西川和久の不定期コラム

富士通のCULVノートPC「LOOX C」



LOOX C

 去年の今頃はネットブック全盛だったが、今年はその上のランクにあたる超低電圧版/CULV(Consumer Ultra Low Voltage)CPUを搭載したノートPCが、Windows 7と共に話題だ。

 「ネットノート」や「Light Note」、「モバイル・サブノートPC」など、いろいろな名称が付いているこのCULV搭載ノートPC。富士通からは「LOOX C」シリーズとして登場した。早速その使用感などレポートする。

●ネットブックとは似て非なる「LOOX C」

 ネットブックとCULV(超低電圧版)CPUを搭載したノートPCで一番違う点は、CPUとチップセット、そしてプリインストールされているOSである。ネットブックはCPUにAtomプロセッサ、チップセットはIntel 945GSE Express、そしてOSはWindows XP Home EditionかWindows 7 Starterとなる。液晶パネルの大きさや解像度は最近緩和され、12インチ前後で1,366×768ドットのものもあり、この点については差が無くなりつつある。

 対してCULV CPUを搭載したノートPCは、名前の通り、CPUはCULV版のCore 2 Duo SU9400、Celeron SU2300、Celeron 743などいくつかのタイプがあり、チップセットはIntel GS40 ExpressもしくはIntel GS45 Expressが主流だ。動画支援なども強化され、ネットブックより数世代新しいものとなっている。液晶パネルは現在、11~13型で、1,366×768ドットが大多数だ。OSはWindows 7 Home Premiumを搭載する。

 特に11型の液晶パネルモデルだと、パネル、キーボード、サイズなど外側だけの公約数を見ると、一見同じに思えるが、中身はまったく別物だ。価格帯は前者が3~6万円、後者が6~10万円と、一般的なノートPCとネットブックの間に割り込んだ格好となる。OSのエディション違いによる差も大きい。

 さて、富士通のLOOX Cは大きく分けて2モデルある。1つはCore 2 Duo SU9400(1.4GHz)を搭載した「LOOX C/E70」で、店頭予想価格が10万円強。もう1つはCeleron SU2300(1.2GHz)を搭載した「LOOX C/E50」で、店頭予想価格約が8万円となる。他の仕様は同じでバッテリ駆動時間だけ約9.2時間/約6.2時間と、C/E70の方が長持ちだ。

 今回届いたのはLOOX C/E70のほうだ。特徴的なスペックをまとめると以下の通りとなる。

・CPU:Core 2 Duo SU9400(1.4GHz)
・チップセット:Intel GS45 Express
・メモリ:2GB/DDR2-2GB×1(2スロット/空き1)
・HDD:320GB
・OS:Windows 7 Home Premium(32bit)
・ディスプレイ:11.6型ワイド、1,366×768ドット、内蔵GMA 4500MHD、アナログVGA出力
・ネットワーク Ethernet、IEEE802.11/b/g/n
・その他:USB 2.0×3、Webカメラ、Bluetooth(V2.1+EDR)、SDメモリーカード/メモリースティック対応カードリーダ、音声入出力
・サイズ/重量:285×209×26.4~30.2mm(幅×奥行き×高さ)/約1.6kg
・バッテリ/駆動時間:リチウムイオンバッテリ(11.1V、5,200mA)/約9.2時間

 カラーバリエーションは、シャイニーブラック、マリンブルー、ルビーレッドの3種類。また下位モデルのLOOX C/E50にはOffice Personal 2007搭載モデルも用意されている。

 特筆すべきは、約9.2時間のバッテリ駆動時間。使い方にもよるので、多少割り引いて考えても5時間程度は持ちそうだ。さすがCULV CPU搭載機と言えよう。

 ただこの中で筆者的に気になる点としては、HDMI出力が無い、そしてGigabit Ethernetではないことが挙げられる。HDMIに関しては言うまでもなく、デジタルTVでも多く採用しているものであり、ちょっと寂しい感じだ。同クラスの競合機種も搭載しているものがある。

 後者に関しては、他社でも同様の傾向が見られ、11型モデルはEthernet、13型以上のモデルはGigabit Ethernet対応となっているケースが非常に多い。筆者の知る限り、11型モデルでGigabit EthernetなのはこのTimeline AS1410やレノボのIdeaPad U150くらいで数少ない。NASを使う場合など、Gigabit Ethernetかどうかで転送速度の差は非常に大きいため、改善してほしいところだ。

【お詫びと訂正】初出時に、11型モデルでGigabit Ethernet装備はTimeline AS1410のみとしておりましたが、IdeaPad U150などほかにもあります。お詫びして訂正させていただきます。

本体上面。ルビーレッドで非常に鮮やか、そして綺麗だ正面。左側に、パワーLED、バッテリLED、アクセスLEDなどがある。その下は無線LANのON/OFFスイッチ。正面の下側面左右にステレオスピーカー底面。2つのパネルを外すと、メモリやHDDへ簡単にアクセスできるため、メンテナンス性も高い
左側面。電源入力、ミニD-Sub15ピン、USB 2.0×1キーボード。「^」、「\」、「[」、「]」など一部幅が細くなっているものもあるが、主要部分は十分だ右側面。Ethernet、ロックポート、USB 2.0×2、音声入出力、カードリーダ
キーピッチは約19mmと十分に確保されているバッテリとACアダプタ。ACアダプタはメガネタイプ。このクラスのノートPCとしては一般的なサイズだ重量は実測で1,588g

 サイズは285×209×26.4~30.2mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.6kgなので、軽量級ではないものの、カバンに入れて日頃持ち歩くには許容範囲だろう。

 11.6型ワイドの液晶パネルは光沢(グレア)タイプだ。したがって映り込みが気になるものの、普段使う分にはそれほどでもない。

 ノイズや熱などは、CULV CPUだけあって、ボディに耳を付けるとファンの音などが聞こえるものの、オペレーションする位置からは全く聞こえず、加えて熱もほとんど持たない。左側のパームレスト部分で若干振動を感じる程度だ。

 天板やキーボードの周りはルビーレッドで、鮮やかかつ綺麗で、高級感もある。ただこれらの質感の良い分、他の部分のプラスチック感が余計目立ってしまう。特にキートップの質感が気になった。キーボード自体は、キーピッチは約19mm、キーストロークは約1.8mm。たわむ部分や妙な配置も無く良好だ。タッチパッドはボディのサイズが小型なだけに、面積は狭いが、操作し辛いほどではない。ボタンは少し硬めだが、しっかりクリック感があるものだ。

 裏側の2枚のパネルを外せば、HDDやメモリへ簡単にアクセスできる。従ってメモリの追加やSSD化は容易だろう。スピーカーは、前面の下にステレオである。机などで音を反射させるタイプになっている。音質・音量共このタイプとしては一般的だと思われる。

●富士通独特のアプリケーションとカスタマイズ

 Windows 7が起動し、デスクトップを見て驚いたのが、アプリケーションなどの名前の部分にアンダーラインがあることだ。これはWebのリンクと同じく、ワンクリックで開く/アプリケーションを起動するモードだ。Windows Me頃は結構多くのPCがこの状態だったが、いつの間にか今の「シングルクリックで選択し、ダブルクリックで開く」形式に標準が戻り、その後、すっかり見かけなくなっていた。多分、同社は昔からこのモードを標準としてきたのだろうが、FMV以外のユーザーはちょっと戸惑ってしまうのではないだろうか。

 なお、「コントロールパネル」→「フォルダーオプション」→「ポイントして選択し、シングルクリックで開く」を「シングルクリックで選択し、ダブルクリックで開く」へ変更すれば、いつもの操作に戻れる。

起動時のデスクトップ。ショートカットなどの下にある名前の部分に「アンダーライン」がある。これはウェブと同じ「ワンクリックで開く/アプリケーションを起動する」設定だデバイスドライバ/主要なデバイス。HDDはWD3200BEVSが使われているHDDのパーテーション。半分ずつに切られ、Cドライブ、Dドライブ共140.95GB(NTFS)となっている。Dドライブは「マイリカバリ」のファイルだけが入っている

 さてこのLOOX C/E70、先のデスクトップにあるショートカットの数を見てもわかるように、プリインストールのアプリケーションが豊富だ。「明鏡国語辞典」や「ジーニアス英和辞典」など、全14種の辞書ソフトに加えて、ウイルスバスター 2009、ノートン インターネットセキュリティ 2009、マイリカバリ、i-フィルター 5.0、FMVサポートナビ、Roxio Creatorなど、盛りだくさんだ。特に辞書やFMVサポートナビは、このシリーズに限らず、ネットブックの「LOOX M」なども含め多くのモデル共通となっている。従って上位モデルへ買い替えや、下位モデルの買い増しなどをした場合も、ソフトウェアの部分に関しては同じで既存ユーザーは安心して操作できる。

明鏡国語辞典ジーニアス英和辞典省電力ユーティリティ
マイリカバリFMVサポートナビRoxio Creator

 気になるパフォーマンスは、Windows エクスペリエンス インデックスの値は3.2。内訳はCPU 4.0、メモリ 4.8、グラフィックス 3.2、ゲーム用グラフィックス 3.2、プライマリハードディスク 5.5である。この数値だけ見てもネットブックとは性能的にかなりの差があることがわかる。

 多くのCULVノートPCは、CPUは違えど、チップセットはほぼ同じで、CPU以外は似通ったスコアになっていることが多い。通常使用では速度的に十分とは言え、チップセット内蔵のGMA 4500MHDがシステム的に足を引っ張っている。ネットブックの時もそうだったが、Intelのグラフィックス内蔵チップセットはいつもこのパターンなので、何とかならないものかと個人的には思っている。

 この関係もあるのだろうか「ユーザーアカウント制御(UAC)」は、標準設定の状態だと、一旦画面はブラックアウトしてパネルを開くが、このブラックアウトの時間が長い。出来れば設定を1レベル落とし、ブラックアウトしない状態に(他の機能は標準と同じ)した方がスムーズに操作できる。

 バッテリベンチマークのBBenchでバッテリ駆動時間をチェックしたところ、バックライト最小、キーボード押下とWeb巡回をどちらもON、WiFi使用時において、4時間で残り3%となり、自動的に休止モードへ入った。WiFi ONと言うこともあり、スペックの約9.2時間には及ばないものの、まずまずの結果である。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合3.2。プロセッサ4.0、メモリ4.8、グラフィックス3.2、ゲーム用グラフィックス3.2、プライマリハードディスク5.5。内蔵GPUのスコアがいまひとつCrystalMark。Atom N270プロセッサと比較するとALUで3倍、FPUで3倍、MEMで2倍、グラフィックス系で約2倍のパフォーマンスアップCrystalCPUID。Core 2 Duo SU9400はIntel VTに対応しているのがわかる

 なお、Anytime UpgradeでProfessonalへアップグレードし、XP Modeを使いたい場合、CPUのCore 2 Duo SU9400はIntel VTに対応しているが、BIOSではデフォルトで無効になっている。ブート時に「F2」キーを押し、BIOSセットアップ→[詳細]にVTを[使用する/使用しない]の設定があるので、変更して「F10」で保存すればOKだ。

 Core 2 Duo SU9400を搭載したLOOX C/E70。以上みてきたように、ネットブックは操作性やパワーに不安があるが、10万円以上は予算的に厳しいと言ったユーザーにピッタリなノートPCに仕上がっている。GPUのパフォーマンス的に3Dゲームは難しが、それ以外ならネットブックより快適に操作できる。ただ、他社の同クラスと比較した場合、同社の手厚いサポートやプリインストールのアプリケーションが多いなど、プラスαの部分はあるものの、少し価格が高めなのが筆者的には気になるところ。もう一頑張り欲しいところだ。