に4Kパネルを採用するのはあり得る可能性だ。

 もちろん、そこには大型高精細パネルのコストという壁があるが、そのあたりの考察は先に掲載した記事にも目を通していただきたい。IntelがHaswell Refreshの出荷を開始していることで、それに応じたアップデートであればいつでも行なえる状態にある。iMacのRetina化を見送るのであれば、それはWWDCを待つ必要はなく、WWDC前でも製品発表は可能だった。WWDCでiMacに関するなんらかのアナウンスがないようであれば、次期iMacにおけるRetina化の可能性は低くなったと考えるべきだろう。

 WWDCを前に、日本と米国で2つのニュースリリースが発表された。日本でのリリースは、NTTドコモがiPad AirおよびiPad miniの取り扱いを始めるというニュースで、米国ではヘッドフォンおよび音楽配信ブランドのBeatsを買収することに合意したというニュースである。いずれも、何故WWDCの中でアナウンスされないのか? と疑問を持つことも可能な話だが、これらの発表を事前に行なったのは意図が隠されている。

 まず、NTTドコモのiPad販売については、WWDCのタイミングでのニュースの分散を避ける狙いがある。諸外国はともかく、少なくとも日本においてNTTドコモのiPad取り扱い開始はトピックスの1つであり、各メディアはそれなりに時間や紙幅を割かざるを得ないだろう。

 しかし、Appleとしてそれはあまり望む方向性とは言えない。WWDCでの発表については、そこだけに集中させたいAppleの狙いがある。WWDCの前に発表し、予約開始は基調講演の前日、実際の販売はWWDCの終了後ということで日程のかぶりを極力減らしている。これは、iPhone 3GがWWDCで発表されたときにも採られた手法で、当時ソフトバンクモバイルは国内でiPhoneを取り扱うことを、製品を具体的に明らかにしないままWWDCの前週に発表している。もし同時発表であれば、日本では「iPhone 3Gが」ではなく「ソフトバンクが」という部分に注目をされたであろうからだ。これも話題の分散を避けるため、綿密にスケジューリングされたものと想像する。言い換えれば、ドコモの件はWWDCで触れられることはほぼない。

 もう一方のBeatsに関しては難しい。買収成立自体が話題になってしまい、WWDCのニュースと被ってしまうことを嫌ってというところまでは想像できるが、加えてBeatsが関連するプロダクトやサービスがWWDCにあわせて準備されているかどうかということになる。筆者個人の考えとしては、先日予告なしに日本でiTunes Matchのサービスが始まったことは、もう圧縮音源を販売するサービスは頭打ちで、ストリーミングによる聴き放題系のサービスとほぼ同じ土俵に立ち、これからの楽曲単体販売はハイレゾ音源へと移行するという合図のようにも思えた。こうした音楽系サービスの次なる一手に、このタイミングでBeatsがどのように絡むことができるかという視点は必要だ。

 もう1つ、毎回基調講演の枕として紹介されるのが世界各国のApple Storeである。東京の表参道で建築中の建物が、日本では8年ぶりとなるApple Storeの新店舗であることが確定的になっているが、この店舗がWWDCの講演の中でどういう形で紹介されるのか、おおいに楽しみなところである。

主役は次期OSのプレビュー。開発者は同日から準備を始める

 基調講演の中心になるのはやはり次期OSのプレビューだ。会場となるモスコーンセンターの1階フロアにはすでに大型のバナーが掲出されていて、それぞれ「8」と「X」の文字がある。8のほうは言うまでもなく、「iOS 8」を示す。おそらくその概要を示すとともに、基調講演同日中にも開発者向けのプレビュー版が提供されるだろう。2013年はスキュアモーフィズムと決別し、フラットデザインへと大きく踏み出したわけだが、2014年にはどういった方向性を示すのかが注目される。

 もう一方のXは、「OS X」を示している。現行のOS X Mavericksは「10.9」に相当し、次期OS Xは「10.10」になるものと予測されている。11でないのが不思議な読者の方もいるかも知れないが、Appleの現在のバージョン管理としては適切な呼称と言える。2013年には、この先10年を担うOSとして開発コード名を一新した。今後はMavericksを始めとするカリフォルニア州の地名が開発コード名となるので、「.9」から「.10」、さらには「.11」へと連続していくことが想像できる。整数の桁が上がるのは、抜本的なOSの改革が行なわれるときだろう。

 掲出されたバナーのXの文字の背後には、ヨセミテ国立公園にある花崗岩の一枚岩「EL Capitan」とおぼしき写真が壁紙になっている。Mavricksでは波だったわけだが、次期OS Xの呼称は、Yosemite、あるいはEL Capitanあたりに絞られてきたと言えそうだ。

受け付けが行なわれている1階フロアの様子。掲出されているバナーは、全部で2枚。それぞれ「X」と「8」の文字のみが記されている
「X」のバナー。ヨセミテ国立公園にあるEl Capitanと思われる写真が背景に使われている。開発コードネームはYosemiteかEL Capitanに絞られてきた気配
「8」のバナー。昨年(2013年)はシンプルな白を背景にカラフルな7が描かれていたが、2014年は文字が白抜きで背景が存在する。水面下に光が射しているような写真だ

 いずれにせよ今回のWWDCで、これらOSのβバージョンが披露され、開発者を対象にしてプレビュー版の提供が始まるのは確実で、WWDCの開催を発表したニュースリリースの中でも、ワールドワイドマーケティング担当上級副社長のフィリップ・シラー氏が「私たちは世界で最も素晴らしいデベロッパコミュニティーを持っており、彼らのために素晴らしい1週間を用意しています。WWDCの参加者は年ごとに多様化してきており、あらゆる分野の開発者が世界のあらゆる場所から参加するようになってきています。彼らとiOSおよびOS Xの最新の進歩を共有し、彼らが次世代の素晴らしいアプリケーションを作ることができるようになることを楽しみにしています」とコメントを寄せている。

 例年のスケジュールどおりであれば、9月〜10月頃を目処に開発期間を終えて、エンドユーザーへの提供が行なわれると思われる。

チケットの争奪戦は今年から抽選方式に

 年を経るごとに過酷になっていたWWDCチケットの争奪戦だが、2013年は事前に販売予告を行なっていたこともあって71秒で売り切れた。その前年は日程のアナウンスと同時に受付を始めたが、タイムゾーンの差から有利不利が分かれたことを教訓に、事前予告に切り替えたものと思われる。それでも71秒ではどうしようもないと考えたのか、2014年からは抽選方式に切り替わった。事前に抽選受付の期間を予告して、その期間に申し込みをした開発者の中から抽選して参加者を決める方法だ。

 Googleの開発者会議であるGoogle I/Oも2014年からは抽選方式になり、ある意味で人気カンファレンスのトレンドになりつつある。とは言え細目には違いがあり、Googleの場合は申し込みと同時に仮決済まで行なう。当選すれば自動的にチケットが発券されキャンセルはできない。Appleの場合は、抽選はエントリー式になっており、当選通知が届いた参加者がチケット購入の手続きを行なえる仕組みだった。結果、いくつかのキャンセルも発生し、補欠当選などもあった模様である。

 WWDCの参加費用は1,599ドル。開発者会議の期間として5日間は長い方で、2014年を例に比較すると米Microsoftが主催するBuildが3日間、Googleが主催するGoogle I/Oが2日間となっている。ちなみにBuildの参加費用は2,095ドルで、Google I/Oは900ドル。1日あたりの単価を計算すると、Buildが最も高い700ドル弱で、Googleの450ドル、Appleの320ドルと続く。ただ、BuildやGoogle I/Oの場合は「教材」として、なんらかのデバイスが参加者に配られるケースも多く、単純比較は難しい。なお、AppleのWWDCでデバイスなどの配布物があることはほとんどない。AppleがWWDCの参加者に対して何かを配ったのは、筆者の記憶にある限りでは2003年の「iSightカメラ」が最後と思われる。

 WWDCのセッションは、Appleと開発者契約を結んだ契約者に限定して順次映像公開される。公式アプリケーションは2013年からApp Storeを通じて一般にも配布されている。契約者のアカウントでログインしなければ参照できない情報もあるが、雰囲気の一端は掴めるだろう。また一般向けの提供が2年目に入ったこともあり、セッション情報などの表記が変わった。昨年は基調講演終了までは内容を明かせないセッションはTBA(To Be Announced)の淡泊な書き方だったが、2014年からはありとあらゆる表現で「まだ内緒」をアピールするものになっている。

2014年版に更新されたiOS用のWWDCアプリ。App StoreでWWDCを検索するとダウンロードできる。前日時点ではまだ公開されていないセッションが多い。一部はデベロッパ登録が必要なコンテンツもある。会場マップもその1つだが、これはApp Storeのサンプル画像にも含まれている
会場の横にはWWDC 2014のフラッグもある。前日にあたる日曜日のお昼前から、来場者が続々とパスのピックアップに訪れていた

 開幕を控えて、会場となるMoscone Center Westでは着々と準備が進んでいる。入場パスの配布は日曜日から始まっており、参加チケットの購入時に事前登録を終えている参加者が、断続的にパスの受け取りに訪れていた。パスポートなどの身分証明書の提示で、入場パスとWWDC限定グッズのジャケットなどを受け取ることができる。現時点で入場可能な1階のフロアには、特に黒い幕で覆い隠されたバナーは見当たらない。バナーは2つのみで、それぞれ、「8」、「X」が描かれている。そして、登録カウンター奥にある大型のバナーだが、2013年のカラフルで大きなタイルから、小型のタイルが整然と並んでロゴマークを表現したものに変わっている。例年2階以上のフロアにもなんらかのバナーは用意されているのだが、日曜日時点ではまだ立ち入ることができない。

 5日間に渡るWWDCの中心となる数々のセッションは、参加者と同社の間でNDA(Non Disclosure Agreement:機密保持契約)が結ばれている。セッションに参加する場合はメディア関係者であっても開発者として正規の参加申し込みを行なった上で参加しているため、個々のセッションの内容を記事として公開することができない。会期中は唯一、基調講演で話された内容と、WWDCで正式発表された製品情報のみを記事として紹介することになる。

 PC Watchでは基調講演のレポートを中心に、関連のニュースを随時お届けする予定である。

(矢作 晃)