多和田新也のニューアイテム診断室

Northern Islandsシリーズ第1弾「AMD Radeon HD 6870/6850」
~アーキテクチャを据え置き、価格性能比を向上



 AMDは10月21日(米国時間)、次世代Radeonファミリー「Norhtern Islands」(開発コード名)の第1弾製品となる「Radeon HD 6800シリーズ」(開発コード名:Barts)を発表した。Radeon HD 5000シリーズの登場から約1年。早速世代交代を告げる本製品のパフォーマンスをチェックしてみたい。

●Radeon HD 5800より下位のセグメント

 今回発表されたRadeon HD 6800シリーズについて、まずは製品の位置付けを確認しておきたい。Northern Islandsファミリー第1弾となる「Barts」コアを用いた製品がRadeon HD 6800シリーズとして投入される。Radeon HD 5800シリーズの後継製品と思われそうなモデル名になっているが、価格帯はやや下位となる。

 具体的にはRadeon HD 6800シリーズは150~250ドルのセグメントになる(図1、図2)。Radeon HD 5850が299ドル以下、Radeon HD 5870が399ドル以下、Radeon HD 5770は159ドル以下のセグメントであったので、ちょうど、その間を埋める製品ということになるだろう。なお、Radeon HD 5700シリーズの販売は継続される。

【図1】Radeon HD 5800の後継は上位の「Cayman」、下位の「Barts」の2つの価格帯に分けられる。さらにCaymanを利用したデュアルGPU製品も予定される【図2】具体的な製品名。今回発表されたのはBartsコアを採用したRadeon HD 6870/6850。Cayman採用のRadeon HD 6970/6950は11月、Caymanのデュアル製品となるRadeon HD 6990は第4四半期中に登場する見込みだ

 モデル名が“x800番台”であるのにも関わらず下位のセグメントに位置付けたことについて、AMD General Manager Computing Solutions Group, Client GroupのChris Coloran氏は「むしろRadeon HD 4800のセグメントに戻ったと考えて欲しい。Radeon HD 5800が従来より上位になっていた」と説明している。

 一方、ハイエンドGPUとしてのRadeon HD 5800シリーズの後継といえるようなNorthern Islandsファミリーの製品は、「Cayman」(開発コード名)が予定されている。製品名「Radeon HD 6970」および「Radeon HD 6950」として、11月にも登場する予定になっている。さらに、このCaymanを用いたデュアルGPUビデオカードとして「Antilles」(開発コード名)が予定されており、こちらは第4四半期中の投入が予定されている。

●テッセレータバッファの増強とUVD3

 それでは本製品の仕様や特徴について紹介していきたい。Radeon HD 6870およびRadeon HD 6850の主な仕様は表1にまとめたとおりだ。Radeon HD 5800/5700シリーズの主な特徴も併記している。新製品のSP数は1,120/960基となり、Radeon HD 5800シリーズからは削減されている。代わりに動作クロックが若干引き上げられる格好となっている。ROPやメモリインターフェイスの仕様については変わりないが、メモリクロックは下げられている。

【表1】Radeon HD 6870/6850の主な仕様
 Radeon HD 6870Radeon HD 6850
コアクロック900MHz775MHz
SP1,120基960基
テクスチャユニット56基48基
メモリ容量1GB GDDR5
メモリクロック(データレート)4.2GHz4.0GHz
メモリインタフェース256bit
ROPユニット32基
ボード消費電力(アイドル)19W19W
ボード消費電力(ロード)151W127W
 Radeon HD 5870Radeon HD 5850
コアクロック850MHz725MHz
SP1,600基1,440基
テクスチャユニット80基72基
メモリ容量1GB GDDR5
メモリクロック4.8GHz4.0GHz
メモリインタフェース256bit
ROPユニット32基
ボード消費電力(アイドル)27W
ボード消費電力(ロード)188W151W
 Radeon HD 5770Radeon HD 5750
コアクロック850MHz700MHz
SP800基720基
テクスチャユニット40基36基
メモリ容量1GB GDDR51GB/512MB GDDR5
メモリクロック(データレート)1,200MHz1,150MHz
メモリインタフェース128bit
ROPユニット16基
ボード消費電力(アイドル)18W16W
ボード消費電力(ロード)108W86W

 ブロックダイヤグラムは図3のとおり。構造は基本的に大きく変わっておらず、5SP単位で1SIMDユニットを形成し、16SIMDユニット単位で1SIMDエンジンを形成。これを14基持つのがBartsコアということになる。Radeon HD 5800シリーズに採用された「Cypress」コアは、5SP×16SIMDユニット×20SIMDエンジンで1,600基となっていた。

【図3】Radeon HD 6800シリーズ(Bartsコア)のブロックダイヤグラム。SIMDエンジンは減ったが、デュアルラスタライザ、32ROP、256bitインターフェイスはCypressを引き継ぐ

 このSIMDエンジンの縮小が本製品の特性につながる。図4はRadeon HD 6870とRadeon HD 5850を比較したプレゼン資料だが、ダイサイズ、トランジスタ数が大きく削減されていることが分かる。そして、動作クロックが引き上げられているぶんピーク電力は増しているが、アイドル時の電力は下がっている。

 ラスタライザやテッセレータなどを持つGraphics Engineの構造も変化はない。ラスタライザを2基備える点は、Radeon HD 5800シリーズと同じだ。SPは減らされたが、この点では下位のRadeon HD 5700シリーズとはっきり差別化されている。

【図4】Radeon HD 6870とRadeon HD 5850の比較。プロセスルールは40nmのままだが、SIMDエンジンの削減によってダイサイズが小さくなる

 ちなみに、Graphics Engineの構造は変わっていないものの、AMD CTO, GPU DivisionのEric Demers氏はテッセレータが第7世代であると説明している(図5)。これは、テッセレータやラスタライズに用意されたオンチップバッファ(キャッシュ)が増量されているのが大きな違いとなる。

【図5】Radeon 8500時代から数えてテッセレータは第7世代となる。オンチップバッファを増量し、ハルシェーダ→ドメインシェーダのデータ転送を高速化している

 具体的にRadeon HD 6870とRadeon HD 5870のテッセレーション性能を比較したグラフも紹介された(図6)。これによると、テッセレーションファクター(処理する頂点の分割数の意という)が5~10程度の際に、Radeon HD 5870に対するアドバンテージが大きくなっている。テッセレーションファクターが少なすぎる場合はRadeon HD 5870が持つオンチップバッファで足り、多くなるとオフチップバッファ(つまりビデオメモリ)へのアクセスが発生するために差が小さくなることを示している。なお、具体的な容量については言及を得られなかった。

【図6】Radeon HD 6870とRadeon HD 5870のテッセレーション性能の比較。最大で2倍のパフォーマンス向上が得られるとする。ただしテッセレーションファクターが増えるほど、Radeon HD 5870との差が小さくなる

 もう1つ、Radeon HD 5800シリーズからの大きな変更点が、動画再生支援機能のUniversal Video Decoder(UVD)2が、UVD3へと変更されたことだ。UVD3では再生支援を行なえるコーデックの拡充が行なわれている(図7)。

【図7】動画再生支援はUVD3を採用。MPEG-2、Blu-ray 3D、MPEG-4 part 2の再生支援に対応する

 続いては、実際のボードを見ていきたい。今回はXFXからRadeon HD 6870を搭載する「HD-687A-ZNFC」、Radeon HD 6850を搭載する「HD-685X-ZNFC」を借用した(写真1、2)。Radeon HD 5800シリーズに比べるとボードサイズが短くなっており、Radeon HD 6870がRadeon HD 5850と同程度、Radeon HD 6850がRadeon HD 5770と同程度になっている。

 裏面にはメモリチップの実装がない(写真3)。256bitのメモリインターフェイスなので、表面のみにメモリチップを搭載している。1Gbit×8枚で1GBのメモリ容量になる計算だ。

 CrossFire端子はRadeon HD 6870/6850ともに1基のみ(写真4、5)。つまり、Quad CrossFireには対応していないことになる。

 電源端子はRadeon HD 6870が6ピン×2基、Radeon HD 6850が6ピン×1基(写真6、7)。Radeon HD 6870のピーク消費電力が151W、Radeon HD 6850が127Wなので妥当な端子数といえるだろう。

 ディスプレイ出力周りは、Radeon HD 6800シリーズの特徴的な面だ。HD-687A-ZNFCはDVI×2、HDMI、Mini-DisplayPort×2の5端子、HD-685X-ZNFCはDVI×2、HDMI、DisplayPortの4端子を備える(写真8、9)。ただし、HD-685X-ZNFCについてはXFXのオリジナルレイアウトとなっており、Radeon HD 6850のリファレンスボードはHD-687A-ZNFCと同じくDVI×2、HDMI、Mini-DisplayPort×2の構成になる。

【写真1】Radeon HD 6870を搭載する、XFXの「HD-687A-ZNFC」。リファレンスデザインに準拠する製品【写真2】Radeon HD 6850を搭載する、XFXの「HD-685X-ZNFC」。オリジナル基板とオリジナルクーラーを採用している【写真3】HD-687A-ZNFC(左)とHD-685X-ZNFC(右)の裏面。メモリチップの実装はない
【写真4】Radeon HD 6870のCrossFire端子は1系統となっている【写真5】同じくRadeon HD 6850もCrossFire端子は1系統【写真6】Radeon HD 6870の電源端子は6ピン×2。ピーク消費電力はRadeon HD 5850と同じ151Wとなる
【写真7】Radeon HD 6850の電源端子は6ピン×1。ピーク消費電力は127W【写真8】Radeon HD 6870のブラケット部。Dual Link DVI、Single Link DVI、HDMI、Mini-DP×2の構成【写真9】HD-685X-ZNFCのブラケット部はDual Link DVI、Single Link DVI、HDMI、DisplayPortの構成。リファレンスのRadeon HD 6850とは異なる

【図8】Radeon HD 6870/6850のディスプレイ出力端子。DVIは1系統がSingle Link、HDMIは1.4a準拠、DisplayPortは1.2準拠を特徴とする

 その出力端子の詳細を示したスライドが図8である。ここから分かるとおり、2系統のDVIの内1系統はSingle Linkとなる。Radeon HD 5000シリーズは2系統のDual Link DVIを備えていたので、この点は機能性が低下したといえる。

 ただし、HDMI端子はHDMI 1.4a、DisplayPortはDisplayPort 1.2に準拠したものとなった。Eric Demers氏は、DVIの1系統をSingle Linkにしたのは、DisplayPortで代替可能であることを理由に挙げた。Single LinkでもWUXGAまでの表示は可能で、それを超える解像度、例えば2,560×1,600ドットのなどのディスプレイを接続する際にDual Linkが必要になる。こうしたディスプレイの多くがDisplayPortを装備しており、今後はさらに当たり前の存在になることから、Dual Linkを1系統にしても良いという判断だ。ただ、ナナオのSX3031W-HのようにDisplayPortを備えないWUXGA超の液晶ディスプレイを複数枚所有している場合、Radeon HD 6800シリーズでは対応できないことになる。

 逆にDisplayPortは1.2に準拠したことで、リファレンスボードで最大6ディスプレイ出力も可能になった。2009年のInternational CESで行なわれたVESAのプレスカンファレンスでも紹介されたが、DisplayPort 1.2ではマルチストリームをサポートすることで、デイジーチェーンやHubを用いて、1系統の出力端子から複数のディスプレイへ出力できる(図9)。前世代の「Radeon HD 5870 Eyefinity 6 Edition」(図10)のような専用ボードでなくとも、図11や図12に示されたハブを介することで、最大6枚のディスプレイへ出力できるのだ。

【図9】DisplayPort 1.2はマルチストリーム出力に対応するので、Hubやデイジーチェーンによるマルチディスプレイ出力が可能【図10】従来のRadeon HD 5000シリーズでは、Eyefinity 6 Editionのように1ポートごとに1ディスプレイでの6画面出力となっていた
【図11】2系統のDVIと1つのMini-DPからHubを介して4画面を出力した例【図12】こちらは2つのMini-DPからそれぞれにHubを介して6画面出力した例

 もっとも、現時点では、このDisplayPort 1.2のマルチストリーム用ハブは販売されていない。AMDでは、2011年には発売されるだろうとしているが、それまでは通常のDisplayPortとして利用する格好になる。とはいえ、それを差し引いて考えてもリファレンスボードにDisplayPortを2系統備えることは大きなメリットといえる。

 ちなみに、Eric Demers氏によれば、Radeon HD 6800シリーズはDVI/HDMI用のタイミングソースを3系統備えており、DVI×2+HDMIの3系統出力も可能であるという。これを受けて、WUXGAのディスプレイでDVIとHDMIを接続して3系統接続を試したのだが、従来どおり同時出力は2画面までだった。Demers氏のコメントは気になるところだが、この点については従来からの仕様変更はないと筆者は判断している。

 なお、動作クロックについてもRadeon HD 5800シリーズとは相違点がある。定格クロックの違いは表1で示したとおりだが、アイドル時のクロックダウンがより低いクロックとなる。具体的には、Radeon HD 5800シリーズのコアクロックが157MHzまで引き下げられたのに対し、Radeon HD 6800シリーズは100MHzまで引き下げられている(画面1、2)。メモリクロックは同じく300MHzまで引き下げられる。

【画面1】Radeon HD 6870使用時の動作クロック【画面2】Radeon HD 6850使用時の動作クロック

●ハイエンド製品を中心にベンチマーク検証

 それでは、ベンチマーク結果の紹介に移りたい。テスト環境は表2に示したとおりで、比較対象には前世代のRadeon HD x800番台の2製品と、NVIDIAのセミハイエンド2製品を用意した(写真10~13)。

 Radeon HDシリーズのドライバは、AMDがレビュワー用に配布したCatalyst 10.10(8.782-100930m-106214E)を使用。GeForceシリーズについては、テスト時点で最新だった258.96を用いた。

【表2】テスト環境
ビデオカードRadeon HD 6870(1GB)
Radeon HD 6850(1GB)
Radeon HD 5870(1GB)
Radeon HD 5850(1GB)
GeForce GTX 470(1.28GB)
GeForce GTX 460(768MB)
グラフィックドライバCatalyst 10.10GeForce Driver 258.96
CPUCore i7-860(TurboBoost無効)
マザーボードASUSTeK P7P55D-E EVO(Intel P55 Express)
メモリDDR3-1333 2GB×2(9-9-9-24)
ストレージSeagete Barracuda 7200.12 (ST3500418AS)
電源KEIAN KT-1200GTS
OSWindows 7 Ultimate x64

【写真10】Radeon HD 5870を搭載する、XFXの「HD-587A-ZNF9」【写真11】Radeon HD 5850のリファレンスボード
【写真12】GeForce GTX 470を搭載する、玄人志向の「GF-GTX470-E1280HD」【写真13】GeForce GTX 460(768MB版)のリファレンスボード

 まずはDirectX 11対応タイトルのベンチマーク結果から見ていきたい。「Alien vs. Predator DirectX 11 Benchmark」(グラフ1)と「BattleForge」(グラフ2)は、大局的に似たような結果を示した。

 Radeon HD 6870がGeForce GTX 470と同等程度、Radeon HD 6850がGeForce GTX 470/460の間くらいの結果に収まった。Radeon HD 5800シリーズに比べると、やはり性能は低い。Radeon HD 6870とHD 5870、Radeon HD 6850とHD 5850は、およそ1.5~2割程度の差になっている。アンチエイリアスや異方性フィルタリングを適用した際の性能の落ち込みは大きめだ。このあたりはRadeon HD 5800シリーズと似た傾向を示す。

【グラフ1】Alien vs. Predator DX11 Benchmark
【グラフ2】BattleForge

 「Colin McRae: DiRT 2」(グラフ3)、「Lost Planet 2 Benchmark」(グラフ4)、「Stone Giant DirectX 11 Benchmark」(グラフ5)の結果は、前2つに比べると、Radeon HD 6870とHD 5870、Radeon HD 6850とHD 5850の差が小さめだ。特にStone Giantはほぼ差がないといってもよいレベルにある。

 一方で、GeForce GTX 470とRadeon HD 6870、GeForce GTX 460とRadeon HD 6850の比較で、やや不利な面が出ている。これらのタイトルは負荷の大小はあるがテッセレーションが使われていることから、Radeon HD 6870/6850が健闘を見せる一方で、テッセレーション性能に優れる傾向があるGeForce GTX 400シリーズのアドバンテージも出たのだろう。

【グラフ3】Colin McRae: DiRT 2
【グラフ4】Lost Planet 2 Benchmark
【グラフ5】Stone Giant DX11 Benchmark

 その傾向をさらに顕著にしたのが「Unigine Heaven Benchmark」(グラフ6)だ。ここではテッセレーションクオリティをExtremeに設定してテストを行なっているが、見事にRadeon HD 6870/6850が、Radeon HD 5870/5850を上回る。解像度が低ければ、Radeon HD 6850とRadeon HD 5870が同等のフレームレートになる。一方でGeForce GTX 400シリーズも良さを見せる。

 確かに、テッセレーションに負荷がかかった場合にRadeon HD 6000シリーズは、Radeon HD 5000シリーズに対するSPの少なさを埋めることができることが分かるが、一方でテッセレータを並列化したアーキテクチャを持つライバル製品には、まだ及ばないということが分かる。

【グラフ6】Unigine Heaven Benchmark 2.1

 さて、ここからはDirectX 9/10世代のベンチマークである。「3DMark Vantage」(グラフ7、8)の結果を見ると、Radeon HD 6870はGeForce GTX 470に対して、フィルタ類適用の有無で性能が逆転する傾向となった。Radeon HD 6850はフィルタ非適用ならGeForce GTX 470とGeForce GTX 460の間ぐらいに位置付けられているが、フィルタを適用するとGeForce GTX 460と同程度になる。

 Feature Testの結果は、ピクセルシェーダ性能やSPの演算能力が問われるテストでは、SP数に勝るRadeon HD 5870/5850が良好だが、メモリ転送やジオメトリ性能が物を言うStream OutやGPU Perticlesでは健闘を見せる。Graphics Engine用のオンチップバッファが増強された結果とみていい。

【グラフ7】3DMark Vantage Build 1.0.2 (Graphics Score)
【グラフ8】3DMark Vantage Build 1.0.2 (Feature Test)

 このほか、「Crysis Warhead」(グラフ9)、「Far Cry 2」(グラフ10)、「Left 4 Dead 2」(グラフ11)、「Tom Clancy's H.A.W.X 」(グラフ12)、「Unreal Tournament 3」(グラフ13)、「World in Conflict」(グラフ14)を実施している。Radeon HD 6870/5870、Radeon HD 6850/5850の各製品間の差は、いずれもRadeon HD 6800シリーズが低い結果に留まっている。もっとも、その差はAlien vs. PredatorやBattleForgeといったDirectX 11対応タイトルほどではなく、大きいところでも1割程度だ。

 対GeForceシリーズの結果は、タイトルによって得手不得手が見られる結果となっている。Crysis Warhead、Left 4 Dead 2といったタイトルでRadeon勢が良好な結果を見せており、特にLeft 4 Dead 2は、Radeon HD 6870がGeForce GTX 470を上回る結果を見せた。もっとも、Radeon HD 6870とGeForce GTX 470、Radeon HD 6850とGeForce GTX 460が、近い性能にあるというのが大局的な傾向といえるだろう。

【グラフ9】Crysis Warhead (Patch v1.1)
【グラフ10】Far Cry 2 (Patch v1.03)
【グラフ11】Left 4 Dead 2
【グラフ12】Tom Clancy's H.A.W.X
【グラフ13】Unreal Tournament 3 (Patch v2.1)
【グラフ14】World in Conflict (Patch v1.011)

 最後に消費電力の測定結果(グラフ15)である。まずアイドル時の結果であるが、Radeon HD 5800シリーズに比べると、やや高い電力を消費している。前半で紹介したとおり、アイドル時のコアクロックはより低く収まっているだけに、少々意外な結果になった。

 ピーク時の性能は、タイトルによっても異なるが、Stone Giantはあまり差がなく、3DMark Vantageの方がより明確に差が出ている。全般には、Radeon HD 6870/6850の方が低消費電力にある。

 Radeon HD 6870とRadeon HD 5850の公称ピーク消費電力は同じ151Wだが、Radeon HD 6870の方が、より電力を消費していることが分かる。テッセレーションを用いたStone GiantにいたってはRadeon HD 6850とHD 5850が同じ消費電力となっており、このあたりは、公称値との乖離を感じさせる結果だ。

【グラフ15】各ビデオカード使用時のシステム消費電力

●価格性能比の向上とセグメントの隙間を埋める

 大きくまとめると、Radeon HD 6870はRadeon HD 5870ほどの性能はないものの、Radeon HD 5850を上回り、GeForce GTX 470と好勝負をする製品。Radeon HD 6850は、Radeon HD 5850ほどの性能は持たないが、GeForce GTX 460と好勝負の製品、といったところになるだろう。消費電力については、公称値ほど低消費電力化されたイメージは持てない結果となった。

 気になる価格であるが、今回テストに用いたXFX製品は、HD-687A-ZNFCが26,800~29,800円程度、HD-685X-ZNFCは22,800~24,800円程度とのこと。現行製品は、Radeon HD 5870が3万円台前半、Radeon HD 5850が2万台中盤~後半、Radeon HD 5830が1万台後半、Radeon HD 5770が1万台中盤~後半といった価格帯で販売されている。新製品の予想実売価格と現状を照らし合わせると、Radeon HD 6870はRadeon HD 5850を置き換え、Radeon HD 6850はAMD製品の隙間となっていた2万円台前半を埋める製品といえる。

 GeForce勢との価格比較では、Radeon HD 6870とGeForce GTX 470が近い価格帯になると見られる。テスト結果ではテッセレーションを用いたタイトルではGeForce GTX 470が強さを見せるものの、そうでないタイトルなら得手不得手で立場が変わる性能差であり、よい比較対象となりそうだ。

 Radeon HD 6850については、2万円前後で販売されているGeForce GTX 460が近い価格帯となる。性能差については一長一短だが、Radeon HD 6850には電源端子が6ピン×1で済むというメリットはある。

 正直なところ、アーキテクチャの面ではRadeon HD 5000シリーズからのマイナーチェンジ、しかもRadeon HD 5800シリーズより下位の製品ということで、テストを行なう前筆者は若干インパクトの弱さを感じていた。しかし、テスト結果や市場価格を総合的に考えると、スイートスポットを見事についた製品、という印象を今は受けている。