Hothotレビュー
レノボ・ジャパン「ThinkPad T450/T450s」
~14型液晶搭載のスリムノートPC
(2015/3/13 06:00)
レノボ・ジャパンから登場した「ThinkPad T450」、「ThinkPad T450s」は、14型液晶を搭載したスリムノートPCであり、昨年(2014年)登場した「ThinkPad T440」、「ThinkPad T440s」の後継となる製品だ。最新の第5世代Coreファミリを搭載するなど、基本性能を順当に向上させてきている。
ThinkPad T450とThinkPad T450sは兄弟機であり、基本設計は同一だが、フルHD解像度の液晶はThinkPad T450sでしか選択できず、最小構成時の重量はThinkPad T450sの方が軽くなっているなど、T450sが上位に位置付けられる。今回は、ThinkPad T450とThinkPad T450sの両方を試用する機会を得たので、あわせてレビューしていきたい。
筐体サイズはThinkPad T450の方がわずかに大きい
ThinkPad T450/T450sは、14型液晶搭載のスリムノートPCであり、Ultrabookや2-in-1 PCに比べると携帯性は劣るが、ThinkPad T450sの最小構成時の重量は約1.54kgなので、普段はデスクの上で使い、出張時には一緒に持って行くといった使い方も十分可能だ。
筐体のデザインは、ThinkPadシリーズらしいオーソドックスなもので、サイズはThinkPad T450が約339×232.5×21mm(幅×奥行き×高さ、最薄構成時)、ThinkPad T450sが約331×226×20.65mm(同)であり、わずかにThinkPad T450の方が大きい。重量は、液晶解像度やタッチパネル搭載の有無などによって変わるが、それぞれの最小構成時は、ThinkPad T450が約1.73kg、ThinkPad T450sが約1.54kgである。
ThinkPad T450/T450sともにスペックが異なるいくつかのパッケージモデルが用意されているほか、BTOによってカスタマイズが可能である。今回試用したThinkPad T450は、CPUがCore i7-5600U(2.6GHz)、メモリが4GB、HDDが500GB、OSがWindows 7 Professional(64bit)という仕様だが、メモリは最大16GBまで増設でき、HDDの代わりにSSHDやSSDを選択することも可能だ。また、今回試用したThinkPad T450sの仕様は、CPUがCore i7-5600U(2.6GHz)、メモリが4GB、HDDが500GBで、基本スペックはThinkPad T450と同じだが、OSはWindows 8.1 Pro(64bit)となっている。
なお、試用機の重量を実測したところ、ThinkPad T450は1,677g、ThinkPad T450sは1,753gで、ThinkPad T450sの方が重くなっているが、試用機のThinkPad T450はタッチ非対応だったのに対し、ThinkPad T450sはタッチ対応となっているためだ。
ThinkPad T450sではタッチ対応フルHD液晶を選択可能
用途に応じて液晶パネルの仕様を選べることもThinkPad T450/T450sの魅力の1つだ。液晶サイズはすべて14型だが、ThinkPad T450では、1,366×768ドットタッチ非対応ノングレア液晶、1,600×900ドットタッチ非対応ノングレア液晶、1,600×900ドットタッチ対応液晶の3種類から、ThinkPad T450sでは、1,600×900ドットタッチ非対応ノングレア液晶、1,920×1,080ドットタッチ非対応ノングレアIPS液晶、1,920×1,080ドットタッチ対応IPS液晶の3種類から選択できる。タッチ対応モデルは、すべて10点マルチタッチに対応する。今回試用したThinkPad T450は、1,366×768ドットタッチ非対応ノングレア液晶、ThinkPad T450sは、1,920×1,080ドットタッチ対応IPS液晶を搭載していた。
ThinkPad T450に搭載されていたノングレア液晶は、外光の映り込みが少なく、目の疲れが少ないが、今となっては解像度的にやや不足を感じる。ThinkPad T450sのフルHD液晶は、解像度的な不満はなく、IPS液晶なので視野角も広かった。タッチパネルを搭載しているため、表面にやや光沢はあるものの、いわゆる光沢液晶ほどの映り込みは生じておらず、見やすい印象を受けた。
液晶上部には、720pのWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。
トラックポイントのボタンも独立タイプに戻る
ThinkPad T450/T450sのキーボードは、ThinkPadシリーズ伝統の6列キーボードであり、キーピッチは約19mmと余裕がある。キー配列も標準的で、快適にタイピングが可能だ。キーボードにはバックライトが搭載されており、暗い場所でもミスタイプを防げる。
ポインティングデバイスとしては、スティックタイプのトラックポイントとトラックパッドの両方を搭載しており、併用することも可能だ。なお、前モデルのThinkPad T440/T440sでは、トラックポイントのクリックボタンがトラックパッドと一体化していたが、ThinkPad T450/T450sでは、トラックポイントのクリックボタンがパッドの上に配置されるようになっている。操作性という面では、やはりクリックボタンが独立している方が使いやすく、第3世代のThinkPad X1 Carbonで、Adaptiveキーボードが廃止され、従来のキーボードに戻ったのと同様、こちらもユーザーからのフィードバックに応えたものであろう。
指紋センサーも搭載し、インターフェイスも充実
ThinkPad T450/T450sは、インターフェイスも充実している。USB 3.0×3(うち1つはAlways On対応)、アナログRGB出力、Mini DisplayPort、Gigabit Ethernet、マイク/ヘッドフォン、ドッキングコネクタを備えるほか、4-in-1メディアカードリーダを搭載する。また、BTOでセキュリティ用のスマートカードリーダを搭載することも可能だ。キーボードの右側には、スライド式の指紋センサーが用意されており、指紋認証によるログオンが可能なので、セキュリティを重視する用途にも向いている。
交換可能なバッテリと内蔵バッテリにより、ホットスワップを実現
ThinkPad T450/T450sは、交換できない内蔵バッテリ(3セル)と交換可能なバッテリ(3セルまたは6セル)の2種類のバッテリを搭載していることもウリの1つだ。バッテリを1つしか搭載していない通常のノートPCでは、バッテリ交換時には電源を落とす必要があるが、ThinkPad T450/T450sでは、内蔵バッテリの残量があれば、電源を落とさずにバッテリの交換が可能だ。あらかじめ充電済みのバッテリと交換することで、作業を中断させることなく、駆動時間の延長が可能なので、海外への出張で長時間フライトをする場合なども心強い。
バッテリ駆動時間自体も長く、今回試用した内蔵バッテリ3セル+交換可能なバッテリ3セルという構成で、ThinkPad T450では最大約10.2時間、ThinkPad T450sでは最大約10.8時間(ともにJEITA 2.0準拠)の公称駆動時間を実現している。交換可能なバッテリを6セルに変更することで、駆動時間はさらに延びる。なお、交換可能な6セルバッテリは、47Wh仕様と72Wh仕様の2種類があり、72Wh仕様の6セルバッテリを装着すれば、駆動時間は2倍以上に延びる。
実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、ThinkPad T450は9時間46分、ThinkPad T450sは7時間57分という結果になった。無線LAN常時オンで、これだけ持てば十分合格であろう。前述したように、交換可能なバッテリを6セルに変更すれば、さらに長時間の駆動が可能である。
ACアダプタは45W仕様で、このクラスのACアダプタとしてはトップクラスの軽さと小ささを実現している。
CPU性能は十分だが、HDDが足を引っ張る
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark 8」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」である。比較用として、レノボ・ジャパンの「第3世代ThinkPad X1 Carbon」の値も掲載した。結果は下の表に示した通りで、PCMark 7の総合スコアは、ストレージとしてPCIe接続の超高速SSDを搭載した第3世代ThinkPad X1 Carbonにはかなわないが、PCMark 8のスコアはかなり迫っている。HDD搭載モデルでも、十分快適な動作を実現していたが、さらに快適な環境を得たいのなら、SSDの選択をお勧めしたい。
ThinkPad T450s/450のベンチマーク結果 | ThinkPad T450s | ThinkPad T450 | 第3世代ThinkPad X1 Carbon |
---|---|---|---|
CPU | Core i7-5600U(2.6GHz) | Core i7-5600U(2.6GHz) | Core i7-5600U(2.6GHz) |
GPU | Intel HD Graphics 5500 | Intel HD Graphics 5500 | Intel HD Graphics 5500 |
PCMark 7 | |||
PCMark score | 3363 | 2863 | 5290 |
Lightweight score | 1795 | 2485 | 3903 |
Productivity score | 1224 | 1712 | 2898 |
Entertainment score | 3011 | 2710 | 3544 |
Creativity score | 6639 | 5741 | 10214 |
Computation score | 14613 | 10908 | 14466 |
System storage score | 2093 | 1922 | 5959 |
Raw system storage score | 604 | 527 | 12188 |
PCMark 8 | |||
Home conventional | 2480 | 2521 | 2446 |
Home accelerated | 2995 | 2945 | 2949 |
Creative conventional | 2447 | 2237 | 2575 |
Creative accelerated | 3463 | 3154 | 3757 |
Work conventional | 3020 | 2939 | 2842 |
Work accelerated | 4084 | 3986 | 3851 |
3DMark | |||
Fire Strike Ultra | 128 | 計測不可 | 164 |
Fire Strike Extreme | 295 | 268 | 320 |
Fire Strike | 637 | 571 | 721 |
Sky Diver | 2628 | 2537 | 2605 |
Cloud Gate | 4938 | 4820 | 5235 |
Ice Storm Extreme | 32556 | 26276 | 34609 |
Ice Storm | 44883 | 42024 | 48912 |
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編 | |||
1,280×720ドット 最高品質 | 1352 | 1266 | 1831 |
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC) | 1373 | 1296 | 1895 |
1,280×720ドット 高品質(ノートPC) | 1686 | 1617 | 2413 |
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC) | 2782 | 2628 | 3738 |
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 2668 | 2622 | 3709 |
1,920×1,080ドット 最高品質 | 685 | 655 | 979 |
1,920×1,080ドット 高品質(デスクトップPC) | 696 | 638 | 984 |
1,920×1,080ドット 高品質(ノートPC) | 862 | 804 | 1293 |
1,920×1,080ドット 標準品質(デスクトップPC) | 1454 | 1384 | 2037 |
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC) | 1433 | 1379 | 2035 |
CrystalDiskMark 3.0.3b | |||
シーケンシャルリード | 119.1MB/s | 125.7MB/s | 1328MB/s |
シーケンシャルライト | 114.6MB/s | 124.4MB/s | 1257MB/s |
512Kランダムリード | 33.22MB/s | 36.04MB/s | 977.1MB/s |
512Kランダムライト | 50.62MB/s | 52.87MB/s | 1235MB/s |
4Kランダムリード | 0.412MB/s | 0.440MB/s | 44.33MB/s |
4Kランダムライト | 0.896MB/s | 0.974MB/s | 105.6MB/s |
4K QD32ランダムリード | 0.776MB/s | 0.790MB/s | 347.9MB/s |
4K QD32ランダムライト | 0.892MB/s | 1.007MB/s | 234.5MB/s |
長時間駆動やセキュリティを重視するビジネスユーザーにお勧め
ThinkPad T450/T450sは、基本性能と使い勝手、信頼性に優れたスリムノートPCであり、前モデルから順当な進化を果たした製品であるが、逆にいうと驚きもあまり感じない、地味なモデルである。バッテリを2種類搭載し、ホットスワップを実現していることは魅力だが、この設計自体は、前モデルのThinkPad T440/T440sでも実現しており、目新しさは感じられない。
指紋認証やスマートカードへの対応など、セキュリティ機能は充実しており、ビジネス向けスリムノートPCとしての完成度は高いが、一般のコンシューマにはあまり響かないであろう。ThinkPad T440/T440s世代では、単体GPUを搭載可能なプレミアムモデル「ThinkPad T440p」が後から追加されていたが、この世代ではまだ未発表であり、3D CADなどGPU性能が重視される用途なら、そちらを待つ手もある。