買い物山脈

1年間使い続けて感じた「VAIO S11」の魅力

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです
11.6型液晶を搭載した小型のモバイルノートPC「VAIO S11」

 VAIO S11は、11.6型液晶を搭載したVAIO株式会社のモバイルノートPC。ビジネスユーザーをターゲットとしたPCではあるが、法人用ではなく一般向けにも販売されており、カラーバリエーションはシルバー、ホワイト、ブラックに加えてPCでは珍しいピンクもラインナップに追加。2015年12月の発売から1年が経過するが、現在もメインPCとして販売されている。

 一般的にPCなどの電化製品は発売当初にレビューされるものだが、外観やスペック、簡単な使い勝手はわかるものの、長期使わなければ見えてこないという部分も多い。

 本稿は自腹で購入した製品をレビューするコーナーであるというコンセプトを踏まえ、購入からから1年間、自分のメインPCとして使い続けたVAIO S11の感想を振り返ってみたい。

メインPCの故障が理由で新マシンを検討

 VAIO S11を購入した理由は、メインマシンとして利用していたNEC PC「LaVie Z」の2012年モデルが壊れてしまったという非常に単純な理由だ。

 ある日突然電源が入らなくなり、NECロゴもBIOSも一切表示されない。サポートに問い合わせても、修理金額が非常に高額になるという回答を受けたこと、LaVie Zの軽さは魅力だったが、バッテリが持たない、キーが打ちにくいというところに課題を感じていたこともあり、新PCを購入することにした。

VAIO S11

 PCは小型の方が好みのため、新PCは11型クラスを検討しており、当時はVAIO S11のほか、デルの「New XPS 13」も検討していた。

 New XPSは「13」という名前こそ付いてはいるものの、これはあくまでディスプレイのサイズで、本体サイズはほぼ11型というのが大きな特徴。USBやSDカードスロットなどのインターフェイスもS11とほぼ同等なほか、価格も手頃で納期も早く、非常に魅力的な存在だった。

 どちらを購入するかは最後まで悩んだのだが、より小型で軽量であること、有線LANやミニD-Sub15ピン、LTEモジュールを標準で搭載するといった機能面でS11を選択した。

 解像度については、New XPS 13は最大でQHD+(3,200×1,800ドット)という高解像度のディスプレイを搭載しているのに対し、VAIO S11はフルHD(1,920×1,080ドット)という違いがあったが、ディスプレイやプロジェクタに接続したときには、標準的なフルHD解像度の方が扱いやすいこと、そこまで解像度や画素密度にこだわりがないことで割り切ることに。

 価格に関しても、S11は標準で3年サポートがつくことを考えると、New XPS 13に保証を追加すればさほど差がない、と考えることにした。

 PCが決まった次に考えるのはカスタマイズだ。VAIO S11はスペックが固定された量販店向けモデルのほか、スペックをある程度選択できるカスタムモデルが用意されている。

 SSDについては、PC Watchで掲載されたレビュー(SIMロックフリーLTE内蔵の11.6型ビジネスモバイル「VAIO S11」)によれば、256GB以上のSSDはPCI Expressで爆速とのことだったので、迷わず256GBを選択。

 CPUは、今までだとついつい最高のものを……、とCore i7を選んでしまっていたが、「動画処理がメイン業務でもない限りCore i5で十分」、「むしろ重要なのはSSDの速度」という知人のアドバイスを受け、今回はCore i5を選択することにした。

 メモリは、今までの使い方では4GBあれば十分だったのだが、S11のカスタマイズメニューではSSDを256GBにするとメモリも8GBのみとなり、4GBを選択できないため8GBを選択。Officeに関しては、Office 365 Soloを契約しておりライセンスが1つ余っていたので、それを使うことにして構成からは省いた。

 なお、VAIOストアから購入する場合、本体に加えてVAIOオリジナルのSIMがバンドルされている。すでにSIMはMVNOのものを複数枚持っているため本来は必要ないのだが、当時は納期の問題でVAIOストアがもっとも早く入手できるというスケジュールであり、メインPCがない不自由さを早く解消したいということで、背に腹は代えられずVAIOストアのSIMバンドルモデルを選択。金額は1年間使える32GB容量のオリジナルSIM、3年保証を含めて193,104円だった。

いつでも気軽に持ち歩けるバランスの良い本体サイズ

 VAIO S11の細かなスペックについては前述のレビューに詳しいため、本稿では「使い倒した」と自負できるほど1年間使い込んできた実体験をベースにVAIO S11というPCを評価してみたい。

 外出先でPCを利用する機会が非常に多く、いつでも気軽に取り出して使えるモバイル性を最重視している筆者にとって、VAIO S11のサイズ感と重量は非常に満足度が高い。横幅300mm以下、縦幅200mm以下で1kgを切るというスペック自体はトップクラスではないものの、重さをさほど意識せず、カバンの中にも収まりやすいので、どこに持っていくのにも不便がないバランス感だ。

VAIO S11

 VAIO S11の前に使っていたLaVie Zの2012年モデルは、13.3型ながらVAIO S11の約920g~940gよりも軽い約875gという重量が特徴的なモデルだったが、軽さは嬉しいものの、13型クラスは少々カバンにしまうのが難しく、荷物をできるだけ減らしたい、ほかの荷物が多くてスペースが少ない、というときに困ることが多々あった。

 その点、VAIO S11は小物入れレベルの小さなカバンでもない限り、収容に困ったというケースはこの1年間出会っていない。問題点がないということは目立たないので気がつきにくいものだが、この「持ち運びを意識させない」サイズ感のバランスの良さは絶妙だと感じている。

小さめのカバンでもすっぽりと入るコンパクトさが魅力

 本体の横幅が狭いため、キーボードの面積も比較的狭めで、キーピッチは約17mm。小さめのキーではあるものの、配列は標準な日本語配列でファンクションキーも揃っているため、小型のPCに特有な独特の操作感はない。使い始めこそキーの小ささに戸惑うこともあったが、今では慣れに加えて指の移動が少なくて済み、効率良く指を動かしてタイピングできている。

キーピッチは狭めながら慣れると打ちやすい

 CPUは、これまでのPCでは常に選択できる内で最上位のものを選んでいたのだが、前述のとおり、今回選んだCore i5ではPCの重たさで困ったことはほとんどない。もちろん、タブブラウザでタブを数十も開いたときに重たくなることはあるが、一般的な使い方をしている分には、そういったストレスはほぼ無縁だった。アドバイスのとおり、高速なSSDを選択したことが良かったのだろう。

 ただし、ファンについては負荷のかかる作業を行なっている場合にかなり大きめの音になり、ほとんど音がしない静寂な空間では若干目立つこともある。このあたりは、小型ゆえに放熱面でどうしてもファンが回るのは仕方のないことだろう。

 打鍵感は、個人の嗜好に大きく影響される部分ではあるものの、個人的にはほどよいタッチ感があり押しやすい。また、キーを押したときの音も静音設計となっており、無音とまではいわないものの音は控えめだ。

 タッチパッドの反応も良好で、自宅で使っているMacBook Airと比べても遜色はなく、ほとんどストレスを感じない。タッチパッドについては設定の「Elan Smart-Pad」でタップやスクロールにさまざまな設定を割り当てられるため、ここも細かくカスタマイズしておくといいだろう。

Elan Smart-Padでタッチパッドをカスタマイズ

 なお、多少余談ではあるが、PCの主要な周辺機器とも言えるマウスについては、使いやすさと安定性からロジクールの「Unifying」対応モデルを愛用している。

 このUnifyingレシーバとして、一部モデルで提供されている小型レシーバ「Picoレシーバ」は、USBポートからの突出部が3mmと非常にコンパクトで、VAIO S11のUSBポートに取り付けると、ほとんど突出部が気にならない。

 PCの仕様によっては、ポートの部分が浅いため突出部分が長くなってしまうモデルもあるのだが、VAIO S11ならレシーバを取り付けたままの持ち歩きがほとんど気にならないレベルで、VAIO S11でBluetooth以外のマウスを使うならお勧めしたい組み合わせだ。

突出部3mmのUnifyingレシーバ「Picoレシーバ」

いざというときに助けられる多彩なインターフェイス

 小型ながらインターフェイスが充実しているのも、VAIO S11を選んだ大きな理由の1つ。無線LANやBluetoothといったノートPCとして標準的なワイヤレス関連はもちろんのこと、有線LAN、ミニD-Sub15ピン、USB 3.0×2、USB Type-C×1、フルサイズのSDカードスロットに加え、LTEに対応していることが購入における一番の決め手だった。

 このうちUSB Type-CとLTEについては、言及するポイントが多いため別段落でとりまとめることにして、ここではそれ以外のインターフェイスについて感想をまとめておきたい。

多彩なインターフェイス

 1年を通じて、これらのインターフェイスの中でその搭載をありがたく感じたのは、やはりミニD-sub15ピンと有線LANの2つだ。筆者は仕事柄、PCをディスプレイに接続してプレゼンテーションすることが多いのだが、現在主流となっているHDMIは、相性の問題も多く、大事な場面でなぜか画面が映らないなどということも多い。

 いざというときのバックアップとしてミニD-Sub15ピンがあるという安心感は非常に大きく、実際にHDMI出力がうまくいかない場面で、何度もミニD-Sub15ピンに助けられた。

 なお、実際にはVAIO S11はHDMI出力端子を搭載しておらず、USB Type-Cを経由してHDMI出力することになるのだが、このUSB Type-C経由でのHDMI出力はいろいろと苦労した経緯もあるため、前述のとおり別段落にて紹介したい。

 有線LANも、無線LANの帯域が混雑しているときでも安心してネットワークに接続できるという点で非常に重宝している。最近はスマートフォンやタブレットも含めて無線LANが主流となっており、無線LANではつながりにくいが有線LANなら問題なく通信速度が安定するというケースも多い。

 また、ネットワークがつながらないというトラブルも、有線LANポートがあれば「回線が悪いのか無線LANが不安定なのか」を簡単に切り分けられる。USBタイプのLANアダプタを使ったとしても、今度はそのLANアダプタが故障しているのかも、という課題が増えるため、PC直結でLAN接続できるというシンプルな構成は魅力的だ。

 物理的なインターフェイスは本体右側面に集中しているのだが、USBは左右に3.0ポートが1つずつ備えられており、USBで周辺機器を接続するときの取り回しにも便利。

 なお、右側のポートは「VAIO Control Center」から設定をオンにすることで、スリープ中や電源オフなどのときもUSB給電が可能になる。手持ちのスマートフォンがバッテリ切れになりそうなときには、ちょっとしたモバイルバッテリ的に使うことも可能だ。

USBは両側に1ポートずつわけられているため機器接続が取り回しやすい
VAIO Control Centerの設定で電源オフ時でも給電が可能になる

LTEモジュール搭載でいつでもネットにつながるストレスフリー

 VAIO S11購入の決め手となった要因が、SIMロックフリーのLTEモジュール。スマートフォンやタブレットでこそSIMロックフリーのLTEモデルが増えているが、Windows PCではVAIO S11の登場から1年以上が経過した今でも、LTE対応モデルの数はそれほど多くはない。

 またLTE対応Windowsの多くは、CPUがAtomやCore Mなどモバイル用途の物が多く、Core iシリーズを搭載した高性能なWindows PCは、VAIO S11の発売から1年経った今でもまだまだ珍しい存在だ。

背面にSIMスロットを搭載

 LTEの対応バンドはバンド1/3/19/21で、アップデートによりバンド8/11もサポート。各キャリアのバンド対応状況はVAIOの製品サイトでも紹介されており、アップデートによってNTTドコモおよびソフトバンク、Y!mobileの回線でも利用できるようになる。

 なお、厳密にいえば国際標準のバンド1、追加されたバンド11はauの対応バンドではあるのだが、どちらもauがメインとして展開するプラチナバンドではないため、あまり強く推していないのかもしれない。

 最近では、スマートフォンではテザリング機能が標準的になっており、喫茶店などで無料で使える無線LANサービスも普及が進みつつある。

 しかし、それでも別の機器を立ち上げたり、特定の場所に行かなければつながらなかったりという制限に比べ、PCが直接LTEにつながるという便利さは本当にありがたい。

 急ぎの仕事ですぐにWebをチェックしたい、電車の中や、小さなカフェテーブルなど場所が制限されているときなどに、PCを取り出して電源を入れるだけでネットにつながる、という手軽さにこれまで何度も助けられてきた。

 Windows 10から標準搭載されているモバイルホットスポット機能も、LTE搭載のおかげでさらに便利に使えている。

 この機能は名前のとおりPCが無線LANアクセスポイントとして動作し、スマートフォンやPCなど、ほかの無線LAN機器を接続できるため、モバイルルーターを持ち歩いているのとほぼ変わらないことになる。帯域も5GHzと2.4GHzを自由に選択できるのも地味に嬉しいポイントだ。

Windows 10標準のモバイルホットスポット機能

 なお、筆者のVAIO S11は、前述のとおりVAIOオリジナルSIMがバンドルされているが、このSIMはMVNOで主流となりつつある毎月一定量が使えるプランではなく、年間を通じて利用できるデータ容量が決まっているプランで、1年間プランの場合は最大32GBが利用できるようだ。

 MVNOの利用で、毎月一定量が使える方式に慣れていたため、「年間32GBというプランは使いにくそう」というイメージだったのだが、実際に1年使ってみるとこのSIMが付属していてよかったと考えを改めた。

 理由の1つは、この32GBがモバイルで利用するには十分だったということだ。

 32GBは1カ月あたり約2.6GBが利用できることになるが、無線LANがある場所は積極的にそちらを優先し、どうしても無線がない緊急時だけSIMを使うという運用にしていたところ、利用開始から10カ月が経過しても20GB以上が余っていた。これでは使い切れないと思い、残りの月は積極的にSIMを使うようにしてみたのだが、それでも残り10GBを切るまでは使い切れず、結果として大量にSIMの容量が残ったまま期限が切れてしまった。

 これは使う人の利用スタイルに依存するが、普段はオフィスで大容量のデータをやり取りし、外出時はそれほど多くデータを使わない、というユーザーであれば、32GBという容量は十分と言えるだろう。

 もちろん、MVNOのSIMを別途入手してもいいのだが、オリジナルSIMが便利なのはプリインストールされている「VAIO オリジナルSIM ユーティリティ」の存在だ。

 このユーティリティは容量無制限で200kbpsの基本通信モードと、容量32GBの高速通信モードを1クリックで切り替えられるだけでなく、高速通信の残容量もチェックできる。普段はこまめに基本通信モードにしておき、Webのチェックなど高速な通信が必要になったときだけ切り替える、という運用をすれば、データ容量をうまく運用できるだろう。

 もちろん、こうした機能はほかのMVNOでも搭載されてはいるのだが、別の機器を考えることなくVAIO S11だけで完結できるというのがオリジナルSIMの魅力だ。

VAIO オリジナルSIM ユーティリティ。今は1年経って利用できないが、有効期間内はデータの残量チェックや通信モードの切り替えが可能

USB Type-Cの映像出力はアダプタ選びに要注意

 有線LANやミニD-Sub15ピンなど、ノートPCでは省略されやすいインターフェイスも多数搭載しているVAIO S11だが、そうしたインターフェイス類はどちらかといえば一般的に普及しており、「枯れた」存在に近いのに対し、ほかのインターフェイスと比べると異質な存在と言えるのがUSB Type-Cだろう。

 前述のとおり、VAIO S11はHDMIやDisplayPortといった映像出力端子を搭載しておらず、デジタルで映像出力したい場合には、USB Type-CからHDMIやDisplayPortに変換する必要がある。

 VAIO S11を購入したVAIOストアには、Type-CをHDMIに変換する純正アダプタの取り扱いがなかったため、サードパーティー製のアダプタをいくつか入手してみたのだが、2つほど購入したアダプタがどちらも不安定で、ディスプレイに正しく映像が出る確率は2分の1以下というほど使い勝手が悪かった。

 これでは困るといろいろ調べたところ、どうやら最初に購入した製品は「HDMI Alternate Mode(Alt Mode)」に非対応だったということが判明。HDMI Alternate ModeについてはPC Watchのこの記事に詳しい(USB Type-CでHDMIを出力する仕様の詳細)が、端的に言えば、これに対応していない製品では、USB Type-C経由のHDMI出力はまともに動作しないということだ。

 HDMI Alternate Modeに対応した変換アダプタとして、新たに「JCA153 USB Type-C ディスプレイアダプターシリーズ」を入手したところ、HDMIで直接接続するのと変わらないほど安定した環境でディスプレイに出力できるようになった。

 ただし、このアダプタは出力以外のところに課題があり、シルバー部分の筐体とコネクタ部分の強度が低いため、HDMIの抜き差しをすると、シルバー部分の筐体が取れてしまい、中の基板が剥き出しになってしまう。購入して数週も経たないうちにコネクタ部分が破損してしまい、サポートに対応して交換してもらったのだが、また同じところが破損するという状況になったため、今はコネクタ部分をテープで補強して利用している。

JCA153 USB Type-C ディスプレイアダプターシリーズ
コネクタ部が破損しやすく、テープで強制的に固定している

 また、出力は安定したものの、HDMI出力に変換アダプタが必要というのは、取り回しの面でやや不便だ。特にオフィスで変換アダプタを使っていて、外出先でも使おうというときに毎回取り外すのは効率が悪い。

 外出時の持ち歩き用に、もう1つ変換アダプタが必要だと思っているタイミングで、アイ・オー・データ機器がUSB Type-CのHDMI変換アダプタ「US3C-DA/H」を発表したので、2台目にはこちらを購入することにした。こちらもHDMI Alternate Modeに対応しているのはもちろんのこと、構造上筐体が剥がれるような仕組みにはなっていないため、持ち歩きにはこのアダプタを使うことにしている。

アイ・オー・データ機器のUSB Type-C HDMI変換アダプタ「US3C-DA/H」

 据え置き用の端末として、サンワサプライからはUSB Type-C専用のドッキングステーション「USB-CVDK2」が発売されており、こちらはVAIOストアでも取り扱いされている公認商品だ。

 この製品はHDMI出力のほか、有線LANやUSB 3.0×2、USB 2.0×2、スピーカーやマイクなどインターフェイスを拡張できる。有線LANはVAIO S11本体に搭載されてはいるのだが、ケーブル1本の挿抜にまとめられるというのは手軽だ。オフィスでディスプレイを利用する場合はこちらの製品をお勧めしたい。

サンワサプライのUSB Type-Cドッキングステーション「USB-CVDK2」
VAIO S11とのサイズ比較

 なお、VAIO S11のUSB Type-Cは、映像出力やデータ通信は可能だが、スマートフォンやタブレットのようなデバイスの充電には対応していない。

 せっかくのUSB Type-Cなので、充電も利用したいところではあるものの、バッテリ回りは非純正のケーブルを使うとトラブルが発生することに加え、仕事場と持ち運び用でACアダプタを2つ用意していることもあって、さほど不満には感じていない。

バッテリ持ちは実利用で数時間程度

 モバイル用途で重要なバッテリ持ちについては、本体サイズが小さいこともあって、実働時間はさほど長くはない。VAIOのWebサイトには連続約15時間(JEITA Ver.2.0)とあるが、筆者の使い方ではこの半分以下といったところだ。

 当初のうちはバッテリを長持ちさせるため、VAIO Control Centerから「いたわり充電」をオンにし、バッテリが最大でも80%までしか充電できない設定にしていたのだが、この状態では輝度を下から2番目から下げていても2時間使い続けるのがやっと。長時間外で使い続けるには心もとなかった。

VAIO Control Centerで設定できる「いたわり充電」

 VAIOはバッテリが内蔵で、交換する場合はサポートに預けなければいけないということもあって、いたわり充電を選択していたのだが、外出先でPCが使えないロスのほうが大きいという判断により、いたわり充電をオフ、常にバッテリはフル充電するようにしたところ、4~5時間は十分に持つようになった。丸1日充電不要とは言えないものの、外出時であれば十分なバッテリ持ちだ。

 バッテリ回りは、前述のとおり電源オフ時でもUSB給電できる機能に加え、純正アダプタはUSBポートを1つ備えており、スマートフォンなどの周辺機器を充電するのに使える。出力が5V/1Aのため、iPadなどを充電することはできないのだが、充電のためにUSBポートを塞がずに済むのはありがたい。

純正アダプタはUSBポートを搭載

「普通」であることで不満を感じさせない良機

 1年に渡ってVAIO S11を使い続けて感じるのは、普通であることの重要さだ。VAIO S11はタッチパネルも搭載していないし、2in1のようにタブレットとして利用することもできない。液晶の解像度も、今となってはさほど高いものでもない。小型・軽量ではあるものの、世界最軽量を誇る軽さでもない。

 しかし、そういった目立つ特徴こそ持ち合わせていないものの、VAIO S11の魅力は「不満を感じさせない」ことにあるというのが筆者の感想だ。

 ノートPCでは省かれやすい有線LANやミニD-Sub15ピンのおかげで、仕事を切り抜けたという経験はこの1年の間に何度もしてきた。最軽量ではないが、バランスのいい本体サイズと重量は、重くてPCを持ち歩く気になれないという気持ちを起こさせることもなく、気軽に外でPCを使うことができた。

 また、数少ないLTE対応については、インターネット環境があるかどうかを一切気にすることがなくストレスフリーでPCを利用できるのが嬉しい。テザリングすれば同じ、と思うかもしれないが、PC自体がLTEにつながっている手軽さは、一度味わうとなかなか離れられない。

 唯一といっていい課題として感じているのが映像出力だが、MacBookシリーズがUSB Type-Cを積極的に採用している影響もあってか、USB Type-C対応の周辺機器もこの1年で増えつつある。フルサイズのHDMIがほしいという気持ちはもちろんあるものの、変換アダプタを常に持ち歩くようにしたので、いざというときに困るということはほとんどなくなった。

 むしろ今後の拡張性という点では、USB Type-Cは魅力的だ。VAIOのWebサイトにもあるとおり、VAIO S11のUSB Type-CはThunderbolt 3にも対応しており、4Kのディスプレイが2画面分出力できる40Gbpsの通信が可能なため、拡張性が高くケーブル1本でさまざまな使い方ができる。長く使い続けられるという点では、この拡張性の高さが今後活きてくるだろう。

 なお、サイズが1つ上のモデルである「VAIO S13」は、USB Type-Cの代わりにHDMIを採用しており、タッチパネルもカスタマイズで選択可能。サイズが大きくてもHDMIがほしい、というユーザーはS13を検討してみるのもいいだろう。

 搭載機能はごく普通ながら、実際の利用シーンで過不足がなく、さらにLTE搭載でどこでもインターネットにつながるモバイル性の高さ、USB Type-Cによる拡張性の高さなど、キラリと光る特徴が魅力的なS11。発売から1年以上が経過してもまだまだ現役で魅力的なモバイルPCとして、2017年も愛機として活用していきたい。