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実売4万円のレノボ製2in1「ideapad Miix 320」は想像以上の快適さ

~バッテリ動作時間も長くて持ち歩き用のサブマシンに好適

ideapad Miix 320

 レノボ・ジャパンは、10.1型液晶搭載の着脱式2in1モバイル「ideapad Miix 320」を5月16日より販売した。着脱式2in1モバイルながら、実売価格が4万円前後という非常に安価な点が大きな特徴で、サブモバイル用途などに最適の製品となっている。

 今回は、ideapad Miix 320の量販店モデルを取り上げ、ハードウェア面などを見ていきたい。

低価格2in1として標準的なデザイン

 着脱式2in1モバイルは、現在非常に多くの製品が登場しており、モバイルPCの大きなジャンルとして定着している。そういったなかで「ideapad Miix 320(以下、Miix 320)」は、実売価格がもっとも低価格な部類に入る製品の1つ。高価格製品と比べると、いろいろな部分でコストダウンの影響が感じられるが、本体を見るかぎりでは、そこまで安っぽいという印象は受けない。

 たとえば、筐体素材は樹脂となっているが、「プラチナシルバー」と呼ばれるシルバーメタリック塗装が施されていることもあって、質感は思ったほど悪くない。

 樹脂の素材感が完全に隠されているということはないが、ブラックやグレーの樹脂製筐体でありがちな、“いかにも樹脂”といった質感はいい感じに抑えられている。外出先で使うことの多い2in1モバイルでは、見た目が重視されることも多いが、Miix 320の外観は価格以上の出来と言っていいだろう。

 デザイン自体は、ハードタイプのキーボードを備える着脱式2in1モバイルとして標準的なものとなっている。

 デザイン上で目立つのは、タブレット部背面のLenovoロゴぐらいで、全体的には非常にシンプル。もう少し遊び心があってもいいようにも思うが、どういった場面でも浮くことなく安心して利用できるという意味では、このシンプルさは大きな魅力となるだろう。

 タブレット部背面は、側面付近にカーブを取り入れることで、持って使うときなど手に馴染みやすく、やさしい手触りで利用できる。

 本体サイズは、タブレット部のみが249×178×9mm(幅×奥行き×高さ)、付属のキーボードドック装着時で249×184×17.6mm(同)。10.1型液晶搭載ということで、フットプリントは十分にコンパクトだが、キーボードドック装着時はやや高さがかさばるという印象だ。それでも、このサイズなら鞄などへの収納性も申し分なく、モバイル用途での利用も大きな問題はないはずだ。

 重量は、タブレット部が約550g、キーボードドック装着時が約1.02kgとされている。実測では、タブレット部が555.5g、キーボードドックが484g、合計で1039.5gだった。公称よりもわずかに重かったが、この重量であれば毎日持ち歩くとしてもまったく苦にならないだろう。

タブレット部背面。デザインは非常にシンプル。筐体は樹脂製だが、シルバーメタリック塗装で質感はまずまず
こちらはキーボードドック装着時。フットプリントはタブレット部のみで249×178mm(幅×奥行き)、付属のキーボードドック装着時で249×184mm(同)
タブレット下部側面。
タブレット左側面。高さは9mm
タブレット上部側面。側面付近はなだらかにカーブしている
タブレット右側面
キーボードドック装着時の手前側面
左側面。キーボードドック装着時の高さは17.6mm
後部側面
右側面
キーボードドック底面
タブレット部の重量は、実測で555.5gだった
キーボードドックの重量は実測で484g。タブレット部と合わせた重量は1039.5g

フルHD超の10.1型IPS液晶を採用

 液晶は、1,920×1,200ドット表示対応の10.1型液晶を採用している。低価格な製品でありながら、フルHD超の液晶を採用している点は、競合製品に対する大きな優位点となる。

 画面サイズが10.1型と小さいため、等倍表示では文字サイズがかなり小さくなるものの、Windows 10ではスケーリングが改善され、文字サイズを大きくしても表示崩れがほとんどなくなったため、文字サイズを大きくして利用してもまったく問題がない。文字サイズを小さくして情報量を増やすか、見やすい文字サイズを優先するか、ユーザーが自由に設定できるという点は、高解像度液晶採用による大きな利点だ。

 液晶の種類はIPSで、視野角が広く、角度を変えてみても発色や色合いの変化は非常に少ない。表示品質は、特別優れているということはないが、十分に満足できるもので、写真や動画なども鮮やかな表示で楽しめる。なお、パネル表面は光沢仕様となっており、外光の映り込みはやや気になった。

 タブレット部とキーボードドックは、強力なマグネットで固定される。キーボードドック後方ヒンジには、タブレット部との接続端子に加え、端子左右にガイドピンを用意。ガイドピンとタブレット下部側面のへこみを合わせるように装着すれば、マグネットでしっかりと固定される。

 マグネットは適度な強度で、装着時のぐらつきは少ない。また、タブレット上部を持って多少ラフに持ち上げても、キーボードドックが外れる心配もない。なお、タブレット部は液晶面をキーボード側に向けてのみ装着可能となっており、液晶の向きを180度反転させての装着は不可能だ。

 着脱式2in1モバイルでは、どうしてもタブレット側の重量が重くなるため、液晶部を開いたときに後方に倒れないよう、あまり深くまで開けない場合が多い。それに対しMiix 320では、キーボードドックの重量が比較的重いこともあって、130度ほどまで開くようになっている。これなら、クラムシェルノートPCとして利用する場合でも、快適な作業環境を実現できる。

1,920×1,200ドット表示対応の10.1型液晶を搭載
パネルの種類はIPSで、視野角が広い。表示品質は特別優れるわけではないが、このクラスの製品としては十分満足できる
タブレット部はキーボードドックとマグネットでしっかり固定され、ぐらつきは少ない
キーボードドック後方のヒンジ。中央に接続端子、その左右にガイドピンがある
タブレット下部のへこみをガイドピンに合わせるように装着。着脱は容易だ
マグネットの磁力は十分に強く、タブレット部を持って持ち上げてもキーボードドックが落ちることはない
キーボードドックのヒンジは130度ほどまで開く

キーボードはFnキー列がなく慣れが必要

 付属キーボードドックのキーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプのものとなっている。

 2in1タブレットで広く採用されているカバー型のキーボードと比べると、重量こそやや重いものの、樹脂製で剛性が高いため、タブレット部装着時には、クラムシェルノートPCのキーボードとほぼ同等の感覚で利用できる。もちろん、膝の上での利用も非常に安定しており、この点は2in1タブレットに対する大きな優位点だ。

 筐体サイズがコンパクトなこともあって、主要キーのキーピッチは実測で約17.5mmと、フルサイズにはおよばない。それでも、ストロークは1.5mm近くの深さがあり、クリック感もしっかりとしているため、打鍵感はかなり良好。

 ただし、サイズを起因とする割り切りが必要な部分もある。まず、Enterキー付近の一部キーはピッチが狭くなっている。また、通常数字キー列上部に用意されるファンクションキー列がまるごと省かれており、ファンクションキーは数字キーとFnキーとの併用での利用する。その影響で、Escキーが半角/全角キーの左に配置されている点も、一般的なキーボードとは異なる配列になっている。

 とはいえ、ファンクションキー列が省かれていることで、縦のキーピッチがゆったりしていることも事実。普段からファンクションキーを利用する場面が多い人にとって、この仕様はかなり残念となるが、ファンクションキーをほとんど使わない人にとっては、全体的にまずまず扱いやすいと感じるはずだ。

 それに対し、ポインティングデバイスのタッチパッドは、かなり大きな面積が取られている。クリックボタン一体型で、ジェスチャー操作にも対応しており、なかなかの扱いやすさだ。ただ、個人的には、Miix 320は2in1モバイルで、タッチ操作に対応しているのだから、タッチパッドの縦の幅を狭めてでもファンクションキー列を用意してもらいたかった。

キーボードドックのキーボードはアイソレーションタイプ。カバー型キーボードと異なり剛性が高く、タブレット装着時にはクラムシェルノートPC同等の利便性を実現する
キーボードは最上列のファンクションキー列が省かれており、やや変則的だ
主要キーのキーピッチは、実測で約17.5mm。フルサイズキーボードに比べるとやや窮屈だが、慣れればタッチタイプも問題ない
ストロークは1.5mmほどと深い。しっかりとしたクリック感もあり、打鍵感も良好だ
Enterキー付近のキーはピッチが狭くなっている
タッチパッドはクリックボタン一体型。面積が広くジェスチャー操作にも対応し、扱いやすさは申し分ない

スペックは必要最低限

 Miix 320は、低価格な着脱式2in1モバイルということで、スペックも価格相応なものとなっている。

 搭載CPUは、Atom x5-Z8350を採用している。低価格PCで広く採用されているCPUで、Core iなどと比べると、さすがに処理能力はかなり低い。

 また、搭載メモリは4GB(LPDDR3-1600)、内蔵ストレージは64GBのeMMCと、こちらも最小限といった印象。実際に使ってみても、アプリ起動時でも待たされると感じる場面があり、全体的には動作がもっさりしているという印象だった。

 それでも、CPUが4コア4スレッド処理に対応していることもあって、Webアクセスやメール送受信、ExcelやWordなどのOfficeアプリの利用といったそれほど高い処理能力が不要な作業は、比較的快適に利用できる。

 多くのアプリも、一度起動してしまえば十分快適に利用できるため、実際に作業を行なっている場面では、動作の重さを感じることは少ない。フルHD動画の視聴もまったく問題なく、Web動画の視聴もまったく問題がなかった。

 さらに、ブラウザベースのゲームも、比較的軽く動作するものであれば、十分に楽しめた。さすがに、どういった作業も快適にこなせるとは言わないが、ネットブックを代表とする数年前の低価格PCに比べると快適度はかなり高く、価格を考えると十分満足度できそうだ。

 無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠無線LAN(1×1、最大433.3Mbps)とBluetooth 4.1を標準搭載。カメラは、タブレット部背面側に約500万画素のメインカメラと、液晶上部に約200万画素のインカメラを搭載する。

 外部ポート類は、タブレット側とキーボードドック側それぞれに用意。まずタブレット側には、下部側面にmicroSDカードスロット、左側面にオーディオジャック、右側面にMicro HDMI出力とUSB 3.0 Type-Cポート、電源コネクタを配置。このほか、左側面には電源ボタンとボリュームボタンが置かれている。

 キーボードドック側には、左右側面それぞれにUSB 2.0ポートが1ポートずつ用意されている。キーボードドックのUSBポートがUSB 2.0となっている点は少々残念だが、ポート類は低価格着脱式2in1モバイルとして必要十分だろう。

 OSはWindows 10 Home(64bit)だ。

左側面は、タブレットにオーディオジャック、キーボードドックにUSB 2.0ポートを配置。タブレット側には電源ボタンとボリュームボタンも配置されている
右側面には、タブレットにMicro HDMI出力とUSB 3.0 Type-Cポート、電源コネクタを、キーボードドックにUSB 2.0ポートをそれぞれ用意
タブレット下部側面にmicroSDカードスロットを配置
microSDカードスロットはトレイ式だ
タブレット背面側に500万画素のメインカメラを用意
液晶上部には200万画素のインカメラを配置している
付属のACアダプタ。ややかさばる形状をしている
ACアダプタの重量は実測で164gとまずまずの軽さだ

性能は価格相応も、快適度は想像以上

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。

 利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 10 v1.0.1271」、「PCMark 8 v2.7.613」、「3DMark Professional Edition v2.3.3732」、Maxonの「CINEBENCH R15」の4種類。比較用として、東芝クライアントソリューションの「dynabook UX53/D」の結果も加えてある。

【表1】検証環境
ideapad miix 320 80XF0007JPdynabook UX53/D
CPUAtom x5-Z8350(1.44/1.92GHz)Core i5-72000U(2.50/3.10GHz)
チップセット
ビデオチップIntel HD Graphics 400Intel HD Graphics 620
メモリDDR3L-1600 SDRAM 4GBDDR4-2133 SDRAM 4GB
ストレージ64GB eMMC128GB SSD(SATA)
OSWindows 10 Home 64bitWindows 10 Home 64bit
【表2】ベンチマーク結果
ideapad miix 320 80XF0007JPdynabook UX53/D
PCMark 10 v1.0.1271
PCMark 10 Score8612,793
Essentials2,5215,351
App Start-up Score2,3275,488
Video Conferencing Score3,0705,356
Web Browsing Score2,2455,215
Productivity1,2095,185
Spreadsheets Score1,0005,914
Writing Score1,4644,546
Digital Content Creation5702,132
Photo Editing Score7022,587
Rendering and Visualization Score3171,363
Video Editting Score8342,749
PCMark 8 v2.7.613
Home Accelarated 3.01,1303,306
Creative accelarated 3.01,3914,185
Work accelarated 2.01,0324,479
Storage4,1844,966
CINEBENCH R15.0
OpenGL (fps)8.9732.99
CPU97327
CPU (Single Core)29127
3DMark Professional Edition v2.3.3732
Cloud Gate1,4664,965
Graphics Score1,6815,802
Physics Score1,0133,300
Sky Diver8433,056
Graphics Score7932,989
Physics Score1,4143,887
Combined score7492,654

 結果を見ると、Core i5-7200U搭載のdynabook UX53/Dよりもかなりスコアが低いことがわかる。今回は、同等クラスのPCを別途用意できなかったこともあって、こういった比較となったが、もともとこのクラスのPCの比較用としてCore i5-7200U搭載PCは不釣り合いであり、この点は申し訳なく思う。

 それでも、搭載CPUの違いを考えると、これはスペック相応の結果だ。また、すべてのベンチマークがしっかりと完走しており、高負荷が続いた場合の安定性という点でも問題がないと言える。

 ベンチマークのスコアはともかく、先ほども紹介したように、実際の使用感はこのスコアほど悪くはない。動作の重さを感じる場面があるのは事実だが、もともと持っていたこの価格帯のPCに対する印象からすると、十分にキビキビと動作し、なかなか快適に利用できる。低価格PCは、安かろう悪かろうというイメージがあるかもしれないが、Miix 320を触ってみると、筆者のようにその印象がガラッと変わるはずだ。

 次にバッテリ駆動時間だ。

 Miix 320の公称バッテリ駆動時間は約11.3時間(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver.2.0)となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約9時間02分だった。

 これだけの駆動時間なら、通常利用でも十分な駆動時間を確保できるはずで、外出時でも安心して長時間利用できる。付属のACアダプタは軽量な反面、ややかさばる形状をしていることもあって、できれば本体と一緒に持ち歩きたくないと感じるが、このバッテリ駆動時間ならACアダプタがなくてもまず問題ないだろう。

サブ用途の2in1モバイルとして魅力的

 Miix 320は、実売価格が4万円前後と非常に安価な着脱式2in1モバイルということで、実際に使うまでは性能面にあまり期待はしていなかった。搭載CPUやストレージなどは価格相応で、お世辞にも処理能力が高いとは言えないが、それでも実際に使ってみると、思っていた以上に快適に使えると感じた。

 紹介してきたように、動作は全体的にもっさりしているという印象ではあるが、数年前のネットブックのような動作の厳しさはなく、動画編集やゲームといった重いアプリを利用しないかぎり、不満を感じる場面は少ないだろう。

 4万円前後という価格帯は低価格PCだけでなく、Androidタブレットも競合となるが、Miix 320はOSにWindows 10を採用するPCであり、豊富なWindows向けアプリケーションが問題なく動作する点は、Androidタブレットに対する大きな優位点となるはずだ。

 全体的には、Miix 320はこの価格帯の製品としてかなり完成度が高いと感じた。メインマシンとしては厳しい部分もあるが、持ち歩いて利用するサブ用途の2in1モバイルとしては、十分な魅力がある製品と言える。