このスペックをこのサイズと価格で!?「NEXTGEAR-NOTE i300」 ~悲願の“モンスター”モバイルノートPC |
品名 | NEXTGEAR-NOTE i300 | |
購入価格 | 89,980円 | |
購入日 | 2012年6月23日 | |
使用期間 | 約2週間 |
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです。 |
株式会社マウスコンピューターから、11.6型のゲーミング向けノートPC「NEXTGEAR-NOTE i300」が発売された。11.6型ながら、クアッドコアCPUやGeForce GT 650Mを搭載した、まさにモンスターとも呼ぶべきノートPCだ。マウスコンピューターの秋葉原にある直営店で購入したので、レポートをお届けしたい。
●時代の流れに沿う、筆者のモバイルノート“転換”史本誌の読者ならば、モバイルノートに対してかなりのこだわりを持っていることだろう。「世界最薄」や「世界最軽量」といったキーワードはもちろんのこと、「高性能」や「高解像度」などの言葉にも反応するかもしれない。無論、筆者もそのうちの1人だ。
筆者が最初に個人で購入した新品モバイルノートは、2003年初頭のビクターの「InterLink XP MP-XP3210」だった。その次は2005年後半のシャープの「MURAMASA PC-CV50F」、2009年初頭のソニー「VAIO type P VGN-P90NS」へと続いた。その後2010年のデル「Alienware M11x」で“転換”を迎え、2011年にアップルの「MacBook Air」、日本エイサーの「AS1830Z-A52C/K」へと渡り歩いて来た。
この“転換”とは、過去に筆者がこだわってきたA5ファイルサイズから、B5ファイルサイズへの転換だ。
筆者のノートPCの歴史と“転換” |
筆者はアラサーとは言え、まだ20代なので、決して「文字が小さいから」とか、そういった理由で“転換”したわけではない。それはA5ファイルサイズノートでは筆者が要求する性能を満たせなくなってきたからだ。
例えばMP-XP3210が出た当初の2002年は、ノートPC向けにPentium 4-Mこそ登場していたものの、モバイル向けではPentium III-Mがメインで、1GHz搭載していればハイエンドと呼べるクラスだった。MP-XP3210はA5ファイルサイズということを考慮すれば、Celeron-M 650MHz搭載というのはなかなか健闘している。まして上位モデルのMP-XP7210はPentium III-M 800MHzなのだから、性能に不満があるはずなかった。チップセット「SiS630ST」の3D性能もなかなか良く、3DのRPG「ファイナルファンタジーVIII」がサクサク動いていたことも記憶している。
PC-CV50Fは、CPUこそTransmetaのEfficeon TM8600 1.0GHzでだったが、メモリは256MBで固定されていたため、Windows XP SP2が出て以降、使っていて物凄くストレスのあるマシンではなかったものの、MP-XP3210ほど快適ではないのは確かだ。GPUにMobility Radeonを搭載していたことが、唯一の救いだったのかもしれない。
ところがVAIO type P(これをA5と呼んでいいのかわからないが、B5より明らかに小さいのは確か)になると、CPUがAtomとなり、メインストリームとの性能差が顕著になる。さらに内蔵グラフィックスのGMA500があまりにも非力だった。Windows VistaのAeroは動いてもモッサリ、YouTubeのフルHD解像度だとコマ落ちする、3Dゲームなんてもってのほかだ。フォームファクターとしては非常に魅力的で、筆者のライフスタイルをも変えるほどのものだったのだが、いかんせんWindowsにおける“ユーザー体験”はどうだったかと言われれば、満足できない状況だったと言える。
それ以降も、市場でリリースされたA5ファイルサイズ以下のノートはAtomが当たり前で、グラフィックス性能も含めて性能向上が乏しかったため、筆者はA5からB5への“転換”を受け入れざる得なくなったわけだ。というより、A5ノート市場はネットブックの進出で、性能面での話題が薄れてしまった。
B5ならば超低電圧版で低クロックながらも、一応はメインストリームと同等のアーキテクチャのCPUを備えている上、各メーカーからリリースされているため選択肢も多い。薄さにこだわらなければ、4万円台からとリーズナブルな選択肢も用意されている。Alienware M11xから始まった筆者のB5ノートライフだが、性能面ではある程度満足しているため、今では特に違和感なくこのクラスのノートPCを受け入れている。
しかし「リーズナブルで満足できる性能が得られる」B5ノートとはいえ、性能面で見てしまうと実はコストパフォーマンスが悪い。特にIvy BridgeやLlanoが登場してから、クアッドコアCPU搭載ノートの価格が下落したことに加え、Ultrabookの高止まりで、コストパフォーマンスの悪さが目立つ。
例えばB5ノートではエントリー向けCore i3を搭載した製品でも、価格は6万円台半ばからが一般的。もちろんGPUは非搭載だ。その一方で、A4ならもう少し足して6万円台後半からCore i7-3612QM/3610QM搭載ノートが入手できてしまう。しかもGPUというオマケ付きだ。B5には小型化のノウハウ代が含まれているとは言え、価格差以上に性能差が大きい。
というか、そもそも「NEXTGEAR-NOTE i300」の登場まで、いくらお金を出してもクアッドコアCPUのB5ノートなんて市場に存在しなかった。ついでに、今回i300を購入することで、筆者は超低電圧版CPUノートPCから脱却し、通常電圧版CPUノートPCに“転換”を果たしたことになる。
●モンスタースペックのNEXTGEAR-NOTE i300NEXTGEAR-NOTE i300 |
前置きがやたらと長くなってしまったが、そのB5ノート市場に一石を投じたのが、今回の「NEXTGEAR-NOTE i300」だ。
重量は公称1.8kgでやや重さはあるし、厚みも37.1mmと結構かさばる。しかし11.6型ノートのフットプリントで、クアッドコアCPUが選択可能で、GeForce GT 650Mを搭載してしまったというのは、なかなかインパクトが大きい。筆者がこれまで使っていたAS1830Z-A52C/Kは1.4kgだったので、わずかな重量増でクアッドコアCPUとGPUを搭載できたことになる。
サイズとスペックのバランスを考慮すれば、i300はInterLinkにPentium 4-MとGPUを乗せたようなもの。筆者が以前買ったAlienware M11xも11.6型でGPU(GeForce GT 335M)を搭載していたが、こちらはデュアルコアCPU、しかも超低電圧版だったので、i300はまさに“モンスター”と呼ぶにふさわしい。それでいて、価格はクアッドコアCPU搭載でも89,980円からと非常にリーズナブルなのだから、もはや文句のつけようがない。
PCは買いたい時が買い時。i300がリリースされてから2カ月近くたったが、6月末に何度かマウスコンピューターの秋葉原直営店に通い、実際に触って使用感を試してから、購入することにした。
Core i7-3612QMは、ベース2.1GHz、1コアでは最大3.1GHzまで向上する。別途CPU-Zで確認したところ、本機ではベースクロックが100MHzを切ることもあるため、3.1GHzを拝むことはできなかった |
今回購入したのは「i300SA2-EX」というモデルで、選択可能な部分はCore i7-3612QM、メモリ8GB、Intel SSD 520シリーズ120GB、Bluetooth 4.0+LE(無償アップグレード)という構成で、価格は89,880円(送料なしの持ち帰り価格)だった。7月10日現在、Web直販で同構成にすると、「i300SA4-SP」をベースに選択することになり、Core i7-3612QM+Intel SSD 520 120GBにしてしまうと、価格は113,820円(送料込み)となる。店頭のほうがかなりお得だ。
余談だが、i300のWeb構成は発売当初から細かく変更されており、例えばデフォルトのCPUがCore i7-3612QMから3610QMになったり(TDPは35Wから45Wに上がるがクロックは200MHz向上)、メモリに16GBの構成が追加されていたり、採用SSDが変更されていたりする。また、選択するベースモデルによっては同じ構成にしても多少金額に差異がある。基本的に上位に割安感があるので、予算に余裕がある場合は選んでおいて損はない。
それから、もし少しでもi300を持ち運びを考えているなら、オプションの薄型ACアダプタ(3,990円)の同時購入を強くおすすめする。本製品はクアッドコアCPUとGPUを駆動させるために、90WのACアダプタを利用するが、このアダプタはケーブルがいわゆるミッキータイプで、太くてかさばる上、アダプタ自体も厚みがある。
この薄型ACアダプタは、HuntKeyから発売されている汎用ACアダプタ「PA1965S-B」とまったく同じサイズ。さらにプラグ形状も同じだ。それでいて65Wから90Wに出力が強化されているわけだから、単体で見てもなかなか価値が高いモノと言えるだろう。正直、これを標準ACアダプタとして採用して欲しかったところだ。
標準添付のACアダプタ | 標準添付のACアダプタとケーブルの重量 | 別売りのスリムACアダプタ |
スリムACアダプタと標準ACアダプタの厚み比較 | スリムACアダプタと標準ACアダプタのフットプリント比較 | スリムACアダプタとケーブルの重量 |
ACアダプタへの出費を抑えたいのならば、680円前後で購入できるダイヤテックの「直角ケーブル3号」をオススメする。このケーブルに変更するだけで大きくかさばりが軽減され、ACアダプタ込みの重量で約117g軽減される。なお、標準のACアダプタでも薄型ACアダプタでも、ケーブルを巻くためのタイがついていないので、百円ショップなどで調達するといいだろう。いずれにしても、ACアダプタ周りでは持ち運びへの配慮に欠けており、今後ぜひとも改善していただきたい。
ダイヤテックの「直角ケーブル3号」 | 付属のACケーブルを直角ケーブル3号に変更するだけで117g減! |
ケーブルタイをつけるだけで携帯性が向上するが、標準添付されていない | スリムACアダプタはHuntKeyの「PA1965S-B」と同サイズながら90Wの出力が可能 |
●意外と気にならない重さ。使い勝手も上々
本製品の重量は公称1.8kgとされているが、実測1,704gと約100g軽量だった。もちろんモバイルノートとしては重量級ではあるが、筆者がノートPCの持ち運びに使っている「ThinkPad X100e スリングケース」にすっぽり収まり、これを背負った時の重さはあまり気にならない。以前Alienware M11xを持ち運ぼうとして1カ月で挫折した過去があるが、i300なら苦になることはなさそうだ。
本体も厚みはあるため、真横から見た時はぽっちゃりしている印象だが、薄く見せるよう底面がしぼんでいるため、斜め上から見たときは気になるほど厚みがあるわけではない。むしろ本体が空中に浮いているようでカッコイイ。
天板とパームレストはエンボス処理されており、滑りにくく指紋もつきにくい。ただしタッチパッドまでパームレストと一体型のため、指の滑りがやや悪い印象だ。とは言え、タッチパッドもそこそこの広さが確保されており、筆者が今までに購入したノートの中では、MacBook Airに次ぐ操作性を持つタッチパッドだとは思う。クリックボタンがややチープで押しにくいのが気になったが、これも慣れの問題だろう。
キーボードはアイソレーション式で、キーピッチは17mm。クセのない配列なので、比較的扱いやすい。パームレストも大きく確保されており、厚みゆえに打ちにくいことはない。そのほかUSB 3.0やHDMI、音声入出力、カードリーダなど、インターフェイス類は過不足なく揃っており、ユーザーインターフェイス周りの完成度は総じて高いレベルにあると言えよう。
公称1.8kgだが、実測は1,702gだった | 実際の厚みは結構ある |
しかし斜めから見ると薄く、浮いているように見えるデザイン | クセのない配列のキーボード |
ツールフリーの底面カバー |
さて、i300は実はClevoのノートPCベアボーン「W110ER」をベースに作られている。そのためか、ノートPCながら内部メンテナンスはツールレスで行なうことができる。バッテリと兼用になっているラッチを引っ張りながら、底面カバー全体をキーボード手前側に引っ張ると簡単に外すことができ、メモリ/ストレージはもちろんのこと、CPU、GPU、Mini PCI Expressスロットなどにすべてアクセスできる。このメンテナンス性の良さは大手メーカー製では見られない本製品ならではの特徴と言えるだろう。
パーツはベアボーンらしく、片面にわかりやすく配置されており、メンテナンスの際に戸惑うことはない。それよりも気になったのは基板実装だ。低背タイプのアルミ固体コンデンサが多く並んでいるだけでなく、コネクタなども基板に対して水平ではなく垂直に出ている。ノートPCでは高さが低いタンタル固体コンデンサのほうが多いし、コネクタも基本的に水平方向に出ていると思うが、このあたりは組み立て易さやコストを重視した結果と言え、それが本体の厚みに影響しているだろう。
一見バッテリを外すラッチだが、本体底面のカバーを外すラッチと兼用している | わかりやすく配置された内部 | 大型の銅製ヒートシンクとファンを装備 |
無線LAN+Bluetooth 4.0兼用モジュールのRealtek「RTL8723AE」 | 今回選んだ構成の肝でもあるIntel SSD 520 | メモリモジュールはDDR3-1600対応。SO-DIMMで1,600MHz駆動はまだリテール市場では珍しい |
余談だが、このW110ERを使った製品はEurocomなど海外メーカーからもリリースされており、CPUにはCore i7-3920XM(2.90GHz、TDP 55W)なども選択可能となっている。本機がCore i7-3612QMを使っていることを考えると、熱設計にまだまだ余裕があるということだろう。3920XMは日本国内では単体購入が難しいが、交換/購入のスキルがある上級者は是非チャレンジしてもらいたい。
さて、これだけ高性能なCPUとGPUを搭載しているとなると、騒音や振動も気になるところだが、本製品は大口径なファンと銅製ヒートシンクを採用していることもあり、気になることはあまりない。もちろん負荷時にはファンが高速に回転するため、騒音はそれなりのものだが、Ultrabookなどと比較しても熱設計に余裕があるため、通常のWindows操作においてはファンが非常に低速で回るため、耳を近づけてようやく聞こえるレベルだ。振動もかなり抑えられている。
熱に関しては、アイドル時は底面やパームレスト部はスペックから想像するほど熱くないのが印象的。このあたりは22nmのIvy Bridgeと28nmのKeplerというプロセスルールによる貢献だろう。また、本体のゴム足が比較的高いため、底面の吸気スペースが十分に確保され、熱が篭らないようになっている。とは言え、負荷時は本体左側面からかなりの熱風が勢い良く出るため、付近に物を置かないよう注意したい。高負荷アプリが終了すると10秒ぐらいで回転数が落ちるので、冷却機構に関しては比較的優秀と言っていいだろう。
熱でCPUのスロットリングが起きるのではないか、ということも懸念されたが、26℃の環境下でPrime95を8スレッドで15分ほど走らせたところ、Turbo Boostこそ最大の2.8GHzから2.6GHz~2.7GHzに落ちたものの、大きな性能低下を引き起こすことはなかった。さすがにPrime95ほどの高負荷をCPUにかけ続けることはまずないだろうし、最悪2.6GHzで動いていること自体、評価してもいいのではないだろうか。ただし、GeForceが有効な3Dアプリケーション実行時は、消費電力や発熱の兼ね合いからか、Turbo Boostが自動的にOFFになるようだ。
出力を司るIntel HD Graphicsの設定で色を調節 |
電源をONにして気になったのは液晶の青さだ。このあたりはAlienware M11xやAS1830Z-A52C/Kでも共通だったので、Intelのグラフィックス プロパティで微調整して、完全ではないものの、青みを取り除いた。筆者のパネル個体で筆者の目からの判断ではあるが、パラメータは赤が明度-10、緑が明度-19/コントラスト49、青が明度-32/コントラスト40/ガンマ1.1が適正だと感じた。
あまり青を下げすぎると黒が黄色かぶりするし、上下の角度によっても色味が異なるので、かなり微妙なところ。単純にRGBの色かぶりを補正したいだけなら、Windows 7標準機能でも提供されているので、パラメータの調節が面倒だというユーザーはこちらを使ってみてもいいだろう。
●ソフトウェア面も細かな配慮が
i300を使い出し始めて思わずニヤッとしたのは、プリインストールアプリの少なさ。多くの国内メーカー製PCでは、普段使わないようなアプリをてんこ盛りプリインストールされているのだが、本製品のプリインストールはWindows Live EssentialsとWDLCへのリンク、McAfeeインターネットセキュリティぐらいしかない。それ以外はドライバ関連のみとなっている。
そのWindows Liveですら、サービスを利用する上で頻度の高いMessengerやWriterは入っているものの、Bingツールバーは入っていないなど、(本当にマウスコンピューターが自社で選別してプリインストールしているかどうかはわからないが)実用性を重視したチョイスとなっている。
個人的にPCを購入してからまずやることは「使わないプリインストールアプリのアンインストール」だったのだが、i300だとその手順が少なく、すぐに使い始められる。使うアプリがあらかじめ決まっているパワーユーザーには嬉しい配慮と言えるだろう。
電源プランの選択、音声ボリューム、および液晶の明るさ、バッテリ残量、CPUの駆動モード、無線LAN/Bluetooth/Webカメラ/タッチパッドのON/OFFを容易に行なえる「Control Center」というアプリも、タスクトレイに常駐している。Windows 7のコントロールパネルで言う「Windows モビリティ センター」に似ているが、こちらのほうが高機能で使いやすい。
また、Creativeの音質改善ソフトウェア「THX TruStudio PRO」も常駐する(デスクトップのショートカットでアクティベーションする必要がある)。本製品はステレオスピーカーを本体底面に装備しているが、このおかげでボリュームが小さく、イマイチ迫力に欠ける。THX TruStudio PROをONにすれば、迫力があるとまで行かなくとも、かなり音質と音量が改善されるので、内蔵スピーカーを使用する際は活用されたい。
Windows Live Essentials 2011をプリインストールするが、Bingバーやファミリー セーフティなどは入っていない(Outlook Connector Packは筆者があとから追加) | 電源管理ができる「Control Center」 | 音質改善ソフトウェア「THX TruStudio PRO」 |
●見せてもらおうか、i300の性能とやらを
i300の性能については、西川和久氏のコラムでいくつかベンチが行なわれていたので、ここでは簡単に本製品がターゲットとするゲームにおける性能を見ていきたい。
ベンチマークとして3DMark11や3DMark06、LostPlanet 2、Heaven Benchmarkなどを走らせてみたが、本製品はGPUにGK107ベースのGeForce GT 650Mを搭載していることもあり、以前テストしたデスクトップ向けのGeForce GT 640に似たスコアとなっている。i300では外部ディスプレイ出力をしない限り、解像度が1,366×768ドットに限られるので、かなりのゲームがプレイ可能なスペックだ。
(1,366×768ドット、640の結果は以前の記事から流用)
GeForce GT 640+ Pentium G630 | GeForce GT 650M+ Core i7-3612QM | |
3DMark 11 | ||
P Score | 2295 | 2420 |
Graphics | 2327 | 2260 |
Physcis | 2421 | 5586 |
Combined | 1994 | 1837 |
Heaven Benchmark 3.0 | ||
Score | 904 | 803 |
FPS | 35.9 | 31.9 |
Min FPS | 9.6 | 16.8 |
Max FPS | 80.4 | 66.2 |
LostPlanet 2(DX11) | ||
A | 32.1 | 35.2 |
B | 26.9 | 27.6 |
LostPlanet 2(DX9) | ||
A | 39.7 | 38.6 |
B | 27.7 | 47.2 |
3DMark06 | ||
Score | 11682 | 13100 |
SM 2.0 | 5541 | 5458 |
SM 3.0 | 5852 | 5665 |
デスクトップ向けのGeForce GT 640と大きく違う点は、GPU Boostに対応していること。GeForce GT 640ではコアクロックが固定だったが(テストしたGV-N640OC-2GIは1,050MHz)、GeForce GT 650Mはベースが835MHz、TDPに余裕があればBoostで950MHzまで上がるような仕組みが盛り込まれている。デスクトップ向け上位のGeForce GTX 680から継承された機能だ。
この下にGeForce GT 650Mを搭載しているようだ | GeForce GT 650MはGPU Boostに対応し、最大950MHzで駆動する | Optimusのロゴが眩しい |
今回筆者は初めてNVIDIA Optimusを体験するわけだが、この仕組み自体も非常に合理的で、GeForceの処理性能が必要とされるシーンでのみGeForceが有効になるため、バッテリ駆動時間と性能の両立が可能となっている。また、従来のGPU切り替え式では、メーカーから提供されたNVIDIA/Intelが1つのパッケージになったドライバを必ず適用する必要があったが、Optimusでは各々独立して更新可能なため、バグフィックスや新機能などへの対応も素早く行なえる。
さて、実際にFPSゲーム「Unreal Tournament 3」を1,366×768ドット、ディテール最大でプレイしてみたが、Galaxyが提供しているオーバークロックツール「Xtreme Tuner Plus」で監視している限り、フレームレートは90fps前後でかなり快適にプレイできた。一方PhysXを利用するようなステージでも、30fps~50fps前後のフレームレートが確認でき、十分プレイ可能なレベルとなった。ディテールを上げるとカクついてしまい、とてもプレイできるレベルにはならない初代Alienware M11xとは雲泥の差だ。
続いてAMD向け最適化で有名なレーシングゲーム「DiRT3」をSteamからダウンロードしてプレイしてみた。こちらはNVIDIAコントロール パネルで何も設定せずに起動すると、Ivy Bridge内蔵のIntel HD Graphics 4000を利用するようで、プレイ可能な速度ではあるものの、ディテールプリセットを「Ultra」にしてしまうと結構重い。しかしNVIDIAコントロールパネルのOptimus設定でGeForce GT 650Mを使用するよう指定したところ、Ultraのディテールでもちゃんと40fpsを維持し、かなり快適にプレイできた。
いずれのゲームも、初代Alienware M11xを遥かに上回る快適さでプレイできた。スペックからある程度快適に動くことは予想できていたとは言え、11.6型ノートでこれだけ楽しめるというのは感慨深いものがある。
●高性能は3Dだけには留まらない
さて、CPUもGPUも高速なi300だが、パフォーマンスはそれだけには留まらない。まず、筆者が選択したモデルはIntel SSD 520シリーズが搭載されているのだが、これが以前レビューした通り非常に高性能。520シリーズは6GbpsのSSDでは採用実績の多い「SF-2281」コントローラを採用しているが、同期型NANDの採用で可圧縮/非可圧縮データともにリードが高速。ランダムデータでも490.4MB/secのシーケンシャルリードを計測した。書込みは173.6MB/sec前後にとどまるが、それでもHDDよりは高速だし、圧縮可能なデータであればさらに速い。
その代わり、同価格のHDDモデルと比較すると容量が少ないので(HDDモデルは500GB)、このあたりはトレードオフとなるが、データはUSBメモリや母艦デスクトップPCに逃せば問題がない。それよりもWindows自体が軽快に起動し、各種アプリケーションの動作が速いほうが、筆者にとってメリットがある。
採用されているIntel SSD 520シリーズの速度 |
また、i300の前面にはSDカード/メモリースティック対応カードリーダを備えているが、内部的にPCI Express接続のチップのようで、これが非常に高速だ。実際にSanDiskのUHS-I対応のmicroSD「Mobile Ultra SDSDQY-016G-U46A」(16GB)でテストしたところ、シーケンシャルリード44.03MB/secを記録した。これはUSB 2.0のカードリーダでは成し得ない速度だ。将来的にデジカメ用のSDカードをUHS-I対応の高速タイプに乗り換えた時に、写真の取り込みの高速化も期待できるわけだ。
SDSDQY-016G-U46Aを用いた内蔵カードリーダのテスト |
さらにIntel H76 Expressチップセットは標準でUSB 3.0を2ポート備えたのも大きなトピック。i300も漏れなく2ポートついており、外付けHDDなどを増設できる。Western DigitalのUSB 3.0対応ポータブルHDD「My Passport Essential SE」(1TB)を接続し、ベンチマークをとったところ、シーケンシャルリードで90MB/sec超を確認できた。これだけの速度があれば、本体の容量が足りなくなった時も心強い。
My Passport Essential SEを接続してテストした結果 |
それからIntel Quick Sync Videoも見逃せない機能の1つ。残念ながら筆者は日頃ビデオをエンコードすることはあまりないのだが、CyberLinkの「MediaEspresso 6.5」など、Quick Sync Videoを活かすようなアプリケーションも出てきているので、機会があったら活用してみたいと思う。
●かっこ良く使うためのデバイスというわけで、性能面では文句なしにどんな用途でも快適に利用できるi300だが、さらに快適に使えるようデバイスを揃えておきたい。
バッファローのBSMLB06NとRazerのFerox |
筆者はいつもノートとともにマウスを持ち運ぶのだが、i300のためにバッファローのBluetooth 3.0対応マウス「BSMLB06N」シリーズを購入した。非常にコンパクトで持ち運びに適したレーザーマウスだ。i300ではあらかじめBluetooth 4.0+LEモジュールが組み込まれているので、USBアダプタなしで利用できるメリットは大きい。以前AS1830Z-A52C/Kの時はBluetoothが内蔵されておらず、マウスのアダプタで結構悩んだのだが、ようやくその呪縛から逃れられそうだ。
以前Bluetoothマウスをテストした時は、レポートレートが足りなかったり、電池寿命がやたらと短かったり、サスペンド復帰時から認識されるまで時間かかったりといった問題があったと記憶しているが、近年のBluetoothマウスはそういった弱点も改善されたようで、結構快適に使えている。あわよくば進む/戻るボタンやチルトホイールまでを装備して欲しかったが、このサイズではやはり無理があるようだ。
それから先述の通り内蔵スピーカーは、THXをONにしてようやく実用レベルといったところだが、それでもパワー不足は否めない。そこでオススメなのがRazerの「Ferox」。USBポートで充電し、ミニジャックに接続することで使えるポータブルスピーカーだ。サイズがサイズなので、低音に関しては過剰な期待はできないのだが、それでも内蔵スピーカーよりはいい音が鳴る。充電式なので、バッテリ駆動時にUSBバスパワーを使わずに済むのもポイント。なお、Ferox接続時はTHXがOFFのほうが自然な音だ。
●「質実剛健」という言葉がふさわしいゲーミングノート
NEXTGEAR-NOTE i300は、マウスコンピューターのラインナップでゲーミング向けブランド“G-Tune”を冠した「モバイルゲーミングノート」だ。ゲーミングPCと言えば、Alienwareのようにあっちこっちが光ったりとか、先進的なデザインとかを思い浮かぶ。しかし本製品はそんな飾りっけは一切なく、ゲーミング向けデザインから設計したノートというより、忠実に高性能モバイルノートという観点から設計を築きあげ、“気づいたらゲーミングのニーズにも応えられちゃった”、いわば質実剛健なモバイルノートと言える。
性能とモビリティを両立させたモバイルは、今のところソニーの「VAIO Z」などが挙げられる。しかし、11.6型だけに絞って見ると、Alienware M11xが終息となった今、対抗馬がない状態だ。小型フォームファクタで高性能を待ち望んでいた筆者にとって、本製品はまさに“悲願の”モバイルノートとなってしまった。今後とも各メーカーに頑張ってもらって、このクラスを盛り上げてもらいたいところだ。
(2012年 7月 12日)
[Text by 劉 尭]