買い物山脈
レノボ・ジャパン「ThinkPad X1 Carbon」
~14型にして1.18kgの軽さを実現した高性能ノートを3カ月使ってみた
2016年7月28日 12:08
- 購入価格
- 169,344円(税込)
- 購入時期
- 2016年4月29日
- 使用期間
- 約3カ月
2016年2月に発売された「ThinkPad X1 Carbon」は、モバイルノートでありながら14型という画面サイズを備えつつ、1.18kgという軽さが特徴のノートPCだ。「ThinkPad X1 Carbon」と名がつく製品としては、これが第4世代のモデルということになる。
仕事で使うノートPCを概ね4~5年ごとに買い替えている筆者が今回選んだのが、このThinkPad X1 Carbonである。発売以来、本誌でも既にレビューなどで取り上げられているので既にお馴染みのモデルではあるが、今回は筆者が4月に購入して以来3カ月にわたって使用した上での感想を、本製品を選んだ経緯やカスタマイズの詳細なども含めてお届けしたい。
筆者にとって通算で3台目のThinkPad
今回購入した「ThinkPad X1 Carbon」は、筆者にとって通算で3台目のThinkPadになる。1台目はThinkPad X60s(2533-A5J)、2台目は本製品購入の直前まで使っていたThinkPad X201s(5143-2FJ)だ。X60sを購入したのが2006年、X201sが2010年なので、おおむね4~5年ごとに買い替えている計算である。
ThinkPadの熱烈なユーザー諸氏ならば、筆者をはるかに上回るキャリアを持つ人も少なくないはずだが、ThinkPadを含めた「トラックポイント採用のノートPC」にまで範囲を広げると、アキュポイント搭載のDynabookシリーズを筆頭に、90年代半ばから現在までの約20年間、ほぼ切れ目なく使い続けているので、そこそこのキャリアに入るのではないかと思う。
キーボードの「G」と「H」の間に配置されるポインティングデバイス、ThinkPadで言うところの「トラックポイント」は、かつては複数のメーカーが採用していたが、90年代後半にタッチパッドが主流となってからは採用メーカーが激減し、現在では実質的にThinkPad、それも特定のシリーズに残るのみとなっている。キーボードの表面からわずかに飛び出た構造ゆえ、ノートPCの厚みを減らす際にネックとなるのは素人目にも明白であり、ノートPCの薄型化につれてオミットされていったのは致し方ないところだろう。
しかし、キーボードを打鍵しながらホームポジションから手を動かさずにポインタを動かせる快適さに慣れてしまったいちユーザーとしては、トラックポイントのない機種への乗り替えは容易ではない。例えマウスが使える環境でも、無意識にこちらを使ってしまうこともしばしばで、幾度となくトラックポイント非搭載ノートへの乗り替えを画策したものの、現在まで果たせずにいるというのが実情だ。
画面サイズや重量、キーボードの打鍵感などから本製品をチョイス
といったわけで、今回の製品選定の決め手のうち、トラックポイント(本製品ではタッチパッドと合わせてThinkPadクリックパッドと呼ばれる)の占めるウェイトは非常に大きかったのだが、最初からトラックポイントがマスト要件だったわけではなく、トータルでメリットが大きければトラックポイント非搭載の製品もありだろうと、製品選びの段階では考えていた。
筆者の場合、ノートPCの使い方はやや特殊だ。まずいわゆるモバイルユースで使うことがほとんどない。同業者であればメーカーの発表会の取材などで、話を聞きつつ要点を入力していくために、ノートPCが使われる。こうしたケースではAC電源は使わずバッテリによる駆動であり、かつLTEなどを経由してネットに接続する必要がある。おそらく商談やプレゼンなどでノートPCを使う外回りのビジネスマンも、これに近い使い方になるだろう。
筆者の場合、こうした使い方は(皆無ではないものの)あまり多くはなく、どちらかというと遠征先のホテルで、メインの作業場と同等の執筆環境を構築するための利用が主になる。ホテルの一室で使うため電源は確保されており、かつWi-Fiが利用できるためLTE回線も不要だ。どちらかというとキーボードの打鍵感、および画面の見やすさなどの優先順位が高い。解像度は縦方向の1,080ドットが必須だが、あまり解像度が高すぎると(倍率を変更するにせよ)かえって細かすぎて使いにくいので、実質的にフルHD(1,920×1,080ドット)一択となる。
こうした状況から、筆者にとっての優先順位は以下のようなものだった。
・優先順位高:キーボード、画面周り(サイズと解像度)、CPUやメモリ周り
・優先順位中:重量、バッテリ駆動時間
・優先順位低:本体の薄さ、モバイル回線、タッチパネル
つまり純粋なモバイルノートよりも据え置き利用を目的としたノートに近い条件なのだが、従来使っていたThinkPad X201sは1.2kgオーバーで、持ち歩いていて重く感じることも多かったので、それは下回ることが条件になる。また持ち歩く荷物の関係で厚みはなるべく減らしたいのと、光学ドライブは不要なので、据え置きでしか使えない15型クラスのノートではなく、メーカーによってはプレミアムモバイルなどと呼ばれる、モバイルノートの上位グレードの製品が候補ということになる。
こうした条件をもとに昨年(2015年)末から候補を探し続けた結果、本製品以外でリストアップされた製品は以下の通りだ。
・Surface Pro 4
・VAIO S11
・LAVIE Hybrid ZERO
・DELL XPS 13
・VAIO Z
・ThinkPad X1 Yoga
ここから製品を絞り込んでいったわけだが、筆者的に画面サイズはどうしても13.3型以上でないと快適な作業はしにくいことから、まずSurface Pro 4とVAIO S11が候補から脱落。その後キーボードの打鍵感やデザイン、価格を考慮し、そこにトラックポイントという付加要因がプラスされて、ThinkPad X1 Carbonを選ぶに至った。惜しかったのはThinkPad X1 Yogaなのだが、本製品の1.18kgに対して1.36kgとわずかに重いこと、タッチ操作はとくに必須ではないこと、また若干価格が割高ということもあり、最終的に見送りとなった。
「約10%の軽量化」が大きな決め手に
本製品は同社オンラインストアで直販モデルとして複数のパッケージが用意されており、それらをベースにカスタマイズが可能となっている。ここでは筆者がチョイスしたパッケージをもとに、第4世代のThinkPad X1 Carbonについてざっと特徴を紹介していこう。
本製品の最大の特徴は、14型という画面サイズにして約1.18kgという軽さだ。本製品よりも軽いだけのモデルならほかにも選択肢はあるが、14型でこの軽さというのは競合が事実上存在しない。ちなみに本製品の1つ前の第3世代モデルは1.34kg(構成により異なる)だったので、約10%は軽くなったことになる。筆者にとっては、この約10%の軽量化により従来使っていたThinkPad X201sを下回る重量となったため、購入に踏み切る要因としては大きかった。
パネルについては、2,560×1,440ドットも選択可能だが、前述の理由で今回は1,920×1,080を選択。軽量化を優先するため10点マルチタッチ対応液晶も見送り、タッチ非対応の通常のパネルを選択した。パネルは非光沢で、ベゼルも含めてギラつきがないのは非常にありがたい。
CPUは第6世代インテルCoreプロセッサーで、複数の選択肢の中から今回はCore i7-6500U(2.50GHz、ビデオ機能内蔵)を選択。メモリはオンボードの8GB、SSDは256GBというチョイスになる。メモリについては購入後、Hyper-Vを使うためには8GBでは足りないことが判明したのだが、今回選んだパッケージは最大容量の16GBを選ぶオプションがなく、唯一ミスをしたと悔いている部分だ。SSDについては、日頃使うデータのほとんどをNASおよびクラウドに保存していることもあり、256GBあれば十分という認識だ。
本製品は冷却ファンも搭載されているが、筆者の作業においては、ブラウザ(Chrome)でまとめて20個ほどのタブを開く際に、決まってファンの回転が始まることを除けば、意識することはほとんどなく、また回転中も騒々しいとは感じない。またThinkPad X201sの時に悩まされていたパームレストの発熱もなく、長時間の打鍵でも問題なく利用できる。
購入後にWindows 10 Proへのオンラインアップグレードを実施
製品のベンチマークなどは過去の記事で触れられているのでそちらをご覧いただくとして、ここでは購入後に筆者が行なったアップグレードや設定変更など、カスタマイズについて紹介しよう。
まず最初は、Windows 10 HomeからProへのアップグレードだ。一般的な用途であればHomeのままで十分なのだが、リモートデスクトップ機能を常用する筆者としては、Proであることが欠かせない。今回選択したモデルでは、初期導入OSとして「Windows 10 Home 64bit」以外の選択肢がなかったので、Homeを購入したのち、WindowsストアでProへのオンラインアップグレードを購入することで対応した。ちなみに購入時価格は13,824円だった。
続いてタッチパッドの無効化だ。本製品はトラックポイントとタッチパッド、どちらも使用できる設計になっているが、トラックポイントを中心に使う場合、親指や手のひらがタッチパッドの表面に触れ、カーソルが意図しないところにジャンプしてしまうミスが多発する。本製品は「マウスのプロパティ」からタッチパッドの無効化が行なえるので、忘れずに設定しておくとよい。筆者とは逆にタッチパッドしか使わないのであれば、トラックポイントの側を無効化しておくとよいだろう。こうした無効化が行なえないPCもあるのでこれはありがたい。
最後に、マルチディスプレイ環境の構築だ。本製品はHDMIポートを搭載しているため、外部ディスプレイを接続することで簡単にマルチディスプレイ環境を実現できる。筆者はメインの作業場である自宅においてはこれに加え、USBディスプレイアダプタを使用してもう1台ディスプレイを追加し、トリプルディスプレイ環境で運用している。
一方、遠征先のホテルで使用する際には、iPadにアプリ「Duet Display」を組み合わせ、iPadをサブディスプレイとして代用している。サブディスプレイとして使う場合、iPadは9.7型でもそこそこ情報量は多く重宝するのだが、本製品と並べた際にバランスがよいのは、12.9型のiPad Proだ。こちらであれば画面サイズが近いことに加えて、ThinkPadと重ねて持ち歩く場合でもフットプリントがほぼ等しいので、バックの中での収まりがよい。接続もLightningケーブル1本で済む。
もっとも、これは筆者がこれらの製品を所有しているからであって、これから新たに出先で使えるサブディスプレイを揃えるのであれば、GeChicの「On-Lap」シリーズや、ASUSのMBシリーズなど、HDMI接続のサブディスプレイ専用機の方がお手軽だろう。Windows 10マシンを無線ディスプレイとして使える「接続」アプリの利用も、今後は選択肢に入ってくることになるだろう。
今後4~5年の利用にも耐えうるポテンシャルを備えた製品
最後に、3カ月間実際に使ってみて運用面で工夫が必要と感じた点をまとめておこう。本製品はモデルチェンジのサイクルから言っても、まだまだ継続販売されると考えられる。購入を検討している人も多いはずなので、製品選びの一助となれば幸いだ。
まず1つはUSBポートの数について。本製品は左側面に1つ、右側面に2つのUSBポートを搭載しており、このクラスの製品としては数が決して少ないわけではないのだが、マウスなど基本的な機器に加え、前述のUSBサブディスプレイや、場合によっては光学ドライブまで接続するとなると、さすがにポートが不足しがちだ。それゆえバスパワータイプのUSBハブは欠かせない。数千円程度ではあるが、購入予算に盛り込んでおくとよいだろう。
ちなみに筆者は未入手だが、もし本製品を据え置きで使う場合は、USB 3.0×4、USB 2.0×2、DisplayPort、VGA、RJ-45などを搭載した「ThinkPad OneLink+ ドック」なる純正オプションも用意されている。ただし価格は2万円オーバーとやや高価なのと、また本製品を接続することで本体側のHDMIポートが利用できなくなるとのことで、少々悩ましいところではある。
もう1つ、本製品は薄型の14型という他にあまりないセグメントの製品ゆえ、キャリングケースやバッグの選択肢に乏しい点は要注意だ。一般的にノートPCを収納するポケットがついたバッグは13.3型までの対応が多く、14型以上を持ち歩くとなると、ベルトで本体をしっかりと固定する、やや大げさな仕様のバッグが主流になるからだ。収納ポケットの付いたバッグを探すのではなく、保護ケースに収納したうえで市販のバッグに入れて持ち歩く方が、出し入れに一手間かかるものの、製品選びの選択肢は広がるだろう。
以上、ざっと製品選びからカスタマイズ内容、使用感までを振り返ってみたが、3カ月間使い込んでみて、非常によい買い物をしたというのが率直な感想だ。筆者はレビューの際、例え五つ星に相当するような製品でも公平性を重視してマイナスポイントも極力挙げるよう心掛けているが、こと本製品に関しては、特筆すべき問題点がほとんど見当たらない。
もちろん、重量は1kgを切ってくれればベターだとか、キーボードはアイソレーションタイプではなくかつてのパンタグラフタイプのほうが好みだとか、ないものねだりをするのは簡単なのだが、実用性に影響を与えるような問題は皆無だ。処理能力も非常に高く、動作も安定しているので、従来までデスクトップ機を中心に構成していたメイン環境を、この3カ月で本機を中心とした構成に完全に置き換えてしまったほどだ(放熱量の多いデスクトップを使わずに済むのは、この夏場は特にありがたい)。従来の買い替えペースで行くと、今後4~5年は使うことになるわけだが、本製品の高いポテンシャルをみるに、最後まで余裕で完走してくれることだろう。