西川和久の不定期コラム
ワイド/テレのデュアルレンズ搭載でAFも高速な5.5型スマホ「ZenFone Zoom S」
2017年6月28日 06:00
ASUSは6月23日に、DSDS(Dual SIM - Dual Standby)対応でデュアルレンズ搭載の5.5型SIMロックフリースマートフォン「ZenFone Zoom S」を発売した。ワイドとテレ2種類のレンズがあり、ちょうどiPhone 7 Plusと同じ構成だ。実機を試用する機会を得たので、レビューをお届けしたい。
Snapdragon 625/4GB/64GBのミドルレンジ・スマートフォン
Snapdragonを搭載したスマートフォンは、ハイエンドからローエンドまで数多く出回っているが、「ZenFone Zoom S」が搭載しているのはミドルレンジ用のSnapdragon 625。先月ご紹介した、NuAns NEO [Reloaded]と同じものだ(Androidスマホに生まれ変わった「NuAns NEO [Reloaded]」を使ってみた参照)。
ハイエンドクラスの性能ではないものの、一般的な用途であれば十分な性能を得られるSoCとなる。特徴としては、メモリ4GB、DSDS対応、ワイドとテレのデュアルレンズ搭載などが挙げられる。
仕様は以下のとおり。
ZenFone Zoom S | |
---|---|
SoC | Snapdragon 625(MSM8953)/最大2GHz |
GPU | Adreno 506 |
メモリ | 4GB(LPDDR3) |
ストレージ | 64GB/eMMC |
OS | Android 6.0.1 |
ディスプレイ | 5.5型AMOLED(有機EL)フルHD/1,920×1,080ドット(NTSC 100%/最大輝度500cd/平方m) |
ネットワーク | IEEE 802.11n対応、Bluetooth 4.2 |
SIM | Nano SIMカードスロット×2、DSDS対応 |
対応バンド | FDD-LTE: バンド1/2/3/5/7/8/18/19/26/28 TD-LTE: バンド38/39/40/41 W-CDMA: バンド1/2/5/6/8/19 GSM: 850/900/1,800/1,900MHz |
インターフェイス | USB Type-C(USB 2.0)、microSDカードスロット(Nano SIMカードスロット兼)、ステレオミニジャック、5マグネットスピーカー |
カメラ | 前面1,300万画素のソニー「IMX214」センサー、レンズF2.0 背面1,200万画素のソニー「IMX362」センサー、焦点距離25mm(35mm換算)/F1.7、焦点距離59mm、光学式手ブレ補正機能 |
センサー | GPS(GLONASS、Beidouサポート)、加速度、電子コンパス、光、近接、ジャイロスコープ、指紋、RGBセンサー |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 約77×154.3×7.9mm |
重量 | 約170g |
バッテリ容量/駆動時間 | 5,000mAh/連続通話時間 約2,898分(3G)、連続待受時間は約1,000時間(3G) |
税別店頭予想価格 | 54,800円前後 |
SoCはSnapdragon 625(MSM8953)。8コアで最大2GHz。GPUはAdreno 506。メモリはLPDDR3で4GB搭載。ストレージはeMMCの64GB。OSはAndroid 6.0.1。この時期に出荷されるデバイスでAndroid 7系でないのは少し残念な部分だ。
ディスプレイは5.5型AMOLED(有機EL)のフルHD/1,920×1,080ドット。色域NTSC 100%、最大輝度500cd/平方mと、発色・輝度ともに期待できるパネルを採用している。HDMIなど外部出力には未対応。必要であればChromecastなどに接続する。
インターフェイスは、IEEE 802.11n対応、Bluetooth 4.2、USB Type-C(USB 2.0)、microSDカードスロット、ステレオミニジャック、FMラジオ、5マグネットスピーカー。microSDカードスロットは、2つあるNano SIMカードスロットの一方と排他だ。加えてサウンドは、192kHz/24bitまでのハイレゾ音源再生や「DTS Headphone:X」にも対応している。
カメラは、前面に1,300万画素のソニー「IMX214」センサー、レンズF2.0。背面に1,200万画素のソニー「IMX362」センサーで焦点距離25mm(35mm換算)/F1.7と、焦点距離59mmのデュアルレンズ構成。また光学式手ブレ補正機能も搭載だ。
オートフォーカス機能は「TriTech+オートフォーカス」と呼ばれるレーザーオートフォーカス、像面位相差オートフォーカス、コンティニュアスオートフォーカスの3つの技術を統合し、いかなるシーンでも正確に素早く合焦するとのこと。「ポートレートモード(後日アップデートで配信)」、「HDR Proモード」、動画4Kにも対応する。
興味深いのは、前面カメラの解像度と背面カメラの解像度がほぼ同じこと(ただしグレードが異なる)。ほとんどの製品は前面カメラのほうが解像度が劣っているが、自撮りがこれだけはやっているなか、前面カメラにコストをかけるのは十分ありだろう。
センサーは、GPS(GLONASS、Beidouサポート)、加速度、電子コンパス、光、近接、ジャイロスコープ、指紋、RGBセンサーを搭載。
対応バンドは表をご覧いただきたいが、冒頭に書いたように、Nano SIMが2つ使え、DSDS対応なのが本機の特徴となる。またキャリアアグリゲーションにも対応する。
本体色はネイビーブラックとシルバーの2色。サイズは約77×154.3×7.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約170g。5,000mAhのバッテリを内蔵し(着脱不可)、連続通話時間約2,898分(3G)、連続待受時間は約1,000時間(3G)。税別店頭予想価格は54,800円前後だ。内容を考えると結構安いほうではないだろうか。
筐体は写真からもわかるように、サイズや質感、背面のレンズ2つも含めiPhone 7 Plusに非常によく似ている。明らかに違うのは背面の指紋センサー。5型以下のスマートフォンを使っているユーザーは大きく感じるかもしれないが、iPhone 7 Plusクラスと比べればまったく違和感はないだろう。
前面は、パネル中央少し左に前面カメラとスピーカー。「戻る」、「ホーム」などのボタンはハードウェア式だ。画面の一部を(必要に応じて隠せるにしても)占有するソフトウェア式よりハードウェア式のほうが好みだ。
背面は、上部左側に背面カメラ(外側25mm、内側59mm)、中央少し下に指紋センサー。右側面に音量±ボタンと電源ボタン。下側面にステレオミニジャック、USB Type-C、スピーカー。左側面にNano SIM/microSDカードカードスロットを配置。個人的には「ホーム」ボタンの位置に指紋センサーがあるほうが押しやすいが、これは慣れの問題だと思われる。
付属品は、透明カバー、リジェクトピン、イヤフォン、イヤーパッド、USBケーブル、USB式ACアダプタ。ACアダプタのサイズは、約43×43×21mm(プラグ含まず)、重量53g。出力5V/2A。
5.5型AMOLED(有機EL)フルHDパネルは、高ppiで文字のジャギーはまずわからない。発色は有機EL固有の彩度が高く少しギラギラ感があるだろうか。最大輝度500cd/平方mはさすがに明るく、比較的暗めの部屋だと最小でちょうどいい。
サウンドは期待していたものの、スピーカーはモノラル、パワーもあまりなく、イヤフォンで視聴しても普通。とくに音がいいというわけではなかった。普通の音源でこの状態なので、192kHz/24bitまでのハイレゾ音源再生は、フォーマットとして再生可能程度のものだろう。
ストレスなくバシバシ撮れるカメラ
カメラの撮影モードは、オート、マニュアル撮影、HDR Pro、美人エフェクト、超解像度、キッズ、QRコード、夜景、単焦点、エフェクト撮影、自分撮り、GIFアニメーション、パノラマ、ミニチュア、タイムシフト撮影、スマートリムーブ、オートスマイル、スローモーション、低速度撮影と多彩だ。
設定は各モードで切り替わり、オートだと、ホワイトバランス、ISO、明るさ、最適化、彩度、コントラスト、鮮明度、ノイズ削減、逆光、細部強調、カメラ解像度(12M/8M/6M)、画質、タイムスタンプ、タッチシャッター、セルフタイマー、フォーカスモード、測光モード、タッチ自動露出、顔認識の設定が可能(カメラ)。マニュアルだと加えてSave RAW fileが設定できる。
ビデオ録画は、ホワイトバランス、明るさ、動画の解像度(4K/フルHD/FHD60fps/HD/TV)、手ブレ補正、ビデオ設定、タッチ自動露出など。
そのほかの項目として、スマートな明るさ、ガイドライン、情報、レビュー継続時間、バーストレビュー、撮影時のシャッター画像、場所サービス、ちらつき防止、省電力モード、音量ボタン押したときの設定、デフォルト設定に戻す。
モードも設定も項目の数が多過ぎて覚えるのが大変なほど。個人的にはもう少し絞ってもいいような気がしないでもない。
焦点距離35mm換算25mm(実際は4mm)と、焦点距離35mm換算59mm(実際は7mm)のデュアルレンズは、現状ではオートでもマニュアルでも必要に応じて自動的に切り替わる。手動での切り替えはポートレートモード搭載からとのこと。早くポートレートモードを試したいところだ。
作例では、ハイビスカスがテレ側、ほかはワイド側になっている。前者は撮影時にx2.3にしたので、デジタルズームではなく、テレ側へ自動的に切り替わったようだ。すべて12Mモード(3,928×2,944ピクセル)で撮影している。
「TriTech+オートフォーカス」と呼ばれるオートフォーカスはかなり速く正確。ほかの作動も非常に速い。これならストレスなく撮影可能だ。
発色は、パネルのAMOLEDが独特な派手さがあるため、表示すると(青空が真っ青になるなど)けっこう彩度が高めに見えるものの、PCの液晶ディスプレイで見ると割とニュートラルだった。
ズーム倍率は、オートモードx1のマーカー使用時は、x1、x2.3、x5。その後ピンチで最大12倍まで可能。このとき、x2.3が微妙で、被写体からの距離が基準なのか、4mmになったり7mmになったり、必ず7mm側を使うわけではないようだ。
マニュアルモードでは「Save RAW file」をオンにすると、RAWファイルも一緒に保存される。フォーマットはDNG。サイズは24MB前後。DNGが扱えるソフトウェアであれば現像ができる。
気になるのは、続けて撮影すると結構熱を持つこと。ジーパンの後ろポケットに入れて暖かく感じるので、それなりの発熱だ。ただ一般的に作例でバシバシ撮るような撮り方はあまりしないと思うので、普通の使い方なら問題はないだろう。
搭載アプリなど
初期設定はSIMを挿入せずWi-Fiのみで行なった。画面は22枚。後半にASUSアカウントやお勧めアプリの一覧が出るため、素に近い状態より画面が増えている。個人的には、この部分の画面数が多いと何かと面倒なのであまり好みではない。13枚目「ASUS製品を登録する」から以降は、何か別のアイコンか何かセットアップから別にしてほしいところ。
指紋登録は事前にパターン、PIN、パスワードの登録を事前に行なう必要がある。その後、指紋の管理で複数の指紋を登録できる。ロック解除だけでなく、ダブルタップでカメラ起動、タップしてシャッター、ロングタップで着信電話に応答するなど、複数の機能を持たすことができる。
本機の売りの1つDSDSは、SIMを挿入すると、「優先データサービスネットワーク」のパネルが即表示される。「デュアルSIMカード設定」で、SIMカード情報、有線SIMカード、SMSメッセージ、データサービスネットワーク、一般設定などが双方で設定可能だ。APNは有名どころであれば一覧に表示されていた。
また、「1台で2台分(電話番号が2つ/SMS込み)」、「片方は通話専用、もう片方はデータ通信専用」など、用途に応じて2つのSIMを使い分けることが可能だ。
ZenUIを採用しIMEにATOKを搭載
初回起動時のホーム画面は3つ。フォルダは「Google」、「ASUS」、「Apps4U」の3つが設定されている。ベースはAndroid 6.0.1だが、ZenUIになっているので、素のAndroidとは色使いやデザイン面で結構異なっている。
ストレージは64GB中12.08GBを使用中。ただし、このなかには初回起動時に撮影した画面キャプチャなどが含めれている。52GBほど空きがあり、動画/音楽データの容量にもよるが、しばらくはmicroSDカードなしでも運用可能な人も多いだろう。
プリインストールアプリは、「カメラ」、「ギャラリー」、「テーマ」、「ファイルマネージャ」、「モバイルマネージャ」、「懐中電灯」、「時計」、「設定」、「天候」、「電子書籍」、「電卓」、「電話」、「連絡先」、「ASUS ZenFit」、「ATOK」、「i-フィルター」、「Playストア」、「No Limit」、「SimCity」、「アプリのバックアップ」、「Service Center」。
Googleフォルダに「Google」、「Chrome」、「Gmail」、「マップ」、「YouTube」、「ドライブ」、「Play Music」、「Playムービー&TV」、「Duo」、「フォト」、「カレンダー」、「メッセージ」、「音声検索」。ASUSフォルダに「やることリスト」、「FMラジオ」、「Laser Ruler」、「MiniMovie」、「PhotoCollage」、「クイックメモ」、「音声レコーダー」、「ZenCircle」、「ZenUI FAQ」。Apps4Uフォルダに「Facebook」、「Messenger」、「Instagram」、「WebStrage」。ASUSアカウントを取得しないと使えないアプリもある。
「モバイルマネージャー」など、特徴的なアプリは画面キャプチャを掲載したので参考にしてほしい。
ウィジェットは、「アナログ時計」、「カメラ」×2、「すべてのアプリ」、「デジタルクロック」、「ファイルマネージャー」、「やることリスト」、「懐中電灯」、「検索」、「時計」×4、「直接メッセージを送る」、「直接発信」、「天候」×2、「電卓」、「連絡先」×2、「連絡先ウィジェット」、「おすすめのコンテンツ」、「スケジュール」、「ドライブ」、「ドライブのショートカット」、「ドライブのスキャン」、「フィード」、「ホーム画面のヒント」、「メッセンジャーリスト」、「メッセンジャー会話ウィジェット」、「運転モード」、「経路を検索」、「交通状況」、「設定をショートカット」、「Chromeのブックマーク」、「Gmail」、「Gmailのラベル」、「Google Play Music」×2、「Google Sound Search」、「Googleアプリ」、「Musicプレイリスト」、「マイライブラリ」、「Playストア」。
Wi-FiでのYouTube連続再生が軽く12時間超えのスタミナ
ベンチマークテストは「Google Octane 2.0」と「AnTuTu Benchmark」を使用した。Google Octane 2.0のスコアは4,734。AnTuTuは63,188。ランキングは最下位となるが、これは、SoCがミドルレンジなのでハイエンド順に並んでいるランキングでは仕方ないところ。同じSoCを搭載したNuAns NEO [Reloaded]と似たり寄ったりのスコアだ。
爆速ではないにせよ、ネットアクセスやFacebookなど、一般的なアプリであれば、十分普通に操作できる。
バッテリ駆動時間は、Wi-Fi接続、音量と明るさを50%でYouTubeを連続再生させたところ、約12時間経過したところでバッテリの残34%。残り約6時間とあるので、18時間ほど作動可能だ。YouTubeの連続再生で12時間を軽く超えるのはかなりのスタミナと思って間違いない。またこの間、発熱も気になるほどではなかった。
以上のようにASUS「ZenFone Zoom S」は、Snapdragon 625/4GB/64GB、5.5型AMOLED(有機EL)フルHD、DSDS対応、デュアルレンズ搭載が特徴のスマートフォンだ。SoCこそミドルレンジであるが、カメラなどはハイエンドに匹敵する(超える)能力を備えている。バッテリ駆動時間もかなり長く、こういった点を魅力に感じるのであれば、お勧めしたい製品と言えよう。