Windows 10カウントダウン
Windows 10のアップグレードを予約する
(2015/6/17 06:00)
Windows 10 の公開が7月29日に決定した。この日、史上最大のアップグレードとされるダウンロードにより、Windows 7/8.1 への適用が開始されることになった。OEM各社による搭載PCの発売も同日から順次開始される。果たして本当に間に合うのか。
予約した環境だけがアップグレードされる
Insider Previewは、現時点でBuild 10130。当初、RINGがFastのユーザーだけに適用されていた新ビルドだが、先週末にはSlowのユーザーへの配布も開始されている。最初のビルドは9841だったから289ビルド分進んだことになる。
一方、Windows 7 SP1、Windows 8が稼働している環境では、6月1日頃からタスクバーの通知領域に、Windowsロゴの通知アイコンが表示されるようになった。初日は日本マイクロソフトにも問い合わせが殺到したとのことで、いい意味でも悪い意味でも注目を集めていることが分かる。
このアイコンをダブルクリックして開くと、「Windows 10 を入手する」とタイトルバーにあるウィンドウが開く。そして、そこには無料アップグレードの手順が解説されている。Windows 10は、Windows 7/8/8.1 からの無償アップグレードとなるが、7の場合はSP1適用、8の場合は、8または8 Update相当までアップデートしておかなければならないようだ。
無料アップグレードは、7月29日に利用可能になると、使用中のデバイスにダウンロードされ、インストールの準備が整った時点でお知らせがあり、すぐにインストールすることもできれば、自分の都合のいいときを選択することもできるという。ここでメールアドレスを登録しておくことで、インストールできるようになった時点で、使っているPCやタブレットにその旨の通知が送られてくるという。なお、ダウンロードは約3GBと明記されている。
手元の環境では比較のために3つの環境で予約をしてみたが、予約をしなかったほかの環境を確認してみると、アップグレードを予約したことにはなっていない。同じMicrosoftアカウントで使っていてもデバイスごとに予約が必要になるようだ。また、予約の取り消しもできる。
また、バックグラウンドでは、利用中のデバイス、アプリについて既知の問題がスキャンされているようで、そのレポートを確認することもできる。
Skypeがデスクトップアプリのみになる
Windows 10は、ユニバーサルWindowsアプリのプラットフォームとして機能することが大々的にアピールされている。スマートフォンからノートPC、デスクトップOC、ゲーム機、ハブまで、同じOSが稼働し、あらゆるデバイスで同じアプリが使えるようにすることを目指す。
ところが直近で気になるアナウンスがあった。6月11日付のSkypeブログで、これまでモダンアプリとデスクトップアプリの両方が提供されていたSkypeが、7月7日付でデスクトップアプリに一本化されることがアナウンスされたのだ。
一本化は分かるが、どう考えても残すならモダンアプリだろう。そして、本当ならそのモダンアプリをユニバーサルアプリにアップグレードするべきだ。どのような経緯でこうしたことになったのかは分からないが、この方向性を見る限り、SkypeチームはWindowsのチームを信用していない、あるいは一蓮托生でOne Microsoft的になろうとしていないと思われても仕方がない。
もっとも、Window Phone用には別途、Skypeを用意しなければならないのは当たり前で、今回の公開には間に合わないWindows 10 Mobileなどに合わせてユニバーサルアプリをデビューさせるという方針なのかもしれない(編集部注:6月16日付けでブラウザ用Skype for Webベータ版が発表された)。
トラブルは起こらないのか
いずれにしてもWindows 10 build 10130は、まだ、決して常用する気になれるステータスではない。新ブラウザであるMicrosoft Edgeも、ようやくまともに動き出したレベルだ。本社はもちろん、日本マイクロソフトにおいても、各現場では、既にWindows 10および、Office 2016を常用しているそうだが、日常業務の中で相当な苦労をしているのではないかと思う。
一般公開の2カ月前というと、以前であればRTM、あるいはRCのステータスで、もうこれ以上は機能の追加をせずにルック&フィールもフィックスし、あとは細かいバグの修正とカリカリのチューニングのみという状態だった。だが、今の状態のビルドはとてもそのような状態にはない。
まだ2カ月あるのだから、それまでにはなんとかなるのだろうけれど、気が気ではないのはOEM各社ではないだろうか。特に、7月29日のタイミングでWindows 10搭載PCを用意しようとしているベンダーは大変だ。いったいどんな魔法を使うのだろうか。
さらに、今回のアップグレードは、Windows 7/8/8.1を搭載して出荷した過去の製品に対しても適用されるので、エンドユーザーがカジュアルな気持ちでアップデートをして、トラブルに見舞われないようにすることも考慮しなければならない。そのためには、少しでも早く製品版相当のバイナリを入手して、バリデーションなどのテストを開始したいはずだ。
想像するに、早期に搭載PCを発売する特別なベンダー、また、これまでパートナーとしてWindows 搭載PCをラインアップしてきたベンダーのために、本当は、既にWindows 10はRTM相当のものが完成して彼らの手に渡っているという憶測もできる。
あるいは、これまであくまでもOEMとしてWindowsの全てに責任を負ってきたベンダーの立ち位置に、ちょっとしたメスが入り、Windowsそのものについては、Microsoftが全てを引き受けるようなスタイルへの移行も考えられる。
Microsoftは勝手にどんどんWindowsを変えていき、それによって不具合が発生する場合は、稼働するハードウェアがWindows互換ではないという判断がされる可能性だ。これによって、ハードウェア的に特殊な面を持つ製品はどんどん淘汰されていき、リファレンスデザインに近いものだけになっていく。各社が工夫を凝らして製品の魅力を作れるのは、外観やオーディオなどのアナログ的な部分のみとなる可能性だってある。
どちらがいいのかは賛否両論だとは思うが、エンドユーザーとしては、既にWindowsはMicrosoftの製品であるという認識が高くなっている。PCを買ったらMicrosoftのWindowsが入っていたというのが自然な受け取り方だ。そのあたりは数十年前と認識が変わっているようにも思う。だから、WindowsはMicrosoftが責任を持つというようになっても不思議はないわけだ。
変わるWindows
Microsoftは今年(2015年)の後半にはOffice 2016をリリースする予定で作業を進めている。こちらはこちらで企業においてはもはや欠かすことができないコモディティだ。おいそれとかつてのリボンによるGUIの大幅変更のようなことはできない。変わりたくても変われないようなステータスにある。タッチ全盛の時代なのに、タッチに最適化しようとしてもそれは難しいから、ユニバーサルアプリとしてのOfficeは別に用意するということになったのだろう。
過去のしがらみと戦いつつ、そして、明日への希望を胸にこれからもビルドは進む。Windows 10が完成するまでのプロセスは、Microsoftがパートナーを巻き込み、あえて選んだ苦悩の道でもある。いい意味でも悪い意味でも変わることを怖れない今のMicrosoftとWindows。「伝統などどうでもいい。大事なのはイノベーション」という新CEOのSatya Nadellaの方針がそこにある。