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第1回国際ドローン展レポート
~自動で侵入者のもとに飛行し、尾行、撮影するドローンなど
(2015/5/23 06:00)
最近、ニュースでよく聞くようになった言葉と言えば、なんといっても「ドローン」であろう。ドローンを悪用した事件が世間を賑わしており、ドローン規制法案に関する議論も盛んだが、今後の世の中を大きく変える可能性を秘めたドローンは、大きな注目を集めている。そうした中、5月20日~22日、幕張メッセで日本初の国際ドローン展が開催された。その様子をレポートしたい。
最大30kgのペイロードを搭載可能な大型ドローンを展示していたプロドローン
国際ドローン展のブースの中でも、屈指の規模を誇っていたのが、日本の産業用ドローンメーカーであるプロドローンだ。
プロドローンのブースでは、さまざまなドローンが展示されていたが、その中でも最も大きな機体が、6ローターの「PD6-B」である。PD6-Bは、モーター軸間距離1,430mm、全高830mmという大型ドローンで、機体重量は12kgだが、最大30kgものペイロードを搭載して飛行できる。
PD6-Bは、キヤノンから2015年9月に発売予定の新製品「EOS C300 Mark II」のプロモーションビデオを撮影するために開発された機体であり、飛行可能高度は最大5,000m、最高速度時速40kmという高い性能を誇る。価格は500万円程度とのことだ。
対して「PD6」は、6ローターの機体で、機体重量は3kg、最大ペイロード6kgである。PD6の基本価格は160万円だが、空撮仕様やサーモカメラ仕様、ウィンチ仕様など、さまざまなバリエーションが存在する。
「PD4」は、4ローターの機体で、機体重量2.3kg、最大ペイロード3kgで、基本価格は140万円となる。こちらも測量仕様や有線給電仕様などのバリエーションが用意されている。
また、小型ドローン搭載三輪バイク映像配信システム「PD-C01」も参考出品されていた。これは、三輪バイクと小型ドローンの機動性を最大限に活用した緊急時中継システムであり、三輪バイクの後部に小型ドローンが格納されており、ベースドームを開くことで、すぐに離陸して空撮できる。
後部には、映像・音声中継スイッチャーや映像伝送エンコーダーが搭載されており、車体から取り出してショルダーバッグに収納すれば、ポータブル中継機となり、ワンマンオペレートのリアルタイム配信を実現するというものだ。
未来的なデザインの変形ドローンを展示していたアミューズワンセルフ
出展されていた産業用ドローンは、ケーブルやパーツが剥き出しになっているなど、無骨なデザインのものがほとんどであったが、アミューズワンセルフが展示していた多目的ドローン「zUAV」は、SF映画などにも出てきそうな洗練されたデザインと機能で注目を集めていた。
zUAVは、4つのローターを備えたクアッドコプターに見えるが、それぞれ上下にプロペラを備えた二重反転プロペラを採用しているため、モーターの数は8となる。制御基板やモーターなどがすべてカウリングでカバーされているため、運搬時やフライト時のケーブルの断線や巻き込みなどのトラブルを防げる。
また、プロペラの回りに4本のアームを装備していることが特徴だ。このアームは、着陸時には機体に対して垂直になり、脚の役割を果たすが、離陸すると自動的に90度回転し、プロペラガードとなる。アームの周囲にはLEDが搭載されており、流れるように点滅するのも美しい。さらに収納時には、アームを垂直にした状態で上側を中央に折りたたむことで、よりコンパクトに収納できる。
機体重量は2.5kgで、ペイロードは最大3kg、フレームにはCFRPが使われており、軽さと強度を両立させている。フライト時間も30分以上と長く、通信距離は4kmと長い。zUAVは、レンタルで使われることが前提の製品であり、主な用途としては測量や工事モニタリング、火山活動調査などが考えられるという。
自律制御システム研究所のブースでは原発調査用に設計された機体の展示も
自律制御システム研究所のブースでは、ミニサーベイヤーの各機体が展示されていた。ミニサーベイヤーとは、千葉大学野波研究室で開発された自律制御技術を利用した、「完全自律型マルチロータ式電動ヘリコプタ」であり、その商品化のためにミニサーベイヤーコンソーシアムが設立され、その中心となっている会社が自律制御システム研究所である。
ミニサーベイヤーの量産型機体である「MS-06LA」は、標準構成なら納期はたった1週間であり、価格は250万円とのことだ。機体総重量は3kgで、最大ペイロードは6kg(推奨は3kg)である。また、10kgのペイロードを誇る大型機体「GE01」やレーザースキャナを搭載した「GE03」、農薬散布型の「MS-06LL」、大型有線給電型の「MS-06EX」、Oculus Riftを利用した「MiniSurveyorシミュレータ」なども展示されていた。さらに、原発調査用ドローンおよびバッテリ自動交換機や研究開発中の高速遠距離飛行型試作機体も展示されていた。
Parrotやヨコヤマコーポレーション、ハイテックがコンシューマ向けドローンを多数展示
国際ドローン展では、産業用ドローンの展示が多かったが、10万円~1万円前後の安価なコンシューマ向けドローンを展示しているブースもあった。
AR Droneでドローンブームの立役者となったParrotは、最新の「Bebop Drone」や小型クアッドコプターの「Rolling Spider」、ジャンプする2輪車「Jumping Sumo」を展示していたほか、日本未発売の飛行機型ドローン「eBee」も展示していた。eBeeは、あらかじめ作成したフライトマップに従って自動飛行を行なうドローンであり、マルチコプターほどの機動性はないものの、遠距離飛行が可能なことが特徴だ。
また、ヨコヤマコーポレーションでは、第29回東京インターナショナルギフトショー2015の新製品コンテストで大賞を受賞した超小型ドローン「ALIEN-X6」をはじめ、多くのコンシューマ向けドローンを展示していた。ALIEN-Z6は、6ローターの超小型ドローンであり、12,800円という低価格が魅力だ。上位機種として「Cicada」や防水の「SwellPRO」のほか、産業用の「650 SPORTS」なども展示されていた。
ラジコン機器メーカーのハイテックマルチプレックスジャパンも、多数のコンシューマ向けドローンや高性能充電器などを展示していた。
飛行デモンストレーションを行なうためのスペースも用意
国際ドローン展の会場の隅には、安全対策用ネットで覆われたドローン飛行デモンストレーションのためのスペースが用意されており、来場者はネット越しにドローンが飛行する様子を見ることができた。大型の産業用ドローンはプロペラの風切り音もそれなりに大きく、迫力があった。
ドローンを使った道路や橋梁などの点検・調査を紹介していた中日本ハイウェイ・エンジニアリング
中日本ハイウェイ・エンジニアリングのブースでは、ドローンを活用した道路や橋梁などの点検・調査などのソリューションを紹介していた。ドローンを活用することで、橋梁の下面など、人の立ち入りが困難な場所でも点検や調査が可能になり、安全性の担保に繋がる。自律型ドローンを利用するものや有線ドローンを利用するものなど、用途に応じて最適なドローンを選定することで、着実な成果を上げているという。
ドローンを利用した警備サービスをアピールしていたセコム
セコムでは、ドローンを利用した警備サービスのプレゼンテーションを行なっており、注目を集めていた。
この警備サービスは、車や不審者が敷地内に侵入したことをレーザーセンサーによって検知し、小型飛行監視ロボットをその場所に急行させる仕組みだ。もちろん、飛行監視ロボットは全自動操縦であり、不審な車ならそのナンバーを撮影、セコムのセンターに映像を送信。人物の場合も同様に、一定距離を保ちつつ、その人物を撮影し、センターに映像を送信するというものだ。小型飛行監視ロボットには、あらかじめ障害物エリアと飛行可能エリアが設定されており、敷地外へは決して飛行しないようになっている。セコムは、この警備サービスを工場や倉庫などの監視に使いたいとしており、2015年6月からサービスを開始する予定である。
また、小松製作所は、ドローンを活用して工事現場の現況を高精度に測位するといった、先進的なソリューション「Skycatch」を展示した。