買い物山脈

バーチャロンの激しい操作に耐える“揺れないゲーミングデスク”を求め、耐荷重200㎏の「ステーブル・テーブル」に出会う

製品名
ステーブル・テーブル
購入金額
2万6,745円(天板・脚部込み)
購入時期
2024年4月
使用期間
3週間
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです

揺れに強いデスクじゃないと許せない

バウヒュッテのゲーミングデスク「ステーブル・テーブル」を導入

 突然だが、筆者は対戦型ロボットアクションゲーム「電脳戦機バーチャロン」の大ファンだ。3年ほど前、4Kモニターとモニターアームの記事を執筆した時にも、ゲーム画面と対応コントローラ「VCD-18-c 18式コントロールデバイス『ツインスティック』」の写真をこっそり載せている。

 このコントローラは、2018年に健康器具メーカーのタニタがクラウドファンディングを経て生産したもので、限定1,000台のうちの1台。価格は4万4,600円と非常に高価だったが、買わないという選択肢はなかった。

 それから1年ほどしてから製品が手元に届き、現在まで、大好きなゲームを思う存分堪能している……と言いたいところなのだが、実は5年間ほぼ手つかずで放置されていた(3年前の記事の前後もプレイはしていない)。理由は当時も使っていたデスクだ。

 実はこれはデスクではなくテーブルで、元々は違う用途のために購入したもの。それが転居の際に行き場を失い、仕事用のPCデスクに流用された。仕事用としてはそれほど大きな不満はなかったのだが、「バーチャロン」のプレイ環境としてはとても不満だった。試しにプレイしてみた動画がこちら。

 操作の震動がテーブルに伝わり、大きく揺れるのである。中でも「バーチャロン」には“漕ぎ”と呼ばれる移動速度を上げる特殊操作があり(動画で実践している)、かなり激しく左右のスティックを動かすのだが、その際にはテーブルが激しく揺れる。

 こう見えて筆者はとても繊細に操作しており、テーブルの揺れのせいで手元の動きがブレて誤操作につながる。これがたまらなくストレスで、遊ぶ気持ちが失せてしまった。

 このテーブルは天板に4本の足を個別に固定するだけのシンプルなつくりになっている。普通に使っている分には不安定感はないのだが、4本の足が独立している形状から、揺らす動きにはとても弱い。

 さらに細かいことを言えば、天板の高さが64cmと低め。一般的なデスクの高さは70~72cmだそうで、6cmは低いことになる。原稿執筆中の姿勢の悪さにもつながり、重度の肩こり持ちの筆者には良くないと思ってはいた。また天板の角が鋭角で、キーボード入力時に腕が触れていると痛くなるのも気になる。

 そう思いつつも公私とも忙しい日々で数年が経ち、使っているテーブルにも痛みが出てきたので、いよいよ重い腰を上げて買い替えることにした。

こちらが2020年当時の旧環境。このまま4年近く変わらずに来た

頑丈そうなゲーミングデスクも意外と横に揺れる

 旧環境を踏まえて、新しいデスクにはいくつかの条件がある。

 まずは頑丈で揺れに強いこと。「ツインスティック」を激しく動かしても操作がブレないものだ。調べてみると、FPS等でマウスを操作する際の振動がモニターに伝わって揺れるのが気になる人もいるそうで、ゲーミングデスクは安定性を重視したものが多そうだ。

 さらに筆者の場合、モニターアームの設置が可能なことも重要。筆者の環境だとモニターアームは奥ではなく左側に取り付けしたいのだが、デスクの脚部パーツが邪魔をして取り付けられない場合がある。固定用のクランプの幅を測ってみると、天板の端から最低8cmはスペースを確保したい。

 あとは設置スペース的にデスクの横幅が120cm前後であること。そのほかテーブル高さや天板の角の形状なども気になるが、優先順位としては低め。ひとまずこの条件でゲーミングデスクの実物を見に行くことにした。一番気になるのが揺れなので、カタログを眺めていてもどうにもならず、実物に触ってみるしかない。

テーブルの天板の角が鋭角で、キーボード入力中に当たっているとちょっと痛い

 ということで、さっそく秋葉原へ向かったのだが、ゲーミングデスクの設置店舗はそう多くない。PC系のショップには時々置かれているものの、大きなゲーミングデスクは設置スペースを広く使うので、1つの店舗に1台か2台置いてあればいい方だ。

 筆者が見た中でもっともバリエーション豊富だったのは、ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba。2階のPCデバイスコーナーにゲーミングデスクの設置スペースがあり、数台が並べて置かれている。さらに6階のテレビゲームコーナーにも数台置かれていた。こちらはデスクやチェア、モニターなどをまとめて設置し、ゲームプレイ環境のイメージを作ってある。

 いずれの製品も筆者のテーブルに比べればはるかにしっかりしており、見た目にもかなり重量感がある。これなら揺れにも強かろうと思い、机を掴んでゆすってみる。するとどのデスクも前後の揺れには強いのだが、左右には思ったより揺れが出る。条件の横幅120cmを超える大型で頑丈そうなデスクでも、横揺れはかなり大きなものもあった。

 色々触った中でもっとも揺れに強いなと感じたのは、バウヒュッテのゲーミングデスク。高さ調整が可能なモデルで、秋葉原の複数店舗に置かれていた。高さ調整が可能な分、揺れには弱そうに思うのだが、実際に触るとそれほど揺れない。それでも許容範囲かどうかギリギリという印象だ。

バウヒュッテのゲーミングデスクもヨドバシカメラ マルチメディアAkibaに置かれている

 この日はいったん帰宅し、バウヒュッテの製品情報をチェック。すると高さ調整はできないが、天板の耐荷重が200kgと他の製品より圧倒的に強く、なおかつ揺れにくいことを売りにする製品を見つけた。「ステーブル・テーブル」という商品名で、直訳すると「安定したテーブル」だ。

 そして秋葉原で見た揺れの小さなデスクは、「ゲーミングデスクHD」というもののようで、耐荷重は100kgとある。これでもほかのゲーミングデスクよりかなり優秀なのだが、「ステーブル・テーブル」はこの2倍の耐荷重があるようだ。しかも公式サイトでは、わざわざ横揺れさせた動画まで載せてある。

耐荷重200kgをうたう「ステーブル・テーブル」

 耐荷重と揺れへの強さはイコールではないものの、比較して安定性が高いとは想像できる。これこそ筆者が求めていたものに違いない。実物を見られなかったのは残念だが、今回は通販で購入することにした。

耐荷重200㎏のデスクを組み立て。部品点数は意外と少ない

 「ステーブル・テーブル」は、天板と脚部が別売りになっている。天板はサイズが120cmと140cmの2パターンあり、それぞれブラックとオークの2カラーがある。脚部は専用の1パターンだ。サイズは筆者の希望する120cmを選択。カラーはオークにすると価格が数千円上がるため、特にこだわりのない筆者はブラックを選んだ。

 届いた製品の組み立ては、筆者1人で行なった。重量は天板が13.7kg、脚部は9.2kgで、合計約23kgになるが、成人男性なら何とかなる。ただ今回は既存のテーブルの置き換えのため、既にPCなどが置かれている部屋で組み立てたため、実質3畳分ほどのスペースしかなく大変だった。

 部品は鉄製の脚部が4つあり、左右の脚部になる縦材と、その間の上と下に入れる横材という組み合わせだ。完成すると正面から見てロの字に鉄骨が組み上げられる形なり、横揺れに強いのも納得がいく。組み立ては天板の組付けも含め、付属のネジを使うだけでよく、プラスドライバー1本と付属の六角レンチだけで作業できる。

作業スペースが狭くて撮影困難な点はご容赦を。脚部は4つの鉄骨を組み合わせて作る

 脚部の部品を見ると、「鉄骨を溶接して黒く塗りました」という感じがありありと見え、インテリアよりも工業製品っぽい印象がある。塗装の質は悪くないので実用上の問題はないし、足元を見ることもほぼないので気にならないが、高級感を求める人には向かないだろうとは思う。

溶接の跡がはっきり見えるが、塗装は丁寧で使用上の問題はない

 組み立て作業は撮影も含めて約1時間。シンプルな説明書に従って作業するだけで特に難しいところもなく、広いスペースがあればもっと早く終わったと思う。強いて言えば、天板の裏面から脚部を組付けた後、23kgのデスクを抱えて上下ひっくり返すのがそれなりに大変なので、腰を傷めないようには気をつけたい。

脚部を組み上げたところ。確かに頑丈そう
天板は裏面からネジ止めになる。固定箇所は多いが、ネジ止めでしっかり固定されるのか若干不安
こんな感じで脚部と天板を組付け

 早速設置して揺らしてみると、がたがたと揺れてしまった。本製品の足は鉄の脚部の下に丸いアジャスターが付いており、左前か右後ろが浮いてしまうようだ。この2カ所のアジャスターを手で回し、きちんと接地するところまで伸ばしてやると、がたつきもなくなり安定した。これで設置作業は完了だ。

質実剛健で飾りっ気はないが、間違いなく揺れに強い

とりあえず設置。後ろのメタルラックは以前のテーブルと高さを合わせていたので、後日調整する

 完成したデスクを見ていこう。天板は樹脂製の手触りで、細かいシボ加工を施してある。こちらも高級感とは縁遠い感じだが、触れた感じはさらさらしていて、以前の木製テーブルに比べて体温を持っていかれる感じが少なく快適だ。シボ加工の凹凸は小さいので、書き物くらいは問題なくできる。また天板の上面は角が取られて丸くなっており、腕が当たっていても痛くない。これも筆者の要求どおり。

 高さは72cmになる。一般的なデスクより気持ち高めかなとも思うが、身長174cmの筆者の場合、椅子の高さを調整すればぴったりに合わせられる。以前のテーブルの64cmが低すぎたのも実感する。

 天板は端まで完全にフラットで、余計なものがついていないのもいい。ゲーミングデスクというと、ドリンクホルダーやヘッドセット掛けがあったり、側面などに装飾が施されていたりするものが多い。筆者はドリンクホルダーなどは使わないし、装飾で天板に凹凸があるとモニターアームの設置の妨げになる。

 ここまでは要求どおりだが、揺れはどうだろうか。前後左右にゆすってみると、確かに今まで触ったどのゲーミングデスクよりも揺れが小さい。モニターアームで取り付けられたモニターの揺れは少しはあるのだが、テーブル自体の揺れや揺らしている手ごたえはほとんどない。揺れの少ないデスクが欲しいという希望は、かなり満足できるレベルだ。

 では早速、「バーチャロン」をプレイ。

 以前よりも操作時のテーブルの揺れが格段に小さくなっている。モニターの揺れはあるものの、以前よりは少ない。筆者の操作も安定したおかげで、以前より思い切ってガチャガチャと大きく操作できており、発生する震動エネルギーも大きくなっているはずだが、この程度で済んでいる。

 「バーチャロン」は元々、20年以上前にあったアーケード版のゲームであり、当時は数百kgある筐体に「ツインスティック」がくっついていた。さすがにそこまでの安定性はなく、100%の満足感とまではいかないのだが、デスクのせいでプレイ感を損なっているとまでは言えない程度にはなった。

 しかしその後もプレイを続けていると、デスクの上に置いてあったものがいきなり床に落ちた。少しは震動があるので仕方ないかなと思ったが、よく見るとデスクの位置が少しずれている。どうやらプラスチック製のアジャスターが滑りやすく、操作の振動で少しずつ動いてしまっているようだ。

 これは滑り止めを入れねばならないと思い、家に残っていた食器用の滑り止めシートを切り、アジャスターとフローリングの床の間に入れた。これは大成功で、前後左右にどう押してもびくともしなくなった。滑り止めと同時に、フローリングの傷対策にもなりそうだ。

滑り止めをこんな形に切る
アジャスターの下に挟む。見た目はともかく効果は劇的

デスクは気軽に変えてもいいものなのだ

 デスクはPCのようにスペックで判断できるものではないので、実物を見ないまま購入するのは不安があった。今回は結果的に望んだとおりのものが手に入ったが、できれば実物を見てから購入したかったなという気持ちはある。

 ただ実際に買ってみると、「深く考えずにさっさと通販で購入してしまえばよかった」という気持ちに変わった。ゲーミングデスクは物が大きく、古いデスクとの入れ替えや処分の手間もあるとはいえ、値段的にはせいぜい数万円のもの。もし気に入ったら10年くらいは快適に使えるだろうし、気に入らなくても二度と買い替えができないほどヘビーな買い物でもない。

 PC周りで考えると、PCケースの買い替えに近い感覚なのかなと思う。機能的な不満だけでなく、気分を変えたいくらいの意図で買い替えていいものだ。特にゲーミングデスクはここ数年で流行りだした印象で、機能性も徐々に高まり、バリエーションも豊富になってきた。

 ゲーミングデスクはPCゲーマーなら毎日使用し、必ず目に入るもの。キーボードやマウスなどと同様、機能的に優れたもので、テンションの上がるものを選んでおくのは重要だ。筆者のように「バーチャロン」での激しい操作を想定するのはレアだと思うが、揺れないデスクは他の作業時にも確かに快適だ。ゲーミングデバイスの1つとしてゲーミングデスクにも目を向けて、各社の製品を見比べてみていただきたい。

圧倒的に快適度が増した「バーチャロン」環境。5年分の思いを込めて存分にプレイしよう

 余談だが、「ツインスティック」は最近になって断続的に受注販売されている。価格は6万8,200円とさらに上がり、執筆時点では年内発送分で受注停止となっているが、今後も準備が整い次第、予約を再開するとしている。最新情報はX(旧Twitter)のTANITA ツインスティック・プロジェクトZ(@t_twinstick)でご確認を。

 また「バーチャロン」はアーケード版3部作を移植したPS4版「電脳戦機バーチャロン マスターピース 1995~2001」が2019年に販売されている。現在もオンライン対戦がにぎわっているほか、タニタ主催による大会も開かれている。

 筆者もようやく環境が整い、そろそろ少しずつ遊び始めたところだが、発売から5年近く経ち、オンラインの対戦相手は達人揃い。トッププレイヤーにはなかなか勝たせてもらえず、それでも何度も対戦してもらえて大変楽しい時間を過ごせている。ぜひ読者の皆様もご参加いただきたい。……余談と言いつつこちらが本題だったかもしれない。