Hothotレビュー

Surface Bookと同じ液晶を搭載した馳為創新科技製2in1「Chuwi Hi13」

Chuwi Hi13

 2013年にIntelがBay TrailアーキテクチャのAtomを投入して以来、これまで名前をほとんど聞かないようなさまざまな企業から、タブレットPCを中心とした製品が雨後の筍のようにリリースされている。(Bay Trailベースの)Atomが人気製品であったことも影響しているだろうが、機器設計のしやすさも普及に拍車をかける要因となっているだろう。

 Chuwi(中国名:馳為創新科技)もこの“Atomブーム”に乗って成長した企業の1つ。同社は2004年に深センで設立され、当初はMP3/MP4プレーヤーの製造を行なっていた。2010年にはMediaTekおよびGoogleとパートナーシップを結び、Androidタブレットをリリース。そのノウハウを持って、2013年についにMicrosoftおよびIntelとパートナーシップを結び、Atomベース(もしくはそれに準じたPentium/Celeron)のタブレットPCなどの製造を行なっている。

 現存するChuwiのタブレットPCラインナップを見れば分かるとおり、CPUはすべてApollo LakeベースのAtomまたはCeleron Nだが、1,920×1,080ドット(フルHD)以上の解像度を持った液晶を採用している。シンプルに言えば、CPU(およびその周辺)でコストを抑えて液晶解像度で勝負する製品だ。これは同社製品の“ウリ”だと言える。

 今回ご紹介する「Hi13」は、2017年4月に投入された、同社のフラグシップとして位置づけられる製品だ。現時点では日本にChuwiの正規代理店がないため、量販店で購入することは不可能だが、海外の通販を通じて購入することはできる。一例として執筆時点(4月25日)のGearBestでの価格は319.99ドル(約35,000円だ)。

 2in1として使用するためのキーボードドックは別売りとなっており、こちらはGearBestで57.74ドル(約6,400円)。また、本製品はデジタイザも内蔵されているためアクティブペンも使えるが、このペンは28.43ドル(約3,100円)。合計で約406.16ドル(約45,000円)という計算になる。しかし同時に購入すれば割引が効き、395.52ドル(約43,500円)だ。最初から2in1として使う目的であれば同時購入がお得だろう。

 なお、本製品の無線機能について広報に確認したところ、日本国内で無線機能を使用するための技術基準適合証明はついているとのことだった。本体にシルク印刷はないが、総務省の「技術基準適合証明等を受けた機器」のページで検索できる(氏名又は名称:CHUWI INNOVATION LIMITED、型式:CWI534)。

【9月11日追記】技適の表記について、現在Chuwiに確認をとっており、詳細が分かり次第追記します。

 今回Chuwiのご厚意により、香港からサンプル機を発送していただいた。このサンプル機をもとにレポートをお届けしたい。

基本スペックをおさらい

オーソドックスなキーボード着脱式2in1だ

 PC WatchではHi13についてこれまでニュースで取り上げたことがなかったので、まずは簡単にスペックをおさらいしよう。SoCには、Apollo Lake世代のCeleron N3450を搭載。ベース1.1GHz、バースト時2.4GHzで駆動する、14nmプロセスのクアッドコアプロセッサだ。

 2013年末に大流行したBay Trail世代のAtomプロセッサは、GPUにIvy Bridgeと同じ第7世代Intel HD Graphicsを採用し、実行ユニット(EU)も4基だった。しかしApollo Lake世代ではSkylakeと同じ第9世代に進化し、EUも最大18基に増やされ、強化されている。本機に搭載されるCeleron N3450ではEUが12基に抑えられているが、それでもBay Trailの3倍で、GPU演算性能は期待できる。

 メモリはDDR3L-1600を4GB搭載する。本機では64bit OSが用いられているが、現時点(25日)では3.4GB程度しか使えない。リソースモニターで確認したところ、616MBほどハードウェアで予約済みとなっていた。広報に確認したところ、本機は高解像度液晶を搭載しているため、Intel HD Graphicsのビデオメモリ用に多く確保されているとのことだった。

 しかし、同様の解像度を持つSurface Bookの予約済み領域は100MBほどしかなく、この点不可解な部分ではある。本来、3D描画で必要とされるビデオメモリはWindows上のドライバから確保できるため、BIOS上で確保する必要はないからだ。この点、改めて広報に確認をしているところだ。

メモリが616MBほどハードウェアに予約されており、実際に使える領域は3.4GBほど

 また、これはHWiNFO64から得られた情報に基づく予測だが、本製品のメモリはシングルチャネル構成となっているようだ。基板スペースや部材の関係でデュアルチャネルにできなかったのかもしれないが、特に内蔵GPU性能に関わる部分だけに、デュアルチャネルで実装してほしかったところだ。

 ストレージには64GBのeMMCを採用。サンプル機はSamsungの「CJNB4R」が搭載されていた。

Surface Bookに匹敵する3,200×2,000ドットの高解像度ディスプレイとスタイラス

 本製品最大の魅力は、3,000×2,000ドットという非常に高い解像度を持つ13.5型IPS液晶ディスプレイ。この数字はMicrosoftのSurface Bookと同じである。それどころか、HWiNFO64の情報によると、本製品に搭載されている液晶はパナソニック製の「MEI96A2」なので、まったく同じ液晶パネルということになる。

 この液晶はsRGB比100%の色域を実現しているのに加え、最大480cd/平方mという輝度も持つ。ただ本製品はオプティカルボンディングされていないようで、表面パネルと若干の視差がある。表面の光沢処理もきつめで、周囲の風景が映り込んでしまう。このあたりはコストとの兼ね合いもあるので致し方ないところだ。

 とはいえ、高い解像度と広色域が生み出す精細感と鮮やかさにはやはり圧倒される。風景写真など映し出してみると、目を凝らしてもジャギーはまったく見えない。赤はやや飽和が早い印象だが、緑と青は深く美しい。液晶がお目当てで本製品を購入した人なら、(価格を考慮すると)納得するデキではなかろうか。

 ちなみにWindows 10では出荷時に標準で250%のDPI表示を推奨していた。さすがにこの設定では表示される文字情報が少ないため、筆者としては175%前後をおすすめしておきたい。100%表示がもっとも情報量を稼げるが、さすがに凝視しないと厳しい。

Hi13に搭載される液晶はSurface Bookと同じ3,000×2,000ドット表示のもの
視野角は広く、斜めから見ても色変化は少ない
Windowsの推奨表示DPIは250%であり、これがプリセットされている
250%表示ではさすがに情報が少なすぎる感はある
標準の250%表示。精細さはさすがだが、これでは情報量が1,366×768ドットの液晶とあまり変わらない
筆者推奨の175%。文字の大きさと情報量のバランスが比較的取れている
100%表示ではさすがに文字が小さい上に、タッチ操作もしにくくなる

 スタイラスによるペン入力に対応する点も本製品ならではの特徴だ。方式についてChuwiは明らかにしていないが、ワコムとN-Trigのいずれのペンでも使えなかった。デバイス マネージャーで調べてみたところ、Goodixのスタイラスソリューションである可能性が高いことがわかった。このソリューションはシングルチップでタッチとアクティブスタイラスの両方が使える、コストパフォーマンス重視のものである。

 スタイラスは1,024段階の筆圧に対応している。先述のとおり、本製品はオプティカルボンディングを採用していないため、視差は若干ある。しかしその差はごくわずかで、ほとんど気にならない。端のほうの乖離も少なく良好だ。実際に定規を当ててWindowsのスケッチパッドで線を引いてみたところ、ディスプレイの辺に対して並行する線は特に問題なかったが、斜め45度の線は若干波うってしまった。正確さを求めるのは酷だが、お絵かきタブレットとしては次点だろう。

 なお、スタイラスは磁力によって本体の右側面にくっつくようになっている。磁力があまり強くないためぶつけてしまうと落ちるが、ちょっとした持ち運びのときはくっつけておくとよいだろう。

付属のスタイラスペン。AAAA電池1本で動作する
磁力で本体右側面にくっつくことができる
定規を当てて線を引いてみたところ
液晶の辺と並行する線はまっすぐで非常に優秀。斜めの線は少し波打ってしまう

キラリと光るエッジ

 前後してしまったが、パッケージを見ていくことにしよう。本製品は低価格志向のため、パッケージは非常にシンプルなものとなっている。緩衝材は最小限だが、香港からの輸送に難なく耐えた。パッケージをすぐに捨てる人にとってみれば“エコ”だし、取っておく人にとってみれば省スペースで、今どきらしい作りとなっている。

 本体は基本的に横で使うことを前提とした作り。横に置いた場合、電源ボタンとボリュームは上部、Windowsボタンは右になるため若干の違和感を覚えるが、Webカメラは上に位置するし、スピーカーもこの向きで左右のチャネルが正しく鳴るので間違いない。ちなみに本製品は4つのスピーカーを備えているが、画面の向きによって鳴らすスピーカーを変え左右を保つといったギミックはなく、純粋に出力を倍にしているだけだ。

 本体背面は濃いシルバー色となっておりなかなか渋い。金属によるユニボディデザインを採用しており、剛性はかなりものもだ。13.5型のディスプレイは比較的大きいが、このユニボディによって片手で端を持っても歪まないほどの強度を確保している(ただし本体重量は1.1kgもあるため、この持ち方はオススメできない)。

 側面とのエッジの部分はCNCによってカットされ、キラリと光る。いわゆる「ダイヤモンドカット」だ。全体的にはデザインへのこだわりが随所見られる。

 キーボードドック側も同様の色合いで、ダイヤモンドエッジ加工がされている。タブレットを装着して閉じたときの一体感はなかなかのもので、14型のクラムシェルノートと見違うほどだ。キーボードドックと本体の接続はピンによる有線接続であるため、信頼性は高い。本製品は珍しくキーボードドック側に電源LEDがついており、本体がドックにきちんと装着され、電源が入っていることが視覚的にわかるようになっている。

パッケージは質素なもの
マニュアルなど。一応日本語表記のものもある
本体天板。ダークシルバーで落ち着いている
キーボードドックの底面
本体上部。電源ボタンとボリュームボタンが見える。ダイヤモンドカットのエッジが眩しい
本体左側面。音声入出力、Mini HDMI出力、Micro USB、USB Type-C、microSDカードスロットが並ぶ
本体底面。キーボードドックと接続するためのピン、およびヒンジ固定用の溝が見える
キーボードドックのヒンジ部と磁石によってくっつくようになっている
キーボードドックを装着した状態。比較的薄い印象だ
ドック装着時、最大でこの角度まで開くことができる

使い勝手

 さて、液晶とペン以外の使い勝手の部分について述べていこう。まずは本体の重さについて触れておきたい。さきほど少し触れたが、本体重量は公称1.1kg、実測で1,085gと、タブレットPCとしてはかなり重い部類に入る。8型タブレットのように立ったまま片手で持ってもう片手で操作するというのは、不可能というわけではないが、落下の可能性がありおすすめできない。基本的に椅子に腰を掛け、膝の上や机の上でゆったり使うべきだ。

 キーボードドックを装着すると、その重量は実測で1,973gと、標準的な15.6型クラスのノートPCに匹敵するものとなる。ここまで重いとモバイルとは言えず、家庭内/会社内モバイルにとどめておいたほうが良い。

 2in1の多くは1kg前後であり、“タブレット単体でもキーボードを含めても現実的に持ち運べる重量”だ。一方Hi13はタブレット単体で持ち運ぶならさほど苦にならないが、キーボードを含めるとなると現実的ではない。「持ち運ぶならタブレット単体、キーボードを使いたければ据え置き」という意味では、本製品の2in1の性格は“メリハリが効いている”と言える。

本体重量は実測で1,085gと重い部類に入る
キーボードドックは実測で888gだった
本体と合わせると実に約2kgに達する

 ところで、Windows 10を搭載した2in1マシンの多くは、キーボードの着脱でタブレットモードとデスクトップモードを切り替えるContinuumの仕組みを用意しているが、手持ちのサンプル機は動作しなかった。デバイスマネージャーを見ると、「GPIOラップトップまたはスレート インジケーター ドライバ」と呼ばれるデバイスが確認できるので、ハードウェア的にはContinuumに対応していると思われるが、ユーティリティの作り込みが間に合っていないのかもしれない。

 また、本機はWindowsタブレットでは一般的なModern Standbyにも非対応だ。通常のノートPCと同様、スリープまたはハイバネーション(休止状態)動作となる。筆者個人的にはスリープやハイバネーションでもあまり気にならないが、スリープとハイバネーションを区別するためのインジケータ表示が欲しかったところではある。

 キーボードドックだが、さすがに1kg超の巨体を固定できるだけあってずっしり重い。キーは英語配列となっており、この点は玄人好みだろうか。Enterの横にはPageUp/PageDown、Home/Endといったキーもあり、このあたりは若干慣れを必要とするかもしれない。また、キーのストロークはそこそこ深く、底を押してもたわむことはないのだが、スコスコ筐体が響く感じで若干チープさが感じられる。とは言え、19.5mmのフルピッチが確保されており、主要キーに関してはクセがないため入力はしやすい。

 タッチパッドはボタン一体型のタイプ。筐体に余裕があるため面積もそこそこだが、専用ドライバが入っておらず、Windows標準機能で対応されている。2本指でドラッグすればスクロールし、エッジスワイプでチャームを出したりすることも可能だ。ただ、指をピタッと止めても若干カーソルがドリフトする印象があるほか、タイピング中に手のひらをご認識してしまうこともあった。快適な操作を求めるのであれば、素直に本体をタッチするか、付属のペンを使うか、別途USBマウスを繋げたほうが無難だ。

キーボードドックを付けたところ。ヒンジ部が後部にせり出す
キーボード。メインキー部分については配列のクセがあまりないほうだろう
Enterキーの横にPageUp/Down/Home/Endを配置。この辺りは好みが分かれそうだ
キーピッチは約19.5mmが確保されており問題ない
タッチパッドの幅は約95mm
奥行きは約59mm

 付属のACアダプタはUSB Type-Cポートに繋げるタイプ。大きさに関しては標準的だ。ただ本機は付属のACアダプタから来る12Vの電圧でしか充電できないらしい。付属品にUSB Type-Aオス→Type-Cオスの変換ケーブルがあったため、5V出力のUSBモバイルバッテリなどから充電できると期待していたのだが、残念ながら充電される気配はなかった。手持ちに12V出力できる充電器がなかったため試せなかったが、もしかしたら12Vなども出せるUSB ACアダプタなら付属のケーブルが使えるのかもしれない。

 一方、熱や騒音に関してはほぼないに等しい。大きさに余裕がある筐体を採用しているため、ベンチマーク中タブレット本体がほんのり温かくなる程度。キーボードドック側には処理部がないため、パームレストが熱くなって不快になることとは無縁だ。

 本機を日本のユーザーが使用するにあたって若干ハードルとなりそうなのが、本製品にプリインストールされているWindows 10が、中国語版をベースに英語の言語パックを当てて、英語で表示されている点だ。もちろん、あとから日本語の言語パックを自身で入れることは可能なのだが、それでもスタートメニューのグループ名が中国語のままだったり、ソフトによってはインストール時に中国語(筆者が試した限りではEmEditorがそうであった)で表示されてしまうことがある。また、WindowsはiOSやAndroidと比較して、システムロケールの変更も煩雑だ。この辺りは、ChuwiよりもMicrosoftに改善をお願いしたいところではある。

付属のUSB Type-C ACアダプタは12V固定出力のようだ。誤って5V専用の機器に繋げないほうが無難だろう
付属のACコードのコンセントはタイプC。日本国内で使う場合は別途変換が必要になりそうだ
付属のUSB Type-C→Type Aケーブル。本機は5Vで充電できないため、このケーブルを用いても一般的なモバイルバッテリから供給を受けることはできない
OS自体は中国語版で、英語の言語パックがインストールされていた

最高でAtom Z3735Fの2倍のスコアをマーク

 最後にベンチマーク結果をお伝えしたい。先述のとおり、本機はApollo LakeのCeleron N3450を搭載しており、Bay Trail世代の製品と比較して高い性能に期待がかかる。その一方でメモリがシングルチャネルのため、それがどのぐらい性能に影響するのか気にかかるところだ。

 今回は「PCMark 8」と「ファイナルファンタジーXI オフィシャルベンチマーク3」(以下FFXIベンチ)の2つのベンチマークのみを実行した。筆者がいつも利用しているSiSoftware Sandraは、プロセッサの情報を調べたりするだけでブルースクリーンになり利用できなかったため、結果を省いてある。

 比較用として、Bay Trail世代のスティックPC「Compute Stick」や、“ネットブック2.0”とも言うべきASUSの「EeeBook X205TA」、そして日本HPの「Stream 11」を加えてある。

Hi13Compute StickEeeBook X205TAStream 11
CPUCeleron N3450Atom Z3735FAtom Z3735FCeleron N2830
メモリ4GB2GB2GB4GB
ストレージ64GB eMMC32GB eMMC32GB eMMC32GB eMMC
OSWindows 10 TH2Windows 8.1Windows 8.1Windows 8.1
PCMark8
Home accelerated1485103711101082
Web Browsing-JunglePin0.585s0.591s0.592s0.527s
Web Browsing-Amazonia0.216s0.19s0.196s0.169s
Writing12.5s12.23s10.72s8.56s
Photo Editing v20.743s2.816s2.688s2.993s
Video Chatv2/Video Chat playback 1 v230fps30fps30fps20fps
Video Chat v2/Video Chat encoding v2194.7ms324ms316ms578.3ms
Casual Gaming10.7fps5.3fps6.8fps6.6fps
Creative Accelerated19559419521027
Web Browsing-JunglePin0.586s0.591s0.591s0.518s
Web Browsing-Amazonia0.190s0.193s0.167s0.216s
Video Group Chat v2/Video Group Chat playback 1 v230fps30fps30fps30fps
Video Group Chat v2/Video Group Chat playback 2 v230fps30fps30fps30fps
Video Group Chat v2/Video Group Chat playback 3 v230fps30fps30fps30fps
Video Chat v2/Video Chat encoding v2216ms337ms331.7ms472ms
Photo Editing v20.746s2.696s2.693s2.579s
Batch Photo Editing v247.9s199.2s199.7s151.8s
Video Editing part 1v222.1s58.2s57.9s51.6s
Video Editing part21v238.1s179.1s177.4s210.9s
Mainstream Gaming part 13.3fps1fps1.2fps1.3fps
Mainstream Gaming part 21.9fps0.5fps0.5fps0.6fps
Video To Go part 111.3s18s17.2s15.1s
Video To Go part 216.4s27.8s26.9s24.4s
Music To Go30.76s59.21s59.37s54s
ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3
Low5026363636784970
High3246247024633212

 本製品はBay Trail世代の製品から明らかな性能向上がみられた。Celeron N3450はベース1.1GHz/最大2.2GHzで動作するクアッドコアプロセッサであり、ベース1.33GHz/最大1.83GHzでしか動作しないクアッドコアのAtom Z3735Fや、ベース2.16GHz/最大2.41GHzだがデュアルコアのCeleron N2830搭載機よりも速いのは当然なのだが、ことCPU処理性能を重視するPCMark 8のCreative Acceleratedのスコアはクロック差以上に良い。これは、Hi13がほかの製品と比較して熱設計的に余裕があり、そのぶん最大クロックを維持できたためだと見られる。

 またGPUが強化されていることもあり、PCMark 8におけるゲームベンチマークのフレームレートが5割から、最大で3倍程度に引き上げられている点にも注目したい。3倍とは言っても、0.6fps対1.9fpsではどんぐりの背比べ程度だが、EUのアーキテクチャ改善およびユニット数増加に応じた性能向上は見られる。

 ただFFXIベンチの結果からもわかるとおり、DirectX 7~8といった旧世代の3Dグラフィックスエンジンにとって、このGPUの改善はほぼ無意味に近い。かといってBay Trailで動かなかったDirectX 9世代の3DゲームがHi13でバリバリ動くのかと言われればそれも難しく、なかなか使いどころが難しい印象。「Bay Trailではあまり快適ではなかったけど、Apollo Lakeに乗り換えたら快適になったよ」という3Dゲームをお持ちなら“ラッキー”といったところだろうか。

 製品の性格上、最新世代の3Dゲームをバリバリ走らせるのはナンセンスだろう。そもそも合計64GBしかないストレージでは、今どきのゲームを何本もインストールできない。3Dゲームはあきらめ、通常使用する程度であれば、性能面に不満を覚えることはなく快適に使えるマシンである。

 バッテリ駆動時間について、画面輝度が30%の状態でPCMark 8のHome Acceleratedを実行したところ、バッテリ残量が20%のところで5時間22分動作し、テストが中断した。換算すると1%あたり4分ちょい駆動できた計算だ。仮に残り5%まで使用した場合、約6時間22分駆動する計算。大画面の消費電力も考慮すると優秀な部類だろう。

 本製品に搭載されるバッテリ容量は37Whとされており、出力電圧は7.4Vだ。一般的な3.7V換算だと10,000mAh相当である。この容量を踏まえると、この駆動時間は納得のものだ。

いまや珍しい一点豪華主義

 Hi13は液晶とスタイラスペンの利用をもっとも重視した2in1だ。メモリがシングルチャネルでフルで利用できない、現時点ではContinuumやModern Standbyが利用できないなど、若干ツメの甘さが気になるが、一式揃えても4万円台というのはやはり破格だ。

 いま一般的に市場にあるノートPCや2in1は、CPUやGPUが高スペックだから周辺部品も重視する、CPUやGPUが安いから周辺部品は妥協するといった「バランス重視」の製品が多い。もちろん、それは価格セグメントを正しく階層化し、製品の位置づけを明確にする戦略の意味では正しいが、PCのどのスペックを重視するかは本来メーカーが決めるのではなく、ユーザーが決めるべきものである。そういった意味でHi13のような「一点豪華主義」モデルは、ユーザーの選択肢を広げる意味で歓迎したい。

 特にいま、スタイラスペン付きで高解像度液晶を備えた製品は数少なく、さらに安価ともなればなおさら希少だ。Hi13は海外から個人輸入をする必要があるなど、若干ハードルが高いが、気軽に買えるお絵描きタブレットが欲しいといったユーザーはぜひ検討してみてほしい。