西川和久の不定期コラム

A5サイズの可愛いPC
ミニピーシードットジェイピー「CX45-B」



CX45-B

 ネットブックやCULVノートPCなど、ノートPCは結構小型のものが多いが、デスクトップPCは、Atomプロセッサを搭載したネットトップ以外、コストパフォーマンスの問題だろうか、あまり小さいPCを見かけなくなってきた。そんな中、今回届いたのは、A5サイズの超小型PCだ。当たり前の話となるが、A5サイズとはA4用紙の半分。このサイズにPCが入るとはなかなか楽しそう。早速、試用レポートをお届けしたい。
●CX45-Bの仕様

 ミニピーシードットジェイピーが13日に発表したこの「CX45-B」は、Socket Pに対応したモバイルCore 2 DuoやPentium Dual-Coreなどを搭載可能。チップセットはIntel GM45 Expressだ。GPUはチップセット内蔵型のIntel GMA 4500MHD、メモリスロットはPC3-8500対応SO-DIMM×1、拡張ベイは2.5インチ×1、拡張スロットはPCI Express MiniCard/Mini-PCIとなっている。これらは基本的にノートPC用のアーキテクチャをデスクトップ用として使っている格好で、最近流行のCULVノートPCと共通点が多い。

 この中で、メモリスロットが1つなのは、デュアルチャネルアクセスができないし、最大メモリ容量も少なめ……と、気になるものの、小型化のため仕方ない部分だと思われる。仕様をまとめると以下のようになる。

・CPU:Socket P対応
・チップセット:Intel GM45 Express
・GPU:Intel GMA 4500MHD(チップセット内蔵)
・メモリ:PC3-8500対応SO-DIMM×1
・拡張ベイ:2.5インチ×1
・拡張スロット:PCI Express MiniCard/Mini PCI
・インターフェイス:Gigabit Ethernet×2、USB 2.0×2、シリアルポート、ミニD-Sub15ピン、PS/2、音声入出力、光デジタル出力
・サイズ/重量:190×140×66mm(幅×奥行き×高さ)/約1.35kg
・オプション:DVI-D、Gigabit Ethernet×2またはeSATAを追加可能

 ベアボーンキット「CX45-B」の価格はオープンプライスで、通販価格は52,000円となっている。スペック的に興味深いのは、このサイズでGigabit Ethernetを2ポート搭載していることだろう。超小型PCとしてはもちろんであるが、超小型サーバーとしても使いやすい設計だ。また、オプションとは言え、DVI-Dが搭載できるので、用途が広がる。

 このほか、CPU、メモリ、HDDを搭載したモデルが2種類用意され、上位モデル「CX45-P87M2H320」は、Core 2 Duo P8700(2.53GHz)、メモリ2GB、HDD 320GBで店頭予想価格は92,000円前後の見込み。下位モデルの「CX45-T34M2H320」は、Pentium Dual-Core T3400(2.16GHz)、メモリ2GB、HDD 320GBで74,800円前後の見込みとなっている。どちらもOSは含まれない。ちなみに「minipc.jpダイレクト」では、更に高速なCPU、大容量のHDDなどとの組み合わせも選択可能となっている。

 今回、手元に届いた試用機は、上記のいずれでもなく、CPUにモバイルCore 2 Duo T9550(2.66GHz)と、結構強力なものが載り、メモリ2GB、HDD 320GB、DVI-D出力、増設LANキット(2ポート)、そしてWindows 7 Ultimate 64bitがインストールされた状態だった。

 まず、電源ONにする前に中を見ることにした。開けるのは非常に簡単で、リアのネジ2本、左右のネジを1本ずつ外せばOKだ。内部はかなり窮屈なのが分かる。ファンは向かって左側に配置され、上に大きめ、左側面に小さいのが付けられている。またオプションのDVI-DボードがCPUの手前にあり、ケーブルがリアに回っている。この狭い空間だとベアボーンの「CX45-B」を組み立てるのはケーブルの取り回しなど、結構大変かも知れない。

フロント。アクリルの透明なパネルが付いている。左からリセットスイッチ、アクセスLED、パワーLED、電源スイッチ裏の3本のネジを外すと、メモリスロットと、パネルに装着された2.5インチHDDが見える。HDDとメモリの交換は簡単そうだ背面。左側の縦に並んでいるのはオプションのGigabit Ethernet×2。ここをeSATAにすることも可能だ。上のDVI-Dもオプション。標準はGigabit Ethernet×2、PS/2ポート、ミニD-Sub15ピン、シリアルポート、USB 2.0×2、音声入出力。そして光デジタル端子も見える
右側はスリットのみで何もない左側は小型のファンが見えるACアダプタは12V/6.6A/80W。コネクタはミッキータイプだ。iPhoneや500円玉と比較しても十分小さいことがわかる

リアのネジ2本、左右のネジ1本ずつでケースを開けることができる。内部は結構窮屈だ重量は実測で1,536gだった

 このサイズの割にインターフェイスは豊富だ。オプションのGigabit Ethernet×2も加えると計4ポートにもなる。光デジタル出力、そしてオプションであるがDVI-D端子もある。またサーバー用途にあれば便利なPS/2ポートと、シリアルポートも備えている。オプションのGigabit Ethernet×2とは排他になるがeSATAポートを付け、外部にHDDを接続すればバックアップも楽そうだ。

 ファンが2つ付いている割には静かである。CPUに負荷がかかるともっと大きな音がするかも知れないが、使っている範囲では何ともなかった。HDDのノイズや振動も気にならないレベルだ。この静音性なら、机の上にちょこんと置いてデスクトップPCにするのも悪くない。

 重量は、CPU、メモリ、HDD、オプションのDVI-Dそして増設Gigabit Ethernet×2を搭載した状態で1,536g。ボディが小さいこともあり、持った時は逆にズッシリ感じる。と言うのもちょうどこの重さは、携帯しやすいノートPCと同程度。それがこのサイズであるのだから見た目との感覚はズレが出る。

●使用感など

 今回テストしたマシンは、あらかじめWindows 7 Ultimate 64bitがインストールされていたので、その範囲でテストした。Windows エクスペリエンス インデックスは3.4。ただこれはチップセット内蔵GPU、4500MHDのスコアが振るわないだけで、CPUは6.3、メモリ5.5、プライマリハードディスクは5.9と、5.5以上のスコアになっている。従ってWindowsの動作自体はけっして遅くなく、ストレスなく操作できる。他のベンチマークテストなどは画面キャプチャを参考にして欲しい。


Windows 7 Ultimate 64bitを使用。Windows エクスペリエンス インデックスは3.4。メモリが2GBだと、起動時は500MB程度のメモリ使用量となるデバイスマネージャ。ネットワークアダプタが4つあるのが特徴的。HDDは日立GST Travelstar 7K320(320GB/SATA3G/7,200rpm/16MB) HTS723232L9A360が使われているGMA 4500MHD用のコントロールパネル
Windows エクスペリエンス インデックス。CPU 6.3、メモリ5.5、グラフィックス3.9、ゲーム用グラフィックス3.4、プライマリハードディスク5.9CrystalMark。このクラスのマシンとしては平均的な値だ

 少し前に「Windows 7の使い勝手【その2】」でXP Modeの話を書いたが、使ったマシンがそれなりに強力なこともあり、一般的なスペックではどうなのかが気になっていた。CX45-Bは、ノートPCも含め一般的なPCのスペックに近いため、再度XP Modeを試すことにした。なお、CPU自体はIntel VT対応なのだが、BIOSで無効になっていたので、有効にしてインストールした。

 まず、XP Modeインストール後、仮想PCに割当てられるメモリが512MBから256MBに変わっている。もともと2GBの上に、メモリ共有型GPUなのでメインメモリがその分目減りし、空きメモリが結構厳しい。それをインストール時に認識しているのだろう。

 ウィンドウ表示、フルスクリーン、IE6をシームレスモードと、それぞれのモードで触ってみたところ、Core 2 Quad Q9550には及ばないもののこれが意外と動く。Windows 7の使用メモリも850MB前後をキープし、メモリを圧迫しない状態だ。CPUモニタも極端に使用率は上がらない。

 ただ今回CPUの動作クロックは2.66GHzと、モバイル用としては最上位に近いため、CULVを含むもっと下のランクのCore 2 DuoやCeleronなどでは、このスムーズさを維持できないだろう。さらにXP Modeが使用するメモリを512MBに上げると、もうほとんど余裕が無くなってくる。ちょっと遊びでXP Modeを使うのであれば問題無いが、少し規模の大きいアプリケーションだとちょっと辛いだろう。

シームレスモードでIE6が起動。IE6だけであればメモリ2GB(メモリ共有GPU分、実際の容量は減る)、XP Modeに256MBでも十分使えるフルスクリーン表示での各ベンチマークテスト。ウィンドウ表示と比較して、フルスクリーン表示の方がグラフィックス系の値は高い

 インストール済みのOSがWindows 7だったので、ついWindows 7中心の話になってしまったが、もちろんLinuxも作動する。Gigabit Ethernetが標準で2つ、オプションで2つの計4つと言う構成は、産業用も含めどちらかと言えば、Linuxなどを使いサーバー用途を視野に入れていると思われる。

 コンパクトなデスクトップPCならAtomプロセッサを使ったネットトップなども考えられるが、Gigabit Ethernetの数、そしてCPUパワーなど全く融通が利かない。しかし「CX45-B」は、Socket Pに対応したCPUであれば、必要なパワーをこのサイズで自由に選択できるのが魅力的。いろいろなサーバーに使用できる。しかもこのスペースファクタなら、何台でも集積可能だ。

 A5サイズの「CX45-B」、汎用的なデスクトップPCとして使うには少し価格が高いものの、最大Gigabit Ethernet×4ポート搭載可能など、超小型サーバーとして考えた場合は、CPUの自由度も高く用途によってかなり魅力的なスペックとなる。もちろん「サイズに惚れた! 」というのも良いだろう。いずれにしてもその使い方で活きてくる超小型PCだ。