~Android 3.1搭載のビジネス向けタブレット |
レノボ・ジャパンから登場した「ThinkPad Tablet」は、10.1型液晶を搭載したAndroidタブレットである。このクラスのタブレットは、各社から製品が登場しており、激戦区となっているが、他社のタブレットのほとんどがコンシューマをターゲットとしているのに対し、ThinkPad Tabletは、ビジネスユーザーをターゲットに開発されていることが特徴だ。
なお、レノボ・ジャパンでは、ThinkPad Tabletと同時にコンシューマ向けの10.1型Androidタブレット「IdeaPad Tablet K1」を発表している。IdeaPad Tablet K1については、平澤氏のレビューを見ていただきたい。
ThinkPad Tabletは、IdeaPad Tablet K1と液晶サイズや搭載OSなどは同じだが、筆圧感知に対応したペン入力をサポートするほか、オプションとしてドッキングステーションやキーボード付きケースが用意されているなど、ビジネス向けタブレットらしい設計になっている。今回は、ThinkPad Tabletを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
ただし、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部が異なる可能性がある。
●前面にゴリラガラス採用で高い強度を実現レノボ・ジャパンのThinkPadといえば、堅牢で高性能なノートPCとして有名だが、そのThinkPadの名称を受け継いだThinkPad Tabletは、ThinkPad譲りの堅牢性と高い質感を実現している。ボディカラーはThinkPadらしいブラックで、背面はマットなゴム塗装が施されており、手触りもよく滑りにくい。背面にはThinkPadロゴがあるが、iの字の点が赤色LEDになっており、動作中や充電中に点灯するのもお洒落だ。
タブレットは、液晶パネルが露出しているため、落下などで割れてしまう可能性があることが弱点だが、ThinkPad Tabletでは液晶パネルをコーニングの高強度ガラス「ゴリラガラス」で覆い、本体四隅に金属プレートを組み込むことで、高い耐衝撃性を実現。安心して利用できる。
本体サイズは、260.4×181.7×14.5mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は公称約759g(タブレットペンを含む)、実測で758gである。iPad 2 Wi-Fiモデルのサイズは241.2×185.7×8.8mm、重量は601gであり、ThinkPad Tabletのほうが厚くて重い。強度を重視したため、携帯性はやや犠牲になっているといえる。
ThinkPad Tabletの本体前面。液晶は10.1型で、解像度は1,280×800ドットである | 「DOS/V POWER REPORT」誌とThinkPad Tabletのサイズ比較。10.1型液晶搭載タブレットなので、サイズは比較的大きい | 本体背面。右上に500万画素カメラを搭載。右下にはタブレットペンが見えている |
電源を入れると、背面のThinkPadロゴのiの字の点のLEDが点灯するのも、なかなか洒落ている | 試用機の重量は実測で、758gであった |
●デュアルコアのTegra 2と1GBメモリを搭載
ThinkPad Tabletは、基本性能も高い。CPUとして1GHz動作のTegra 2を搭載する。Tegra 2はデュアルコアCPUであり、高いパフォーマンスを誇る。内蔵ストレージは、16GB、32GB、64GBの3モデルが用意されており、32GBモデルと64GBモデルにはタブレットペンが付属する。今回は、32GBモデルを試用した。Androidのバージョンは、3.1である。
液晶は10.1型で、視野角の広いIPS液晶を採用しており、視認性も高い。解像度は1,280×800ドットで、このサイズのタブレットとしては標準的だ。タッチパネルは静電容量式と電磁誘導式の両対応で、指でタッチする場合は前者、タブレットペンで操作する場合は後者を利用する。6点までのマルチタッチに対応するなど、タッチパネルの性能も高い。搭載インターフェイスも、Mini HDMI出力、USB 2.0、MicroUSB、イヤフォン/マイクジャックと充実している。通常のUSB 2.0やSDカードスロットを装備する製品は非常に珍しく、デジカメや各種機器とそのまま連携できるのは便利だ。また、SDカードスロットも搭載している。左側面には、タブレットペンを格納するためのスペースが用意されている。また、ストラップホールが設けられており、タブレットペンにもストラップをつけることができるので、タブレットペンを紛失せずにすむ。
前面には、画面回転ロックボタン、「ブラウザ」ボタン、「戻る」ボタン、「ホーム」ボタンの4つのハードウェアボタンが用意されている。カメラは前面と背面に搭載しており、前面が200万画素、背面が500万画素となっている。また、前面カメラの隣には、周囲の明るさを検出する光センサーが搭載されている。さらに、GPSや加速度センサー、電子コンパスも搭載する。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11b/g/n対応無線LAN機能とBluetoothをサポートしているが、3GなどのワイヤレスWAN機能は非対応だ。ハードウェアスペックも充実しており、不満はない。
左側面には、ボリュームボタンとストラップホール、タブレットペン格納場所が用意されている | ストラップホールとタブレットペン格納場所のアップ |
●筆圧感知対応のタブレットペンが付属
ThinkPad Tabletのウリの1つが、ペン操作に対応していることだ。32GBモデルまたは64GBモデルには専用のタブレットペンが付属しているが、単体でも販売されている。タブレットペンは電磁誘導方式で、右クリックの役割を果たすサイドボタンも用意されている。タブレットペンの電源には、単6電池と呼ばれているやや特殊な電池が使われている。タブレットペンは、256段階の筆圧感知に対応しているので、筆圧対応ソフトを利用すれば、実際の紙にペンで書くような感覚で利用できる。
ACアダプタは、ACプラグと一体になったタイプで、コンパクトで携帯性は優れている。ACプラグ部分は交換できるようになっており、日本では別の形状のACコンセントにも対応できる。バッテリの充電はMicro USBポート経由で行ない、Wi-Fi使用時で公称約9時間の駆動が可能だ。
USB-MicroUSBケーブルが付属する | ACアダプタに付属のUSBケーブルを接続して、本体の充電を行なう |
●ビジネスに役立つアプリが多数プリインストール
ThinkPad Tabletの使用感だが、デュアルコアのTegra 2を搭載しているだけあり、スクロールやアプリの起動などのレスポンスは高速で、快適であった。標準のホーム画面には、独自ランチャーの「ランチャー・ゾーン」が表示されており、そこからアプリを起動できる。
ビジネスに役立つアプリケーションからゲームまで、さまざまなアプリケーションがプリインストールされていることも特筆できる。タブレットペンを活かすアプリとしては、手書きメモアプリ「MyScript Notes Mobile」がプリインストールされている。MyScript Notes Mobileは筆圧に対応しており、ペンで紙に書く感覚で気軽にメモが取れるアプリだ。また、手書き文字認識機能も備えており、認識率もかなり高い。さらに、WordやExcel、PowerPointなどのOffice文書の閲覧・編集が可能な「Documents To Go」もプリインストールされている。
アプリケーションは、Androidマーケットからダウンロードできるほか、レノボ独自のアプリケーションストア「Lenovo App Shop」も利用できる。
【動画】ホーム画面を左右にスクロールしている様子。スクロールは十分高速だ |
【動画】画面回転の様子。わずかにタイムラグがあるが、気になるほどではない |
ThinkPad Tabletのホーム画面。田型の独自ランチャー「ランチャー・ゾーン」からアプリを起動できる | アプリケーション一覧。プリインストールアプリも充実している |
手書きメモアプリ「MyScript Notes Mobile」のメモ帳選択画面。メモ帳を複数作ることができる | MyScript Notes Mobileは、筆圧にも対応しており、強く書けば線が太くなり、弱く書けば線が細くなる |
【動画】MyScript Notes Mobileは、手書き文字認識機能をサポートしており、認識率も高い |
WordやExcel、PowerPointなどのOffice文書の閲覧や編集が可能な「Documents To Go」の起動画面 | Documents To GoでExcel文書を開いたところ。液晶解像度が1,280×800ドットあるので十分実用的だ | Documents To Goは、PowerPoint文書にも対応している |
レノボ独自のアプリケーションストア「Lenovo App Shop」からもアプリケーションをダウンロードをダウンロードできる | 現時点ではLenovo App Shopは英語で表記されるようだ |
●キーボード付きケースやドッキングステーションなど、周辺機器も充実
ThinkPad Tabletは、周辺機器が充実していることも魅力だ。ThinkPad Tablet用の周辺機器としては、スタンドにもなる専用ケースの「ThinkPad Tabletフォリオ・ケース」、キーボード付きケースの「ThinkPad Tabletキーボード・フォリオ・ケース」、ドッキングステーションの「ThinkPad Tabletドック」などの周辺機器が用意されている。
今回は、ThinkPad Tabletフォリオ・ケースを本体と一緒に試用することができた。フォリオ・ケースは、本体をくるむように保護するカバーで、本体を立てるスタンドとしても利用できる。スタンドとして利用する場合、スタンドの角度は72~75度と15~18度の2つのスタイルで利用できる。ThinkPad Tabletドックには、65WのACアダプタが同梱されており、4~6時間での急速充電が可能なことも利点だ。企業でThinkPad Tabletを導入するのなら、必須のオプションといえるだろう。
オプションのThinkPad Tabletフォリオ・ケース | ThinkPad Tabletフォリオ・ケースを開けたところ | ThinkPad Tabletフォリオ・ケースに本体を入れたところ。ケースに入れたまま背面カメラも問題なく利用できる |
ケースの前面カバーを背面側に折り返して差し込むことで、スタンドとして使うことができる | ThinkPad Tabletフォリオ・ケースは、本体をぐるっとくるむような形になっており、左右のポート類にはそのままアクセスできる |
ThinkPad Tabletフォリオ・ケースをスタンドとして使っているところ。立てると72~75度の角度で支えられる | 逆にして寝かせれば、15~18度の角度で保持できる |
●筆圧対応のペンが使えるタブレットが欲しい人にお勧め
参考のために、ベンチマークソフトの「AnTuTu Benchmark 2.1」を利用して、ベンチマークテストを行なってみた。結果は下の表に示した通りで、Total Scoreは、Android 3.xを搭載したタブレットの中でも一番高い。ハードウェアスペックは標準的だが、ソフトウェア的なチューニングが効いているようだ。
AnTuTu Benchmark 2.1 | ThinkPad Tablet Android 3.1 | IdeaPad Tablet A1 Android 2.3 | IS03 Android 2.2 | Sony Tablet P Android 3.2 | Sony Tablet S Android 3.1 | Optimus Pad(L-06C) Android 3.1 | XOOM Wi-Fi TBi11M Android 3.1 | IdeaPad Tablet K1 Android 3.1" |
RAM | 783 | 325 | 296 | 821 | 819 | 818.8 | 828 | 818 |
CPU integer | 1146 | 603 | 626 | 1173 | 1170 | 1170.2 | 1183 | 1169.4 |
CPU float-point | 1044 | 151 | 273 | 1015 | 1018 | 1017.8 | 1035 | 1016 |
2D Graphics | 292 | 254 | 167 | 223 | 293 | 265.2 | 246 | 291.8 |
3D Graphics | 859 | 595 | 468 | 946 | 811 | 821.8 | 759 | 802.2 |
Database IO | 315 | 220 | 270 | 340 | 325 | 282 | 370 | 175 |
SD Card write | 106 | 106 | 47 | 65 | 95 | 149.8 | 105 | 130.6 |
SD Card read | 192 | 194 | 46 | 97 | 192 | 172.4 | 159 | 130.6 |
Total Score | 4737 | 2448 | 2193 | 4680 | 4723 | 4698 | 4685 | 4533.6 |
ThinkPad Tabletは、Android 3.x搭載タブレットとして十分な性能を持ち、ゴリラガラスの採用や筆圧対応のペンをサポートしていることもウリだ。キーボード付きケースやドッキングステーションなど、周辺機器も充実している。本来はビジネス向けの製品で、価格もやや高めだが、個人でも使いたいという人は多いのではないだろうか。特に、ペンでお絵かきやアイデアのメモなどを書き留めておきたいという人にお勧めしたい。
(2011年 11月 9日)
[Text by 石井 英男]