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Cerevo、変形ロボットプロジェクタ「Tipron」を予約受付開始

 ハードウェア・スタートアップの株式会社Cerevo(セレボ)は、「CES 2016」で発表したプロジェクタを搭載した変形型ホームロボット「Tipron(ティプロン)」を12月9日から予約受付を開始した。スマートフォンの専用アプリを使って、壁や天井に最大80型のプロジェクションができる。直販サイトでの税別価格は229,800円で、12月中の出荷を予定している。

変形する自律移動ロボットプロジェクタ

 本体サイズは変形前が300×340×420mm(幅×奥行き×高さ)、変形後は300×330×810mm(同)。アームが折りたたまれた状態で充電ステーションで待機し、画面を映し出す時に変形する。重量は約9.5kg。搭載センサーは、IRセンサー、深度センサー、カメラ(5M pixels)、9軸センサー。

 自動給電機能や、時間や曜日指定をしたスケジュール起動によるコンテンツの予約稼動、事前にスマートフォンの専用アプリを使って記憶させたルートを辿る機能などがある。カメラと深度センサーで部屋のレイアウトを覚えて自律移動できる。経路上のどの位置にいるのかをリアルタイムで把握して移動していくことができるという。

充電台に接続した状態
任意の壁に投影できる

 プロジェクタの解像度はHD(1,280×720ドット)で、輝度は最大250ルーメン。台形補正、オートフォーカス機能を備える。本体背面にはHDMIとUSB端子があり、それぞれ対応機器を接続して動画や静止画を再生・投影させることができる。特徴である首振り機能による可動範囲は、上下(Pitch軸)-35度/+90度、左右(Yaw軸)±90度、回転方向(Roll軸)±90度。

プロジェクタ部
上方に見えるのが深度センサー、下にカメラとプロジェクタがある

 内蔵スピーカー(モノラル)の出力は5W。Wi-Fi(IEEE 802.11b/g/n)を搭載している。専用充電ステーション、専用充電池(5,900mAh)は1個まで同梱。最大2個まで内蔵可能で、搭載すると可動時間が倍になる。プロジェクタ輝度によって可動時間は変わるが、通常は4時間以上使えるという。なお最大輝度でWi-Fi通信させつつ可動させると、電池1つで1.5時間程度とのことだ。

公式解説動画

 制御は専用のスマートフォンアプリから行なう。時間・場所・コンテンツを指定する。そうするとロボットが充電台から全自動で移動して、決められたコンテンツを投影する。コンテンツは「チャンネル」、場所は「ポジション」という形で登録・指定する。ポジションは50まで登録できる。登録方法は手動。

操作は専用アプリを使う
首の振り角度なども任意に操作できる

 朝起きると、天井に何かの映像が自動投影されているといった使い方を想定しているという。ロボット掃除機のスケジュール機能のようなイメージだ。そのほか、ニュース映像やYouTube動画などを再生できる。HDMI端子があるので、そこにHDMI端子対応のデバイスを指すことで、任意の画像を再生することも可能だ。

 製造はFoxconn、深度センサーやプロジェクタはTexas Instruments製。API公開は検討中、またチャンネルも今後充実させていくという。屋内での使用を想定している。「人が呼んだら来る」といった特別な機能はないが、今後、スマートホームの連携を想定しつつ、できれば対応していきたいと思っているという。

HDMI端子とUSB端子が背面にある。Chromecastなどを使用可能
キッチンでの使用を想定した例

自律移動するプロジェクタができるまで

株式会社Cerevo代表取締役 岩佐琢磨氏

 9日には発表会も行なわれた。株式会社Cerevo代表取締役の岩佐琢磨氏は「開発メンバーは苦労してくれた。これまでに発表してきたものの中で、もっとも高い金型と人数を投入して開発した。社運をかけて開発した商品がやっと世に出る」とプレゼンを始めた。

 同社ではこれまで9年間の間に20以上のプロダクトを発表して来た。ビデオカメラに繋ぐだけでインターネット配信できる「LiveShell.X」では映像、通信、バッテリ駆動する機器は大変だということを学び、センサーを搭載したスノーボード・ バインディング「XON SNOW-1」の開発では耐久性、耐水防塵、センサー制御などの課題をクリア。「会社として経験値がたまってきた」と振り返った。

LiveShell.X
XON SNOW-1

 さらにアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」に登場する銃を商品化した「ドミネーター」では、複雑な可動機構、多数の異材料パーツの組み合わせを学ぶなど、ハードウェア・スタートアップにとっては「鬼門中の鬼門をクリアしてきた」という。「鬼門中の鬼門」とは、もともと大手がやっても大変なところなので、本来なら避けるべきところという意味だ。

 岩佐氏は、「スタートアップだから作れないという固定概念から入ると良いものは作れない。面白いアウトプットを出せた9年間だった」と語り、開発中のロボット「タチコマ」の内部も示した。「『スタートアップがそんなの作るの』と言われるようなプロダクトを作っていきたい」という。

ドミネーター
開発中の小型のタチコマの内部

 家の壁や天井の全てがディスプレイになっているというのはSF映画でよくあるシチュエーション。それを実際の家庭環境でやる上では、全てに液晶ディスプレイを埋め込むのはコストが見合わない。そのための解決法として思いついたのが自律的に移動するプロジェクタである「ティプロン」だという。

 特徴となる変形については「3割は男の子のロマンだが、7割は実用だ」と述べた。例えば、充電時には高さ40cmくらいにすることができる。プロジェクタ位置を上にする方が台形補正をかける必要が減るので、投影時には高くしたいが、首を伸ばすことで重心位置を低くしたまま、プロジェクタを上に持ってくることができる。低重心で転倒可能性を下げつつ、音も良くすることができたという。

 「変形する前はモノ感を出して、変形が終わると、かわいい存在感を両立させるという機能も実現できた」と語った。

変形前は高さ40cm程度
変形前と変形後

デモンストレーション

 デモンストレーションでは、充電台への自動充電機能や投影などが行なわれた。自動充電では充電台の端子になかなか接続できずにやり直したり、状況によっては投影画像の台形補正が今ひとつだったりと、まだ作り込みが甘い面が見られた。今後、改良していくとのことだ。

充電ステーションから自律移動してプロジェクションする様子
充電ステーションへの移動。実際にはこのあと再び充電ステーションを離れて、再度ドッキングをトライした