■西川和久の不定期コラム■
FMV LIFEBOOK NH90/DN |
富士通は5月13日に2011年夏モデルを一斉発表した。今回はその中から、17.3型の液晶パネル、そしてグラフィックスにNVIDIA Quadro 3000Mを搭載したハイエンドモデル「FMV LIFEBOOK NH90/DN」が編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けする。
●17.3型で大迫力のノートPC
「LIFEBOOK NH」シリーズは、大きく分けて2モデル用意されている。1つは「NH77/DD」。基本的に春モデルの強化版で、従来モデルからボディカラーをビターブラック、キーボードをアイソレーションタイプに変更。メモリを標準で8GBに増やし、そしてBlu-ray DiscドライブをBDXL対応した。
もう1つは直販モデルの「NH90/DN」。特徴としてはGPUにディスクリートの「NVIDIA Quadro 3000M」を搭載し、同じ17.3型でもノングレア(非光沢)パネルを採用。さらにNH77にあったTVチューナは無し……と、モバイルワークステーション向け仕様のノートとなる。今回届いたのは後者だ。主な仕様は以下の通り。
【表】FMV「LIFEBOOK NH90/DN」の仕様CPU | Intel Core i7-2620M(2コア/4スレッド、 2.7GHz/Turbo Boost時3.4GHz、キャッシュ4MB) |
チップセット | Intel QM67 Express |
メモリ | 8GB(4GB×2) PC3-10600 DDR3-SDRAM (最大8GB)/2スロット空0 |
HDD | 500GB(7,200rpm) |
OS | Windows 7 Professional(64bit)SP1 |
ディスプレイ | 17.3型液晶ディスプレイ(非光沢)、1,920×1,080ドット |
グラフィックス | NVIDIA Quadro 3000M/2GB、DisplayPort、ミニD-Sub15ピン |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0 |
光学ドライブ | Blu-ray Discドライブ |
その他 | USB 3.0×1、USB 2.0×3(内1つはPowered USB)、eSATA×1、 2in1メディアスロット、マイク/ラインイン兼用入力、 ヘッドフォン・ラインアウト兼用出力、Webカメラ、指紋センサー、 ExpressCardスロット |
サイズ/重量 | 418×288×35.2~41.9mm/約3.9kg |
バッテリ駆動時間 | 約2.8時間 |
WEB MART価格 | 234,800円から |
CPUはIntel Core i7-2620M。2コア/4スレッド、クロック2.7GHzでTurbo Boost時には3.4GHzまで上昇する。キャッシュは4MB。BTOでは、Core i5-2520M(2.5/3.2GHz)へも変更が可能だ。チップセットはIntel QM67 Express。ノート向けとしては最上位で、vProやIntel AMT 7.0に対応。メモリは最大8GB。スロットは2つあり、4GB×2の計8GB実装済み。
OSは64bit版のWindows 7 Professional SP1が搭載されていた。ただしBTOではOSが64bit版Windows 7 Home Premium固定なので、今回の試用機限定の仕様だ。この点は注意して欲しい。HDDは7,200rpmの500GB。BTOで250GBと750GBも選択できる(どちらも5,400rpm)。光学ドライブはBlu-ray Discドライブとなっている。
ネットワークは有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 3.0。その他のインターフェイスは、USB 3.0×1、USB 2.0×3(内1つはPowered USB)、eSATA×1、2in1メディアスロット、マイク・ラインイン兼用入力、ヘッドフォン/ラインアウト兼用出力、Webカメラ、指紋センサー、ExpressCardスロットを搭載している。1ポートであるが、USB 3.0にも対応。eSATAとともに高速な外付けHDDを取り付けられる。
サイズは418×288×35.2~41.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約3.9kgと、形はノートPCだが、デスクトップPC代わりとして使うタイプのマシンと言えよう。バッテリ駆動時間も約2.8時間なので、主に室内での移動をターゲットにしているものと思われる。
そして特徴的なのが、ノングレア(非光沢)の17.3型の液晶パネルを搭載していることだ。解像度はフルHDの1,920×1,080ドット。加えてディスクリートGPUとしては、かなり強力な「NVIDIA Quadro 3000M/2GB」を内蔵している。同GPUはFermiベースで、DirectX 11はもちろん、OpenGL 4.1にも対応。パフォーマンスは後半のベンチマークテストをご覧いただきたいが、上位のデスクトップPCと勝負できるほどのパワーだ。出力はDisplayPort、ミニD-Sub15ピン。DisplayPort接続時は最大2,560×1,600ドットとなる。
価格は直販のみで最小構成(Core i5-2520M/2GB/250GB/スーパーマルチドライブ)が234,800円。今回の構成(Core i7-2620M/8GB/500GB/BDドライブ)だと280,050円だ(ただしOSが異なる)。
ボディはトップカバーがシャンパンゴールド。国内メーカーとしては結構珍しい色だ。パームレストやタッチパッドも同じ色が使われている。他の部分はつや無しブラック。どこを持っても指紋が気にならない。バッテリが本体右手前の裏にあるため、後ろにEthernetやDisplayPortのコネクタを配置。ケーブルを接続しても見え辛い場所なので、机の上はスッキリする。加えて光学ドライブが左手前にあり便利だ。
17.3型の液晶パネルでフルHD解像度はとにかく大きく迫力がある。視野角は上下左右共にかなり広く、はじめて電源ONにした時「IPSパネル!?」と思ったほど。発色は派手では無いものの、落ち着いた感じで非光沢と言うこともあり作業に集中できる。またバックライトをOFFにしても結構見えるため、うまく運用すれば省エネ効果も十分得られるだろう。
キーボードはテンキー付。キーピッチは実測で約18mmある。強く押してもたわむことなく、筆者としては合格ラインだ。またキーボードの上に[Support]/[Internet]/[E-mail]/[ECO]など、ショートカットボタンが配置され、より使いやすいものになっている。
パームレストはツルツルした感触だが、タッチパッドは段差があり、ザラザラしているのですぐにわかる。ボタンは物理的に2つでしっかりしたクリック感だ。センターに指紋センサーを配置している。
同シリーズの「NH77/DD」にあって、この「NH90/DN」に無いものとして、TVチューナとサブウーファーが挙げられる(スピーカーも形状が異なる)。どちらもAV用途であれば外せない部分であるが、違うユーザー層を想定しているため、このような仕様になったのだろう。サウンドに関しては、エネルギーバランスが中・高域。最大出力も含め迫力不足気味だ。
ノイズや振動、熱などは、ボディに余裕がある分、しっかり処理されており、特に問題は無い。
全体的に仕上げも良く、ハイパフォーマンスを目指したノートPCとして完成度は高いが、今回気になったのはACアダプタのサイズ。写真からも分かるように長辺が20cm近くもある。ノートPCでこれだけのサイズのものを見たのは久々だ。液晶パネルのサイズも大きいので、仕方ない部分かも知れないが、もうひと工夫欲しいところ。室内の移動でもこのACアダプタと共に持ち歩くのは、ちょっと面倒と言ったところか。
●パフォーマンス抜群のグラフィックスOSは64bit版のWindows 7 Professional。SP1が適応済だ。ただ先に書いたように、BTOでは64bit版Windows 7 Home Premiumに固定されている。この関係もあると思われるが、初期起動時のデスクトップアイコンは同社の個人向けPCでよくみられるシングルクリック仕様にはなっておらず、加えてデスクトップのショートカットもすっきりしすぎといった感じだ。製品版とはソフトウェアの構成が違う可能性があることを予めご了承いただきたい。
HDDは「ST9500420AS」で7,200rpmの500GB、キャッシュは16MB。C:ドライブ約110GB、D:ドライブ約343GBの2パーティションでC:ドライブは88GBの空きがある。光学ドライブは「BD-5740H」が使われている。
その他デバイスマネージャには、Bluetooth「BCM20702」、ディスプレイアダプタは「NVIDIA Quadro 3000M」が見える。USB 3.0は「Renesas製」だ。
プリインストールされているアプリケーションは、「ウイルスバスター2011 クラウド」(90日体験版)と「ノートン インターネット セキュリティ 2011」(90日体験版)。BTOで「Office Home and Business 2010」か「Office Personal 2010」、または「無し」を選択できる。他のアプリケーションは、大小合わせてかなりあるので、同社のWebなどを参考にして欲しい。今回は製品版とOSが違う構成だったので、他のインストール済のソフトウェアも違う可能性があり、プログラムメニューからはピックアップしなかった。
画面キャプチャで掲載したのは、キーボードの上部にある機能ボタンの設定ユーティリティ「ワンタッチボタンの設定」と、PCが休止状態もしくはパワーダウンしている時の待機電力を減少できる「ECO Sleep」。そして「NVIDIA コントロールパネル」。画面からもわかる通り、CUDAコア数は240になっている。
ワンタッチボタンの設定 | ECO Sleep | NVIDIA コントロールパネル |
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.9。プロセッサ 7.1、メモリ 7.5、グラフィックス 7.0、ゲーム用グラフィックス 7.0、プライマリハードディスク 5.9。ハードディスク以外、全て7台をマークし、かなり高いレベルでバランスしている。プライマリドライブにSSDが欲しくなるところだ。
CrystalMarkは、ALU 45962、FPU 46095、MEM 38035、HDD 11740、GDI 14711、D2D 11478、OGL 77745。特にOGLは7万台。ノートPCでは(デスクトップPCでも)まず見ないスコア。NVIDIA GeForce GTS 450でも3.8万台だ。まさにモバイルワークステーションと言える仕様だろう。
BBenchは、省電力モード、バックライトOFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでの結果だ。この時、「省電力モードの設定」を使い、オーディオ/ミュート、PCカード・ダイレクトメモリスロット/無効、有線LAN/無効にもしている。バッテリの残10%で10,229秒(2.8時間)。ジャスト仕様通りの結果となった。もう少し短いかと思っていたが、意外と健闘している。
以上のように「FMV LIFEBOOK NH90/DN」は、TVチューナやサブウーファー無し、液晶パネルも非光沢と、ホビー的な要素を無くし、替りにディスクリートGPUとして「NVIDIA Quadro 3000M」を搭載。モバイルワークステーション的な性格のノートPCだ。
価格もそれなりなので、欲しいユーザーは限られると思うが、この記事を読んでグッと来た人にはピッタリな逸品と言えよう。