日本HP「HP Pavilion Notebook PC dv2」店頭モデル
~6万円を切るYukonプラットフォーム採用スリムノート



HP Pavilion Notebook PC dv2

発売中

実売価格:59,850円前後



 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)から登場した「HP Pavilion Notebook PC dv2」は、国内初の「Yukon」(ユーコン)プラットフォーム採用スリムノートPCだ。Yukonは、AMDの低価格/薄型ノートPC向けプラットフォームであり、IntelのAtomプラットフォームとカテゴリ的には近いが、Atomよりもやや上の性能レンジを狙った製品である。

 HP Pavilon Notebook PC dv2は、まず、直販専用モデルが4月23日から発売されたが、5月21日に店頭モデルが追加された。直販専用モデルと店頭モデルでは、ボディカラーだけでなく、仕様や価格も異なる。直販専用モデルについては、本城氏によるファーストインプレッションが掲載されているが、今回は店頭モデルを中心にレビューする。また、直販専用モデルも同時に試用したので、両者のパフォーマンスも比較することにしたい。以下、HP Pavilion Notebook PC dv2店頭モデルはdv2店頭モデル、HP Pavilion Notebook PC dv2直販専用モデルは、dv2直販モデルと表記する。

●店頭モデルではGPU非搭載
dv2店頭モデルの上面。白をベースとした新デザインZEN-design“asagiri”を採用。天板は光沢仕上げだ

 dv2店頭モデルとdv2直販モデルは、同じボディを使っているが、ボディカラーは異なる。HP Pavilion Notebook PCでは、「HP Imprintテクノロジー」と呼ばれるデザイン転写技術によって、パームレスト部分などに斬新なグラフィックパターンを取り入れていることが特徴だ。dv2店頭モデルは、白をベースとした新デザインZEN-design“asagiri”を採用。“asagiri”は、朝霧が夜明けとともに風に流れて晴れていく様子をモチーフにしたデザインである。それに対し、dv2直販モデルでは、黒をベースとしたZEN-design”kirameki”が採用されている。こちらは、光と化したエネルギーが無数に瞬いている様子をモチーフにしたデザインとのことだ。どちらも美しいデザインだが、dv2店頭モデルとdv2直販モデルでは仕様や価格が異なるので、両方のカラーがそれぞれのモデルに用意されていれば、さらによかったと思う。本体のサイズは293×242×24~33.5mm(幅×奥行き×高さ)で、比較的スリムである。重量は約1.7kgで、12.1型ワイド液晶搭載ノートPCとしては、標準的な重量といえるだろう。

 dv2店頭モデル(dv2直販モデルも)では、CPUとしてAMDのAthlon Neo MV-40(1.6GHz)が搭載されている。Athlon Neo MV-40は、512KBのL2キャッシュを搭載したシングルコアCPUであり、TDPは15WとAthlonシリーズの中では低い(Atom N270のTDPは2.5Wだが)。メモリは2GB実装されているが、2GB SO-DIMMを外して代わりに4GB SO-DIMMを装着することで、最大4GBまで増設が可能だ。チップセットとして、グラフィックス機能を統合したAMD M690Gを採用。dv2店頭モデルでは、単体GPUは搭載していないが、dv2直販モデルではGPUとしてATI Mobility Radeon HD 3410(512MB)が搭載されている。

 ストレージとして、2.5インチ160GB HDDを搭載する。ちなみにdv2直販モデルのHDD容量は2倍の320GBとなっている。dv2店頭モデルのOSは、Windows Vista Home Basic SP1でAeroは非対応だが、dv2直販モデルのOSは、Windows Vista Home Premium SP1で、Aeroも利用できる。なお、SO-DIMMスロットの左側にはMini PCI Expressスロットが用意されているが、その上部にSIMスロットがあることから考えてWWAN用だと思われる。ただし、現時点では日本ではWWANのサポートは行なわれていない。また、dv2は光学ドライブを内蔵していないが、dv2直販モデルのみ、USB 2.0接続の外付けDVDスーパーマルチドライブが付属する。

左がdv2店頭モデル。右がdv2直販モデル。店頭モデルのボディカラーは白で、直販モデルは黒だdv2店頭モデルは、朝霧が夜明けとともに風に流れて晴れていく様子をモチーフにしたZEN-design“asagiri”を採用dv2直販モデルは、光と化したエネルギーが無数に瞬いている様子をモチーフにしたZEN-design”kirameki”を採用
「DOS/V POWER REPORT」誌とのサイズ比較。dv2のほうが一回り大きいdv2店頭モデルの底面。メモリスロットやHDDベイ、MiniPCI Expressスロットのカバーが用意されているSO-DIMMスロットを1基備えており、2GB SO-DIMMが装着されている。左側の空きスロットはMini PCI Expressスロットだ。Mini PCI Expressスロットの上にはSIMスロットが見えており、WWAN用のものと思われる
バッテリーを外すとSIMスロットが現れるが、日本ではWWANはサポートされていないハーフサイズ対応のMini PCI Expressスロットも備えており、こちらには無線LANカードが装着されているHDDカバーを外すことで、HDDへのアクセスが可能。HDDは2.5インチ160GBである

●液晶は鮮やかだがやや映り込みが気になる

 液晶のサイズは12.1型ワイドで、解像度は1,280×800ドットである。いわゆるネットブックでは、1,024×600ドット表示や1,024×576ドット表示の液晶を搭載する製品が多く、縦の解像度が不足気味だが、dv2なら縦解像度が狭いと感じることはない。ウルトラクリアビューカラー液晶と名付けられた光沢タイプの液晶であり、発色は鮮やかだ。ただし、外光は映り込みやすい。液晶上部には、VGA解像度のWebカメラが搭載されている。

 キーボードは全87キーで、キーピッチは約17.5mm、キーストロークは約1.8mmである。キー配列は標準的で、右側の一部のキーピッチが狭くなっているようなこともないので、快適にタイピングできる。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを採用。タッチパッド表面は鏡面仕上げになっている。クリックボタンは手前に配置されており、左右のボタンが独立しているので、操作ミスも防げる。タッチパッドの上部には、タッチパッドオンオフボタンが用意されており、ワンタッチでタッチパッドの有効/無効の切り替えが可能だ。

液晶は12.1型ワイドで、解像度は1,280×800ドットだ。光沢タイプなので、発色は鮮やかでコントラストも高い液晶上部に640×480ドット(VGA)解像度のWebカメラを搭載する
全87キーで、キーピッチは約17.5mm。キー配列も標準的で、不等ピッチもないので使いやすいタッチパッドの表面も鏡面仕上げになっている。クリックボタンは手前に配置されており、左右のボタンが独立しているので、操作しやすい

●dv2店頭モデルではBluetoothには非対応

 インターフェイスとしては、USB 2.0×3、LAN、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、マイク入力、ヘッドホン出力の各ポートを搭載。メモリカードスロットとしては、メモリースティックPRO/SDメモリーカード/SDHCメモリーカード/MMC/xD-Picture Cardに対応した5in1メディアスロットを搭載する。インターフェイスは一般的なネットブックとほぼ同等で、ExpressCardスロットなどは搭載していない。なお、dv2直販モデルでは、GPUを搭載していることもあり、HDMI端子も備えている。

 ワイヤレス機能としてIEEE 802.11b/g対応無線LAN機能を搭載する。右側面のワイヤレススイッチにより、ワンタッチでオンオフを切り替えられるのは便利だ。dv2直販モデルではワイヤレス機能が強化されており、IEEE 802.11a/b/g/nドラフトとBluetooth 2.0+EDRに対応する。

 バッテリは、10.8V/55Whの6セル仕様で、公称約3時間30分の駆動が可能だ(dv2直販モデルでは約3時間15分)。バッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとにWebサイトへの無線LAN経由でのアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ、dv2店頭モデルは3時間15分、dv2直販モデルは2時間24分の駆動が可能であった(電源プランは「バランス」に設定し、バックライト輝度は中)。6セルバッテリ搭載機としてはあまり長くはないが、Atomに比べるとAthlon NeoのTDPは高いため、仕方ないところだろう(その代わりパフォーマンスはAtomよりも高いわけだが)。ACアダプタのサイズは、ネットブックの一般的なものに比べるとやや大きい。また、ACケーブルのコネクタが3ピンのミッキープラグになっており、ケーブルがやや太いのが残念だ。なお、ACケーブルの代わりに装着することで、直接ACコンセントにACアダプタを取り付けられるウォールマウントプラグも付属している。

左側面には、LAN、アナログRGB(ミニD-Sub15ピン)とUSB 2.0×2が用意されている右側面には、ワイヤレススイッチや5in1メディアスロット、マイク入力、ヘッドホン出力、USB 2.0が用意されている電源スイッチの右側にワイヤレススイッチが用意されており、無線LANやBluetoothのオンオフが可能。ワイヤレス有効時は、LEDが青色に点灯する
ワイヤレス機能をオフにすると、LEDがオレンジ色に点灯するバッテリは、10.8V/55Wh(5100mAh)の6セル仕様だCDケース(左)とバッテリのサイズ比較
付属のACアダプタ。ネットブックの一般的なACアダプタより一回り大きいACケーブルのコネクタがメガネプラグではなく、3ピンのミッキープラグになっているCDケース(左)とACアダプタのサイズ比較
ウォールマウントプラグが付属するウォールマウントプラグをACアダプタに装着したところ。コンセントに直接ACアダプタを取り付けられる

●店頭モデル、直販モデルともにコストパフォーマンスは高い

 参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」、「CrystalDiskMark」で、比較対照用にNEC「LaVie Light BL350/TA6」、NEC「VersaPro UltraLite タイプVS」、日本HP「HP Mini 2140 Notebook PC(1,366×768ドット液晶)」、MSI「X-Slim X340 Super」、デル「Inspiron Mini 9」の値も掲載した。

 dv2店頭モデルのPCMark05のCPU Scoreは、Atom N270/N280搭載機に比べて2割程度高くなっている。dv2直販モデルはさらにパフォーマンスが高く、Atom N270/N280に比べて4割程度高く、Core 2 Solo SU3500と同程度のスコアになっている。また、dv2店頭モデルのグラフィックス能力は、Intel 945GSEやIntel SCH US15Wに比べると格段に高い。とはいえ、dv2店頭モデル程度の3D描画性能では、最新ゲームをプレイするには厳しい。単体GPUを搭載するdv2直販モデルでは、dv2店頭モデルのさらに2倍程度の3D描画性能を実現しており、少し古い軽めのゲームならプレイできそうだ。ただし、長時間連続動作させていると、底面がかなり熱くなることが気になった。

□HP Pavilion Notebook dv2のベンチマーク結果
 HP Pavilion Notebook dv2店頭モデルHP Pavilion Notebook dv2直販モデルLaVie Light BL350/TA6VersaPro UltraLite タイプVSHP Mini 2140 Notebook PC
(1,366×768ドット液晶)
X-Slim X340 SuperInspiron Mini 9
CPUAthlon Neo MV-40 (1.6GHz)Athlon Neo MV-40 (1.6GHz)Atom N280 (1.66GHz)Atom Z540 (1.86GHz)Atom N270 (1.6GHz)Core 2 Solo SU3500 (1.4GHz)Atom N270 (1.6GHz)
ビデオチップAMD M690G内蔵コアMobility Radeon HD 3410Intel 945GSE内蔵コアIntel SCH US15W内蔵コアIntel 945GSE内蔵コアIntel GS45内蔵コアIntel 945GSE内蔵コア
PCMark05
PCMarks16782175N/A185015662101N/A
CPU Score1845212915211739148224351484
Memory Score2578271324532456235033382358
Graphics Score8202018N/A3195461108N/A
HDD Score36423926893918226571350862843
3DMark03
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks)15083453N/A(1,024×600ドットでは638)4457181552N/A(1,024×600ドットでは628)
CPU Score564714N/A(1,024×600ドットでは240)200242492N/A(1,024×600ドットでは232)
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH15042914N/A34710101427N/A
LOW217444741459550138620941426
ストリーム出力テスト for 地デジ
DP48.5761.3331.978.236.968.137.9
HP99.6799.8388.231.275.9799.9794.47
SP/LP99.8399.8799.3799.9399.9710099.97
LLP10099.999.9399.9799.9710099.97
DP(CPU負荷)10010081506810065
HP(CPU負荷)87778053686164
SP/LP(CPU負荷)53436442423533
LLP(CPU負荷)36353834322821
CrystalDiskMark 2.2
シーケンシャルリード48.22MB/s53.35MB/s83.31MB/s(C)
56.50MB/s(D)
107.4MB/s未計測未計測未計測
シーケンシャルライト50.64MB/s41.73MB.s40.39MB/s(C)
54.63MB/s(D)
112.4MB/s未計測未計測未計測
512Kランダムリード27.59MB/s24.97MB/s79.24MB/s(C)
31.25MB/s(D)
103.6MB/s未計測未計測未計測
512Kランダムライト37.19MB/s32.76MB/s29.44MB/s(C)
31.23MB/s(D)
102.8MB/s未計測未計測未計測
4Kランダムリード0.499MB/s0.323MB/s12.43MB/s(C)
0.560MB/s(D)
11.03MB/s未計測未計測未計測
4Kランダムライト1.220MB/s1.058MB/s1.928MB/s(C)
1.551MB/s(D)
10.36MB/s未計測未計測未計測

 dv2店頭モデルはオープンプライスだが、実売価格は59,850円前後であり、ネットブックの中心価格帯に比べると1万円程度高い。しかし、CPU性能や液晶解像度などのスペックでは、dv2店頭モデルのほうが上だ。ボディサイズも大きく、重量も重くなっているので、携帯性重視の人にはあまり向かないが、メールチェックやWebブラウズ、文書作成といった軽めの処理には必要にして十分な性能を備えており、キーボードなどの使い勝手も優れている。dv2直販モデルの直販価格は73,500円であり、店頭モデルに比べて13,500円ほど高くなるが、GPUを搭載し、HDD容量が2倍の320GBになり、無線LAN機能が強化、Bluetoothを搭載、外付けDVDスーパーマルチドライブが付属し、さらにOSがVista Home Premiumになることを考えれば、直販モデルもお買い得だ。店頭モデル、直販モデルとも、安価なノートPCが欲しいがネットブックのスペック(特に画面解像度)に不満があるという人にとって、有力な選択肢となるだろう。

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(2009年 6月 12日)

[Text by 石井 英男]