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NECパーソナルコンピュータ「VALUESTAR N」

~5系統の3波チューナを搭載し、4番組同時録画が可能な液晶一体型PC

NECパーソナルコンピュータ「VALUESTAR N VN970/NS」
発売中

価格:オープンプライス

 NEC PCの2013年秋冬モデルとして登場した「VALUESTAR N」は、TV機能を重視した液晶一体型PCである。一時期は、液晶一体型もAVノートPCも、TVチューナを搭載し、TV番組の視聴や録画が可能な製品が多かったのだが、最近は、TVチューナを搭載した製品が以前に比べて減ってきている。その背景として、HDDレコーダの低価格化やtorneやnasneのような製品が出てきたことにより、PCでのTV録画に対するニーズが変化してきたこともあるだろう。そうした中、NECは、Twitterとの連携機能やスマホからの録画予約など、PCならではのTV機能にこだわってきた。

 今回登場したVALUESTAR Nの上位モデル「VALUESTAR N VN970/NS」では、5系統の3波チューナを搭載し、4番組の同時視聴や同時録画が可能になるなど、TV機能がさらに強化されていることが特徴だ。今回は、VALUESTAR N VN970/NS(以下VN970/NS)を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

スイベルにも対応した新筐体

 従来のVALUESTAR Nシリーズは、液晶サイズが21.5型であったが、2013年夏モデルでは上位モデルが23型に、下位モデルが21.5型になり、VN970/NSをはじめとする23型の上位モデルは筐体も新しくなっている。基本的なデザインは、従来と同じくフォトフレーム風デザインを継承しているが、従来のように背面側のスタンドで支える設計ではなく、フレームの下部の四角形のスタンドで支える設計に変更されたため、チルトの調整範囲が広がっただけでなく、左右へのスイベルにも対応した。チルトは前0度、後15度、スイベルは左右20度ずつの調整が可能である。筐体カラーは今回試用したファインブラックのほか、ファインホワイトも用意されている(下位のVN770/NSでは、さらにクランベリーレッドも用意されており、合計3色となる)。

VALUESTAR N VN970/NSの前面。液晶が23型に大型化され、筐体も新しくなった
VALUESTAR N VN970/NSの背面。左側にはHDMI入力端子が用意されている
チルト機能を備えており、前後の角度の調整が可能。この写真は、液晶を最も立てた状態である
チルト機能により、液晶を最大15度まで後ろに傾けることが可能
スタンド底面には回転機構が用意されており、左右へのスイベルが可能
スイベルは左右20度ずつの回転が可能。液晶を左側に最大まで回転させたところ
こちらは液晶を右側に最大まで回転させたところ

23型フルHD対応IPS液晶を搭載

 まずは、PCとしての基本性能から見ていこう。CPUはクアッドコアのCore i7-4700MQであり、メモリは8GB標準で実装している。SO-DIMMスロットが2基用意されており、1基空いているため、メモリは最大16GBまで増設できる。ストレージはHDDだが、容量は4TBと余裕がある(下位のVN770/NSのHDD容量は3TB)。また、光学ドライブとして、BDXLドライブを搭載しており、BDビデオなどの再生やBD-R/REメディアへの書き込みなどが可能だ。PCとしての基本性能は十分高いといえる

 液晶ディスプレイは23型で、視野角の広いIPS液晶を採用。解像度は1,920×1,080ドットのフルHD対応である。タッチパネルは非搭載だが、代わりにタッチパッドリモコンが付属する(詳しくは後述)。スーパーシャインビューLED IPS液晶と名付けられている液晶であり、色純度が高く、コントラストも高い。液晶上部には、720p対応Webカメラとステレオマイクが用意されており、ビデオチャットなどに利用できる。

 サウンドにこだわっていることも魅力の1つだ。液晶下部にヤマハ製2wayサウンドシステムを搭載しており、迫力のあるサウンドを楽しめる。

 OSは、Windows 8.1 64bitであり、Microsoft Office Home and Business 2013もプリインストールされている。

液晶は23型で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHDである。IPS液晶採用で、視野角も広い
液晶上部に720p対応Webカメラとステレオマイクが用意されており、ビデオチャットなどに利用できる
右側面にトレイ式のBDXL対応BDドライブが用意されている
液晶下部にフルレンジスピーカーとウーファーから構成される2wayヤマハサウンドシステムを搭載
サウンドシステムはヤマハ製であり、「YAMAHA」ロゴが書かれている

電源オフから約2秒でTVを視聴できる「ぱっと観TV」機能を搭載

 VN970/NSの最大のウリが、合計5系統もの3波チューナを搭載していることだ。ダブルチューナ+インスタントTV機能用チューナで、合計3チューナ搭載といったPCはこれまでにもあったが、一般的なPCで、5チューナを搭載した製品はおそらく初であろう(下位モデルのVN770/NSは、3チューナ搭載)。VN970/NSの5チューナは、録画も可能な4チューナと「ぱっと観TV」機能用の1チューナに分かれており、最大4番組までの同時録画や画面を分割しての同時表示などが可能である。

 インターフェイスとしては、USB 3.0×4とUSB 2.0×2(うち1つは電源オフUSB充電対応)、有線LAN、SDカードスロットなどが用意されているほか、HDMI入力端子を装備していていることも嬉しい。VN930/NSを液晶ディスプレイとして利用できるので、PS3やWii Uなどのゲーム機を接続したり、他のPCを接続するなど、さまざまな活用が考えられる。

 ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LAN機能とBluetooth 4.0をサポートしている。

上部に電源ボタンとTVボタンが用意されている。電源オフの状態でも、TVボタンを押すことで、約2秒でTVを視聴できる
左側面には、外部入力切替ボタン、チャンネル切替つまみ/放送波切替ボタン、音量調節つまみ/消音ボタン、明るさ調整つまみ/画面消灯ボタン、SDカードスロット、USB 2.0×2(下側はパワーオフUSB充電機能対応)、マイク入力、ヘッドフォン出力が用意されている
背面の右側には、有線LANとUSB 3.0×4が用意されている
電源は付属のACアダプタ経由で供給される

裏側がタッチパッドになっているタッチパッドリモコンが付属

 キーボードとマウスはワイヤレスで、離れた場所からも操作が可能だ。キーボードは全104キーで、上部にはワンタッチスタートボタンが用意されており、音量調整や設定したソフトの起動などをワンタッチで行なえる。付属のワイヤレスレーザーマウスは、上下スクロールだけでなく、横チルト機能も備えており、チャーム呼び出しや起動中のアプリ一覧表示といったWindows 8.1の機能をワンタッチで呼び出せるのが便利だ。

付属のワイヤレスキーボード。全104キーで、上部にはワンタッチスタートボタンも用意されている。キー配列も標準的で、快適なタイピングが可能だ
ワイヤレスキーボードの底面。折りたたみ式の脚が用意されている
キーボードの脚を立てると、キーボードの傾斜がより急になり、タイピングしやすくなる
付属のワイヤレスレーザーマウス。横チルト機能を備えており、チャーム呼び出しや起動中のアプリ一覧表示といったWindows 8.1の機能をワンタッチで呼び出せる
ワイヤレスレーザーマウスの底面

 また、独自のタッチパッドリモコンが付属していることも特徴である。タッチパッドリモコンは、表側が通常のボタンが並んだリモコン、裏側がタッチパッドになっており、リモコン利用時は縦にして操作し、タッチパッド利用時は横にして操作する。タッチパッド側には、左右のクリックボタンとスタートボタンが用意されており、マルチタッチによるピンチイン/アウトなどのジェスチャー操作にも対応する。リモコンとタッチパッドは排他になっており、どちらのモードで使うかは、側面のスライドスイッチで切り替える。

付属のタッチパッドリモコン。電波式なので、間に障害物があっても利用できる
タッチパッドリモコンの裏側がタッチパッドになっており、横向きに持って利用する
タッチパッドモードとリモコンモードの切り替えは、側面のスライドスイッチで行なう

4番組同時視聴やtwitter連携も可能なTV機能

 VN970/NSの最大のウリは、やはりその充実したTV機能であろう。地上/BS/110度CSデジタル対応の3波チューナを合計5系統(1系統は「ぱっと観TV」機能用)備えており、最大4番組の同時視聴や同時録画が可能だ。BDレコーダやHDDレコーダの中には、2番組同時録画中は片方の番組は無圧縮でしか録画できないといった制限がある製品もあるが、VN970/NSは、4番組同時録画中でもすべて圧縮しながらの録画が可能だ。内蔵チューナは多いがアンテナ端子は1つのみなので、接続も簡単だ。

 TVの視聴や録画は、独自の「SmartVision」を利用するが、SmartVisionには、リモコン操作に適した10フィートUIとマウス操作に適した2フィートUIの2種類のUIが用意されているので、少し離れた場所からでもリモコンで快適に操作できる。画面を4つに分割して4番組を同時に視聴することも可能で、その表示の仕方も、画面を4等分にするモードとメイン画面+子画面×3で表示するモードを選べる。

 録画モードは無圧縮を含めて6段階用意されており、最大約16倍での録画が可能だ。VN970/NSでは、従来の「おまかせ録画」機能をさらに強化した「おまかせタフ録り」機能が搭載されていることも魅力だ。おまかせタフ録りは、興味のあるジャンルの優先度やタレント名などのキーワードを登録しておくだけで、条件に合う番組をどんどん録画していってくれる機能だ。ジャンルによって録画モードを変えることも可能なので、HDDの容量をより有効に使える。もちろん、PCの電源をオフにしていても、予約録画可能である。

 Twitterとの連携機能「つぶやきプラス」もユニークな機能だ。番組の横にその番組に関するツイートをリアルタイムに表示できるほか、録画番組でも放送時のツイートを再現できるので、友人達と一緒にTVを観ながら盛り上がるような感覚で、番組を楽しめる。また、各チャンネルのツイート量をグラフ形式で表示することができる「つぶやきメーター」を見れば、今どの番組がどれくらい盛り上がっているかがすぐに分かる。録画してある番組のツイートの中から、指定した単語を含むツイートを検索し、その場面から再生できる「つぶやきシーン検索」も面白い。さらに、ツイートやDMによって外出先から録画予約を行なうことも可能だ。このあたりは、一般的なBDレコーダやHDDレコーダにはない、PCならではの機能といえるだろう。

 また、Webカメラを利用して、手を動かすジェスチャーでTV機能の操作を行なう「ハンドパワー」機能も搭載する。ただし、こちらはやや慣れが必要で、うまくジェスチャーが認識されないことも多かった。

合計5系統の3波チューナを搭載しているが、アンテナ端子は1つのみなので便利だ
背面の右側にB-CASスロットが用意されている
TV機能の初期設定画面
画面を4つに分割して、4番組を同時に視聴することが可能
4番組同時視聴はメイン画面+子画面×3というようにも分割できる
リモコン向けの10フィートUIで、録画予約を行なっているところ。録画モードは6段階から選択できる
番組表画面で予約状況を確認しているところ。番組名の左側に赤い帯があるのが、録画予約済番組である。時間帯が重なっていても4番組までの同時録画が可能
こちらはマウス操作向けの2フィートUIの番組表。おまかせタフ録り機能を有効にすると、興味のあるジャンルの番組を興味の度合いに応じて自動的に録画予約してくれる
おまかせタフ録り機能の設定は、ジャンル設定とキーワード設定の2通りが用意されている。ジャンル設定は、興味のあるジャンルの興味度合いと録画画質を設定するだけで完了
キーワード設定では、人名一覧から人名を選択することもできる
10フィートUIでのチャンネル選局画面
Twitter連携機能の「つぶやきプラス」では、視聴中の番組に関するツイートをリアルタイムで確認できる(実際には左上のウィンドウ内に番組が表示されている)
「つぶやきメーター」では、他の番組のツイート数をリアルタイムで見ることができる(実際には左上のウィンドウ内に番組が表示されている)
「ハンドパワー」機能では、Webカメラを利用して、手のジェスチャーでTV機能の起動や終了、チャンネルや放送波の切替、音量の上下などが行なえる

スマートフォンやタブレットをTV機能のリモコンとして利用できる

 また、無料でダウンロードできるiOS/Android対応の専用アプリ「Smartリモコン」を利用することで、スマートフォンやタブレットから、VALUESTAR NのTV機能を操作できることも魅力だ。Smartリモコンでは、単にチャンネル変更や音量調整を行なうだけでなく、録画した番組を検索して、VALUESTAR N側での再生をスタートできるのも便利だ。ただし、あくまでリモコンとしての利用であり、スマートフォンやタブレットの画面で、録画番組を再生できるわけではない。

 また、どの番組がTwitter上で1番盛り上がっているのかが分かるつぶやきメーターも、Smartリモコンで見ることができる。前述したように、TwitterのDMなどを利用して、外出先から番組録画のリモート予約ができるのだが、そのための入力画面もSmartリモコンでは用意されている。

iOS/Android対応の無料アプリ「Smartリモコン」を利用することで、スマートフォンやタブレットから、VALUESTAR NのTV機能を操作できる
Smartリモコンでは、VALUESTAR Nで録画した番組を検索して、再生をスタートさせることもできる(スマートフォンやタブレットで録画番組を再生できるわけではない)
Smartリモコンからの操作で録画番組を再生しているところ。早送りや巻き戻しなどの操作が可能
Smartリモコンでも、つぶやきメーターを見ることができる
TwitterのDMを利用して、外出先から番組録画のリモート予約が可能

液晶一体型PCとして十分なパフォーマンスを実現

 参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark03」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用として、ASUS「TransAiO P1801」、ソニー「VAIO Fit 15」のスコアも掲載した。

 結果は下の表に示したとおりで、グラフィック性能はCore i7-3537Uを搭載したVAIO Fit 15を上回っている。また、PCMark05のCPU Scoreをみれば分かるように、純粋なCPU性能はCore i7-3557Uよりも上だ。ただし、ストレージが通常のHDDであるため、ハイブリッドHDDを搭載したVAIO Fit 15よりもストレージ性能はかなり低く、総合スコアもストレージ性能の低さが足を引っ張っていると思われる。とはいえ、一般的な利用では十分な性能であり、容量の大きさも含めさまざまな用途に活用できるだろう。

 VALUESTAR N VN970/NSTransAiO P1801VAIO Fit 15
CPUCore i7-4700MQ (2.4GHz)Core i7-3770 (3.4GHz)Core i7-3537U (2GHz)
ビデオチップIntel HD Graphics 4600GeForce GT 730MIntel HD Graphics 4000
PCMark05
PCMarksN/AN/AN/A
CPU Score12855140479453
Memory Score10317117218082
Graphics Score3276N/A2777
HDD Score764388449939
PCMark Vantage 64bit
PCMark Score8580113239038
Memories Score570371655666
TV and Movie ScoreFailedFailedFailed
Gaming Score6012103398348
Music Score7367858512051
Communications Score144991558512300
Productivity Score616278917223
HDD Score4256442411431
PCMark Vantage 32bit
PCMark Score8240101908809
Memories Score552370505029
TV and Movie ScoreFailedFailedFailed
Gaming Score559492527121
Music Score7330801210609
Communications Score131221413910611
Productivity Score577870756915
HDD Score4300440710711
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score248937083971
Lightweight score253725732276
Productivity score204120311785
Entertainment score165234672910
Creativity score635471097614
Computation score152901190615773
System storage score195921823251
Raw system storage score5086701192
3DMark03
1,024×768ドット32bitカラー(3Dmarks)138692906213486
CPU Score2743計測不可1980
3DMarkIce Storm378616369237436
Cloud Gate563781204184
Fire Strike6111143587
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH716966874565
LOW11138計測不可6760
FINAL FANTASY XIV 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
1,280×720ドット 最高品質1457未計測未計測
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC)1483未計測未計測
1,280×720ドット 高品質(ノートPC)1817未計測未計測
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)3360未計測未計測
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)3379未計測未計測
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP99.9799.73100
HP99.97100100
SP/LP10099.97100
LLP99.9799.97100
DP(CPU負荷)7412
HP(CPU負荷)314
SP/LP(CPU負荷)213
LLP(CPU負荷)201
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード149.7MB/sec171.4MB/sec146.0MB/sec
シーケンシャルライト135.8MB/sec167.9MB/sec87.86MB/sec
512Kランダムリード49.88MB/sec62.95MB/sec114.6MB/sec
512Kランダムライト97.51MB/sec52.86MB/sec78.06MB/sec
4Kランダムリード0.564MB/sec0.951MB/sec11.22MB/sec
4Kランダムライト1.096MB/sec0.894MB/sec19.64MB/sec

見たい番組が重なっていることが多い人にお勧め

 VN970/NSは、5チューナを搭載した液晶一体型PCで、単にTVを視聴するだけでなく、リアルタイムでのTwitterとの連携なども可能である。TVで見たい番組が3つも4つも重なっており、1度に録画できなくて困ったという経験をお持ちの方もいるだろうが、VN970/NSなら、最大4番組の同時録画が可能であり、そうした心配は不要だ。サウンドにもこだわっており、基本性能も十分高いので、家族みんなで使うPCとしてもお勧めだ。特に見たい番組が3つも4つも重なっていることが多い人には、本製品は最適な製品である。

(石井 英男)