PCのビデオ周辺機器に関する業界標準化団体VESA(Video Electoronics Standards Association)は26日、DisplayPortの現状説明や製品紹介を行なう業界関係者向けイベント「VESA Displays Workshop 2009 Tokyo」を都内で開催した。
冒頭では、VESAの会長を務めるBruce Montag氏(Chair, DisplayPort Task Group; and Senior Technical Staff, Dell)が、DisplayPortの現状と、今後の技術ロードマップについて説明した。
現在、VESAに参加している企業は150を超えており、そのうちの51%が北米、41%がアジア、そして8%がヨーロッパである。それぞれのセグメントでは、全PCグラフィックスシリコン企業の95%、全PCディスプレイシリコン企業の90%、全PCディスプレイ用LCDパネルメーカーの95%、全ノートPC用LCDパネルメーカーの95%が参加している。また、Blu-ray Disc Association(BDA)とConsumer Electronics Association(CEA)とも関係を展開している。
VESAメンバーの内訳は、ケーブル/コネクタ製造、ディスプレイ製造、ビデオカード製造、PCのOEMメーカー、シリコン製造など、多岐にわたり、PC向けディスプレイのスタンダード規格を策定している。
標準化によってカバーできる製品ジャンルに関しては、ディスプレイやプロジェクター、デスクトップPC/ノートPCやネットブックだけでなく、携帯電話のようなハンドヘルド機器をもサポートする。DisplayPortに関しては、今後ハンドヘルドデバイスに展開していきたいとした。
VESAに参加しているメンバーの内訳 | VESA規格を採用したLCDは多数半数を占める | VESA規格で策定され、カバーできている機器の範囲 |
過去に標準化した規格としては、ディスプレイの解像度やタイミング、色空間を取得できる「EDID(Extended Display Identification Data)」、EDIDに置き換わり3Dディスプレイなどをサポートする「DisplayID」、そしてOSDなどをOS上からコントロールできるようにする「MCCS(Monitor Command Control Set)」などがある。
Montag氏は、「これらの標準化活動によって、VESAのメンバーは、デスクトップやノートPCのパネル、ディスプレイのマウントなどの製品を低価格で大量生産できるメリットを得られる」とした。
ディスプレイの情報を取得するEDIDもVESAが規格化した | DisplayIDでは3Dディスプレイなどを新たにサポートする | MCCSによりOS上からディスプレイの色温度やカラーなどを設定できる |
●DisplayPortの現状
DisplayPortを採用しているメーカー |
DisplayPortついては、Intel、NVIDIA、AMD、MatroxのようなGPUメーカー、Realtek、STMicro、IDT、NXP、Texas Instrumentsのようなコントローラメーカー、HP、Apple、Dell、Lenovo、そしてAcerなどのPCメーカーがすでに対応製品を発売し、市場が形成しつつある。
現行のDisplayPort v1.1aの規格に関しては、USBコネクタサイズに似た小型コネクタの登場、15mに及ぶ長いケーブルのサポート、WQXGAと10bitカラーのサポート、オーディオのオプションサポートやHDCPのサポート、そしてDVI、アナログVGAとの互換性があることをアピールした。
また、eDP(Embedded DisplayPort)のサポートによるノートPCのLVDSへの置き換え、さらにはパネル側のDisplayPortのネイティブ対応で、A/Dコンバータなどを省くことで、ディスプレイの薄型/低価格化できることを強調した。
DisplayPort v1.1aの主な新機能 | DVIやアナログVGA、HDMIに変換して出力できる機能 |
eDPのサポートによりノートPCのLVDSも置き換えられる | DisplayPortの搭載によりディスプレイコントローラやA/Dコンバータを省け、ディスプレイを薄型化できる |
2009年下半期に規格が策定される予定のv1.2に関しては、バス幅を21.6Gbpsへ拡張。これにより、3Dステレオディスプレイや4K×2K(3,840×2,160ドット)の対応、シングルコネクタによるマルチディスプレイの対応、そして高速なAUXチャネルなどを実現できるという。また、Appleが現在使っているMini DisplayPortコネクタもv1.2の標準に盛り込む予定。
このうちマルチディスプレイのサポートについては、2,560×1,600ドット(WQXGA)の解像度なら最大2台まで、1,920×1,200ドット(WUXGA)の解像度なら最大4台まで、1つのコネクタから出力してHubで分岐して利用できるようになる。
AUXのチャネルは双方向通信をサポートし、USB周辺機器のデータ転送や、マイクによる音声の転送、またはカメラによる映像の転送をサポートし、ディスプレイ側に付加されるべき機能が今後増えたとしても、PCとディスプレイ間のケーブルを一本化できる。
DisplayPort v1.2ではマルチディスプレイを1つのコネクタでサポートできる | Mini DisplayPortの標準化 |
AUXチャネルによる双方向データ通信 | v1.2は下半期中に正式策定される |
●DisplayPortの今後
Huzaifa Dalal氏 |
DisplayPortの今後の普及予測については、VESAのボードメンバーであるHuzaifa Dalal氏(Business Initiatives Manager, Intel)が説明した。
同氏はまず、DisplayPortへの業界全体の期待を説明し、「エンドユーザーは色域の拡大や高リフレッシュレート、デバイスの薄型化を望んでいるだけでなく、OEMメーカーは低コスト化、エンジニアリング時間の削減、そしてライセンス料の削減などを望んでいる。このためDisplayPortへの移行は間違いなく進むだろう」とした。
DisplayPortの互換性についても、DVI、VGA、HDMI、LVDSなどと互換性を持っているため、「2012年~2014年の間に、確実にこれらの旧規格を完全に置き換えられる」とした。
DisplayPortの推進は、Windows 7のハードウェアロゴの取得にも関係している。Windows 7ハードウェアロゴは現在、デジタルによるディスプレイ出力はあくまでも推奨であるが、2010年7月からはデジタル出力が必須条件となる。このため、GPUメーカー各社はDisplayPortの対応を推し進めているという。
DisplayPortを使った製品の展開 | 2012年~2014年でDisplayPortへ完全移行する | Windows 7のロゴプログラム要件の変化。2010年7月にはデジタルディスプレイ出力が必須に |
Intelの具体的なプランとしては、eDP対応製品の出荷を今後順次増やしていき、2011年第3四半期にLVDSやSDVO、アナログVGA出力の対応を完全に廃止する予定。NVIDIAも2011年には50%以上の製品がDisplayPortに対応する予定だという。また、AMDに関しては具体的な数字を明らかにしなかったものの、プロセスを微細化していく段階で、LVDS、DVI、そしてアナログVGAをフェイズアウトさせていく予定だとした。
IntelのDisplayPortへの移行プラン | NVIDIAも対応製品を順次増やす | AMDはプロセスを微細化していくことで最終的にはLVDS、DVI、そしてアナログVGAをフェイズアウトさせていく |
DisplayPortの普及の鍵となる部品の低価格化に関しても、既にケーブル、スケーラー、コネクタがDVIと同等またはそれ以下のコストで実現可能なこと、そしてeDP変換シリコンに関しても、2010年にLVDS TCONと同等レベルになるとした。
DisplayPort関連部品と、LVDS TCON/DVIケーブル、スケーラー、コネクタとの価格比較 | 液晶ディスプレイに搭載されているインターフェイスの推移。2013年で80%を目指す | 液晶ディスプレイの出荷台数推移 |
●会場展示
説明会の後、実際にDisplayPortを使った製品のデモが展示用意され、IDTのDisplayPort Hubや、デルのプロジェクター、Matroxの4つのDisplayPortを備えたビデオカードなどが展示された。また、コンセプトモデルではあるものの、内部もDisplayPortで駆動しているという薄型の液晶ディスプレイが展示された。
(2009年 10月 26日)
[Reported by 劉 尭]