~AV性能に優れるスタンダードノート |
日本HPは、15.6型ワイド液晶を搭載するスタンダードノート「HP Pavilion dv6」シリーズの2011年春モデル「「HP Pavilion dv6-6000」シリーズを発表した。dv6-6000シリーズには、コストパフォーマンスに優れる「スタンダードライン」と、スペック面に優れる上位モデル「プレミアムライン」の2ラインが用意されているが、今回は上位モデルとなる「HP Pavilion dv6-6000 Premium Line」を紹介しよう。
●シンプルだが高級感のあるデザイン以前の日本HPのノートPCでは、「ZEN-design」と呼ばれる、かなり目立つデザインを天板に施す製品がかなり多かった。ただ、最近の製品では、ZEN-designの採用は減り、どちらかというとシンプルなデザインを採用する製品が多数を占めるようになっている。今回取り上げるHP Pavilion dv6-6000 Premium Line(以下、dv6-6000)も、目立つ部分は、天板部分の光るHPロゴぐらいで、非常に落ち着いたデザインが採用されている。とはいえ、天板やパームレスト部には、ヘアライン処理とアルマイト処理を施したアルミニウム素材が採用され、ダークアンバーのカラーリングと合わせ、シンプルながら高級感を感じさせるデザインとなっている。ZEN-designのファンもいるとは思うが、個人的にはdv6-6000の落ち着いたデザインは非常に好感が持てる。
本体サイズは、378×250×32~39.5mm(幅×奥行き×高さ)。15.6型ワイド液晶を搭載するスタンダードノートとして、ほぼ一般的なサイズだ。また重量は、実測で2,564gだった。もちろん軽くはないが、家庭内で持ち歩く程度であれば、それほど苦にはならないだろう。
底面は、プラスチック素材が強く感じられる | 重量は、実測で2,564gだった |
●ハイブリッドグラフィックス機能を搭載
dv6-6000プレミアムラインでは、外部グラフィックス機能として、AMDのモバイル向けGPUである「Radeon HD 6000M」シリーズのミドルレンジモデル「Radeon HD 6770M」を標準搭載している。DirectX 11対応の優れた3D描画能力や、HD動画再生支援機能の最新版となるUVD3、映像処理以外の処理が行なえるGPGPU機能などをサポート。ゲーミングノートなど、ハイエンドGPUを搭載するノートには敵わないが、それでもこのクラスのノートPCとしてはトップクラスの描画能力を備えており、3Dゲームもかなり快適にプレイ可能だ。
また、CPU内蔵のIntel HD Graphics 3000と、Radeon HD 6770Mを切り替えて利用できる、いわゆるハイブリッドグラフィックス機能にも対応。ACアダプタを接続して利用している時にはRadeon HD 6770Mを、ACアダプタを抜いてバッテリ駆動になるとIntel HD Graphics 3000に切り替える、といった運用が可能となっている。
dv6-6000は、モバイル用途をターゲットとしたノートではないため、ハイブリッドグラフィックス機能はそれほど必要性が高いとは思わないが、Intel HD Graphics 3000を有効にできることで、内蔵のハードウェアエンコード支援機能「クイック・シンク・ビデオ」を活用できる点は嬉しい。また、広く節電を求められている現在、省電力性に優れるIntel HD Graphics 3000に切り替えて消費電力を抑えられるのも、大きなポイントと言える。
液晶パネルは、1,366×768ドット表示対応の15.6型ワイド液晶だ。パネル表面は光沢処理となっているため、発色は非常に鮮やかで、表示品質は高い。ただ、外光の映り込みがかなり激しい点は気になる。また、表示解像度が1,366×768ドットとやや低い点も気になる。プレミアムラインとして、せっかく高性能な外部GPUを搭載しているのだから、フルHD表示対応の液晶パネルも選択できればよかったように思う。
●「Beats Audio」テクノロジーを採用
dv6-6000では、「ENVY」シリーズでおなじみの、高音質サウンドテクノロジー「Beats Audio」を採用している点も大きな特徴だ。ENVYシリーズのような、本体デザインや壁紙までも含めたカスタマイズは施されていないものの、本体正面右にはBeats Audio対応を示す「b」ロゴがしっかり印刷されている。
スピーカーは、キーボード後方に2個、本体正面に2個と、計4個搭載。また、再生サウンドの細かなチューニングが行なえる、Beats Audioソフトウェアも、もちろん搭載。再生メディアのジャンルに合わせて、好みの音質にイコライジングできるため、サウンドにこだわる人にとって、大きな魅力となるはずだ。
実際の再生音も、さすがに同クラスのノートとはランクの違う音質を実現しているように思う。力強い低音が再生されるだけでなく、中音から高音域も伸びがあり、クリアかつ力強いサウンドが再生される。これなら、よほど音質にこだわる人を除いて、外部スピーカーはほぼ不要と言ってもいい。また、ヘッドフォン出力も、Beats Audioテクノロジーによるチューニングが施されているので、音質にこだわるなら、外部スピーカーではなく、ヘッドフォンを利用するのもいいだろう。しかも、ヘッドフォン出力は2系統用意されているので、2人で音楽を楽しむことも可能だ。
本体正面左右にスピーカーを搭載 | キーボード奥にも2個のスピーカーが搭載され、合計4個のスピーカーが搭載される | 正面右スピーカー横に、Beats Audioのロゴが印刷されている |
Beats Audioソフトウェアもインストールされており、細かなイコライジングが可能だ | ヘッドフォン出力は標準で2系統用意されている |
●基本スペックも充実
dv6-6000のオンライン直販モデルでは、CPUやメインメモリ容量、内蔵ストレージデバイスなどを自由にカスタマイズできる。CPUは、Core i7-2630QMまたはCore i7-2720QMから選択可能。試用機ではCore i7-2720QMが搭載されていたが、基本的にCore i7のクアッドコアモデルが搭載されるため、処理能力は十分に優れると考えていい。メインメモリは、PC3-10600準拠DDR3 SDRAMを最大8GB搭載可能。試用機では、2GBモジュール×2枚の4GB搭載されていた。チップセットは、Intel HM65 Expressだ。
内蔵ストレージは、2.5インチHDDまたはSSDが搭載可能。試用機では、Intel製の160GB SSD「SSDSA2M160G2HP」が搭載されていたため、OSやアプリケーションの起動が高速で、非常に快適であった。また、光学式ドライブは、DVDスーパーマルチドライブまたはBlu-ray Discドライブから選択可能だ。無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANを標準搭載し、Bluetooth 3.0はオプションとなっている。
側面のポート類は、左側面にアナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)とHDMI出力、Gigabit Ethernet、USB 3.0ポート×2、マイク端子、ヘッドフォン端子×2が、右側面にUSB 2.0ポート×2と電源コネクタが、前面にSD/SDHC/SDXCカードおよびマルチメディアカードに対応する2in1メディアスロットがそれぞれ用意されている。
キーボードは、キーとキーの間が開いた、アイソレーションタイプのキーボードを搭載している。キーピッチは縦横とも18.7mmと、ほぼフルサイズで、デスクトップ用キーボードとほぼ同等の操作性を実現。また、テンキーも標準で用意され、扱いやすさは申し分ない。
ポインティングデバイスは、ジェスチャー機能に対応するパッド式のタッチパッドを搭載。パッド面は面積が広く、非常に扱いやすい。また、左上の隅をダブルタップすることで、タッチパッドの動作をON/OFFでき、外付けマウス接続時などに役立つ。そして、右パームレストには指紋認証用センサーも標準搭載している。
●オールラウンドに活躍できるメインノートとしておすすめ
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Vantage Bulld 1.0.1 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」に加え、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】」、「バイオハザード5ベンチマーク」の6種類。比較として、ソニーのVAIO F VPCF219FJ/BIと、NECのLaVie L PC-LL970DSの結果を加えてある。
Pavilion dv6-6002TX | VAIO F VPCF219FJ/BI | LaVie L LL970/DS | |
---|---|---|---|
CPU | Core i7-2720QM (2.20/3.30GHz) | Core i7-2630QM (2.00/2.90GHz) | Core i7-2620M (2.70/3.40GHz) |
チップセット | Intel HM65 Express | Intel HM65 Express | Intel HM65 Express |
ビデオチップ | Radeon HD 6770M | GeForce GT 540M | Intel HD Graphics 3000 |
メモリ | PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB | PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2 | PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×2 |
ストレージ | 160GB SSD (SSDSA2M160G2HP) | 640GB HDD (HM641JI) | 750GB HDD (WD7500BPVT) |
OS | Windows 7 Home Premium 64bit | Windows 7 Home Premium 64bit | Windows 7 Home Premium 64bit |
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a | |||
PCMark Suite | 15779 | 7526 | 7654 |
Memories Suite | 8156 | 4924 | 4583 |
TV and Movies Suite | 6003 | 5401 | 4775 |
Gaming Suite | 15457 | 7292 | 4904 |
Music Suite | 16972 | 6334 | 6983 |
Communications Suite | 15516 | 6587 | 10439 |
Productivity Suite | 17756 | 5996 | 5166 |
HDD Test Suite | 24878 | 3410 | 3762 |
PCMark05 Build 1.2.0 | |||
PCMark Score | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 11026 | 9067 | 9820 |
Memory Score | 8968 | 8781 | 10451 |
Graphics Score | 11027 | 9001 | 5259 |
HDD Score | 29490 | 5169 | 5893 |
3DMark Vantage Bulld 1.0.1 0906a 1,280×1,024ドット | |||
3DMark Score | 6455 | 4602 | 1976 |
GPU Score | 5269 | 3595 | 1556 |
CPU Score | 19976 | 28772 | 10339 |
3DMark06 Build 1.1.0 0906a | |||
3DMark Score | 12091 | 8311 | 4477 |
SM2.0 Score | 4084 | 3328 | 1520 |
HDR/SM3.0 Score | 5324 | 2942 | 1755 |
CPU Score | 5755 | 5052 | 3813 |
Windows エクスペリエンスインデックス | |||
プロセッサ | 7.5 | 7.5 | 7.1 |
メモリ | 7.5 | 7.8 | 7.5 |
グラフィックス | 6.9 | 6.5 | 6.2 |
ゲーム用グラフィックス | 6.9 | 6.5 | 6.2 |
プライマリハードディスク | 7.7 | 5.9 | 5.9 |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】 | |||
1,280×720ドット | 6146 | 4365 | 2248 |
1,920×1,080ドット | 3533 | 2163 | 1138 |
バイオハザード5ベンチマーク DX10 (AA:8X、モーションブラー:オン、影品質:高、テクスチャ品質:高、画面クオリティ:高) | |||
1,280×720ドット | 53.4 | 38.7 | ― |
58.5 | 42.4 | ― | |
1,920×1,080ドット | 31.9 | 21 | ― |
35.8 | 24.1 | ― |
結果を見ると、CPUの処理能力はもちろん、Radeon HD 6770Mの優れた3D描画能力、SSD搭載によるストレージ性能の高さが際立っていることがよくわかる。これなら、ビジネス系アプリはもちろんのこと、動画や静止画などの映像処理作業、3Dゲームなども快適にこなせるはずだ。製品の位置付けはメインストリーム向けだが、ハイエンドモデルに匹敵するパフォーマンスが備わっている点は、大きな魅力となるだろう。
バッテリ駆動時間は、カタログ値で約5.5時間とされている。モバイル機ではないため、長時間のバッテリ駆動時間はそれほど要求されないとは思うが、一応計測してみた。すると、省電力設定を「省電力」に設定し、バックライト輝度を40%、グラフィックス機能をIntel HD Graphics 3000に設定し、設定無線LANのみを有効にした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約5時間58分と、6時間近くも駆動した。これだけ持てば、家庭内で他の部屋に移動して利用する場合でも、ACアダプタを持ち歩く必要はほぼ無いだろう。ちなみに、省電力設定を「高パフォーマンス」にし、グラフィックス機能をRadeon HD 6770Mに設定した場合では、約1時間33分であった。
バッテリ駆動時間 | |
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省電力設定「省電力」、BBench利用時: | 約5時間58分 |
省電力設定「高パフォーマンス」、動画再生時 | 約1時間33分 |
dv6-6000 プレミアムラインは、メインストリームノートでありながら、ハイエンドノートに匹敵するパフォーマンスを実現するとともに、高性能GPU搭載による優れた3D描画能力や、Beats Audioテクノロジー対応の優れたサウンド再生能力など、AV性能にも優れる、オールラウンドに活躍できるノートだ。液晶パネルの表示解像度が1,366×768ドットと低い点に加え、高負荷時に空冷ファンの音が若干うるさく感じる点は少々残念だが、その弱点を補って余りある魅力が詰まっている。しかも、今回の試用機の構成で119,805円と安価な点も嬉しい。ビジネスからホビーまで、広い用途に活躍できるメインノートとして、広くオススメしたい。
(2011年 4月 19日)
[Text by 平澤 寿康]