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PhotoshopのAI機能が進化し、画像全体を生成可能に。そのほかの機能強化も

Firefly Image 3 Foundation モデルとそれを採用したPhotoshop(ベータ版)が発表された

 Adobeは23日(現地時間)に英国ロンドンにおいて、Adobe MAX London 2024を開催する。それに先だって報道発表を行ない、「Adobe Firefly Image 3 Foundation モデル」(以下Firefly Image 3)のベータ版を発表した。

生成画像の品質向上や物体構図の直線化などを実現

Firefly Image 2(上側)とFirefly Image 3(下側)がそれぞれ生成したイメージを比較したもの。Firefly Image 3の方がより表現力が豊かで、物体の直線性も改善され、より詳細が表現されていることが分かる

 Adobeは、2023年3月に行なわれたAdobe Summit 2023において、画像生成AIモデルとしての「Adobe Firefly Image Foundationモデル」(以下Firefly Image 1)を発表し、同時にそれを利用したWebアプリケーションになる「Firefly Web版」の提供を開始した。

 一般的に生成AIは、OpenAIのChatGPTやMicrosoftのCopilotが利用しているような「GPT(Generative Pre-trained Transformer)」、GoogleのGeminiが利用している「Gemini 1.0/1.5 モデル」など、ファンデーションモデルやモデルなどと呼ばれる一種のアルゴリズムを活用してデータの学習が行なわれ、それを活用して言語を処理したり、画像を生成したりといったことが行なえるようになっている。

 AdobeのFirefly Imageもそうした生成AIのファンデーションモデルの1つで、今後、動画や音声などを生成するモデルも投入される計画があることをすでにAdobeは明らかにしており、その中で画像生成に特化したモデルをFirefly Imageという名称で提供している。当初はただFireflyとだけ呼ばれていたが、後に動画版や音声版もあることが明らかにされたタイミングで、画像生成向けはFirefly Imageと呼ばれることになったものだ。

 AdobeのFirefly Imageの大きな特徴は2つある。1つはAdobeがこれまでの画像編集や動画編集といったコンテンツ編集のツールを提供してきたノウハウを元に、クリエイターが求める機能を提供するために必要な機能を持った、Adobe独自開発のモデルになっているということだ。

 もう1つは、生成AIで必須になる画像データを活用した学習が、すでに著作権処理が適切に行なわれているAdobeのストックフォトサービス「Adobe Stock」の写真データのうち、著作権者がAI学習に活用することを許可した写真だけを利用して行なわれているということだ。法的にきちんと処理されたデータだけを活用して学習しているため、コンプライアンスに配慮しなければならない大企業などがビジネス的に活用することも可能になっており、大きな注目を集めた。

 その後、Adobeは2023年10月に行なわれたAdobe MAXにおいて、Firefly Image 1をFirefly Image 2へと進化させ、生成される画像の品質を徐々に高めてきた。Adobeによれば、すでに70億枚以上の画像がFirefly Image 1とFirefly Image 2で生成されているなど、多くのクリエイターに使われるモデルとなっている。

Firefly Image 3の強化点

 今回発表されたFirefly Image 3は、Firefly Image 1とFirefly Image 2をベースに、Firefly Imageモデルをさらに進化させたものとなっている。Firefly Image 3ではモデルのサイズ自体がFirefly Image 2よりもさらに大きくなっており、それを利用して多くの品質向上や機能拡張が加えられている。

品質の向上
さまざまなスタイルに対応、ベクター的なスタイルの生成にも対応
よりよい構造や物体の直線性の向上も
ポーズやスタイル、カラーの指定なども可能に
3月のAdobe Summitで発表された構造化やスタイル参照の機能も引き続き用意される

 生成する画像の品質向上では、生成される画像がより高品質な写真品質へと進化しているだけでなく、プロンプトに入力されているテキストを、より正確で、より豊かに画像に反映できるようになっている。また、生成される画像のスタイルも拡張されており、写真、イラスト、ベクターなどさまざまなスタイルに対応する。

 ほかにも、改善された構造化、物体の構図の直線化、ポーズやスタイル、カラー指定などの機能拡張が加えられており、より高品質なイメージを生成することが可能になる。

 Firefly Image 3は本日よりベータ版が提供開始されており、Web版のFireflyアプリケーションから利用できる。

Firefly Image 3搭載Photoshopはベータ版が本日より提供開始

PhotoshopがFirefly Image 3に対応し、完全な画像生成機能に対応

 AdobeはこうしたFirefly Image 3を、PhotoshopなどのCreative Cloudアプリケーションに適用を拡大する。本日より提供開始されるPhotoshop(ベータ版)では、Firefly Image 3を活用した、Photoshop内での完全な画像生成に対応する。

 従来バージョンのPhotoshopでは、画像背景などを生成できる「生成塗りつぶし(Generative Fill)」の機能が実装されており、実際にはない部分の背景を拡張して生成するといった機能を利用できていた。

 今回提供開始されたPhotoshop(ベータ版)ではそれに加えて、画像そのものを生成する「画像の生成(Generate Image)」機能が利用できるようになっている。Photoshopのユーザーは、プロンプトにテキストで生成してほしい画像を指示するだけで画像を生成でき、これまでのようにFirefly Web版で生成した画像をPhotoshopに読み込むといった作業が必要なくなる。もちろん生成された画像は、Photoshopの特徴でもあるレイヤーなども利用可能で、そのままPhotoshopで編集して活用することが可能だ。

生成塗りつぶしも拡張

 生成塗りつぶしの機能そのものもアップデートされており、Firefly Image 2のアップデートとして3月のAdobe Summitで発表された「参照画像」を利用して、生成してほしいイメージに近い画像を読み込んで生成を指示できる機能、背景をワンクリックで生成できる機能、気に入ったバリエーションから派生バージョンを生成できる機能、さらには画像のシャープネスや鮮明度を上げる機能などが追加されている。

Photoshopの機能も拡張

 なお、生成AIの機能ではないが、Photoshop自体の機能も拡張されており、調整ブラシ(Adjustment Brush)、改良されたフォントブラウザ、調整プリセットなどの機能が追加される。

Creative Cloud Desktopのベータ版アプリからインストール可能

 Firefly Image 3を利用したPhotoshop(ベータ版)は、本日よりCreative Cloudユーザーが「Creative Cloud Desktop」アプリケーションの「ベータ版アプリ」からインストールして導入できる。製品版のPhotoshopとは別にインストールする必要があり、製品版のPhotoshopと併存することも可能だ。

InDesignにもFirefly由来の生成AI機能が実装される、ただし最初は英語版のみ

 また、AdobeはFirefly Image 3をDTPアプリケーションの「InDesign」にも拡大することを明らかにした。InDesignでは、ページデザインのレイアウトなどを生成AIが自動で行なってくれるようになるほか、プロンプトから必要な画像を生成できるようになる。

 これにより、デザイナーがより高品質なDTPを行なうことが可能になり、印刷物の原版作成の生産性が大きく向上することになる。なお、現時点では英語版のみの提供となっており、日本語版での提供時期は未定だ。