Hothotレビュー

レノボ・ジャパン「ThinkPad Helix」

~Core M搭載の11.6型液晶搭載着脱式Ultrabook

 レノボ・ジャパンから登場した「ThinkPad Helix」は、Core Mを搭載した着脱式Ultrabookである。今回発表されたThinkPad Helixは、2013年4月に発売された同名製品の後継であり、着脱式という特徴は変わらないが、中身は大幅に強化されている。今回は、このThinkPad Helixを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

キーボードドックとの組み合わせで4種類のモードで使える

 ThinkPad Helixは、タブレット本体とキーボードドックから構成されていることが特徴であり、タブレット単体で使うタブレットモード、キーボードドックにドッキングさせて使うノートブックモード、タブレット部分を180度回転させてドッキングさせて使うスタンドモード、キーボードドックと外部ディスプレイに接続して使うデスクトップモードの4種類のモードで利用できることが魅力だ(スタンドモードは後述のウルトラブックプロキーボード利用時のみ)。

 初代ThinkPad Helixでは、キーボードドックは1種類しか用意されていなかったが、今回登場した新ThinkPad Helixでは、ウルトラブックキーボードとウルトラブックプロキーボードの2種類のキーボードドックが用意されている。また、それぞれ日本語キーボードだけでなく、英語キーボードも選択できる。

 タブレット本体のサイズは、約301×192.5×9.6mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約795g(最小構成時)である。11.6型液晶搭載Windowsタブレットとしてはやや重いが、十分携帯できるサイズと重量である。

 それでは、基本スペックについて見ていこう。初代ThinkPad Helixは、CPUとして第3世代Coreプロセッサ(Ivy Bridge)を搭載していたが、新ThinkPad Helixは、最新のCore Mを搭載している。Core Mは、ThinkPad Helixのような2-in-1 PC向けに開発されたCPUであり、TDPが4.5Wと非常に低いことが特徴である。

 新ThinkPad Helixは、BTOによってスペックのカスタマイズが可能であり、CPUはCore M-5Y71(1.2GHz)とCore M-5Y10c(800MHz)から選択できる。メモリは、4GBまたは8GBで、後から増設することはできない。ストレージはSSDだが、容量は128GB/256GB/512GBから選べる。なお、128GB SSDと256GB SSDはSATA接続だが、512GB SSDはより高速なPCI Express接続となっている。

 今回の試用機は、CPUが上位のCore M-5Y71、メモリが4GB、ストレージが128GB SSDというスペックであり、タブレット本体の重量を実測したところ、774gであった。

ThinkPad Helixの天面
ThinkPadロゴのiの点はLEDになっており、電源を入れると点灯する
試用機のタブレット本体の重量は、実測で774gであった

視野角の広いIPS液晶パネルを採用

 液晶パネルのサイズは11.6型で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHDである。視野角の広いIPS液晶を採用しているため、斜めから見ても視認性が高く、タブレットモードで縦画面で使う場合も快適だ。10点マルチタッチ対応で、電磁誘導方式のデジタイザペンのサポートの有無も選べる。また、液晶表面は強化ガラスの「ゴリラガラス」でカバーされており、ひっかき傷などに強い。なお、液晶はグレアタイプなので、外光はやや映り込みやすい。

 デジタイザペンは、筆圧感知に対応しており、サイドボタンも用意されている。対応アプリケーションなら、ペンの反対側を消しゴムとして使うことも可能だ。ペンの書き心地も快適だ。

 インターフェイスもタブレットとしては必要十分なものが搭載されている。本体に、USB 3.0とMicro HDMI出力を備えているほか、microSDカードスロットも用意されている。また、スライド式指紋センサーも天板部分に用意されており、セキュリティ面も安心だ。さらに、200万画素フロントカメラと500万画素リアカメラも搭載しており、ビデオチャットなどに利用できる。

タブレットモードで縦持ちしているところ
電磁誘導方式のデジタイザペンに対応。サイドボタンも用意されている
【動画】デジタイザペンで手書きメモをとっている様子。ペンの反対側を消しゴムとして使うことができる
右側面には、マイク/ヘッドフォン、音量ボタン、microSDカードスロット、USB 3.0、Micro HDMI出力が用意されている
右側面のポート部分のアップ
左側面には、電源コネクタが用意されている
底面には、キーボード接続用コネクタが用意されている
上面には、画面ロックボタンと電源ボタンが用意されている
天板にはスライド式の指紋センサーが用意されている
フロントカメラとして200万画素Webカメラが用意されており、ビデオチャットなどに利用できる
リアカメラは角の部分にあり、画素数は500万画素である

ウルトラブックプロキーボード利用時はバッテリ駆動時間が延びる

 新ThinkPad Helixには、ウルトラブックキーボードとウルトラブックプロキーボードの2種類のキーボードドックが用意されており、どちらかを選択できる。ここでは、両者の違いを見ていこう。まずは、ウルトラブックキーボードからだ。ウルトラブックキーボードは約560gと軽量だが、装着時の液晶の角度を変えることができず、液晶を180度回転させて装着するスタンドモードにも非対応だ。ウルトラブックキーボードに用意されているインターフェイスは、USB 2.0が1基のみだが、デジタイザペンを後部に収納できるようになっている。

 それに対し、ウルトラブックプロキーボードはバッテリが内蔵されているため、重量は約900gと重いが、装着することでバッテリ駆動時間が延びる。また、装着時の液晶の角度を自由に変えられるほか、液晶を180度回転させて装着することも可能だ。インターフェイスもPowered USB 3.0とMini DisplayPortが1基ずつ用意されている。

 両者は、ポインティングデバイスも異なり、ウルトラブックキーボードでは、クリックボタンが一体化したタッチパッドが搭載されているのに対し、ウルトラブックプロキーボードでは、ThinkPadシリーズではお馴染みのトラックポイントとThinkPadクリックパッドが搭載されている。ThinkPadクリックパッドは、パッド自体がクリックできるようになっており、クリックボタンは一体化されている。クリックパッドの上にはトラックポイント用のクリックボタンが3つ用意されている。キーピッチはどちらも約18.5mmで、キー配列も標準的なので、快適にタイピングが可能だ。さらに、ウルトラブックプロキーボードには、キーボードライトも用意されている。

 なお、重量はバッテリを内蔵していないウルトラブックキーボードの方が軽いが、厚さはウルトラブックプロキーボードの方が薄くなっており、装着時のサイズは、ウルトラブックプロキーボードが約301.1×214.8×20.1mm(同)、ウルトラブックキーボードが約301.1×215.7×25.4mm(同)となる。

 今回の試用機には、ウルトラブックプロキーボードが付属していた。なお、ウルトラブックプロキーボードには、デジタイザペンを収納するスペースは用意されていないが、左側面にデジタイザペンを装着するためのホルダーが用意されている。ウルトラブックプロキーボードは、キーボードやポインティングデバイスの使い勝手も優れており、クラムシェルタイプのノートPCと同じような感覚で利用できるが、装着時の重量は、公称1,700g程度と、11.6型製品としてはやや重くなってしまうことが残念だ。

ウルトラブックプロキーボードは6列配列だが、右側の一部のキーのピッチは狭くなっている
ウルトラブックプロキーボードでは、ポインティングデバイスとしてトラックポイントとThinkPadクリックパッドが用意されている
ウルトラブックプロキーボードを装着した状態の右側面。厚さは20.1mmである
ウルトラブックプロキーボード装着時の天面
ウルトラブックプロキーボード装着時の底面
ウルトラブックプロキーボード装着時の背面。Mini DisplayPortとPowered USB 3.0、電源コネクタが用意されている
試用機のウルトラブックプロキーボード装着時の重量は、実測で1,674gであった
ウルトラブックプロキーボード装着時の背面のポート部分のアップ
キーボードから本体を外すときは、左側面のリリースボタンを押す
【動画】本体をウルトラブックプロキーボードに装着している様子
【動画】ウルトラブックプロキーボードから本体を外す様子

実測で13時間以上のバッテリ駆動時間を実現

 新ThinkPad Helixは、Core Mを搭載したことにより、バッテリ駆動時間も初代ThinkPad Helixよりも長くなっている。初代ThinkPad Helixのバッテリ駆動時間は最大約8時間、バッテリを内蔵したキーボード装着時で最大約12時間だったが、新ThinkPad Helixのバッテリ駆動時間は最大約16.3時間、バッテリを内蔵したウルトラブックプロキーボード装着時は最大約19.1時間と大きく延びている(すべてJEITA 1.0準拠)。

 なお、バッテリを内蔵していないウルトラブックキーボード装着時のバッテリ駆動時間は最大約12.1時間となる。また、新ThinkPad Helixについては、JEITA 2.0準拠のバッテリ駆動時間も公開されており、タブレット本体のみで最大約10.6時間、ウルトラブックプロキーボード装着時で最大約13.9時間、ウルトラブックキーボード装着時で最大約8,8時間となっている。ただし、バッテリの交換はできない仕様である。

 実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、 新ThinkPad Helixのタブレット本体では6時間32分、ウルトラブックキーボード装着時は13時間24分という結果になった。無線LAN常時オンで、これだけ持てば合格といえるだろう。

 ACアダプタは36W仕様で、Thinkad X1 Carbonなどに使われている45W仕様のものよりも、さらにコンパクトで軽い。

ACアダプタは36W仕様で、コンパクトで軽い
ACアダプタの重量は、実測で201gであった

Windowsタブレットとしては十分な性能

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 7」、「PCMark 8」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」である。比較用として、レノボ・ジャパンの「YOGA Tablet 2 with Windows」、「ThinkPad X1 Carbon」(第3世代)の値も掲載した。

 結果は下の表に示した通りで、PCMark 7の総合スコアは、Atom Z3735を搭載したYOGA Tablet 2 with Windowsよりも、3割ほど高い。さすがにCore i7とPCI Express接続の超高速SSDを搭載したThinkPad X1 Carbonに比べればスコアは低いが、Windowsタブレットとしては高性能な部類と言える。

【表】ThinkPad Helixのベンチマーク結果
機種名ThinkPad HelixYOGA Tablet 2 with WindowsThinkPad X1 Carbon
CPUCore M-5Y71(1.2GHz)Atom Z3735(1.33GHz)Core i7-5600U(2.6GHz)
GPUIntel HD Graphics 5300Intel HD GraphicsIntel HD Graphics 5500
PCMark 7
PCMark score313424085290
Lightweight score190514173903
Productivity score131910182898
Entertainment score242916163544
Creativity score6060458510214
Computation score8479551314466
System storage score481739445959
Raw system storage score2965163912188
PCMark 8
Home conventional137710712446
Home accelerated192110752949
Creative conventional12318982575
Creative accelerated21189903757
Work conventional156813812842
Work accelerated235811023851
3DMark
Fire Strike Ultra79未計測164
Fire Strike Extreme194未計測320
Fire Strike410計測不可721
Sky Diver計測不可4602605
Cloud Gate256811385235
Ice Storm Extreme18311未計測34609
Ice Storm229451348748912
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
1,280×720ドット 最高品質11174161831
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC)11294181895
1,280×720ドット 高品質(ノートPC)14687342413
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)224110783738
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)225410763709
1,920×1,080ドット 最高品質582未計測979
1,920×1,080ドット 高品質(デスクトップPC)594未計測984
1,920×1,080ドット 高品質(ノートPC)791未計測1293
1,920×1,080ドット 標準品質(デスクトップPC)1241未計測2037
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC)1245未計測2035
CrystalDiskMark 3.0.3b
シーケンシャルリード424.2MB/sec161.8MB/sec1,328MB/sec
シーケンシャルライト123.5MB/sec72.83MB/sec1,257MB/sec
512Kランダムリード325.3MB/sec157.4MB/sec977.1MB/sec
512Kランダムライト124.2MB/sec52.00MB/sec1,235MB/sec
4Kランダムリード25.74MB/sec12.64MB/sec44.33MB/sec
4Kランダムライト38.60MB/sec12.47MB/sec105.6MB/sec
4K QD32ランダムリード161.5MB/sec26.32MB/sec347.9MB/sec
4K QD32ランダムライト62.63MB/sec15.18MB/sec234.5MB/sec

着脱式Ulrabookとしての完成度は高いが、重量がやや重い

 ThinkPad Helixは、タブレット本体とキーボードドックから構成される着脱式Ultrabookであり、最新のCore Mを搭載することで、Atom搭載機よりも高い性能を実現しながら、長いバッテリ駆動時間も両立させていることが魅力である。

 キーボードドックの使い勝手も優れており、長文の入力をする場合でも快適だ。用途に応じて、さまざまなスタイルで使い分けれることも魅力だが、タブレット本体やウルトラブックプロキーボードの重量がやや重いことが気になる。バッテリ駆動時間と拡張性を重視する場合は、バッテリを内蔵したウルトラブックプロキーボードを、携帯性を重視する場合はウルトラブックキーボードを選択することをお勧めしたい。

(石井 英男)