Hothotレビュー
マウスコンピューター「LB-S221X-SSD」
~クアッドコア搭載の高性能11.6型モバイルノート
(2013/1/8 00:00)
マウスコンピューターの「LuvBook S」シリーズは、11.6型モバイルでありながらクアッドコアCPUが選択可能な高性能モバイルノートだ。今回このホワイトモデルをお借りして、ベンチマークを交えた試用レポートをお届けしたい。
本シリーズは、これまでブルー、レッド、シルバーの3色で展開されてきたが、2012年11月14日よりホワイトモデルが新たに追加された。しかし在庫の関係上、約1カ月間販売が中止されていた。12月26日より再販が始まったばかりである。
今回試用したのは、CPUにクアッドコアのCore i7-3632QM(2.20GHz、ビデオ機能内蔵)、メモリ8GB、Intel HM77 Expressチップセット、240GB SSD、OSにWindows 8などを搭載した上位構成の「LB-S221X-SSD」だ。直販価格は79,800円となっている。
11.6型でクアッドコア搭載、高性能を実現
LuvBook Sシリーズの最大の特徴は、11.6型というモバイルサイズでありながら、クアッドコアのCore i7が選択可能な点である。日本で販売されているノートPC全体を見渡しても、11.6型でクアッドコアCore i7が選択可能なノートは異例で、本機のほかに、同じくマウスコンピューターから発売されている「NEXTGEAR-NOTE i300」(以下i300)シリーズぐらいある。13.1型であればソニーの「VAIO Z」シリーズが選択肢として挙げられるが、当然ワンサイズ上となる。
今回試用したモデルはCPUにCore i7-3632QMを搭載。標準は2.2GHz駆動だが、Turbo Boost動作時は最大3.2GHzで駆動する。内蔵のグラフィックスは上位のIntel HD Graphics 4000となる。このCPUはクアッドコアながらTDPを35Wに抑えており(通常のクアッドコアは45W)、これにより小型ファームファクタでの搭載を実現している。
また、LB-S221X-SSDではIntel SSD 520(240GB)の搭載も特徴としている。Intel SSD 520シリーズは性能と安定性に定評のあるSSDで、リテールパッケージは比較的高価なモデルに属する。詳しいベンチマークは後述するが、クアッドコアCPUと合わせて非常に高いシステム性能を実現している。
なお、BTOではデュアルコアのCore i5-3210M(2.50GHz、ビデオ機能内蔵)なども選択可能で、予算に合わせて構成を選択できる。Ivy Bridgeではいわゆる低電圧版(25W)が廃止されており、Ultrabook向けのウルトラ版(17W)か、標準性能版(35/45/55W)しか用意されていない。ウルトラ版はBGAパッケージのみのため、LuvBook Sは35Wの標準性能版CPUから選択することになる。
重量はやや重めだが、インターフェイスは一通り揃う
続いてデザインを見て行こう。天板は光沢のあるタイプで、細かいシワのような文様が入っている。本体色が白のため指紋が目立たず、このあたりは好感が持てる。天板はラッチレスで持ち上がるが、中央に指を引っ掛けるための突起が用意されているあたりも工夫が見られる。
右側面には、ケンジントンロックポート、ACアダプタ入力、Gigabit Ethernet、ミニD-Sub15ピン、HDMI、音声入出力などを搭載。一方左側面にはUSB 2.0×2、USB 3.0×1、SDカードスロット、排気口などを備える。USBマウスやキーボードなどを使わなければ、ケーブル系が必然的に右側にまとめられる設計思想のようである。
パームレストはこのサイズとしては比較的広めで、タッチパッドとボタンも横長ながら大きくスペースが取られている。パームレストはいわゆるパール系の塗装のようだが、光沢がないフレームとは少しの色違いがあり、一時期流行したネットブックのようなデザインに見えなくもない。このあたりは価格なりの作りという印象である。
タッチパッドは約80.9×39.7mm(幅×奥行き)と2:1のアスペクト比で比較的横長。画面とのアスペクト比に近いため操作しやすい。左右クリックは大きめで独立したボタンだが、ストロークがやや浅く少し硬いため、好みの問題もあると思うが、それほど操作性はよくない感じだ。
キーボードはこのクラスとしてはもはや珍しいとも言える、アイソレーションではないタイプ。11.6型ということもあり、\、[、]、/、\、アプリケーションキーといった使用頻度の低いものはピッチが実測で14.5mmとやや狭くなっている。しかしそのほかのキーは17.5mmのピッチを確保しており、ストロークも深いため比較的快適にタイピングできる。押下時のたわみは少々あるが、目くじらを立てて気になるほどではなかった。
電源ボタンと無線LANのON/OFFボタンは全角/半角キーの横に用意されている。i300の時はキーボードの右上にあり、持ち上げるときに誤動作してしまうことが多々あったが、本製品ではそれを回避できそうだ。ただし、i300では液晶を起こすだけでサスペンドからの復帰できる機能を備えているが、LB-S221X-SSDではその機構が省かれており、電源ボタンを押す必要がある。
液晶上部には100万画素のWebカメラ、キーボードの上部にはステレオスピーカーを装備し、パームレスト右端にもモノラルのマイクを備えている。また手前には各種LEDインジケータを装備している。インターフェイス回りはそつなくまとまっている印象である。
液晶の視野角はi300と同様に狭く、特に上下が狭いため姿勢を変えるたびに液晶の角度を変えたくなる。しかしi300の液晶と比較すると液晶の青みが弱く、補正せずとも許容範囲内である。このあたりはロットやメーカーの違いなどもあるので、一概には評価できないだろう。
スピーカーはクラス相応で、高音が中心で薄い感じだ。i300であればプリインストールされているTHX TruStudio Proを利用してある程度補正が効くが、本機にはプリインストールされていないため、良い音を出そうとすればヘッドフォンか外部スピーカーを接続したほうが良い。
底面はSSD部、メモリ部、CPU部、ファン部の4カ所に通風口が見え、放熱効果は高そうである。ネジ3本取り外し、ツメを外せばマザーボードやドライブにアクセスでき、メンテナンス性は高い。バッテリは取り外し可能で、57.7Whのタイプとなっている。装着は後ろの軸を固定して、回転しながらラッチにはめるというやや変わった方式だ。
同じメーカーなのでどうしても比べたくなるが、全体のデザインとしては、NEXTGEAR-NOTE i300と似て非なるものといった感じだ。i300がマットな質感なのに対し本製品は光沢な質感である。また、フットプリントも本製品のほうが小さく、特に奥行きが短いため、11.6型クラスを収納するカバンへの収まりが特に良い。それでもi300と比較すると厚みがあまり変わらないのは意外だった。
重量は実測で1,457gと、公称の1.5kgと比較するとやや軽い結果となった。i300が実測1,702gなので、245g軽量ということになる。単純にこれがGPU実装に必要な重量差と捉えることもできるだろう。245gというのは最近のスマートフォンで言うと2台分ぐらいの重さなので、GPUの必要がないのであれば、LB-S221X-SSDのほうがよりモバイルに適していると言えるだろう。
付属ソフトはあっさりしており、「McAfeeインターネットセキュリティ」のプリインストールが目立つ程度。唯一タッチパッドのドライバはあまり見かけないSentelic製のものだった。
可搬性の高いACアダプタと5時間駆動可能なバッテリ
付属のACアダプタは19V/3.42A出力対応の65Wタイプで、Delta Electronics製だ。2ピンACケーブルを利用し、本体サイズは実測で約107.7×45×29.3mm(幅×奥行き×高さ)と比較的小型。重量もケーブル込みで265gと軽量だ。
i300は90Wタイプだったとはいえ、標準ケーブル込みで517gだったので、それの約半分の重量だ。本体と同時に持ち歩いても、i300の本体のみの重量と同じ程度(1,722g)に収まるわけで、モバイルノートにふさわしいACアダプタと言えるだろう。
ACアダプタ本体にはLEDも装備しており、通電状態が確認できる。プラグはL字型ケーブルも細く、取り回しは比較的しやすい。
バッテリは着脱可能なタイプ。装着方法は少し変わっており、後部の軸を溝にはめ込んでから、閉めるように装着する。装着自体も少し硬めのため、少しコツがいる。
BBenchのキーストローク/Web巡回をONにし、液晶輝度を下から2段階めにした状態で駆動時間を計測してみた。今回も以前のMSI「GX60」の時と同様、Web巡回の部分がうまく動いていないようで、ほぼキーストロークのみの計測となってしまっているが、およそ5時間駆動した。実際の利用でも4時間近い駆動が可能だと思われ、クアッドコアCPU搭載モデルとしては比較的長いほうだろう。なお、i300では約3.6時間だったので、かなりいい勝負と言っていい。
バッテリを抜いたときの消費電力は、アイドル時で12W、Prime95負荷時で59Wだった。バッテリ充電時はもう少し上がるだろう。小型の65WのACアダプタで十分なのもうなずける。
シンプルな基板。Mini PCI Expressに空きも
先述の通り、ネジ3本とツメをはずすことで容易に内部にアクセスできるので、ついでに内部を覗いてみた。
CPUはソケット式で、上からヒートパイプにつながれたヒートシンクによって押さえられている。ソケット周辺のネジ止めは4点で、このあたりは心配がない。CPU用のヒートパイプは1本のみだが、このあたりはi300も共通だ。しかしGPUがない分ヒートシンクが小型化しており、軽量化に貢献している。
ファンは比較的大口径なタイプで、ベンチマーク負荷時も比較的低速で回転していた。不快な音はせず、騒音もかなり抑えられている印象で、パームレストなども熱くなることがなかった。大口径の排気口と比較的多い吸気口が影響していると思うが、35WのモバイルCPUを冷やすのには十分な性能を持っているとみられる。
CPU周囲の回路実装を見るとPWM回路は2+1フェーズのように見える。i300とは異なり低背のタンタルコンデンサが中心で、見える範囲ではアルミ固体コンデンサが1個しかない。このあたりにも設計思想の違いがみえる。また、i300は底面側からチップセットが見えたが、LB-S221X-SSDでは見えなくなっている。
メモリは4GBが2枚実装済みで、試用モデルにはサンマックス・テクノロジーズ製/Hynixチップ採用のDDR3-1600対応モジュール「SMD-N4G68H1P-16KZ」が採用されていた。サンマックス製モジュールは自作ユーザーの間でも定評があり、DRAMメーカーお墨付きの刻印がついているので安心できると言えるだろう。
IEEE 802.11b/g/n対応無線LANとBluetooth 4.0のコンボモジュールはRealtek製の「RTL8723AE」である。i300でも採用実績のあるモデルだが、2つのアンテナを備えているにも関わらず、理論転送速度は最大150Mbpsと少し見劣りする。せっかくの高性能モデルなので、次機では300Mbps対応品の採用に期待したい。
無線モジュールの横に、ハーフサイズながら1つのMini PCI Expressスロットの空きが見える。ネジも用意されているので、保証外となるものの、腕に自信のあるユーザーは好みの拡張カードをつけてみるのも良いかもしれない。
SSDは先述の通り、Intel SSD 520シリーズが装着されている。今でこそ520シリーズより高速なSSDは数多く市場に存在するが、それでも単体で購入すると2万円前後の高価なハイエンドモデルであることには間違いない。公称速度はリード最大550MB/sec、ライト最大520MB/secとなっている。
クアッドコアCPUに恥じぬ性能を発揮
それでは最後にベンチマーク結果を掲載する。使用したベンチマークはシステム全体の評価を行なう「PCMark 7」、DirectX 8世代の3Dベンチマークソフト「ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3」、そしてDirectX 11世代の3Dベンチマークソフト「3DMark 11」の3つ。比較用に手持ちのi300のものも掲載した。なお、手持ちのi300はSSDをMicronの「C400」256GBに換装してある(デフォルトは同じくIntel SSD 520の120GB)。
LuvBook S | NEXTGEAR-NOTE i300 | NEXTGEAR-NOTE i300 | |
---|---|---|---|
Intel HD Graphics 4000 | GeForce GT 650M | Intel HD Graphics 4000 | |
PCMark 7 | |||
PCMark | 5694 | 3678 | 5056 |
Lightweight | 5400 | 3929 | 4415 |
Productivity | 4516 | 3538 | 4073 |
Creativity | 10112 | 4249 | 7645 |
Entertainment | 4074 | 3333 | 4089 |
Computation | 17905 | 3260 | 11740 |
System storage | 5360 | 5081 | 5037 |
FinalFantasy XI Official Benchmark 3 | |||
High | 4863 | 4037 | 4855 |
Low | 7065 | 6477 | 6870 |
3DMark11 | |||
Performance | 751 | 2398 | 740 |
Graphics | 642 | 2235 | 631 |
Physics | 5951 | 5640 | 6447 |
Combined | 728 | 1829 | 721 |
さすがi300のワンランク上のCPUを搭載しているだけあって、PCMark 7全体的のスコアも高まっている。また、Intel SSD 520の高性能も目立つ。今回掲載していないが、一般的デュアルコアCPUを搭載したUltrabookと比較するとLightweightやProductivityのスコアの高さが目立つ。クアッドコアのパワーは別格だ。
興味深いのはファイナルファンタジーの結果で、Intel HD Graphics 4000はGeForceよりも高いスコアを示している。元々Kepler世代のGeForceはDirectX 9以前の3Dアプリケーションが得意ではないのだが、内蔵GPUの性能もここまで追いついたことを示す好例だろう。
SSDの性能を見るためにCrystalDiskMarkも走らせてみた。0fillデータが得意なSandForceコントローラを採用しているIntel SSD 520だが、ランダムデータでも概ねMicron C400を上回っている。Windows 8の最適化やクアッドコアCPUのパワーも相まって、実際の作業は非常に快適で、ストレスになる要因は一切なかった。
LuvBook S (0fill) | LuvBook S (Random) | NEXTGEAR-NOTE i300 (Micron C400換装) | |
---|---|---|---|
Seq Read | 500.9 | 497 | 492 |
Seq Write | 485.9 | 302.5 | 244.9 |
512K Read | 460.4 | 427.5 | 381.8 |
512K Write | 472.3 | 300.7 | 255.8 |
4K Read | 40.99 | 36.38 | 19.18 |
4K Write | 81.95 | 51.76 | 57.12 |
4K QD Read | 331.4 | 317.9 | 190.1 |
4K QD Write | 324.8 | 278.5 | 234.4 |
1.4kgクラスのモバイル性能を再定義
以上、LB-S221X-SSDを簡単に見てきたが、とにかく1.45kgでクアッドコアを持ち運べるというのが印象的だ。外資系のUltrabookより少々重い程度であり、単純に比較すればCPU性能はほぼ倍である。それでいて価格も8万円台なので、コストパフォーマンスも大変優れている。
時代のトレンドで、Ultrabookのようなスマートさやスタイリッシュを本機に求めるのはやや難しいが、持ち運びができて、なおかつパワフルなCPUが欲しいといった欲張ったニーズに応えられる製品である。今後の非Ultrabookなモバイルノートを再定義する1台と言えるだろう。