西川和久の不定期コラム

オーバークロック可能な12.1型ノート
ASUS「UL20FT」



 7月17日、12.1型液晶パネル搭載し、Calpellaプラットフォームを採用した「UL20FT」が発売された。前モデルに当たる「UL20A」からチップセットやCPUを変更したモデルチェンジ版だ。製品版が送られて来たので、使用レポートをお届けする。

●Calpellaプラットフォームを採用

 前モデルの「UL20A」は、CPUにCeleron SU2300(1.20GHz)、Intel GS45 Expressチップセット、メモリ2GB、HDD 320GB、OSにWindows 7 Home Preimum(64bit)を搭載、バッテリ駆動時間は約7.4時間、重量は約1.56kgのモバイルサブノートPC。スペック的に一世代古いプラットフォームだった。そして今回ご紹介する「UL20FT」は、Calpellaプラットフォームを採用した後継機となる。主な仕様は以下の通り。

【表】ASUS UL20FT仕様
CPUIntel Celeron U3400(2Core/1.06GHz/L3 cache 2MB)
チップセットIntel HM55 Express
メモリ2GB/DDR3-SDRAM)2スロット空き1、最大4GB
HDD320GB(5,400rpm)
OSWindows 7 Home Premium(64bit)
ディスプレイ12.1型ワイドTFTカラー液晶LEDバックライト、1,366×768ドット
GPUIntel HDグラフィックス、ミニD-Sub15ピン、HDMI
ネットワークEthernet(10BASE-T/100BASE-TX)、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 2.1+EDR
その他USB 2.0×3、5in1メディアスロット、Webカメラ、マイク)ライン入力、ヘッドフォン×1、内蔵マイク、ALTEC LANSINGステレオスピーカー
サイズ、重量269×210×25.1~30.9mm(幅×奥行き×高さ)、約1.56kg
バッテリ駆動時間約6.1時間
価格59,800円※Office Personal 2010プリインストールモデルは79,800円

 CPUは32nmプロセスの超低電圧版Intel Celeron U3400。デュアルコア、クロック1.06GHz、キャッシュ2MBでHyper-ThreadingやTurbo Boostには対応していない。チップセットはIntel HM55 Express。メモリは2スロットで1スロットに2GBを搭載済み。1スロットのみの使用なのでメモリはシングルチャンネルアクセスとなっている。ただし、後述するように、裏のパネルが簡単に外れるので+2GBの計4GBとしてデュアルチャンネルアクセスにできる。最大は4GB×2で8GBとなる。OSは64bit版のWindows 7 Home Premiumで、8GBに増設してもフルに使える。

 グラフィックスは内蔵のIntel HDグラフィックスだ。液晶は12.1型、解像度は1,366×768ドットとなる。出力としてミニD-Sub15ピンとHDMIを備えているのでプロジェクタや、外部液晶ディスプレイにも対応できる。

 ネットワークは、有線LANは100BASE-TXまでで、Gigabit Ethernetには対応していない。無線LANは、IEEE 802.11b/g/nそしてBluetooth 2.1+EDRも搭載している。有線LANがGbEでないのはマイナスポイントとなるものの、この辺りは使い方にもよるので、どう思うかは人それぞれだろう。

 そのほか、USB 2.0×3、Webカメラ、5in1メディアスロットなど、このクラスのノートPCとしては一般的なスペックだ。スピーカーは「ALTEC LANSINGステレオスピーカー」を搭載している。

 カラーバリエーションは、シルバー(型番:UL20FT-2X034V)とブラック(同:2X034BK)の2種類。またOffice Personal 2010プリインストールモデルも用意されている。

クールなアルミニウムボディーだ。カラーはブラック中央にHDDなどのステータスLEDがあるネジ3本外すだけで簡単にパネルを開けることができる。メモリ1スロットが空きだ
左側面にHDMI、USB 2.0×1、マイク入力、ヘッドフォン出力キーボードはアイソレーションタイプ。ファンクションキーは小さいが、並びなど特殊な部分は無い右側面。電源入力、Ethernet、ミニD-Sub15ピン、USB 2.0×2、5in1メディアスロット
キーピッチは実測で約18mmバッテリーは6セル。ACアダプタはメガネタイプのコネクタだ重量は実測で1,525g

 ボディは天板とパームレストがアルミニウム、液晶パネルの縁はツヤありブラック、そのほかの部分はマットブラックとなっている。非常にクールなデザインだ。前モデルの「UL20A」も同じデザインで人気があり、そのまま引き継がれた形となっている。本体サイズは269×210×25.1~30.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.56kgなので、カバンに入れても邪魔にならないし、無理なく持ち歩ける。

 12.1型ワイドTFTカラー液晶は、反射型で当然映り込みはある。明るさコントラストは、価格を考えれば十分なクオリティで、色バランスもニュートラルだ。文字中心の作業も画像中心の作業もどちらも無難にこなすことができる。また、LEDバックライトをOFFにしても結構画面が見えるため、後述するバッテリー駆動時間がそのまま実作動時間相当となる。

 キーボードはアイソレーションタイプだ。ただ残念ながら少し押すと全体的に大きくたわむ。特にファンクションキー近辺にこの傾向が強い。キートップもプラスチック感が強く、全体的にもう少し適度な強度と高級感が欲しいところか。

 タッチパッドはパームレストと段差が無く、その範囲内に細かい凸凹があるだけとなっている。面積は少し狭いものの、操作は割りとスムーズに行なえる。ただ、ボタンは硬め。もう少し軽い方が指に負担がかからない。

 振動は左側のパームレストに少し感じる程度で、気になるほどでは無い。CPUなど発熱しやすいユニットを後方に配置している「ASUS IceCool Design」によって、熱やノイズに関しては問題無いレベルになっている。静かな室内で使っても大丈夫だ。

 音は斜め下にスピーカーが付いているので、机など反射し易いものの上に置いた時の方が自然に聞こえる。音質は結構透明感があり、左右のスピーカーの幅以上に音が広がる。量感のある低音は望めないものの、バランスが良く聞き易い。最大音量はボディサイズを考えると十分な出力だ。

●「Turbo 33テクノロジー」でオーバークロック可能

 起動時のデスクトップは、同社のユーティリティ系アイコンが並んでいるのが特徴的だ。また、右上に見えるウェジェットは、後述するオーバークロック「Turbo 33テクノロジー」スイッチとなっている。ちなみに、状態を切り替えると、少しの間画面がブラックアウトする。

 HDDはST9320325AS(320GB/5400rpm/cache 8MB)を搭載。このクラスとしては珍しく、Cドライブのシステムに約74.5GB、データ用のDドライブに204GBの2パーティションとなっている。無線LANのユニットは、IEEE 802.11b/g/n対応のAtheros AR8131だ。

 その他の部分に関しては、チップセットにIntel HM55 Expressを採用しているノートPCとしては標準的な構成だろう。

起動時のデスクトップ。左側に同社のユーティリティ系のアイコンが並んでいる。右上のウェジェットで後述する「Turbo 33テクノロジー」をON/OFF出来るHDDはST9320325AS(320GB/5400rpm/cache 8MB)。無線LANのユニットはAtheros AR8131Cドライブのシステムに約74.5GB、データ用のDドライブに204GBの2パーティション構成

 プリインストール済みのアプリケーションは、同社ツール系の、ASUS Power4Gear Hybrid(省電力)、SRS Premium Sound (サウンドコントロール)、ASUS AI Recovery (リカバリDVD作成)、ASUS FancyStart(BIOS起動カスタマイズ)、ASUS Wireless Console 3(無線LAN設定)、ASUS LifeFrame3(Webカメラ活用)、ASUS Live Update(パソコン自動更新)、ASUS Splendid(画質向上)、ASUS SmartLogon(アカウント管理)など。

 独自のツールが多いのは嬉しい部分であるものの、個人的にはもう少しまとめてデスクトップをスッキリさせた方が好みだ。

 他社のアプリケーションとしては、i-フィルター5.0 30日間対応版、Trend Microウイルスバスター2010 60日期間限定版/OEM版が入っている。また今回届いたのは、Office Personal 2010プリインストールモデルなので、Officeのアイコンも見える。

ASUS SplendidASUS ControlDeckASUS Live Update

 ベンチマークテストは、「Turbo 33テクノロジー」OFFとONで、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark、そしてBBenchの結果を見よう。この「Turbo 33テクノロジー」は、CPUとメモリを自動的にオーバークロックして、最大で約33%性能を向上できるという技術だ。従ってベンチマークテストのスコアアップが期待できる。以下カッコ内はONにした時の値になっている。

 まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合は3.9(2.9)。内訳は、プロセッサ4.4(4.4)、メモリ5.5(5.5)、グラフィックス3.9(2.9)、ゲーム用グラフィックス5.1(4.8)、プライマリハードディスク5.9(5.7)。ここで興味深いのは、本来オーバークロックしている状態の方がスコアは上がるはずなのに逆に下がっていることだ。グラフィックス系とHDDのスコアが低下している。

 CrystalMarkは、総合 44,348(55,552)、ALU 9,939(12,952)、FPU 8,850(11,782)、MEM 10,542(13,955)、HDD 8,277(8,369)、GDI 4,880(6,434)、D2D 687(887)、OGL 1,173(1,773)。こちらはONの方が値は高くなっている。総合でも30%近いアップだ。また体感速度もこの結果と同じで、これだけ違うと操作しても明らかにその差が分かる。Windows エクスペリエンス インデックスのスコアが低くなるのは何か特殊な理由がありそうだ。

 BBenchは、バッテリ駆動モード、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ON、Bluetooth/OFFでの結果だ。バッテリの残5%でOFF:14,685秒(4.0時間)/ON:13,253秒(3.6時間)だった。さすがにオーバークロックした状態の方がバッテリ駆動時間は短くなる。通電時はTurbo 33テクノロジーON、バッテリー駆動時Turbo 33テクノロジーOFFと使い分けたい。

 なお、ASUS Power4Gear Hybridの設定を「Battery Saving」モードにするともう少し時間が延びそうだが、壁紙は真っ白、Aero OFF、Turbo 33テクノロジー無効など、実用的な設定とは思えなかったこともあり、「Entertainment」モードのバッテリ駆動で測定した。

【Windows エクスペリエンス インデックス】「Turbo 33テクノロジー」OFF。総合は3.9。プロセッサ4.4、メモリ5.5、グラフィックス3.9、ゲーム用グラフィックス5.1、プライマリハードディスク5.9
【Windows エクスペリエンス インデックス】「Turbo 33テクノロジー」ON。総合は2.9。プロセッサ4.4、メモリ5.5、グラフィックス2.9、ゲーム用グラフィックス4.8、プライマリハードディスク5.7
【CrystalMark】「Turbo 33テクノロジー」OFF。総合 44,348。ALU 9,939、FPU 8,850、MEM 10,542、HDD 8,277、GDI 4,880、D2D 687、OGL 1,173
【CrystalMark】「Turbo 33テクノロジー」ON。総合 55,552。ALU 12,952、FPU 11,782、MEM 13,955、HDD 8,369、GDI 6,434、D2D 887、OGL 1,773
【BBench】「Turbo 33テクノロジー」OFF。バッテリ駆動モード、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ON、Bluetooth/OFFでのBBenchの結果。バッテリの残5%で14,685秒(4.0時間)
【BBench】「Turbo 33テクノロジー」ON。バッテリ駆動モード、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ON、Bluetooth/OFFでのBBenchの結果。バッテリの残5%で13,253秒(3.6時間)

 以上のようにUL20FTは、Calpellaプラットフォーム+Celeron U3400の最新アーキテクチャに変更。重量約1.5kg、バッテリ駆動時間は実用的な設定でも4時間以上と、モバイルノートPCの条件を満たした上で、必要に応じて最大33%オーバークロックが可能と、ちょっと面白いマシンに仕上がっている。価格が6万円未満に抑えられているのも嬉しいポイントだ。キーボードが少したわむのが残念な部分であるが、日頃持ち歩くノートPCを探しているユーザーの候補になりうる1台だろう。