Hothotレビュー
ASUS 「ZenBook 3 UX390UA-512GP」
~極薄軽量のCore i搭載モバイルノートPC
2016年11月16日 00:00
ASUSは、薄さ11.9mm、重量約910gと、超薄型軽量筐体のモバイルノート「ZenBook 3 UX390UA」を10月下旬より発売した。第7世代Coreプロセッサを搭載しつつ、圧倒的な薄型軽量筐体を実現しており、常に持ち歩いて利用するモバイルノートPCとして魅力的な製品となっている。今回は、このZenBook 3シリーズの上位モデルとなる「ZenBook 3 UX390UA-512GP」を取り上げる。販売価格は税別184,800円。
優れた剛性も兼ね備える超薄型筐体
ではまず、「ZenBook 3 UX390UA-512GP」(以下、UX390UA-512GP)の外観からチェックしていこう。
ASUSのZenシリーズでは、金属製筐体を採用するとともに、同心円状のヘアライン処理を施すという点がお約束となっている。もちろんUX390UA-512GPでも、そのシリーズの特徴がしっかり受け継がれている。
本体素材にはアルミニウム合金を採用するとともに、細部に至るまで高度な加工が施されており、非常に質感が高い。液晶部を閉じると本体側とぴったり合わさるのはもちろんのこと、指で触ってみても段差を感じない。また、液晶部の側面は全周ダイヤモンドカット加工とゴールドに輝く塗装が施されており、これがいいアクセントとなって高級感を醸し出している。もちろん、天板部分には同心円状のヘアライン処理「スピンメタル加工」が施されており、角度によって光の反射が変わり、さまざまな表情が作り出される。なお、本体カラーはロイヤルブルーのみとなる。
本体サイズは、296×191.2×11.9mm(幅×奥行き×高さ)。高さは前方の最薄部で3.5mm、広報最厚部で11.9mmと非常に薄く、薄い鞄にも楽に収納できる。液晶ディスプレイには、後述するように12.5型パネルを採用しているが、側面ベゼル部の幅を、左右は7.6mm、上部11.5mm、下部16mmと狭めることによって、フットプリントも非常にコンパクトにまとめられている。重量は公称で約910g、実測でも908.5gと非常に軽い。本体が非常に薄くコンパクトということもあって、実際に本体を手に持つとこの数字以上に重く感じてしまうほどだが、やはりこの軽さは大きな魅力。これなら、毎日鞄に入れて持ち歩くとしても、苦になることはないはずだ。
ここまで薄型軽量筐体となると、気になるのは筐体剛性だろう。ただUX390UA-512GPに関してはその心配は無用のようだ。実際に液晶部や本体部を強くひねってみても、ほとんど歪むような手応えを感じなかった。もともと剛性の強いアルミニウム合金を筐体素材に採用するとともに、液晶面ガラスに米Corning製強化ガラス「Gorilla Glass 4」を採用していることもあるが、コンパクトさと軽さに加えて優れた筐体の剛性も両立している部分は、モバイルノートPCとして大きな魅力と言えそうだ。
12.5型フルHD液晶を採用
液晶ディスプレイは、1,920×1,080ドット表示対応の12.5型パネルを採用している。パネルの種類は非公開。視野角は170度とされており、上下左右に視点を大きく移動させても、発色や明るさの大きな変化は感じられなかった。2in1 PCとは異なり、タッチパネル非搭載でタブレット相当として利用することはないが、もしUX390UA-512GPが2in1 PC仕様だったとしても、これだけ広い視野角が確保されていれば大きな問題はないと感じる。
パネルの表示品質は、NTSCカバー率72%、sRGBカバー率100%、コントラスト比1,000:1と、このクラスのノートPCの液晶パネルとしては十分に優れている。デジタルカメラで撮影した写真も十分鮮やかに表示され、表示品質は申し分ないという印象だ。
液晶パネル表面には、先ほど紹介したように米Corning製強化ガラス「Gorilla Glass 4」を採用。液晶ベゼル部分も含め、液晶部のほぼ全体がガラスで覆われ、ベゼル部の段差もない。そのため、見た目にはタッチパネル搭載液晶と同等といった印象で、思わずタッチ操作してしまいそうになる。また、液晶表面は光沢仕様となっており、外光の映り込みはやや激しいという印象。タッチ非対応のクラムシェルノートPCということを考えると、できれば非光沢仕様としてもらいたかった。
ところで、後部液晶ヒンジには、新開発の直径3mmヒンジを採用しているという。このヒンジは世界最小とのことだが、ヒンジは適度なトルクで液晶面の角度をしっかり保持し、ぐらつきも少ない。薄型化の影響で、液晶面は140度ほどまでしか開かないが、利用上大きな問題とはならないだろう。
ストローク0.8mmのフルサイズキーボードを搭載
キーボードには、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプのキーボードを採用している。本体側面ギリギリまでキーを配置していることもあって、主要キーのピッチは約19.8mmとフルサイズを確保。縦のピッチは実測で約17mmと横に比べてやや狭いが、タイピングしていて違和感を感じるほど狭いということはない。Enterキー付近のピッチがやや狭く、カーソルキー上下が非常に幅が狭い点は少々気になったが、それ以外でキー配列に関して気になる部分はなく、タッチタイプも余裕で行なえるだろう。
また、標準でキーボードバックライトも内蔵している。3段階に明るさを調節でき、暗い場所でのタイピングも快適に行なえる。
それに対しキーストロークは0.8mmとかなり浅い。ASUSは、ZenBook 3の対抗としているMacBookのキーボードに対して2倍ほど深いとしているが、それでも浅いことには変わらない。実際に使ってみても、一般的なUltrabook搭載キーボードと比較してかなり浅いことが実感できる。クリック感はしっかりとしており、キータッチが軽すぎるということはないが、違和感は拭えないという印象。慣れれば、それほど問題なく利用できるとは思うが、可能なら購入前にキータッチに関しては量販店などの店頭で展示機を触って確認することをお勧めする。
ポインティングデバイスは、クリックボタン一体型のタッチパッドを搭載する。このタッチパッドはガラスを採用し、表面に特殊な加工を施すことで、非常になめらかな手触りを実現。一般的なタッチパッドに比べて明らかに指の滑りがよく、軽快なカーソル操作が可能。また、このタッチパッドには、右上に指紋認証センサーを内蔵している。Windows Hello対応なので、ワンタッチでWindowsにログオンできる。優れたセキュリティ性と利便性を両立できるという意味で、この点も大きな魅力となるだろう。
4スピーカー搭載で高音質なサウンド再生
薄型筐体のモバイルノートPCでは、搭載スピーカーが貧弱で、あまりいい音を再生できないものが多い。しかし、ZenBook 3では、Harman Kardonと共同開発した5マグネットスピーカーを、キーボード後方に2個、本体底面前方に2個の合計4個搭載し、薄型モバイルノートとは思えない高音質なサウンド再生が可能となっている。しかも、ボリュームを上げても音が割れたり歪んだりすることなく、非常に伸びのある音を再生してくれる。
実際に音楽や動画を再生して確認してみたが、よほど音質にこだわる場合を除いて、内蔵スピーカーの再生音で十分に満足できるクオリティと感じた。
外部接続端子はUSB 3.1 Type-C×1ポートのみ
UX390UA-512GPは、薄型コンパクトで軽量な筐体に注目が集まると思うが、充実したスペック面も見逃せない。
CPUは、第7世代Coreプロセッサ、Core i7-7500Uを採用し、メインメモリは標準でLPDDR3-2133を16GBと大容量。一般的にこのクラスのノートPCでは、メインメモリは多くても8GBということが多い中、標準で16GB搭載する点は競合製品に対する大きな優位点となるだろう。内蔵ストレージは、容量512GBのSSDを標準搭載。こちらも、このクラスとしては大容量といえる。加えてこのSSDは、接続インターフェイスPCI Express 3.0 x4対応の高速SSDとなっているため、快適度も優れる。
無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠の無線LANとBluetooth 4.1を標準搭載。無線LANは2×2通信対応で、11ac時で最大867Mbpsの通信速度を発揮。Webカメラは約30万画素で、液晶面上部に搭載している。
このように、スペック面はかなり充実しているが、唯一割り切りが必要な部分がある。それは外部接続端子だ。UX390UA-512GPの外部接続端子は、USB 3.1 Type-Cポートが1つと、ヘッドフォン/マイク共用ジャックのみとなっている。複数のUSBポートやSDカードスロットなどはなく、内蔵バッテリの充電にもUSB 3.1 Type-Cポートを利用するため、付属のACアダプタを直接本体のUSB 3.1 Type-Cポートに接続すると、USB周辺機器も利用できなくなってしまう。この点がUX390UA-512GPを利用する上での大きな問題になる可能性がある。
一応、標準でUSB 3.1 Type- C×1、USB 3.1 Type-A×1、HDMIを拡張するミニドックが付属するため、バッテリ充電中のUSB機器の同時利用は可能となっている。また、USB Type-A×2ポートやSDカードスロット、有線LAN、HDMI出力、ミニD-Sub15ピンなどを拡張するポートリプリケータもオプションで用意される。ただ、やはりアダプタを利用しなければ、充電しながらのUSB機器の利用やSDカードなどのメモリーカードの利用が行なえない点は不便と感じる。できれば、もう1つUSB Type-Cポートを用意するか、microSDカードスロットを用意してもらいたかったところだ。
3D描画など高負荷時にはパフォーマンスが落ちる場面も
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 8 v2.7.613」、「3DMark Professional Edition v4.48.599.0」、Maxonの「CINEBENCH R15」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」の4種類。比較用として、ZenBook 3よりもわずかに薄いクラムシェルノートPC「HP Spectre 13-v006TU」の結果も加えてある。
PCMark 8やCINEBENCHの結果を見ると、Spectre 13に比べて高スコアが得られていることが分かる。Spectre 13が搭載するCore i5-6200Uよりも上位となる、最新のCore i7-7500Uを搭載していることを考えると当然の結果とも言えるが、この結果を見る限りでは、しっかりCPUの性能が引き出されている考えられる。
ただ3DMarkやファイナルファンタジーXIVベンチマークの結果を見ると、Spectre 13に劣る部分が目立つようになってくる。ZenBook 3では、超薄型ながら空冷ファンを搭載しており、CPUの発熱を本体外に排出するようになっているが、どうやらGPUがフル稼働となる時間が長くなると、放熱が間に合わないようだ。実際にベンチマークテスト中に動作クロックの推移をチェックすると、動作クロックが低下する場面がかなり多かった。このことから、GPUが長時間フル稼働するような用途では、性能をフルに発揮できない可能性が高そうだ。
こういった挙動は薄型PCの宿命とも言えるが、性能低下の度合いはそれほど大きいわけではない。3DゲームなどGPUを酷使するアプリケーションをメインで利用しなければ、それほど問題視する必要はないだろう。
なお、高負荷時の空冷ファンの動作音は、耳には届くもののうるさいと感じることはない。この程度なら、図書館などの静かな場所での利用も問題とはならないだろう。
ZenBook 3 UX390UA-512GP | HP Spectre 13-v006TU | |
---|---|---|
CPU | Core i7-7500U(2.70/3.50GHz) | Core i5-6200U(2.30/2.80GHz) |
チップセット | ― | ― |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 620 | Intel HD Graphics 520 |
メモリ | LPDDR3-2133 SDRAM 16GB | LPDDR3 SDRAM 8GB |
ストレージ | 512GB SSD | 256GB SSD |
OS | Windows 10 Home 64bit | Windows 10 Home 64bit |
PCMark 8 v2.7.613 | ||
Home Accelarated 3.0 | 3783 | 3014 |
Creative accelarated 3.0 | 4580 | 3977 |
Work accelarated 2.0 | 4836 | 3945 |
Storage | 5064 | 4924 |
CINEBENCH R15.0 | ||
OpenGL (fps) | 45.07 | 41.74 |
CPU | 321 | 261 |
CPU (Single Core) | 142 | 115 |
3DMark Professional Edition v4.48.599.0 | 3DMark Professional Edition v4.46.595.0 | |
Cloud Gate | 5466 | 5449 |
Graphics Score | 7445 | 7254 |
Physics Score | 2832 | 2913 |
Sky Diver | 3340 | 3233 |
Graphics Score | 3392 | 3189 |
Physics Score | 3463 | 3709 |
Combined score | 2859 | 2974 |
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク | ||
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) DirextX 9 | 3839 | 4121 |
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC) DirectX 9 | 2426 | 2371 |
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) DirextX 11 | 3439 | 3238 |
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC) DirectX 11 | 1780 | 1845 |
ところで、ZenBook 3ではPCI Express Gen3 x4対応の高速SSDを採用しているため、CrystalDiskMark 5.2.0を利用して速度を計測してみたところ、シーケンシャルリードが1,741MB/Sec、シーケンシャルライトが1,233MB/Secと、なかなかの速度が記録された。ランダムアクセス速度も十分に高速で、利用時の快適度を高める要因になっているはずだ。
次にバッテリ駆動時間だ、ZenBook 3の公称バッテリ駆動時間は約8.7時間(JEITAバッテリー動作時間測定法 Ver2.0)となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約8時間38分と、公称の駆動時間に匹敵する駆動時間を記録した。900gほどの軽さを実現しつつ、これだけの駆動時間が確保されていることを考えると、モバイル用途として非常に魅力的と言っていいだろう。
拡張性には割り切りが必要だが、携帯性重視のモバイルノートとして魅力的
ZenBook 3は、900gほどの軽さと最厚部11.9mmの薄さ、12.5型液晶搭載ながらコンパクトなフットプリントと携帯性を高めつつ、優れた堅牢性も確保しており、常に持ち歩くモバイルノートとして非常に完成度が高い製品に仕上がっている。また、CPUに第7世代Core i7、メインメモリ16GB、512GBの高速SSDを標準搭載するなど、スペック面にも妥協がない。デザイン性も優れ、持つ喜びを感じられる点も大きな魅力だろう。
ただし、キーボードはストロークが浅くやや違和感がある点と、拡張ポートが充電兼用のUSB 3.1 Type-C×1ポートのみとなっている点は、かなり残念な部分。せめてUSB 3.1 Type-Cが2ポートあればまだ良かったが、拡張性に関してはかなり割り切りが必要と言える。
しかし、これらを割り切れるなら、ZenBook 3はかなり魅力的な製品となるだろう。なにより、薄さとコンパクトさや軽さに充実したスペック、十分な駆動時間は、競合製品に対する大きな優位点となるはずだ。軽快に持ち歩くことを最優先に高性能なモバイルノートを探しているなら、十分考慮に値する製品と言える。