Hothotレビュー
NECパーソナルコンピュータ「VALUESTAR N」
~5系統の3波チューナを搭載し、4番組同時録画が可能な液晶一体型PC
(2013/11/22 06:00)
NEC PCの2013年秋冬モデルとして登場した「VALUESTAR N」は、TV機能を重視した液晶一体型PCである。一時期は、液晶一体型もAVノートPCも、TVチューナを搭載し、TV番組の視聴や録画が可能な製品が多かったのだが、最近は、TVチューナを搭載した製品が以前に比べて減ってきている。その背景として、HDDレコーダの低価格化やtorneやnasneのような製品が出てきたことにより、PCでのTV録画に対するニーズが変化してきたこともあるだろう。そうした中、NECは、Twitterとの連携機能やスマホからの録画予約など、PCならではのTV機能にこだわってきた。
今回登場したVALUESTAR Nの上位モデル「VALUESTAR N VN970/NS」では、5系統の3波チューナを搭載し、4番組の同時視聴や同時録画が可能になるなど、TV機能がさらに強化されていることが特徴だ。今回は、VALUESTAR N VN970/NS(以下VN970/NS)を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
スイベルにも対応した新筐体
従来のVALUESTAR Nシリーズは、液晶サイズが21.5型であったが、2013年夏モデルでは上位モデルが23型に、下位モデルが21.5型になり、VN970/NSをはじめとする23型の上位モデルは筐体も新しくなっている。基本的なデザインは、従来と同じくフォトフレーム風デザインを継承しているが、従来のように背面側のスタンドで支える設計ではなく、フレームの下部の四角形のスタンドで支える設計に変更されたため、チルトの調整範囲が広がっただけでなく、左右へのスイベルにも対応した。チルトは前0度、後15度、スイベルは左右20度ずつの調整が可能である。筐体カラーは今回試用したファインブラックのほか、ファインホワイトも用意されている(下位のVN770/NSでは、さらにクランベリーレッドも用意されており、合計3色となる)。
23型フルHD対応IPS液晶を搭載
まずは、PCとしての基本性能から見ていこう。CPUはクアッドコアのCore i7-4700MQであり、メモリは8GB標準で実装している。SO-DIMMスロットが2基用意されており、1基空いているため、メモリは最大16GBまで増設できる。ストレージはHDDだが、容量は4TBと余裕がある(下位のVN770/NSのHDD容量は3TB)。また、光学ドライブとして、BDXLドライブを搭載しており、BDビデオなどの再生やBD-R/REメディアへの書き込みなどが可能だ。PCとしての基本性能は十分高いといえる
液晶ディスプレイは23型で、視野角の広いIPS液晶を採用。解像度は1,920×1,080ドットのフルHD対応である。タッチパネルは非搭載だが、代わりにタッチパッドリモコンが付属する(詳しくは後述)。スーパーシャインビューLED IPS液晶と名付けられている液晶であり、色純度が高く、コントラストも高い。液晶上部には、720p対応Webカメラとステレオマイクが用意されており、ビデオチャットなどに利用できる。
サウンドにこだわっていることも魅力の1つだ。液晶下部にヤマハ製2wayサウンドシステムを搭載しており、迫力のあるサウンドを楽しめる。
OSは、Windows 8.1 64bitであり、Microsoft Office Home and Business 2013もプリインストールされている。
電源オフから約2秒でTVを視聴できる「ぱっと観TV」機能を搭載
VN970/NSの最大のウリが、合計5系統もの3波チューナを搭載していることだ。ダブルチューナ+インスタントTV機能用チューナで、合計3チューナ搭載といったPCはこれまでにもあったが、一般的なPCで、5チューナを搭載した製品はおそらく初であろう(下位モデルのVN770/NSは、3チューナ搭載)。VN970/NSの5チューナは、録画も可能な4チューナと「ぱっと観TV」機能用の1チューナに分かれており、最大4番組までの同時録画や画面を分割しての同時表示などが可能である。
インターフェイスとしては、USB 3.0×4とUSB 2.0×2(うち1つは電源オフUSB充電対応)、有線LAN、SDカードスロットなどが用意されているほか、HDMI入力端子を装備していていることも嬉しい。VN930/NSを液晶ディスプレイとして利用できるので、PS3やWii Uなどのゲーム機を接続したり、他のPCを接続するなど、さまざまな活用が考えられる。
ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LAN機能とBluetooth 4.0をサポートしている。
裏側がタッチパッドになっているタッチパッドリモコンが付属
キーボードとマウスはワイヤレスで、離れた場所からも操作が可能だ。キーボードは全104キーで、上部にはワンタッチスタートボタンが用意されており、音量調整や設定したソフトの起動などをワンタッチで行なえる。付属のワイヤレスレーザーマウスは、上下スクロールだけでなく、横チルト機能も備えており、チャーム呼び出しや起動中のアプリ一覧表示といったWindows 8.1の機能をワンタッチで呼び出せるのが便利だ。
また、独自のタッチパッドリモコンが付属していることも特徴である。タッチパッドリモコンは、表側が通常のボタンが並んだリモコン、裏側がタッチパッドになっており、リモコン利用時は縦にして操作し、タッチパッド利用時は横にして操作する。タッチパッド側には、左右のクリックボタンとスタートボタンが用意されており、マルチタッチによるピンチイン/アウトなどのジェスチャー操作にも対応する。リモコンとタッチパッドは排他になっており、どちらのモードで使うかは、側面のスライドスイッチで切り替える。
4番組同時視聴やtwitter連携も可能なTV機能
VN970/NSの最大のウリは、やはりその充実したTV機能であろう。地上/BS/110度CSデジタル対応の3波チューナを合計5系統(1系統は「ぱっと観TV」機能用)備えており、最大4番組の同時視聴や同時録画が可能だ。BDレコーダやHDDレコーダの中には、2番組同時録画中は片方の番組は無圧縮でしか録画できないといった制限がある製品もあるが、VN970/NSは、4番組同時録画中でもすべて圧縮しながらの録画が可能だ。内蔵チューナは多いがアンテナ端子は1つのみなので、接続も簡単だ。
TVの視聴や録画は、独自の「SmartVision」を利用するが、SmartVisionには、リモコン操作に適した10フィートUIとマウス操作に適した2フィートUIの2種類のUIが用意されているので、少し離れた場所からでもリモコンで快適に操作できる。画面を4つに分割して4番組を同時に視聴することも可能で、その表示の仕方も、画面を4等分にするモードとメイン画面+子画面×3で表示するモードを選べる。
録画モードは無圧縮を含めて6段階用意されており、最大約16倍での録画が可能だ。VN970/NSでは、従来の「おまかせ録画」機能をさらに強化した「おまかせタフ録り」機能が搭載されていることも魅力だ。おまかせタフ録りは、興味のあるジャンルの優先度やタレント名などのキーワードを登録しておくだけで、条件に合う番組をどんどん録画していってくれる機能だ。ジャンルによって録画モードを変えることも可能なので、HDDの容量をより有効に使える。もちろん、PCの電源をオフにしていても、予約録画可能である。
Twitterとの連携機能「つぶやきプラス」もユニークな機能だ。番組の横にその番組に関するツイートをリアルタイムに表示できるほか、録画番組でも放送時のツイートを再現できるので、友人達と一緒にTVを観ながら盛り上がるような感覚で、番組を楽しめる。また、各チャンネルのツイート量をグラフ形式で表示することができる「つぶやきメーター」を見れば、今どの番組がどれくらい盛り上がっているかがすぐに分かる。録画してある番組のツイートの中から、指定した単語を含むツイートを検索し、その場面から再生できる「つぶやきシーン検索」も面白い。さらに、ツイートやDMによって外出先から録画予約を行なうことも可能だ。このあたりは、一般的なBDレコーダやHDDレコーダにはない、PCならではの機能といえるだろう。
また、Webカメラを利用して、手を動かすジェスチャーでTV機能の操作を行なう「ハンドパワー」機能も搭載する。ただし、こちらはやや慣れが必要で、うまくジェスチャーが認識されないことも多かった。
スマートフォンやタブレットをTV機能のリモコンとして利用できる
また、無料でダウンロードできるiOS/Android対応の専用アプリ「Smartリモコン」を利用することで、スマートフォンやタブレットから、VALUESTAR NのTV機能を操作できることも魅力だ。Smartリモコンでは、単にチャンネル変更や音量調整を行なうだけでなく、録画した番組を検索して、VALUESTAR N側での再生をスタートできるのも便利だ。ただし、あくまでリモコンとしての利用であり、スマートフォンやタブレットの画面で、録画番組を再生できるわけではない。
また、どの番組がTwitter上で1番盛り上がっているのかが分かるつぶやきメーターも、Smartリモコンで見ることができる。前述したように、TwitterのDMなどを利用して、外出先から番組録画のリモート予約ができるのだが、そのための入力画面もSmartリモコンでは用意されている。
液晶一体型PCとして十分なパフォーマンスを実現
参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark03」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用として、ASUS「TransAiO P1801」、ソニー「VAIO Fit 15」のスコアも掲載した。
結果は下の表に示したとおりで、グラフィック性能はCore i7-3537Uを搭載したVAIO Fit 15を上回っている。また、PCMark05のCPU Scoreをみれば分かるように、純粋なCPU性能はCore i7-3557Uよりも上だ。ただし、ストレージが通常のHDDであるため、ハイブリッドHDDを搭載したVAIO Fit 15よりもストレージ性能はかなり低く、総合スコアもストレージ性能の低さが足を引っ張っていると思われる。とはいえ、一般的な利用では十分な性能であり、容量の大きさも含めさまざまな用途に活用できるだろう。
VALUESTAR N VN970/NS | TransAiO P1801 | VAIO Fit 15 | |
---|---|---|---|
CPU | Core i7-4700MQ (2.4GHz) | Core i7-3770 (3.4GHz) | Core i7-3537U (2GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 4600 | GeForce GT 730M | Intel HD Graphics 4000 |
PCMark05 | |||
PCMarks | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 12855 | 14047 | 9453 |
Memory Score | 10317 | 11721 | 8082 |
Graphics Score | 3276 | N/A | 2777 |
HDD Score | 7643 | 8844 | 9939 |
PCMark Vantage 64bit | |||
PCMark Score | 8580 | 11323 | 9038 |
Memories Score | 5703 | 7165 | 5666 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | Failed |
Gaming Score | 6012 | 10339 | 8348 |
Music Score | 7367 | 8585 | 12051 |
Communications Score | 14499 | 15585 | 12300 |
Productivity Score | 6162 | 7891 | 7223 |
HDD Score | 4256 | 4424 | 11431 |
PCMark Vantage 32bit | |||
PCMark Score | 8240 | 10190 | 8809 |
Memories Score | 5523 | 7050 | 5029 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | Failed |
Gaming Score | 5594 | 9252 | 7121 |
Music Score | 7330 | 8012 | 10609 |
Communications Score | 13122 | 14139 | 10611 |
Productivity Score | 5778 | 7075 | 6915 |
HDD Score | 4300 | 4407 | 10711 |
PCMark 7 v1.4.0 | |||
PCMark score | 2489 | 3708 | 3971 |
Lightweight score | 2537 | 2573 | 2276 |
Productivity score | 2041 | 2031 | 1785 |
Entertainment score | 1652 | 3467 | 2910 |
Creativity score | 6354 | 7109 | 7614 |
Computation score | 15290 | 11906 | 15773 |
System storage score | 1959 | 2182 | 3251 |
Raw system storage score | 508 | 670 | 1192 |
3DMark03 | |||
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks) | 13869 | 29062 | 13486 |
CPU Score | 2743 | 計測不可 | 1980 |
3DMarkIce Storm | 37861 | 63692 | 37436 |
Cloud Gate | 5637 | 8120 | 4184 |
Fire Strike | 611 | 1143 | 587 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | |||
HIGH | 7169 | 6687 | 4565 |
LOW | 11138 | 計測不可 | 6760 |
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編 | |||
1,280×720ドット 最高品質 | 1457 | 未計測 | 未計測 |
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC) | 1483 | 未計測 | 未計測 |
1,280×720ドット 高品質(ノートPC) | 1817 | 未計測 | 未計測 |
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC) | 3360 | 未計測 | 未計測 |
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 3379 | 未計測 | 未計測 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | |||
DP | 99.97 | 99.73 | 100 |
HP | 99.97 | 100 | 100 |
SP/LP | 100 | 99.97 | 100 |
LLP | 99.97 | 99.97 | 100 |
DP(CPU負荷) | 7 | 4 | 12 |
HP(CPU負荷) | 3 | 1 | 4 |
SP/LP(CPU負荷) | 2 | 1 | 3 |
LLP(CPU負荷) | 2 | 0 | 1 |
CrystalDiskMark 2.2 | |||
シーケンシャルリード | 149.7MB/sec | 171.4MB/sec | 146.0MB/sec |
シーケンシャルライト | 135.8MB/sec | 167.9MB/sec | 87.86MB/sec |
512Kランダムリード | 49.88MB/sec | 62.95MB/sec | 114.6MB/sec |
512Kランダムライト | 97.51MB/sec | 52.86MB/sec | 78.06MB/sec |
4Kランダムリード | 0.564MB/sec | 0.951MB/sec | 11.22MB/sec |
4Kランダムライト | 1.096MB/sec | 0.894MB/sec | 19.64MB/sec |
見たい番組が重なっていることが多い人にお勧め
VN970/NSは、5チューナを搭載した液晶一体型PCで、単にTVを視聴するだけでなく、リアルタイムでのTwitterとの連携なども可能である。TVで見たい番組が3つも4つも重なっており、1度に録画できなくて困ったという経験をお持ちの方もいるだろうが、VN970/NSなら、最大4番組の同時録画が可能であり、そうした心配は不要だ。サウンドにもこだわっており、基本性能も十分高いので、家族みんなで使うPCとしてもお勧めだ。特に見たい番組が3つも4つも重なっていることが多い人には、本製品は最適な製品である。