Hothotレビュー
さらに軽くなった14型スリムモバイルノートPC「ThinkPad X1 Carbon」
(2016/4/28 06:00)
レノボ・ジャパンから登場した「ThinkPad X1 Carbon」は、14型液晶を搭載したスリムモバイルノートPCである。初代ThinkPad X1 Carbonは2012年6月に発表され、それから何度かモデルチェンジが行なわれ、今回で第4世代となるが、薄さと軽さを重視した14型液晶搭載クラムシェル型モバイルノートPCというコンセプトは変わらない。
今回登場した第4世代のThinkPad X1 Carbonは、第3世代のThinkPad X1 Carbonに比べて10%の軽量化を実現するなど、さらに進化している。今回は、この最新ThinkPad X1 Carbonを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
14型ながら前モデルより10%軽い約1.18kgを実現
ThinkPad X1 Carbonは、その名の通り、筐体に軽くて丈夫なカーボンファイバー素材を採用したクラムシェル型モバイルノートPCである。第4世代となる最新モデルのウリは、2015年1月に登場した第3世代ThinkPad X1 Caronよりも約10%軽い約1.18kgを実現したことだ。本体のサイズは、333×229×14.95~16.45mm(幅×奥行き×高さ)であり、最厚部の厚さも前モデルより1mm強薄くなっている。薄くても剛性は高く、角を片手で持ちあげてもたわむようなことはない。
第6世代Core iプロセッサーと16GBメモリ、NVMe対応SSDを搭載可能
第4世代のThinkPad X1 Carbonは、PCとしての基本性能も高い。CPUやメモリ、ストレージ、液晶パネルなど、カスタマイズの選択肢も充実している。今回の試用機は、CPUとしてCore i7-6600U(2.6GHz、ビデオ機能内蔵)が実装されていたが、Core i7-6500U(2.5GHz、同)やCore i5-6300U(2.4GHz、同)、Core i5-6200U(2.3GHz、同)などの選択も可能だ。メモリ容量も試用機は最大の16GBとなっていたが、8GBや4GBも選べる。いわゆるモバイルノートPCでは、最大メモリ容量が8GBの製品も多いが、使い方によっては8GBでは足りないこともある。16GBまで実装できるThinkPad X1 Carbonなら、ヘビーな用途でも安心だ。
ストレージは、128GB/192GB/256GB/512GB SATA SSDまたは256GB/512GB/1TB NVMe対応PCI Express SSDと、豊富な選択肢が用意されている。コストパフォーマンス重視ならSATA SSD、性能重視ならNVMe対応PCI Expressを選べば良い。特に、価格は高くなるが、1TB NVMe対応PCI Express SSDが用意されているのは、容量と性能の両方を重視したいという人にはありがたいだろう。なお、試用機のストレージは512GB NVMe対応PCI Express SSDであった。
ノングレアタイプの14型2,560×1,440ドットIPS液晶を搭載
液晶は、14型IPSパネルを採用しており、解像度は2,560×1,440ドット(WQHD)または1,920×1,080ドット(フルHD)から選択できる。タッチパネルは非搭載だが、表面はノングレア加工されているため、外光の映り込みが抑えられており、長時間使っていても目の疲れが少ない。IPS液晶なので視野角も広く、液晶のヒンジも180度まで開く設計になっているので、膝の上に本体を置いて使う場合でも使いやすい。試用機には、2,560×1,440ドット表示の液晶が搭載されていたが、発色も鮮やかであり、コントラストも十分だ。液晶上部には、720pのWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。
キーボードとポインティングデバイスの使い勝手はトップクラス
ThinkPadシリーズは、キーボードの使い勝手の良さに定評があるが、ThinkPad X1 Carbonもその伝統を受け継いでいる。最近のThinkPadではお馴染みの6列配列のアイソレーションタイプのキーボードが採用されているが、キーピッチは19mmとゆったりしており、キー配列も標準的である。適度なクリック感のあるキーボードで、快適にタイピングが可能だ。また、キーボードバックライトも搭載されているので、暗い場所でもミスタイプを防げる。
ポインティングデバイスとしては、ThinkPadクリックパッドが搭載されている。ThinkPadクリックパッドは、一般的なタッチパッドとキーボード中央のスティックタイプのTrackPointから構成されており、どちらか、あるいは両者を併用して使えることが特徴だ。TrackPointは、指をホームポジションからあまり動かさずに操作できるので、慣れれば快適だ。
また、パームレスト右側にタッチ式の指紋センサーを搭載。以前はスライド式センサーが採用されていたため、指紋認証時に指をスライドさせる必要があったが、ThinkPad X1 Carbonの指紋センサーは指先を軽くあてるだけで認証が可能であり、誤認識も少ない。
独自ポートの「One Link+」やUSB 3.0×3を搭載するなどインターフェイスも充実
インターフェイスも充実しており、USB 3.0×3、Mini DisplayPort、HDMI出力、ヘッドフォン端子のほか、独自ポートのOne Link+も用意されている。有線LANポートは本体には搭載されていないが、One Link+コネクタに接続する有線LAN変換アダプタが付属する。One Link+に、オプションの「ThinkPad One Linkドック」を接続することで、インターフェイスの拡張が可能だ。
カードスロットとしてはmicroSDカードスロットを搭載。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11ac/a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.1をサポートする。
無線LAN常時オンの条件で、実測10時間を超えるバッテリ駆動時間を実現
ThinkPad X1 Carbonの公称バッテリ駆動時間は構成によって異なり、約9.8時間~約7.5時間とされている。試用機の構成では公称バッテリ駆動時間は、約9.1時間とされているが、実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、10時間22分という結果になった。無線LANを常時有効にして、公称を上回る駆動時間を記録したことは高く評価できる。これだけ持てば、1日中、電源がとれない場所で持ち歩いて使う場合も安心だ。ACアダプタもコンパクトで軽く、携帯性は優れている。
NVMe対応SSDで快適な環境を実現
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「ファイナルファンタジー IXV 蒼天のイシュガルドベンチマーク」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」、「CrystalDiskMark 5.1.2」である。比較用として、レノボ・ジャパン「ThinkPad X1 Yoga」、日本マイクロソフト「Surface Book」、VAIO「VAIO Z(クラムシェルモデル)」、VAIO「VAIO S11」の値も掲載した。
結果は下の表に示した通りで、PCMark 8のスコアは、同じCPUを搭載したSurface Bookよりも全般的に高い。さすがにGPU性能が重視されるドラゴンクエストX ベンチマークやファイナルファンタジーIXV 蒼天のイシュガルドベンチマークの結果は、単体GPUを搭載するSurface Bookの半分以下となっているが、ディスク性能を計測するCrystalDiskMarkの結果は、非常に高速だ。CrystalDiskMark 5.1.2のシーケンシャルリードQ32T1は、2,592MB/secを記録しており、従来のSATA 6Gbps対応SSDとは完全に別次元の性能である。PCMark 8のスコアがSurface Bookより全般的に高いのも、SSDの性能が効いているのであろう。
ThinkPad X1 Carbon | ThinkPad X1 Yoga | Surface Book(キーボード装着時) | VAIO Z(クラムシェルモデル) | VAIO S11 | |
---|---|---|---|---|---|
CPU | Core i7-6600U(2.6GHz) | Core i7-6500U(2.5GHz) | Core i7-6600U(2.6GHz) | Core i7-6567U(3.3GHz) | Core i7-6500U(2.5GHz) |
GPU | Intel HD Graphics 520 | Intel HD Graphics 520 | GeForce | Intel Iris Graphics 550 | Intel HD Graphics 520 |
PCMark 8 | |||||
Home conventional | 2635 | 2590 | 2481 | 3002 | 2779 |
Home accelerated | 3176 | 3167 | 2908 | 3602 | 3284 |
Creative conventional | 2691 | 2694 | 2666 | 3015 | 2725 |
Creative accelerated | 3890 | 4036 | 3753 | 4483 | 3655 |
Work conventional | 2928 | 2794 | 2719 | 3002 | 3046 |
Work accelerated | 4063 | 3995 | 3793 | 4246 | 4270 |
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K | |||||
1,280×720ドット 最高品質 | 6796 | 7048 | 11424 | 10233 | 7083 |
1,280×720ドット 標準品質 | 6844 | 8339 | 12913 | 10875 | 8000 |
1,280×720ドット 低品質 | 6851 | 9644 | 15010 | 11693 | 9309 |
1,920×1,080ドット 最高品質 | 3109 | 3822 | 6409 | 7505 | 3967 |
1,920×1,080ドット 標準品質 | 4256 | 4950 | 7777 | 8747 | 5094 |
1,920×1,080ドット 低品質 | 5835 | 5979 | 9053 | 10188 | 6129 |
ファイナルファンタジーIXV 蒼天のイシュガルドベンチマーク | |||||
1,280×720ドット 最高品質 | 1713 | 1812 | 3746 | 未計測 | 未計測 |
1,280×720ドット 最高品質(Direct X9相当) | 2284 | 2326 | 4727 | 未計測 | 未計測 |
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC) | 1975 | 1976 | 4229 | 未計測 | 未計測 |
1,280×720ドット 高品質(ノートPC) | 2288 | 2416 | 5407 | 未計測 | 未計測 |
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC) | 3280 | 3449 | 7785 | 未計測 | 未計測 |
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 3273 | 3462 | 7779 | 未計測 | 未計測 |
CrystalDiskMark 3.0.3b | |||||
シーケンシャルリード | 1,648MB/sec | 1,848MB/sec | 954.8MB/sec | 1,658MB/sec | 1515MB/sec |
シーケンシャルライト | 1,539MB/sec | 1,535MB/sec | 598.8MB/sec | 1,587MB/sec | 1237MB/sec |
512Kランダムリード | 1,224MB/sec | 1,350MB/sec | 535.5MB/sec | 1,188MB/sec | 1107MB/sec |
512Kランダムライト | 1,452MB/sec | 1,517MB/sec | 598.5MB/sec | 1,521MB/sec | 1206MB/sec |
4Kランダムリード | 51.05MB/sec | 50.39MB/sec | 42.93MB/sec | 52.35MB/sec | 43.57MB/sec |
4Kランダムライト | 139.8MB.s | 133.1MB/sec | 115.8MB/sec | 147.7MB/sec | 108.6MB/sec |
4K QD32ランダムリード | 555.6MB/sec | 490.6MB/sec | 612.7MB/sec | 646.6MB/sec | 320.0MB/sec |
4K QD32ランダムライト | 418.7MB/sec | 400.6MB/sec | 511.8MB/sec | 391.5MB/sec | 301.2MB/sec |
CrystalDiskMark 5.1.2 | |||||
シーケンシャルリードQ32T1 | 2,592MB/sec | 2,519MB/sec | 1,632MB/sec | 未計測 | 未計測 |
シーケンシャルライトQ32T1 | 1,533MB/sec | 1,542MB/sec | 602.7MB/sec | 未計測 | 未計測 |
4KランダムリードQ32T1 | 545.9MB/sec | 500.3MB/sec | 605.2MB/sec | 未計測 | 未計測 |
4KランダムライトQ32T1 | 251.7MB/sec | 248.1MB/sec | 516.7MB/sec | 未計測 | 未計測 |
シーケンシャルリード | 1,854MB/sec | 1,598MB/sec | 931.7MB/sec | 未計測 | 未計測 |
シーケンシャルライト | 1,528MB/sec | 1,546MB/sec | 602.3MB/sec | 未計測 | 未計測 |
4Kランダムリード | 53.99MB/sec | 52.80MB/sec | 44.85MB/sec | 未計測 | 未計測 |
4Kランダムライト | 164.5MB/sec | 144.6MB/sec | 166.0MB/sec | 未計測 | 未計測 |
タッチや2in1は不要だというビジネスユースに最適
ThinkPad X1 Carbonは、オーソドックスなクラムシェルタイプのノートPCであり、最近流行の2in1ではないが、ビジネスユースでは、タッチ操作やタブレット機能は不要だというユーザーも多いことだろう。2in1が欲しいなら、同じThinkPad X1シリーズのThinkPad X1 Yogaがお勧めだが、クラムシェルオンリーのThinkPad X1 Carbonはより薄くて軽い。堅牢性も高く、携帯性も優れているので、タッチ操作は不要で、キーボードの使い勝手が優れたモバイルノートPCが欲しい人には最適なマシンと言える。