西川和久の不定期コラム

collect3「Video Stream」
~専用サーバーでトランスコードしつつ動画もAirPlayできるApp



 少し前のApple「iOS 4.3」試用速報の中で、「他社製Appでも動画がAirPlayできるようになると、例えばwmvなど本来iOSが対応していない動画フォーマットをサーバー側でトランスコードしつつApp経由でAirPlayすれば、Apple TVに接続したTVで対応していない動画フォーマットまで映すことが可能となる」と書いたが、collect3からズバリそれに対応したApp「Video Stream」が登場した。早速使用レポートをお届けする。


●セットアップは簡単

 この「Video Stream」は結構前からAppStoreで販売されており、個人的には純正のApp以外で最も良く使うAppの1つだ。wmvやflvなど多くのiOS未対応のフォーマットを専用サーバーでトランスコードしつつストリーミング配信し、iOS機で再生可能にする優れもの。特にWindows環境のユーザーは、wmvでストックしているライブラリも多いと思われ、そのままだとiOS機では再生できず不便だったが、これがあれば一気に解決する。

さらに、

・複数アカウントによる専用サーバーへのアクセス
・Wi-Fi/3G回線を使ったネット経由の再生
・トランスコード後の動画をローカルへ保存
・履歴
・30秒前に戻って再生
・Apple Composite AVケーブルを使ったTV出力

など、プラスアルファの機能も充実している。

 ソフトウェア自体はシングルバイナリでiPadとiPhone/iPod touchどちらにも対応。それぞれ適切な画面解像度で作動し、一度購入すると同じApple IDを設定したiOS機であれば別途費用がかかること無く利用できる。

 専用サーバーが必要なため、一見環境を作るのが面倒そうだが、セットアップは簡単だ。AppStoreで「Video Stream」をキーワードに検索するとAppが見つかるので350円で購入しインストール。専用サーバーを同社のWebからダウンロード(無料)し、PCかMacへインストールする。この時、Windowsマシンの場合は、ファイアウォールのブロック警告が出るので、ブロックを解除する必要がある。

AppStoreの「Video Stream」同社のWebからサーバーをダウンロードVSServerSetup.exeを起動
インストールの準備完了インストール完了。Video Stream Server起動ファイアウォールのブロック解除

 後は、専用サーバーに公開したいフォルダをドラッグ&ドロップすれば準備完了だ。少し前のバージョンでは全角のファイル名やフォルダ名にはアクセスできなかったが、最新版でUnicodeに対応。問題無く扱えるようになった。

 また、トランスコードエンジンに「ffmpeg」を使っているので、mpg/avi/divx/xvid/wmv/mp4/m2v/m1v/ts/mpeg/mov/flv/mkv/ogg/iso/m4v/vob/asf/3gp/dvr-ms/rm/rmvb/dvr-ms/wtv/m2ts/m2t/mpeといった、一般的なものならまず問題無く再生できる(ただし、DRMなどプロテクトのかかった動画は再生できない)。

 初めてiOS機から専用サーバーに接続すると、パスフレーズを表示するので、同じパスフレーズを専用サーバー側にも入力、認証が済めば、以降は、ダイレクトにライブラリにアクセスできるようになる。簡単なセキュリティ対策であるが、例えば家族で複数のiOS機を持っていても認証しない限り専用サーバーにはアクセスできないため安心だ。

 iPadは横位置で2ペイン、縦位置で1ペイン。iPhone/iPod touchは縦横共に1ペインのUIとなり、メニュー自体は日本語に対応していないが、直感的に分かり易くサムネイル(サムネイルのみと、サムネイルを含むリスト表示と2パターン)も表示されるので非常に扱いやすい。

Video Stream Server公開したいフォルダをドラッグ&ドロップAppStoreからAppをダウンロードし起動(iPhone)
パスフレーズを表示Server側でパスフレーズを入力すれば認証される認証を解除するには[Unauthorize]をクリックすればいい
FinePix REAL 3Dで撮影したAVIファイルを保存しているフォルダサムネイル一覧が表示される再生中(横位置にも対応)
iPadでの横位置表示階層化フォルダもその中身のサムネイルが表示されるiPadで再生中。もちろん縦位置も全画面表示もOK

 専用サーバーのPreferencesは、General/Performance/Advancedにタブがわかれ、Generalでは、Windowsログイン時にサーバー起動ON/OFF、ネット経由のアクセスON/OFF(UPnP対応のルーターが必要)、PerformanceはSD解像度のストリーム/HD解像度のストリーム/ローカルへ保存時のPCへの負荷を設定できる。Advancedは、サーバーのポート指定、ネット接続時のポートマップ、キャッシュフォルダの設定が行なえる。いずれも多くのケースではデフォルトのままで問題無く、設定するとすれば、ネット経由のアクセスON/OFF程度となる。

 ただし、サーバー側でトランスコードするため、そこそこパワーの持ったCPUが必要だ。筆者の場合は、Core 2 Quad Q8200(2.33GHz)を搭載したマシンを使っているが、特に遅いと思ったことは無く、再生開始までは少し待つものの、一旦再生し出せばスムーズに動く。

 Video Stream側の設定は、General:Resume、Account:Master/Create Account、Streaming:Quality、Coversion:Size/Auto Delete On Server、Video:TV Out Aspect/Subtitleなどが行なえる。この部分はデフォルトのままで特に問題は無い。

 ここまでの環境でも、iPhoneやiPadで昔から溜め込んだwmvフォーマットのお気に入り動画を、いつでも観れるのでかなり便利だ。画質はオリジナルの状態にもよるが、十分鑑賞に堪えうるクオリティになっている。

Video Stream Preferences/GeneralVideo Stream Preferences/PerformanceVideo Stream Preferences/Advanced

 今のところ見つかった不都合としては、ファイルによって極端(数十分のものが数十秒)に再生時間が短くなってしまう動画がまれにあること。原因は不明だが、全体の時間がうまく取れていないのだろうか。今後のバージョンアップに期待したい。

●Apple TVが何でも再生できる便利な環境へ

 さて、以前のバージョンでもiPadやiPhoneでiOSが対応しない動画を観られて便利だったが、最新版では冒頭に書いたように、動画も含めたAirPlayに対応した(iOS 4.3以降、Apple TV 4.2以降が必要)。従って、専用サーバーでトランスコードしつつストリーミング配信し、「Video Stream」経由で更にAirPlayを使いApple TVで動画が再生可能となる。

 これはまさに筆者が欲しかった環境であり、ますますパソコンの出番が無くなってしまった。もちろん、PCからミニD-Sub15ピンやHDMI出力を使って液晶TVに接続すれば、動画の再生自体は可能であるが、手元のリモコン感覚で扱えるiPhoneやiPadから即座に操作できるのは非常に便利。これに慣れてしまうと、いちいちPCに触るのが面倒になる。これまで筆者はwmvに関しては、DLNAサーバーとPS/3のDLNAクライアント機能を使って液晶TVで再生していたものの、それさえも使わなくなったほど。

 AirPlayの切替方法は簡単。再生が始まるとボリュームの右側にAirPlayのアイコンが表示されるのでそれをタップ、機器を選べばOKだ。動画を掲載したので参考にして欲しい。また以降は、この切替先に固定されるので、何度もタップする必要なく、連続してApple TVから再生される。

 言うまでもなく、大きい画面で観るのと、iPadやiPhoneの小さい画面で観るのとは音も含め迫力がまるで違う。もちろん、iOSがもともと対応しているH.264などもそのまま再生でき、iTunesで管理しなくてもAirPlayが可能だ。特にiTunesでホームシェアリング機能を使うには同じApple IDが必要なため、コンテンツの内容に応じて「Video Stream」と使い分ける方法もありだろう。

 ネット経由のストリーミング再生も便利な機能だ。動画データは容量が大きく、ローカルで数多く持つと、あっという間にストレージが無くなってしまう。これを「Video Stream」を使うことによって、(3G回線では画質は落ちるものの)ネット環境さえあれば、どこでも再生できるようになり、多くのデータをストレージから追い出せる。

AirPlayする機器の選択Apple TVにAirPlay中3G経由でも再生できる
【動画】iPadからApple TVへ切り替えて動画再生。動画はWindows 7付属の「野生動物.wmv」オリジナル。トランスコードしながら再生している

 AirPlayで気づいた点としては、iPod Appなどで既にAirPlayをApple TV側に切り替えポーズがかかった状態でバックグランド起動していると、「Video Stream」のAirPlayがApple TVに切り替わらなくなる(多分他のAirPlay対応App同士でも排他制御の関係から同じ現象になると思われる)。「あれ!?」と思った時は、タスクリストから起動中のAppを確認してみるといいだろう。

 また、AirPlay中はバックグラウンドでも再生可能だ。従って動画をApple TVで再生しながら、メールチェックなどができる。結構長いビデオなどを観ている時、iOS機を占有すること無く他の用途で使え便利だ。

 余談になるが、現在筆者は32GB/Wi-Fi版のiPadを持っている。iPad2は出荷され次第、購入する予定だ。約1年iPadを使って思ったのは「次は16GBで十分かも」と言うこと。iPhoneを持っているため、iPadは主に自宅で使っているものの、このAirPlayも含めWi-Fi経由でコンテンツを再生できる環境が整ってきたので、もはやストレージはAppとAppが抱える若干のデータが入っているのみ。そのデータさえもクラウド側にあるものが多い。従ってほとんどのエリアが余っている。

 iPhoneとiPadを2台持ちの場合、意外と同じように思っているユーザーも多いのではないだろうか。今後AirPlayに対応するAppが増えるのが楽しみだ。

 以上のようにcollect3の「Video Stream」は、iPhoneやApple TVといった、Apple純正の環境では再生できない、wmvやflvなどを専用サーバーでトランスコードしつつiOS機で再生できる機能に加え、最新版ではAirPlayを使い動画もApple TVへ転送できるようになった。

 価格も350円と手頃なのでwmvなどiOS非対応の動画ライブラリを多く抱えるユーザーに是非試して欲しいAppだ。またiPhoneやiPadは持っているがApple TVは無いユーザーも、この「Video Stream」を見て、Apple TVが欲しくなるのではないだろうか。