Hothotレビュー
ソニー「VAIO Duo 13」
~Surf Slider機構搭載のハイブリッドUltrarbookがさらに進化
(2013/6/21 00:00)
ソニーは、2013年夏モデルとして多数の製品を発表したが、その中でも特に注目したいのが、「VAIO Duo 13」と「VAIO Pro 11/13」の3製品だ。VAIO Duo 13は、その名称からも分かるように、2012年秋冬モデルとして登場した「VAIO Duo 11」の兄弟機であり、液晶サイズが11.6型から13.3型へと大型化されている。VAIO Duo 11は、独自のSurf Slider機構の採用によってタブレットモードとキーボードモードの2種類のモードで利用でき、さらに筆圧検知に対応したペンも利用できるハイブリッドUltrabookとして人気を集めた。新たに登場したVAIO Duo 13は、CPUの世代が新しくなり、液晶サイズが大きくなっただけでなく、Surf Slider機構が一新され、ペンの機能も強化されるなど、さまざまな点が進化している。
今回は、VAIO Duo 13を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部や性能などが異なる可能性がある。
液晶が11.6型から13.3型になったが、重量は20gしか増えていない
まずは、ボディから見ていこう。VAIO Duo 13は、タブレットとして使えるタブレットモードと、クラムシェルノートPCとして使えるキーボードモードという2つのスタイルで利用できることが特徴だ。タブレットモードでのサイズは、330×210×9.2~19.5mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは約1.325kgである。兄弟機のVAIO Duo 11のサイズは、319.9×199×17.85mm(同)で、重さは約1.305kgなので、液晶が11.6型から13.3型に大型化されたにも関わらず、横幅は10.1mm、奥行きは11mm、高さは1.65mmしか大きくなっておらず、重量に至ってはわずか20gしか増えていないことに驚かされる。VAIO Duo 11がやや液晶の周りの額縁部分が大きかったということもあるが、液晶が大きくなっても、携帯性はほとんど変わらない。なお、VAIO Duo 11では、オプションのシートバッテリを装着することが可能であったが、VAIO Duo 13は、標準バッテリでの駆動時間が公称約18時間と大きく延びているため(VAIO Duo 11は約7時間)、シートバッテリには対応しない。
独自の変形機構「Surf Slider」も、VAIO Duo 13では構造が新しくなっている。液晶を手前にスライドさせてキーボードの上に移動することで、キーボードモードからタブレットモードへ変形するという、基本的な仕組みはVAIO Duo 11と同じだが、VAIO Duo 11では液晶を裏から支えているヒンジ部分が液晶の横幅一杯にあったのに対し、VAIO Duo 13では、ヒンジが中央部だけになっているため、外観がよりすっきりし、指などを挟む可能性も減った。キーボードモード時には、液晶を中央部だけで支えていることになるため、液晶がグラグラするのではないかと思ったが、本体の左右端に液晶部分をひっかけて固定するラッチが用意されているため、その心配はない。キーボードモードからタブレットモードへの変形やその逆のタブレットモードからキーボードモードへの変形は、どちらもスムーズに行なえる。ただし、構造上、キーボードモードでの液晶の角度は固定となる(VAIO Duo 11も同じ)。VAIO Duo 13は、キーボード部分がやや凹んだ形状になっているが、タブレットモードにしたときに、液晶背面の出っ張った部分がちょうどはまるようになっており、タブレットモード時の厚さをできるだけ薄くするための工夫である。Surf Sliderもより進化したといえるだろう。
背面には、NFCリーダーやステレオスピーカー、ASSISTボタン、音量調節ボタン、リアカメラなどが用意されている。
省電力機能が強化された第4世代Core iを搭載
今度はPCとしての基本スペックを見ていこう。今回試用したVAIO Duo 13は、店頭モデルの「SVD13219CJW」であり、CPUとしてCore i5-4200U(1.6GHz)を搭載し、4GBのメモリを標準搭載している(メモリの増設はできない)。Core i5-4200Uは、開発コードネームHaswellと呼ばれていたIntelの最新CPUであり、省電力機能が大幅に強化されていることが特徴だ。
ストレージとしては、128GBのSSDを搭載する。できれば256GBのSSDを搭載して欲しかったところだが、2013年夏モデルのUltrabookとしては標準的な仕様であろう。直販モデルのVAIOオーナーメードモデルでは、CPUとしてより上位のCore i7-4650UやCore i7-4500Uを選択できるほか、メモリも8GBにすることが可能だ。また、SSD容量も256GBや512GBを選択できる。
液晶は13.3型で、解像度は1,920×1,080ドットのフルHD対応だ。解像度はVAIO Duo 11と同じだが、液晶が大きくなったため、より見やすくなっている。液晶パネル自体も、VAIO Duo 11のVAIOディスプレイプラスと呼ばれるものから、「トリルミナスディスプレイ for mobile」と呼ばれるものに変更されており、より色鮮やかな表示を実現している。もちろん、タッチパネルを搭載しており、タッチ操作も非常に快適だ。また、IPS液晶を採用しているため、視野角が広く、斜めから見ても色のずれが小さい。液晶上部には、有効画素数207万画素の「Exmor R for PC」CMOSセンサーカメラを搭載するほか、背面にも有効画素数799万画素の「Exmor RS for PC」CMOSセンサーカメラが搭載されている。なお、VAIO Duo 11では、背面カメラの有効画素数が207万画素であったため、VAIO Duo 13では、より高画素化されたことになる。
OSとしてはVAIO Duo 11と同じく、Windwos 8 64bitが搭載されている。
本体にペンを取り付けられるようになり、ペンを抜くとアプリが自動起動する
キーボードはアイソレーションタイプで、キーピッチは約19mm、キーストロークは約1mmである。キーストロークがやや浅いため、多少底付き感はあるものの、配列は標準的で、快適にタイピングが可能だ。ただし、「め」や「る」などのキーのピッチはやや狭くなっている。また、キーボードにはバックライトが搭載されているので、暗い場所でもタイプミスを減らすことができる。
ポインティングデバイスも、VAIO Duo 11から大きく変更されている。VAIO Duo 11では、オプティカル・トラックパッドと呼ばれる光学式のデバイスが搭載されていたが、操作にやや慣れが必要であった。VAIO Duo 13では、筐体サイズに余裕ができたこともあり、一般的なタッチパッドに変更された。ただし、パッドのサイズは80×25mmと小さめなので、特に上下へのポインター移動操作はやや敏感な印象を受けた。
VAIO Duo 11は、筆圧検知対応のペン(デジタイザスタイラス)を備えていることが魅力の1つであったが、VAIO Duo 13ももちろんペンに対応している。VAIO Duo 11では、ペンを本体に収納することや、一体化することができなかったので、ペンを紛失してしまう恐れがあったが、VAIO Duo 13では、本体にゴム製のペンフックを取り付けることができるようになった。ペンフックを取り付ければ、ペンのクリップ部分を差し込んでVAIO Duo 13本体とペンを一体化できるので、ペンの紛失を防げる。
また、新機能として、ペンに磁石が仕込まれており、ペンフックからペンが取り外されたことを磁気センサーによって検出できるようになった。デフォルトでは、ペンをペンフックから取り外すと、手書きメモソフトの「Note Anytime for VAIO」が起動するようになっており、素早くメモを取ることが可能だが、他のアプリが起動するように設定することも可能だ。さらに、本体右側面には、収納式のペンスタンドが内蔵されており、キーボードモードで利用する際に、ペンを立てかけておけるようになった。このようにVAIO Duo 13では、ペンの使い勝手がさらに向上しているのだ。
有線LANとミニD-Sub15ピンは非サポート
インターフェイスとしては、USB 3.0×2、HDMI出力、ヘッドフォン出力、メモリースティックデュオ/SDメモリーカードスロットを備えている。Ultrabookとしては標準的と言えるだろう。ただし、VAIO Duo 11に搭載されていた有線LANとミニD-Sub15ピンは省略されている。USB 3.0ポートのうち1つは、本体の電源がオフでも給電が可能なので、スマートフォンやデジカメなどの充電に便利だ。センサー類も充実しており、加速度センサー、ジャイロセンサー、地磁気センサーを搭載する。ただし、VAIO Duo 11で搭載されていたGPSは、VAIO Duo 13では非搭載となっている。
ワイヤレス機能としてはIEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.0+HSをサポートするが、VAIO Duo 11でサポートされていたWiMAXは非対応となっている(その代わり、VAIO Duo 11は5GHz帯を利用するIEEE 802.11a/nに非対応)。また、NFCにも対応している。さらに、VAIOオーナーメードモデルでは、auの4G LTEモジュールの搭載も可能だ。
ACアダプタでUSB給電が可能に
VAIO Duo 13は、付属のACアダプタも一新されており、新たにUSBポートが用意されている。このUSBポートは、USB給電を行なうためのポートであり、VAIO Duo 13に電力を供給しながら、同時にUSB経由でスマートフォンなどの充電が可能である。また、このACアダプタとドッキングして使うワイヤレスルーター「VGP-WAR100」も、オプションとして用意されている。VGP-WAR100は、このACアダプタのUSBポートから電源の供給を受けて動作する製品であり、有線LAN環境しか用意されていないホテルの客室などでも、VAIO Duo 13を無線LAN経由で接続できるようになる。VAIO Duo 13では、有線LANが省略されているが、VGP-WAR100を利用すれば、その代わりとなる。
Ultrabookながら高いパフォーマンスを実現
参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark05」、「PCMark Vantage」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark03」、「3DMark」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark 2.2」である。比較用として、ソニー「VAIO Duo 11」、「VAIO Fit 15」、ASUS「TransAiO P1801」のスコアも掲載した。
結果は下の表の通りで、第3世代のCore i5-3317Uを搭載したVAIO Duo 11と比べて、ストレージ性能を除けば、基本的にスコアは高い。Core i7とHDDを搭載したVAIO Fit 15と比べても、スコアはVAIO Duo 13の方が上であり、パフォーマンスは十分だ。
また、バッテリベンチマークソフトのバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、内蔵バッテリで12時間58分もの長時間駆動が可能になった(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)。この駆動時間は、Ultrabookとしてトップクラスであり、同条件のVAIO Duo 11+シートバッテリの9時間57分よりも長い。
VAIO Duo 13 | VAIO Duo 11 | VAIO Fit 15 | TransAiO P1801 | |
---|---|---|---|---|
CPU | Core i5-4200U (1.60GHz) | Core i5-3317U (1.70GHz) | Core i7-3537U (2GHz) | Core i7-3770 (3.4GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 4400 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 | GeForce GT 730M |
PCMark05 | ||||
PCMarks | N/A | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 8203 | 7885 | 9453 | 14047 |
Memory Score | 7302 | 7825 | 8082 | 11721 |
Graphics Score | 2590 | 2527 | 2777 | N/A |
HDD Score | 36043 | 48050 | 9939 | 8844 |
PCMark Vantage 64bit | ||||
PCMark Score | 13238 | N/A | 9038 | 11323 |
Memories Score | 7758 | 7951 | 5666 | 7165 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | Failed | Failed |
Gaming Score | 10782 | 10248 | 8348 | 10339 |
Music Score | 13969 | 14890 | 12051 | 8585 |
Communications Score | 15330 | N/A | 12300 | 15585 |
Productivity Score | 17391 | N/A | 7223 | 7891 |
HDD Score | 40338 | 45577 | 11431 | 4424 |
PCMark Vantage 32bit | ||||
PCMark Score | 12335 | N/A | 8809 | 10190 |
Memories Score | 7517 | 7609 | 5029 | 7050 |
TV and Movie Score | Failed | Failed | Failed | Failed |
Gaming Score | 9670 | 9199 | 7121 | 9252 |
Music Score | 13198 | 14047 | 10609 | 8012 |
Communications Score | 11095 | N/A | 10611 | 14139 |
Productivity Score | 15487 | N/A | 6915 | 7075 |
HDD Score | 40919 | 45380 | 10711 | 4407 |
PCMark 7 v1.4.0 | ||||
PCMark score | 4468 | 未計測 | 3971 | 3708 |
Lightweight score | 3145 | 未計測 | 2276 | 2573 |
Productivity score | 2418 | 未計測 | 1785 | 2031 |
Entertainment score | 3316 | 未計測 | 2910 | 3467 |
Creativity score | 8039 | 未計測 | 7614 | 7109 |
Computation score | 11219 | 未計測 | 15773 | 11906 |
System storage score | 5075 | 未計測 | 3251 | 2182 |
Raw system storage score | 4387 | 未計測 | 1192 | 670 |
3DMark03 | ||||
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 8677 | 12635 | 13486 | 29062 |
CPU Score | 1560 | 1658 | 1980 | 計測不可 |
3DMark | ||||
Ice Storm | 15150 | 未計測 | 37436 | 63692 |
Cloud Gate | 4399 | 未計測 | 4184 | 8120 |
Fire Strike | 654 | 未計測 | 587 | 1143 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||
HIGH | 6397 | 4206 | 4565 | 6687 |
LOW | 8882 | 6190 | 6760 | 計測不可 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | ||||
DP | 99.97 | 100 | 100 | 99.73 |
HP | 99.97 | 100 | 100 | 100 |
SP/LP | 99.97 | 99.97 | 100 | 99.97 |
LLP | 99.97 | 100 | 100 | 99.97 |
DP(CPU負荷) | 21 | 14 | 12 | 4 |
HP(CPU負荷) | 15 | 6 | 4 | 1 |
SP/LP(CPU負荷) | 10 | 3 | 3 | 1 |
LLP(CPU負荷) | 7 | 2 | 1 | 0 |
CrystalDiskMark 2.2 | ||||
シーケンシャルリード | 477.9MB/s | 458.0MB/s | 146.0MB/s | 171.4MB/s |
シーケンシャルライト | 134.3MB/s | 260.3MB/s | 87.86MB/s | 167.9MB/s |
512Kランダムリード | 418.7MB/s | 315.3MB/s | 114.6MB/s | 62.95MB/s |
512Kランダムライト | 132.4MB/s | 240.1MB/s | 78.06MB/s | 52.86MB/s |
4Kランダムリード | 22.47MB/s | 19.67MB/s | 11.22MB/s | 0.951MB/s |
4Kランダムライト | 48.69MB/s | 40.69MB/s | 19.64MB/s | 0.894MB/s |
BBench | ||||
Sバッテリ(標準バッテリ) | 12時間58分 | 5時間18分 | 4時間17分 | N/A |
Lバッテリ | なし | 9時間57分 | なし | N/A |
変形ノートPCとしての完成度は高い
VAIO Duo 13は、独自の変形機構「Surf Slider」を採用したコンバーチブルUltrabookであり、兄弟機のVAIO Duo 11をベースに、ペンの取り外し検出や、タッチパッドの搭載など、さまざまな改良が施されている。無線LAN有効時で約13時間近くも動作することは、VAIO Duo 11と比べた際の大きなアドバンテージである。ペンが付属しているので、タブレットスタイルでお絵描きしたいという人にも最適。製品としての完成度も高く、さまざまな用途に使えることが魅力だ。タブレットとしても使えるノートPCを探している人にお勧めしたい。