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新米漫画家・劉セイラさんが「raytrektab」でライブドローイングを披露

劉セイラさん(左)と林田奈美氏(右)

 既報のとおり、ドスパラはワコムペンが付属した8型のWindowsタブレット「raytrektab DG-D08IPWP」を発売した(記事:ドスパラ、お絵描き向けの8型タブレット「raytrektab」を本日発売)。価格は49,800円だ。発売に合わせ、都内で製品説明会を開催した。

 発表会では、株式会社サードウェーブデジノス BTO事業部でスペシャリストを務める林田奈美氏が製品紹介を行ない、そのあと、日本で主に声優として活動され、最近漫画家デビューをはたした中国人、劉セイラさんによるraytrektabを使ったライブドローイングが披露された。

製品説明を行なった林田氏

 実は、製品の企画や開発に携わった林田氏も、普段よくお絵描きをしているのだそうだ。「ちょっとした思いつきで、持ち歩いているメモ用紙に描くのはもちろん、教科書の空いている場所にいたずら描きをしたり、レストランでも仲間が集まるとふきんに描いたりしてます。それは、絵が好きな人なら日常的に起こりうることです」と同氏。本製品はその“描きたい衝動”に応えるデバイスだ。

 しかしペンなどで紙に描いたものは消えにくい。「教科書に落書きしたはいいが、実は大事な文言がその裏面にあって、裏透けで見えにくくなってしまい後悔したり、もう失敗作を二度と見たくないと思うこともある。デジタルならパッと消せるので、そういった問題もない」と話す。

 近年スマートフォンでお絵描きできるソフトもあるのだが、指が太いため描かれている線そのものが隠れてしまう問題がある。先が細いタッチペンを使えばある程度その問題は解消するが、タッチパネルが静電容量式のため細いと反応が悪く、思いどおりに描けなかったりする。

 サイズ的には、13型前後のものなら市場にすでにある(Surfaceシリーズなど)上に、持ち運び前提なら、女性のカバンにも入りやすい8型前後が望ましかったとした。「数年前には同じようなニーズを満たす製品がありました(おそらくASUSのVivoTab Note 8を指しているのだと思われる)。しかし、本体の調子も少し悪くなったので買い換えようと思って矢先、その後継機がないことに気づいた。そこで社内でプロジェクトを立ち上げ、製品の企画や開発に至った」と語る。

 本機であれば、どこでも思いついた絵をすぐに描いて、Twitterなどで友達とすぐに共有ができる。絵は描けば描くほど上達するので、練習用にもいい。さすがに大きな絵を完成させるには、メモリ容量や画面サイズの制限上難しいが、そこは普段使っているデスクトップPCなどで作業をしてもらい、本機はあくまでも下書きやアイデアを描き留めておくサブ機的な使い方を想定しているとのことだ。

 ちなみにもっともこだわったのはやはりスタイラスペンだ。本製品にはワコムのFeel IT Technologiesが使われており、添付のもののみならず、市販のFeel互換品でも動作する。付属のものは、一般的なペンに近い太さを実現するため、あえて収納式にしなかったとのことだ。人によってはペンにゴムを巻いて太さを調節するため、あえてボタンを排除したそうだが、ここはあっても良かったかなと反省しているという。

 替え芯についても、標準芯に加え、マーカーのようなフェルト芯と、粘り気のあるエラストマー芯の2種類を標準添付し、ユーザーの好みに合わせられるようにした。ちなみにスペアのペンは夏頃まで、替え芯は近日中にオプションとして別途販売を予定しているという。

 当初、LTEの搭載も考えていたが、実現は難しく断念したという。またバッテリ駆動時間は約4時間と、タブレットとしては短い部類に入るが、この点も重さとの兼ね合いで妥協することとなったという。とは言え、USBケーブルによる給電も可能ため、必要であればモバイルバッテリと同時に持ち歩いてほしいとのことだった。

 なお、林田氏によれば、製品は27日より店頭および通販で販売されているが、開店前に購入希望者が行列を作るほどで、すでに多くの店舗で売り切れているという。しかし「マジですか?」というほどの数量を工場に発注したので、必ず毎日店舗に入荷するほか、通販サイトでは普通に受注できる状態を作っている。「数は豊富に用意してありますので、それほどお待たせすることなくお届けできます。皆さんくれぐれもオークションなどで転売されているものを買わないように」と促した。

お絵描きタブレット「raytrektab」
お絵描きをもっと身近にする製品
raytrektabの仕様
こだわったペン

ヲタクの行動力が実現したraytrektab

 発表会の後半は劉セイラさんによるライブドローイングだ。名字からわかるとおり、劉さんは中国の出身(北京生まれ)。北京外国語大学を卒業したのち来日し(厳密に言うと劉さんは大学在学中に留学生として1回来日している)、主にアニメの声優の仕事に携わっている。中国人にありがちな訛りが非常に少ない流暢な日本語を話すため、NHKで「テレビで中国語」のナレーションも務める。

劉セイラさん

 そして2017年、「教えて 劉老師! 2カ国語声優の日常」というWeb連載漫画で、漫画家デビューもはたした。アニメや漫画業界に入れたのは、“そうなりたい”という一筋の思いだ。

 「最初に観たアニメ(漫画)は『聖闘士星矢』でした(筆者注:約25年前、中国のTVで上映され大ブレイクした)。その次は『幽☆遊☆白書』、そして『鋼の錬金術師』(ハガレン)ですね。特にハガレンには大いなる感銘を受け、日本のアニメの声優になりたいと思うようになりました。先の予定まで立てず、すぐ行動する派だったので、“日本に行きたい”という思い1つで、北京外国語大学の日本語学科に入って日本語を学び、ここまで来ました。そういう意味では同じヲタクである林田さんと一緒ですよね。ヲタクの行動力は凄い」と笑って話す。

 これまで日本で声優をやるにあたって、人一倍日本語の勉強を頑張ったという劉さん。声優を始めた当初は脇役であったり、中国語とバイリンガルが喋れるキャラクターを任されたりしたが、2014年のWebアニメ「美少女戦士セーラームーンCrystal」で初めて完全な日本人キャラクター--月野うさぎの弟「進悟」役を任された。「製作者に“あなたの言語力を買ったんじゃない。あなたの声を買ったんだ”と言われたのは、これときが初めてだった」と振り返る。

 ……そんな雑談を交えながら、約1時間のライブドローイングを行なった。数日前から機材を試す予定だった劉さんだが、いろいろ手違いがあって、なんと発表会開始1時間前から初めてraytrektabを使いはじめたのだ。ぶっつけ本番もいいところだ。最初は若干画面の小ささに戸惑いを見せながらもすぐに慣れていき、あらかじめ構想が練られていたこともあり、1時間という限られた時間の中で4コマ漫画を仕上げられた。

 「普段はタッチに反応しない液晶ペンタブレットを使って描いているので、タッチで誤操作してしまわないか心配でした」と話す劉さん。確かにライブドローイングのなかで、パームリジェクション機能がうまく動作していないような挙動も見えたが、CLIP STUDIO PAINTはタッチとペンをきっちり分けて認識するので、タッチで線を描いてしまうようなことは一切なかった。

雑談しながら描く劉さん
4コマ漫画をライブドローイング。まずは下書きから
サクサク仕上げていく
吹き出しツールが活躍
今回キーボードを接続しなかったので、セリフも手書き
ほぼできあがった
縦表示にして大きく見せる
トーンなどを入れて完成