西川和久の不定期コラム

Office標準搭載14型2スピンドルのCULVノートPC!
ASUSTeK「UL80AG-WX001VS」



UL80AG-WX001VS

 ここのところ1スピンドルか0スピンドルノートPCばかり扱ってきたが、久々に2スピンドルマシンが編集部から送られてきた。

 アーキテクチャは最近流行りの超低電圧版/CULV(Consumer Ultra Low Voltage)CPUにIntel GS45 Expressチップセットを採用。加えて14型との液晶パネル搭載と、少し大き目のノートPCだ。早速、その使い心地などをレポートしたい。


●正に全部入りの2スピンドル

 最近発表されるノートPCの多くは、超低電圧版/CULV(Consumer Ultra Low Voltage)CPUにIntel GS45 Expressチップセット+内蔵GMA 4500MHDグラフィックスを採用しているので、もうネットブックのCPUやチップセット同様、アーキテクチャを覚えてしまった方も多いと思う。

 今回の「UL80AG」もこの構成だ。少し違うのは14型のTFTカラー液晶LEDバックライト/1,366×768ドットと、DVDスーパーマルチドライブを搭載していることだろう。このクラスは、サイズや重量的に11型前後の液晶パネルを使った1(もしくは0)スピンドルノートPCと比較して不利になるものの、あまり持ち歩かず、主に家や会社のみで使う用途であればデスクトップPC替わりになるため人気も高い。

 UL80AGには、「Celeron SU2300でOffice Personal 2007無し/UL80AG-WX010V」、「Celeron SU2300でOffice Personal 2007あり/UL80AG-WX010VS」、そして「Core 2 Duo SU9400でOffice Personal 2007あり/UL80AG-WX001VS」と、3つのモデルが存在する。それぞれ価格は、79,800円、99,800円、129,800円だ。Officeの有無で2万円差があるため、最上位モデルでOffice無しだと、109,800円と予想できるが、今のところ該当するモデルは無い。

 手元に届いたのは、Core 2 Duo SU9400を搭載する最上位モデルの「UL80AG-WX001VS」。仕様をまとめると以下の通りとなる。

UL80AG-WX001VS
CPU:
Core 2 Duo SU9400(1.4GHz)
チップセット:
Intel GS45 Express
メモリ:
2GB/DDR2-2GB×1(2スロット/空き1)
HDD:
320GB
光学ドライブ:
DVDスーパーマルチドライブ(DVD±R/2層記録対応)
OS:
Windows 7 Home Premium(64bit)
ディスプレイ:
14.0型ワイドTFTカラー液晶LEDバックライト、1,366×768ドット、内蔵GMA 4500MHD、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力
ネットワーク:
Gigabit Ethernet、IEEE802.11b/g/n、Bluetooth(V2.1+EDR)
その他:
USB 2.0×3、Webカメラ、SDメモリーカード/メモリースティック対応カードリーダ、音声入出力
サイズ/重量:
330×240×14~26.8mm(幅×奥行き×高さ)/約1.98kg
バッテリ/駆動時間:
標準バッテリ/約11.4時間

 この仕様からも分かるように、光学ドライブそしてBluetoothまで含め、まさに全部入りだ。最近気にしているLANもGigabit対応になっている。追加するものがあるとすれば、2GBのメモリを買い足す程度だろう。画面出力は、ミニD-Sub15ピンだけでなく、HDMIにも対応。外部液晶ディスプレイや液晶TVにもデジタル出力できる。

 さらに標準バッテリで最大約11.4時間駆動という値にも驚きだ。従来、このサイズの液晶パネルを搭載したノートPCでは、その消費電力のため、長時間作動は難しかったが、LEDバックライトになったこともあり、飛躍的にバッテリ駆動時間が向上している。ただ、、個人的には14型で1,366×768ドットはコンテンツ再生には向いているものの、解像度が低いように思う。できればもうワンランク上が欲しいところだ。

本体上面。ソリッドなアルミニウムボディでシンプルにまとまっている正面。側面下側左右にステレオスピーカー、中央にHDDアクセスランプなどを配置。スイッチ類はない底面。各パネルバッテリ側がメモリ、右側はHDDとなっている。ネジを外すだけとアクセスは簡単だ
左側面。ロックポート、ミニD-Sub15ピン、HDMI、USB 2.0×2、音声入出力右側面。Gigabit Ethernet、USB 2.0×1、カードリーダ、光学ドライブキーボードはアイソレーションタイプ。タッチパッドはパームレスト部と一体化している。左上の電源スイッチは「Express Gate」起動用だ。通常は右側の電源スイッチを使う
キーピッチは約19mm。非常にゆったりしているバッテリ、ACアダプタ。ACアダプタは結構小さく、コネクタはメガネタイプだ。日本市場をかなり意識しているように思える重量。最大2kgのデジタル計量器で計ったところ、エラーとなってしまった。実際は2kgを少しオーバーしているのかも知れない

 サイズ330×240×14~26.8(幅×奥行き×高さ)mm、重量約1.98kgと、11型のノートPCと比較すると、二周り大きく、そして約500g程度重くなっている。ただ、厚みが14~26.8mmと、面積の割にかなり薄い。パネルの厚みも6mm程度。LEDバックライトの特徴が現れている。持った感じは、ずっしり重いものの、薄型でソリッドなアルミニウムボディは、デザイン的にもバランス的にも非常にうまくまとめられている。

 液晶パネルは光沢タイプだ。映り込みはあるものの、明るさもコントラストも十分確保されている。ただ視野角はあまり広い方ではなく、(多少は大丈夫だが)正面から見ないと本来の色にならない。また、コンテンツ系であればこの程度の明るさとコントラストが必要であるが、事務処理的な作業をする場合はギラギラした感じでキツ過ぎるため、半分程度の輝度まで落とした方が眼に優しい。

 キーボードはアイソレーションタイプとなっている。ボディが大きい分、全体的にゆったりしており、キー入力しやすい。中央付近のキーを強く押すと、若干たわむものの、これは許容範囲だと思われる。キートップの感触はゴム系の何かでコーティングされているのか割とマットな感じで冷たくない。配置に関しては、ほぼデスクトップPCなどで使われるキーボードと同じだ。[BS]キー、[Space]キー、[Enter]キーなども十分キートップの面積は広い。あえて上げれば[PageUp/PageDown]キーが[矢印]キー+[Fn]キーとのコンビネーションになる程度だろう。

 タッチパッドは完全にパームレスト部分と一体化し、細かい凹凸があるだけの構成となっている。面積は十分広く操作は容易。ただボタンの部分が少し硬く、もう少し軽いほうが筆者的には好みだ。とは言え、ドライバに「Elan Smart-Pad」が使われ、2本指を上下でスクロール、左右でページング、3本指でボタンをクリックと同等など、ジャスチャー機能付きとなっているため、実際ボタンを押す操作はかなり少なくなる。

 ノイズや発熱に関しては通常使用時において全く問題の無いレベルとなっている。この辺りもボディが大きく余裕があるので対策し易いのだろう。またノートPCの特性上、比較的近くで観たり聴いたりすることになると思うが、内蔵している光学ドライブで、DVDビデオを再生したところ、シーク音、回転音共に皆無だった。これならコンテンツに集中できる。

 ステレオスピーカーは、ボディ正面、斜め下に向く感じで付けられている。Altec Lansing Technologies製だ。最大音量はもう少し欲しいところだが、中域の音質は抜群だ。アコースティックギターなどの弦の響きがリアルに再生される。ただ、残念ながら低域は弱く、ボリューム感や押し出し感が無い。この中域に、ある程度迫力のある低音が加わると、トータル的にかなり良くなる。もう一工夫欲しいところだ。

●Windows 7は64bit版

 冒頭の仕様のところで触れているが、OSはWindows 7の64bit版を採用している。Windows Vista以前で、このクラスのPCへ64bit版をインストールしているものは(若干あるかも知れないが)無いに等しく、Windows 7になって一気に増えだした。2010年は32bitと64bitの境目になりそうだ。特にチップセット内蔵のGPUは、グラフィックメモリとしてメインメモリを共有するケースが多く、OS的に3GBまでしか使えない32bit版と、それ以上でも使える64bit版での差が大きいのだろう。

 また、この「UL80AG-WX001VS」は、「Microsoft Office Personal 2007」が標準搭載となっている。その分、コストアップしていることもあり、有無については意見がわかれるところではないだろうか。

起動時のデスクトップ。デスクトップにはプリインストールされているアプリケーションのショートカットが並んでいる。Windows 7 Home Premiumは64bit版だ光学ドライブは「HL-DT-ST DVDRAM GU10N」、HDDは「ST9320325AS」Cドライブは約75GB、Dドライブは約200GB割当てられている。Dドライブは空だ

 プリインストールのアプリケーションは、省電力ソフト「ASUS Power4Gear Hybrid」、リカバリDVD作成「ASUS AI Recovery」、BIOS起動カスタマイズ「ASUS FancyStart」、無線ソフト「ASUS Wireless Console 3」、Webカメラ活用「ASUS LifeFrame3」、自動更新「ASUS Live Update」、アカウント管理「ASUS SmartLogon」、CD/DVDライティングソフト「CyberLink Power2Go」、「i-フィルター5.0 30日間対応版」、「ウイルスバスター 2010 60日期間限定版/OEM版」など、同社オリジナルのユーティリティを含め大小合わせて充実している。

 特に「ASUS Power4Gear Hybrid」は、同社独自の省電力ユーティリティであり、バッテリ駆動最大11.4時間を可能にするもの。使うシーンに応じて、さまざまな細かい設定ができる。ただ表記が英語というのが若干気になる部分ではある。

ASUS Power4Gear HybridASUS AI RecoveryASUS Live Update
ASUS Control DeckCyberLink Power2GoMicrosoft Office Personal 2007

 Windows エクスペリエンス インデックスは3.5だ。順にプロセッサ4.5、メモリ4.9、グラフィックス3.5、ゲーム用グラフィックス4.0、プライマリハードディスク5.6となっている。ちょっと気になるのは、CrystalMarkの値も含め、前回の「LOOX C/E70」と比較して、同じチップセット、同じCPUなのに、全体的に値が高い(LOOX C/E70のWindows エクスペリエンス インデックスは3.2。順に4.0/4.8/3.2/3.2/5.5)。この2機種だけの比較で結論付けるには問題があるものの、Windows 7の32bitと64bitでは、64bitの方が速いのかも知れない。

 バッテリのベンチマーク、BBenchでの結果は、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ONで計測。バッテリ残が4%になったところで休止状態となった。時間は5.3時間。最大11.4時間とは倍ほどの違いがあるものの、WiFiがON、HDDも結構動いているので、妥当なところか。いずれにしても14型の液晶パネルを搭載したノートPCで、5時間以上動くと言うのは、なかなか頼もしいものだ。

Windows エクスペリエンス インデックスの総合は3.5。プロセッサ4.5、メモリ4.9、グラフィックス3.5、ゲーム用グラフィックス4.0、プライマリハードディスク5.6CrystalMark。同じCPU、チップセットなのに少し前に紹介した「LOOX C」より、 Windows エクスペリエンス インデックスの値も含め。こちらの方が全体的に速い。32bitと64bitの違いだろうかBBench。バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ONでの結果。バッテリの残4%で19,197秒(5.3時間)だった

 なお、XP Modeに必要なIntel VTは、Core 2 Duo SU9400は対応、そしてBIOSでもはじめから有効になっていた(ただし、VTの拡張仕様であるVT-d/Intel Virtualization for Directed I/Oは無効)。

 Core 2 Duo SU9400搭載CULVノートPCとしてパワーは平均的だが、14型と大きい液晶、そしてDVDスーパーマルチドライブ内蔵と、デスクトップPCの替わりに1台目のパソコンとして十分使え、重量も2kgを切っているので持ち運びも(少し重いが)十分可能な範囲だ。更にMicrosoft Office Personal 2007も含め13万円を切るなど、コストパフォーマンスも高い。「全てをノートPC一台で」と思っているユーザーにお勧めの逸品と言えよう。