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富士通、まもなくLenovoとのPC事業統合で合意か

~コア事業成長と利益率確保のためPC事業分離を急ぐ

富士通 田中達也社長

 富士通の田中達也社長は、2017年6月6日に、報道関係者を対象に行なった同社経営方針の進捗説明において、Lenovoと進めているPC事業の統合について言及し、「両社のシナジーをどう出すかを最終的に詰めている段階であり、話し合いについては、悪い状況にあるわけではない。早晩まとまると考えている。その時期は、そんなに遅い時期ではない」などと語った。

 富士通とLenovoは、2016年10月に、PC事業に関して、研究、開発、設計、製造に関する戦略的提携を検討していることを発表し、事業統合を計画している。

 富士通の田中社長は、2017年3月末までに交渉を完了する考えを示していたが、現時点でも交渉は完了していない。2017年4月28日に行なわれた2016年度通期業績発表の場においては、時期を明言せずに、「できるだけ早い最終合意を目指している」とコメントするに留まった。

 今回の会見でも前回同様に、時期については明言することは避けたものの、記者のたび重なる期限に対する質問に対しては、「早晩まとまると考えている」、「長時間をかけずに合意ができる」などと回答。これまでの発言に比べて、今後、短期間で合意に至る可能性が高いことを示唆した。

 これまでに交渉が長期化している理由については、具体的な回答はしなかったが、「将来に渡って、うまくいくように考えており、最後のシナジーの部分について、意見をぶつけあって、詰めているところである」と発言した。

 また、「事業の統合に関して、おたがいが考えていたことや、方針にずれが発生しているわけではない。大きな問題があるわけではなく、これが破談になることはない」と断言してみせた。

 さらに、2016年度にPC事業が回復基調に転じたことで、事業統合を自ら破棄する可能性についても回答。「この方針には変わりがない」と発言し、PC事業が回復基調に転じたいまでも、事業統合を推進する姿勢を示した。

 富士通は、かつて、東芝、VAIOとPC事業を統合する検討を進めた時期もあったが、結果として、VAIOは独立して事業を展開。東芝は、PC事業が自立再生できるとして、統合を見送った経緯がある。

 だが、富士通は、あくまでもLenovoとのPC事業統合を模索する姿勢は崩さないようだ。

 田中社長は、「PC事業を含むユビキタス事業と、デバイス事業は独立事業体として市場競争力を向上させることを優先し、その上で、富士通のコア事業とのシナジーをさらに追求していくことになる。また、この分野では有力企業との協業も推進していくことになる」とコメント。

 さらに、「今後は、PCがどんな形態になるのかということが重要である。このままの形で続いていくのか、あるいは、なにかに置き換わられるのかはわからないが、これから、どんどん環境が変化していくことは明らかである。そのときに最適な状況はなにかということを考え、その都度検討していくことになる」などと語った。

 なお、富士通では、2016年度実績で2.9%だった営業利益率を、2017年度には4.5%に引き上げる考えを示している。これを「5%ゾーンのミニマムライン」と位置づけ、さらに、2018年度には、営業利益率6%ゾーンを目標に掲げ、将来的には10%以上を目指すことになる。

 2018年度の6%ゾーンは、同社にとって、過去最高の営業利益率となるが、「私は社長就任以来、営業利益率10%を目指すとしており、グローバル企業と互して戦うには、営業利益率10%の水準が必要である。2018年度の数字は通過点に過ぎない」と語った。

 2017年度の営業利益率4.5%は、PC事業の分離は含まれていない目標であり、「ビジネスモデル変革の成果と、ナレッジインテグレーションの専門力を高め、これをグローバルに展開していくことで利益を積み上げていく」としている。だが、利益率が悪いPC事業の分離が進めば、営業利益率4.5%は一気に射程距離に入ることになる。

 また、PC事業の分離によって、売上高4兆円を割り込む可能性も指摘されているが、「企業は成長することが大切だが、コアとなる事業が成長していくことが重要である。売上高は、一時的にはブレる(減少する)が、M&Aなどを含めて、徐々に効果が出てくることになる」とし、まずは、コア事業の成長と、利益率を重視する姿勢を示した。

 だが、「2015年度に発表した経営方針で設定した連結業績目標に変化はない。環境の変化にあわせて、必要な手を打ちながら達成に向けて取り組んでいく」としたものの、「PC事業の独立化が進んでいないこともあり、2015年に掲げた経営方針の進捗は、まだ2合目か、3合目にいるという状況は変わらない。2017年度は成長を実感する1年にし、5合目まで登りたい」と述べ、経営方針の進捗や経営目標の達成に向けて、PC事業の分離が課題になっていることも示した。

 成長を実感する1年を達成する上でも、PC事業の分離は欠かせないというのが富士通の基本姿勢といえそうだ。