日本HP「HP ENVY17-2000 2011春モデル」
~デザイン性に優れるフラッグシップノート



日本HP「HP ENVY17-2000 2011春モデル」

4月下旬 発売

価格:99,960円~



 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、同社のノートPCの中でハイエンドモデルと位置付けている、17.3型ワイド液晶搭載ノートPC「ENVY17」シリーズの、2011年春モデル「HP ENVY17-2000」を発表した。第2世代CoreプロセッサシリーズやハイエンドGPUなどを標準搭載し、フラッグシップノートと呼ぶにふさわしいパフォーマンスが実現されている。

●エッチング処理を施したメタルボディ

 HP ENVY17-2000(以下、ENVY17)は、HPのノートPCの中でフラッグシップモデルとして位置付けられているが、本体デザインやボディ素材などからも、フラッグシップモデルらしさが伝わってくる。特に目をひくのが、独特なデザインが施された天板部分だ。天板部分は、メタル素材を採用するとともに、「HPメタル・エッチング」と呼ばれる手法による細かな凹みが施されている。その凹みは、規則正しく並んでいるわけではなく、複雑な模様が浮かび上がるように、大きさや形、配置が微妙に異なっている。これにより、見る角度によって光の反射具合が変化し、さまざまな表情を作り出している。また、天板部分だけでなく、キーボード面も一体型のメタル素材を採用するとともに、パームレスト部にもHPメタル・エッチングによる細かな凹みを利用した独特なデザインが施されている。

 この、HPメタル・エッチングによるデザインは、HPのノートPCでおなじみの「ZEN-design」のような自己主張の強さはなく、メタルボディが持つ重厚感は失われていない。とはいえ、さりげなくアピールするだけの存在感は備えており、フラッグシップモデルに採用されるデザインとして、かなり好印象だ。

 本体サイズは、417×275×32~40mm(幅×奥行き×高さ)。17.3型ワイド液晶を搭載するため、本体サイズはかなり大きい。重量も、公称約3.29kgと重い。とはいえ、このサイズのノートPCは、基本的にデスクなど決まった場所に置いて利用することが基本となるため、このサイズや重量が問題になることはない。もちろん、大きく重いとはいえ、家庭内などで別の部屋に移動させるには、それほど苦にならないはずだ。

本体天板部分。天板にはメタル素材を採用するとともに、「HPメタル・エッチング」と呼ばれる手法で独特なデザインが施されているこのように、形や大きさの異なる凹みを加工し、他にはない独特な印象を与えるデザインを実現しているキーボード面のパームレスト部にも、天板と同様な加工が施されている
フットプリントは、417×275mm(幅×奥行き)と、17.3型ワイド液晶を搭載していることもあり、かなり大きい本体正面。正面から見ると、全体がメタルボディに見え、かなりすっきりとした印象だ左側面。高さは、32~40mmと、手前が薄く奥が厚い。高さは、このクラスのノートPCとしては一般的だ
背面もすっきりとしている。右に見えるスリットは吸気口だ右側面。スロットインタイプの光学式ドライブを採用しており、デザインが崩れていない

●Radeon HD 6850Mを標準搭載

 ENVY17では、フラッグシップノートらしく、高性能なパーツがふんだんに搭載されている。CPUは、購入時に選択可能となっているが、Core i5-2410M(2.30GHz)、Core i7-2630QM(2GHz)、Core i7-2820QM(2.30GHz)と、全てIntelの第2世代Coreプロセッサー・ファミリーとなっている。今回の試用機では、最上位となるCore i7-2820QMが搭載されていたが、フラッグシップモデルとはいえ価格を抑えた構成が用意されている点は面白い。

 グラフィックス機能に関しては、標準でAMD Radeon HD 6850M(ビデオメモリ1GB)が搭載される。AMDのノートPC向けGPUとしては、Radeon HD 6850Mよりも上位に位置付けられる、Radeon HD 6900シリーズが存在しているが、Radeon HD 6850MもノートPC用の外部GPUとしては十分に優れた3D描画能力を誇っており、最新3Dゲームも十分快適にプレイできると考えていい。

 また、第2世代Coreプロセッサー・ファミリーを採用していることから、CPU内蔵グラフィックス機能であるIntel HD Graphics 3000も搭載されており、ENVY17ではRadeon HD 6850MとIntel HD Graphics 3000を切り替えて利用する、ハイブリッドグラフィックス機能を実現している。グラフィックス機能の切り替えは、ユーザーによる手動切り替えだけでなく、ACアダプタを抜いてバッテリ駆動に切り替わったときに、自動的にRadeon HD 6850MからIntel HD Graphics 3000に切り替えるといった運用も可能となっている。「クイック・シンク・ビデオ」など、Intel HD Graphics 3000が持つ機能を活用したり、消費電力をおさえて運用できるなど、ハイブリッドグラフィックス機能によるメリットは大きいと言っていいだろう。

 ところで、ENVY17には、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)とHDMI、Mini DisplayPortと3系統の映像出力端子が用意されている。そして、内蔵ディスプレイ+外部ディスプレイ2台、または外部ディスプレイのみ3台を利用する、最大3画面のマルチディスプレイ表示が可能となっている。フルHD×3枚の超広大なデスクトップ領域を確保することも可能となっており、複数の画面を利用して効率良くさまざまな作業が行なえる。こういった点は、まさにフラッグシップモデルらしい特徴と言える。

 内蔵液晶パネルは、1,920×1,080ドット表示対応の17.3型液晶を採用。ハードコートクリスタルビュー・ディスプレイと呼ばれる、表面に光沢処理を施した液晶パネルで、発色は非常に鮮やかだ。ただ、上下の視野角がやや狭い点と、外光の映り込みが激しい点は気になった。ちなみに、BTOメニューには、1,600×900ドット表示対応の液晶パネルも用意されている。

Radeon HD 6850Mと、CPU内蔵のIntel HD Graphics 3000を切り替えて利用可能。ユーザーが自由に切り替えられるのはもちろん、バッテリ駆動時に自動的に切り替えることも可能だ左側面に、アナログRGB出力、Mini DisplayPort、HDMIと3系統の映像出力が用意され、最大3画面のマルチディスプレイ表示をサポートしている
1,920×1,080ドット表示対応の17.3型ワイド液晶を搭載。表面は光沢処理が施され、発色は鮮やかだが、上下の視野角はやや狭く、外光の映り込みも激しい液晶パネル上部中央には、約102万画素のWebカメラが搭載されている

●Beats Audio対応2.1チャンネルスピーカー搭載

 ENVYシリーズといえば、Beats Audioテクノロジーに対応する「ENVY14 Beats Edition」を思い浮かべる人も多いかもしれない。Beats Audioは、ヒップホップ・アーティスト「Dr. Dre(ドクター・ドレー)」が手がけるオーディオブランドだ。このENVY17-2000もBeats Audioテクノロジーに対応することで、非常に優れたサウンド再生能力を備えており、2チャンネルのステレオスピーカーに加えて、底面にサブウーファーを備えた、2.1チャンネルスピーカーが搭載されている。また、他のBeats Audio対応製品同様、2系統のヘッドフォン出力を備えており、2人で同時にヘッドフォンで音楽を楽しむことも可能だ。

 再生音質は、2.1チャンネルスピーカーを搭載していることもあるとは思うが、とにかく低音の迫力は抜群で、中音から高音域も伸びがある。さすがに、外付けの高音質スピーカーには負けるが、ノートPCのスピーカーとしては次元の違うサウンドが実現されているという印象を強く受けた。

Beats Audioテクノロジーに対応しており、正面スピーカー部には、Beats Audioのロゴが印刷されている底面には、サブウーファー「HPトリプル・バス・リフレックス・サブウーファー」を搭載しており、迫力のある低音が再生される
Beats Audioソフトウェアもインストールされ、細かなイコライジングが可能だ2系統のヘッドフォン出力(一方はマイク入力機能も持つ)が用意されている

●2.5インチHDDを2台搭載可能

 ENVY17では、本体底面に2.5インチHDDを搭載できるHDDベイが2個用意されており、2.5インチHDDを2台まで搭載できる。標準構成では640GB HDDを1台のみの搭載となるが、BTOメニューには640GB HDDを2台搭載したRAID 0構成と、160GB SSDと640GB HDDを1台ずつ搭載する構成が用意されている。フラッグシップモデルとしては、やはり160GB SSDと640GB HDDの構成が最も魅力的で、今回の試用機もこの構成となっていた。OSやアプリケーションを160GB SSDにインストールすることで体感速度も向上し、フラッグシップモデルとしての魅力も大幅に増す。ちなみに、160GB SSDにはIntel製の「SSDSA2M160G2HP」が採用されるため、パフォーマンスも申し分ない。

 光学式ドライブは、本体右側面に搭載しており、一般的なトレー式ではなく、スロットイン方式のドライブを採用している。これは、本体デザインを崩さないという意味でも、嬉しい仕様だ。試用機には、BD-ROM/DVDコンボドライブが搭載されていたが、BTOメニューではDVDスーパーマルチドライブも用意されている。

底面のフタを開けると、メインメモリ用のSO-DIMMスロットと、2個のHDDベイにアクセスできるメインメモリ容量は、標準で4GB(2GB×2)、最大8GB(4GB×2)まで搭載可能
内蔵ストレージは、640GB HDDを1台、640GBを2台(RAID 0構成)、160GB SSDと640GB HDDと、3通りのオプションが用意されている光学式ドライブは、DVDスーパーマルチドライブまたはBD-ROM/DVDコンボドライブを選択可能。どちらもスロットインタイプとなる

●バックライト付き英語キーボードを搭載

 ENVY17に搭載されるキーボードは、標準で英語配列のキーボードとなっている。日本語キーボードはBTOでも用意されていないため、日本語配列に慣れている人にとっては、操作に少々戸惑うかもしれない。キーの間が開いた、いわゆるアイソレーションタイプのキーボードで、キーピッチは約19×19mmとフルピッチで、使い勝手は申し分ない。また、テンキーも用意されているので、数字入力なども快適だ。英語キーボードと言うことで、キートップの表記がシンプルな点も、すっきりとした印象を与えている。

 このキーボードには、バックライトが取り付けられており、キー周囲やキートップ表記が光るようになっている。バックライトの採用は、デザイン的な意味合いが大きいように思うが、暗い場所での利用時にはかなり活躍するはずだ。このバックライトは、専用キーにより自由にON/OFF可能となっている。

 ポインティングデバイスは、パッド式のクリックパッドを採用。パッドとクリックボタンが一体型となったもので、クリックボタン部分もパッドとして活用できる。パッドは面積が広く、複数の指を利用したジェスチャー操作にも対応しているので、操作性は申し分ない。また、左上角をダブルタップすることで、クリックパッドの動作をオン・オフでき機能が用意されており、外付けマウス利用時などに役立つ。ただ、クリック操作時にカーソルが動いてしまうこともあり、使いづらく感じることがあった。デザイン的には、こちらのほうがいいとは思うが、できれば通常の独立したクリックボタンを用意してもらいたかったように思う。

 側面の端子類は、左側面にアナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、Gigabit Ethernet、Mini DisplayPort、HDMI出力、eSATA/USB 2.0共用ポート、USB 3.0ポート、ヘッドフォン出力×2が、右側面にUBS 2.0×2ポートとSDカードやメモリースティックなど5種類のメモリカードに対応する5in1メディアスロット、電源コネクタがそれぞれ用意されている。また、無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n対応の無線LANと、Bluetooth 3.0が標準搭載される。

キーボードは、アイソレーションタイプの英語キーボードを搭載しており、日本語キーボードは用意されない。本体の幅があるので、テンキーも標準搭載しているキーボードにはバックライトが搭載されており、キートップの表記やキー周囲が明るく浮かび上がるキーピッチは縦横とも約19mmとフルサイズで、扱いやすさは申し分ない。また、キートップの表記もアルファベットのみで、シンプルだ
ポインティングデバイスは、パッド式のクリックパッドを採用。パッド面は面積が広く、ジェスチャー操作にも対応し扱いやすい。クリックボタンがパッドと一体型で、クリックボタン部もパッドとして利用可能パッド左上角をダブルタップすると、クリックパッドの動作をオン・オフできる。動作がオフになると、左上角のLEDがオレンジ色に光る
左側面には、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、Gigabit Ethernet、Mini DisplayPort、HDMI、eSATA/USB 2.0共用ポート、USB 3.0ポート、ヘッドフォン・マイク共用コネクタ、ヘッドフォン出力が用意されている右側面には、USB 2.0×2ポート、5in1メディアスロット、電源コネクタを用意
ENVY17には2GBのSDカードが付属。マニュアルなどが保存されている付属のSDカードを本体に取り付けると、オンラインマニュアルのインストールメニューが表示される付属のACアダプタはかなり大きい

●性能とスタイルにこだわったノートPCを探している人にオススメ

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」と「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Vantage Bulld 1.0.1 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」に加え、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】」、「バイオハザード5ベンチマーク」の6種類。比較として、HP Pavilion dv6-6000 Premium Lineと、ソニーのVAIO F VPCF219FJ/BI、NECのLaVie L PC-LL970DSの結果を加えてある。

 ENVY 17-2014TXPavilion dv6-6002TXVAIO F VPCF219FJ/BILaVie L LL970/DS
CPUCore i7-2820QM (2.30/3.40GHz)Core i7-2720QM (2.00/3.30GHz)Core i7-2630QM (2.00/2.90GHz)Core i7-2620M (2.70/3.40GHz)
チップセットIntel HM67 ExpressIntel HM65 ExpressIntel HM65 ExpressIntel HM65 Express
ビデオチップRadeon HD 6850MRadeon HD 6770MGeForce GT 540MIntel HD Graphics 3000
メモリPC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×2PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×2PC3-10600 DDR3 SDRAM 4GB×2
ストレージ160GB SSD (SSDSA2M160G2HP)160GB SSD (SSDSA2M160G2HP)640GB HDD (HM641JI)750GB HDD (WD7500BPVT)
OSWindows 7 Home Premium 64bitWindows 7 Home Premium 64bitWindows 7 Home Premium 64bitWindows 7 Home Premium 64bit
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a
PCMark Suite151461577975267654
Memories Suite8765815649244583
TV and Movies Suite4790600354014775
Gaming Suite108421545772924904
Music Suite177821697263346983
Communications Suite1435815516658710439
Productivity Suite182921775659965166
HDD Test Suite231532487834103762
PCMark05 Build 1.2.0
PCMark ScoreN/AN/AN/AN/A
CPU Score114141102690679820
Memory Score103638968878110451
Graphics Score118961102790015259
HDD Score292662949051695893
3DMark Vantage Bulld 1.0.1 0906a 1,280×1,024ドット
3DMark Score7702645546021976
GPU Score6509526935951556
CPU Score17117199762877210339
3DMark06 Build 1.1.0 0906a
3DMark Score128511209183114477
SM2.0 Score4714408433281520
HDR/SM3.0 Score5367532429421755
CPU Score5790575550523813
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ7.57.57.57.1
メモリ7.67.57.87.5
グラフィックス7.16.96.56.2
ゲーム用グラフィックス7.16.96.56.2
プライマリハードディスク7.77.75.95.9
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】
1,280×720ドット7739614643652248
1,920×1,080ドット4404353321631138
バイオハザード5ベンチマーク DX10
(AA:8X、モーションブラー:オン、影品質:高、テクスチャ品質:高、画面クオリティ:高)
1,280×720ドット62.653.438.7
49.358.542.4
1,920×1,080ドット39.331.921
43.735.824.1

 今回試用した試用機は、ENVY17のBTOメニューでハイエンドとなるパーツを搭載していたこともあり、さすがにフラッグシップモデルらしい優れた結果が得られた。比較として掲載している他の機種も十分に優れた性能を備えているが、それらを凌駕する結果となっていることからも、非常に優れた性能を備えていることがわかるはずだ。これなら、ビジネス系アプリケーションはもちろんのこと、比較的処理の重いAV系アプリケーション、高い3D描画能力を必要とする最新3Dゲームなども快適に利用できるはずだ。

 次に、バッテリ駆動時間だ。バッテリ駆動時間は、カタログ値では約3時間とされている。ENVY17はモバイルノートではないため、バッテリ駆動時間はそれほど重要視されないが、念のため省電力モード時のバッテリ駆動時間を計測してみた。省電力設定を「省電力」に設定し、バックライト輝度を40%、キーボードバックライトをOFF、グラフィックス機能をIntel HD Graphics 3000に設定し、設定無線LANのみを有効にした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約4時間05分と、カタログ値より1時間も長く駆動した。これだけの駆動時間が確保されていれば、場所を移動して利用する場合でもACアダプタを持ち歩く必要性は低いはずだ。

バッテリ駆動時間
省電力設定「省電力」、BBench利用時約4時間05分

 ENVY17は、独特のデザインが施された高級感のあるメタルボディに、ハイエンドパーツがふんだんに詰め込まれた、フラッグシップノートと呼ぶにふさわしい製品に仕上がっている。国内メーカー製ハイエンドノートのような、TV関連機能は搭載されないものの、ノートPCにTV機能は不要という人にとっては良い選択肢になるだろう。価格は、試用機と同じ最強スペックの場合225,960円とやや高価となるが、スペックを落とせば99,960円からと、フラッグシップモデルながら比較的安価に購入できる。スペック面にこだわったノートPCを探している人はもちろん、スペックと価格のバランスを重視する人、スペック面だけでなくデザイン性にもこだわりたい人などにオススメしたい。

バックナンバー

(2011年 4月 26日)

[Text by 平澤 寿康]