2009 International CESレポート【VESAプレスカンファレンス編】Display Port 1.2の概要を説明
1月9日(現地時間)開催 会場:Las Vegas Convention Center CES2日目となる1月9日。PCにおけるディスプレイの標準化団体であるVESAがプレスカンファレンスを開催。DisplayPortの拡張規格や、次期規格であるDisplayPort v1.2の機能概要を説明した。 ●DisplayPort v1.1aの拡張規格を近日中に策定 2008年はDisplayPort立ち上がりの年ともなった。ハードウェア的にはDisplayPortは飛躍的に普及し、「すべての」チップセット、GPUにDisplayPortを内蔵。ディスプレイやプロジェクタに埋め込まれるコントローラシリコンの側もメジャーなメーカーが提供。ディスプレイ、プロジェクタ、デスクトップPC、ノートブックPCでDisplayPortをサポートするものも増えている。 このDisplayPortの最新規格は2008年にリリースされた「DisplayPort v1.1a」となる。1レーン当たり2.7Gbps、1MbpsのAUXチャネルを備える規格となる。今回のVESAのカンファレンスの目玉は後述するv1.2の機能概要紹介であるが、こうした規格のアップデートが行なわれることもDisplayPortの魅力の1つであるとしている。これはDVIに対するもので、DVI 1.0規格は事実上凍結されており、標準規格の更新が期待できない状態にある。VESAにおいて現在進行中の規格である点で、互換性を踏まえた将来的な拡張が行なわれることがメリットの1つというわけだ。 そうしたメリットをアピールしたうえで、公開が迫っている3つの拡張規格を紹介する。1つは「Embedded DisplayPort(eDP)」で、これはLCDパネルの内部接続に関する規格である。現在の液晶パネルでは、LVDS信号が広く使われているわけだが、必要となる線数が多く、スイートスポットであるとした。具体的にはLVDSでは19線で最大WXGA(1,280×768ドット)、29線でWUXGA(1,920×1,200ドット)まで対応できるようになるが、eDPでは13線でWSXGA+(1,680×1,050ドット)が可能で、WUXGAの表示も15線で実現できる。
もう1つは「Direct Drive Monitor(DDM)」で、以前からDisplayPortの特徴として掲げられていた液晶パネルの直接駆動に関する規格である。現在多くのパネルで使われている液晶パネルはLVDSで駆動するため、DVIならTMDS信号を受け取ったうえで信号を変換する必要がある。アナログディスプレイならAD変換も必要だ。 DDMはこうした部分を排除して、タイミングコントローラがダイレクトにDisplayPortのデジタル信号を受信し、ディスプレイに映し出す規格だ。これを採用した製品は、まさしく“DisplayPortネイティブ”といったディスプレイとなる。液晶の駆動回路がシンプルになり、ディスプレイの軽量・小型化が可能になるほか、電力消費も抑えることができるとしている。 3つめはDisplayPortの認定プログラムで、こちらはすでに開始されているもの。ただし、現在のTest Specificationはv1.0であるが、近々にもv1.1が公開されることになっている。この認定はVESAが指定したテストラボで実施されることになっており、台湾のAllionが最初のテストセンターとして稼働している。テストプロセスなどはUSBやWi-Fiなどと似たようなものであるとしている。 認定をパスした製品には、DisplayPortロゴの脇に“Certified”と書かれたロゴを使用することができる。
●DisplayPort v1.2の機能概要 続いて、DisplayPortの次期規格となるDisplayPort v1.2の紹介が行なわれた。このDisplayPort v1.2は、パフォーマンス向上といくつかの機能追加が行なわれるもので、従来の規格に対しても後方互換性を持つ。要点として示された機能は4つ。 1つはパフォーマンスの向上である。現在のDisplayPort v1.1aでは、1レーン当たり2.7Gbps、最大4レーンで10.8Gbpsの転送速度を持つ。DisplayPort v1.2はこれを倍速化。1レーン当たり5.4Gbps、4レーンは21.6Gbpsへ引き上げられる。 これにより、利用可能な解像度、リフレッシュレート、色深度を高めることができるようになる。プレゼンでは、フルHDの120Hz表示に対応することで、ゲームなどでニーズが高まっている3Dステレオ表示をフルHDで利用できる点や、QuadフルHD(3,840×2,160ドット)を30bppで利用できるなどを例として挙げられた。 2つめのポイントはマルチストリームをサポートした点である。DisplayPortは映像と音声の信号をマイクロパケットにして転送するのが大きな特徴となるが、ディスプレイごとに異なるアドレスを割り振ったパケットを生成。ディスプレイ側は自身のためのパケットを復号して制御することで、PC側の1つのコネクタから複数のディスプレイへ出力が可能となる。もちろん独立して制御が可能なので、プレゼンで示したようにWQXGA(2,560×1,600ドット)×2台やWUXGA×4台といった構成以外も自由に行なえる。 この1コネクタからのマルチディスプレイは、DisplayPortアナウンス当初からメリットとしてアピールされてきたものだ。だが、現在までは1コネクタに1機器を接続することができるのみで、DisplayPort端子を複数持つことでマルチディスプレイに対応するビデオカードなどが存在している。こうした状況はv1.2規格登場後、GPUやチップセット側の対応を待って徐々に打開されていくだろう。 1.2でマルチストリームが本格化することで、ディスプレイ機器側のサポートも本格化するだろう。現在はディスプレイ機器側もDisplayPort入力端子を1基しか備えないものばかりだが、v1.2対応機器ではデイジーチェーン用に1出力系統を備えることになるはずだ。また、v1.1a以前に対応したDisplayPortを1系統しか持たない機器の場合はデイジーチェーンが使えないことになるが、こうしたユーザーに対応できる“ハブ”が登場する見込みだ。DisplayPort v1.2に対応したPCやビデオカードが持つ出力端子からハブを使って分岐し、DisplayPort v1.1aまでに対応したディスプレイを複数接続して利用できることになる。 3つめのポイントは、AUXチャネルの高速化である。DisplayPortではマイクロパケットの送信に使う最大4レーンのメインチャネルに加えて、双方向通信が可能なAUXチャネルを持つのも特徴の1つだ。このAUXチャネルはv1.1aでは1Mbpsとなっており、主に機器制御に使うものとされてきた。 v1.2ではこれを高速化し、データ転送にも利用できるようになるのが大きな変化となる。具体的な転送レートは言及されなかったが、USB機器やWebカメラのデータ転送に利用可能としていることから、相当な高速化が図られていると思われる。
最後のポイントはMiniコネクタの標準化である。AppleのMacBookやCinema Displayで採用されているこのコネクタは、AppleからVESAへの標準化の打診があり、このv1.2で標準規格として組み込まれることになったという。 DVIやD-Subのようなコネクタは、大きなIOスペースが必要となるため、このMini DisplayPortはスモールフォームファクターのPCやノートブックPC、ネットブックにおいて有用だとしている。 だが、むしろ、こうしたメーカー提案の形状が標準規格に組み込まれた事実のほうが大きなポイントではないだろうか。Appleは過去にMini DVIというコネクタをMacBookに搭載していたことがあったが、上述のとおりDVI 1.0規格が凍結された状態にあるため標準化されることもなく、事実上Apple独自規格の立場に留まってしまったことがある。DisplayPortも小型PCにとっては便利なものであるのに、標準化されなければ採用するメーカーも少ないだろう。しかし、v1.2では標準規格として組み込まれる。このコネクタを採用するメーカーも登場する可能性は大いに考えられる。 最後に今後のスケジュールである。機能定義は完了しており、今後は技術面に詰めていく段階になる。規格化の完了と公開は、今年中盤が予定されている。
□2009 International CESのホームページ(英文) (2009年1月13日) [Reported by 多和田新也]
【PC Watchホームページ】
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