Hothotレビュー

Apple「MacBook Pro 13インチ Touch Bar搭載モデル」

~自在に変化する「Touch Bar」搭載。普及端子を切り捨てた孤高のノートブック

Apple「MacBook Pro 13インチ Touch Bar搭載モデル」直販価格178,800円~

 Appleが初めてノートブックを発売してから25年が経過した節目である2016年、同社の最上位ノートブックである「MacBook Pro」がフルモデルチェンジし、10月28日に発表、11月17日に販売が開始された。Retinaディスプレイを初めて搭載したMacBook Proが発表、発売されたのが2012年6月11日。これまで内部パーツが変更されるマイナーアップデートは毎年実施されてきたが、筐体が大きく変わるフルモデルチェンジは4年と5カ月ぶりとなる。

 今回発表されたMacBook Proは3モデル。ファンクションキーの代わりにRetinaクオリティーのマルチタッチディスプレイ「Touch Bar」を搭載した13インチと15インチのMacBook Pro。そして、従来どおりのファンクションキーを搭載した13インチのMacBook Proとなる。なお、2015年モデルの13インチ、15インチMacBook Proは併売される。

 新型MacBook Proの主な変更点は下記のとおり。

・マルチタッチディスプレイ「Touch Bar」の搭載 ※一部モデルを除く
・指紋認証センサー一体型電源ボタン「Touch ID」の搭載 ※一部モデルを除く
・ポート類をThunderbolt 3のみに変更
・第6世代(Skylake)のCPUを搭載
・AMD製dGPU(外部GPU)を搭載 ※15インチのみ
・感圧タッチトラックパッドの大型化
・バタフライ構造の薄型キーボードの採用
・ディスプレイの輝度、コントラスト、色域の向上、及び省電力化
・2倍のダイナミックレンジと低音特性が改良されたスピーカー
・薄型化、軽量化
・本体カラーを2色用意

 今回AppleからTouchBarを搭載した13インチMacBook Pro(スペースグレイ)を借用した。この記事では本製品の使い勝手、特にTouch Barの具体的な使い心地にスポットを当ててレビューしていこう。

Touch Bar非搭載モデルはCPU、メモリ、ポート数で差別化

 13インチMacBook ProのTouch Bar搭載モデルのCPUはCore i5 2.9GHz。オプションでCore i5 3.1GHzまたはCore i7 3.3GHzを選択可能だ。メモリは2,133MHzのLPDDR3をオンボードに搭載し、オプションで16GB搭載モデルを選べる。ストレージはPCI Express接続の256GBモデルと512GBモデルが用意されており、512GBモデルのみ購入時に1TBモデルにアップグレード可能だ。なお、オプションを選択できるのは、Apple Storeで購入する場合に限られる。

 Apple Storeでの直販価格は、13インチMacBook ProのTouch Bar搭載モデルは最小構成(Core i5 2.9GHz/メモリ8GB/ストレージ256GB)で178,800円、最大構成で(Core i7 3.3GHz/メモリ16GB/ストレージ1TB)で288,800円となる。キーボードは、US、アラビア語、英語-英国、デンマーク語、フランス語、韓国語、スペイン語版に無料で変更可能だ。

 一方、13インチMacBook ProのTouch Bar非搭載モデルは最小構成(Core i5 2GHz/メモリ8GB/ストレージ256GB)で148,800円、最大構成(Core i7(2.4GHz)/メモリ16GB/ストレージ1TB)で258,800円となる。なお、Touch Bar非搭載モデルは、CPUが低クロック版、メモリが1,866MHzのLPDDR3となり、Thunderbolt 3ポートが2基となっている点でも差別化が図られている。

新旧13インチMacBook Proの主要スペック比較
13インチMacBook Pro(2015)MacBook Pro13インチモデルMacBook Pro13インチTouch Bar搭載モデル
ディスプレイサイズ13.3インチ13.3インチ13.3インチ
解像度2,560×1,600ドット2,560×1,600ドット2,560×1,600ドット
価格128,800円~148,800円~178,800円~
CPUCore i5(2.7/3.1GHz)、Core i5(2.9/3.3GHz)、Core i7(3.1/3.4GHz)Core i5(2/3.1GHz)、Core i7(2.4/3.4GHz)Core i5(2.9/3.3GHz)、Core i5(3.1/3.5GHz)、Core i7(3.3/3.6GHz)
iGPUIntel Iris Graphics 6100Intel Iris Graphics 540Intel Iris Graphics 550
メモリ8GB 1,866MHz LPDDR3、16GB8GB 1,866MHz LPDDR3、16GB8GB 2,133MHz LPDDR3、16GB
ストレージ128GB PCIe SSD、256GB、512GB、1TB256GB PCIe SSD、512GB、1TB256GB PCIe SSD、512GB、1TB
サイズ314×219×18mm304.1×212.4×14.9mm304.1×212.4×14.9mm
重量1.58kg1.37kg1.37kg
連続動作時間最大10時間のワイヤレスインターネット閲覧、最大12時間のiTunesムービー再生、最大30日のスタンバイ時間最大10時間のワイヤレスインターネット閲覧、最大10時間のiTunesムービー再生、最大30日のスタンバイ時間最大10時間のワイヤレスインターネット閲覧、最大10時間のiTunesムービー再生、最大30日のスタンバイ時間
バッテリ74.9Whリチウムポリマー54.5Whリチウムポリマー49.2Whリチウムポリマー
上がTouch Bar非搭載モデル、下がTouch Bar搭載モデルの左側面。Thunderbolt 3ポートの位置が微妙に異なっている
上がTouch Bar非搭載モデル、下がTouch Bar搭載モデルの右側面。Touch Bar非搭載モデルは右側面にThunderbolt 3ポートがない

文句なく美しい筐体、常時携帯できる本体重量

 13インチMacBook Proの本体サイズは304.1×212.4×14.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.37kg。従来の13インチMacBook Proと比べて、高さは17%薄く、体積は23%小さくなっており、重量は13%軽くなっている。なおTouch Bar搭載、非搭載モデルで重量は変わらない。

 筐体の材質は従来同様アルミニウム合金。しかし本体カラーは従来のシルバーに加えて、スペースグレイが用意された。「MacBook」ではさらにゴールドとローズゴールドがラインナップされている。薄型化、小型化、軽量化されてモバイル性が向上した新型MacBook Proだけに、より愛着を感じるためにもMacBook同様の多色展開を期待してしまう。

 側面のポートは、Thunderbolt 3ポート×4と3.5mmヘッドフォンジャックのみに大幅に削減された。Thunderbolt 3ポートは、充電、DisplayPort、Thunderbolt(最大40Gbps)、USB 3.1 Gen 2(最大10Gbps)の用途を兼ね、1台のディスプレイであれば5,120×2,880ドット/60Hz表示が、2台のディスプレイであれば4,096×2,304ドット/60Hz表示が可能だ。なお、dGPUを搭載する15インチMacBook Proは、2台のディスプレイに5,120×2,880ドット/60Hz表示、4台のディスプレイに4,096×2,304ドット/60Hz表示できる。

 2015年モデルの13インチMacBook Proには、MagSafe 2電源ポート、Thunderbolt 2ポート×2、USB 3.0ポート×2、HDMIポート、3.5mmヘッドフォンジャック、SDXCカードスロットが搭載されていたので、側面は非常にスッキリとしたデザインとなった。また、USB 3.0ポートとHDMIポートを廃したことによって、今回の薄型筐体を実現できたことは間違いない。

 13インチMacBook Proの同梱物は、本体、61W USB-C電源アダプタ、USB-C充電ケーブル(2m)、小冊子類となっている。アダプター類は同梱されていないので、用途や環境に応じて「Thunderbolt 3(USB-C)- Thunderbolt 2アダプタ」、「USB-C - USBアダプタ」、「USB-C Digital AV Multiportアダプタ」、「USB-C VGA Multiportアダプタ」、「USB-C to Gigabit Ethernet Adapter」、「USB-C - Lightningケーブル」などを購入する必要があるだろう。

 なお、新型MacBook Proの発売に合わせて、アダプタ類を特別価格で購入できるキャンペーンが10月27日~12月31日の期間限定で開催されているのでお見逃しなく。

上がスペースグレイ、下がシルバー
本体上面。Appleのロゴマークは鏡面仕上げ。従来のMacBook Proのように光らないのはちょっと残念
本体底面。左右側面下部には、スピーカー開口部と吸気口を兼ねた穴が設けられている
本体前面
本体背面
本体右側面。左からThunderbolt 3ポート×2、3.5mmヘッドフォンジャック
本体左側面。左からThunderbolt 3ポート×2
本体ディスプレイ面
ディスプレイ上部アップ。左から720p FaceTime HDカメラ、撮影時ランプ、照度センサー。照度センサーを写すため、露出を上げて撮影している
キーボード面。最上部の一段がTouch Bar
本体パッケージ
詳細なスペックは、本体パッケージ背面に記載されている。今回の試用機の型番は「MNQF2J/A」
パッケージ同梱物一覧。左上から、パッケージ、本体、小冊子類、61W USB-C電源アダプタ、USB-C充電ケーブル(2m)
小冊子類一覧。左上から、クイックスタートガイド、MacBook Pro情報、PCリサイクルについて、Appleロゴシール、小冊子類パッケージ
本体の実測重量は約1360g
61W USB-C電源アダプタの実測重量は196.2g
USB-C充電ケーブル(2m)の実測重量は59.7g
左上から時計回りに、「USB-C Digital AV Multiportアダプタ」(5,200円)、「USB-C VGA Multiportアダプタ」(5,200円)、「USB-C - USBアダプタ」(900円)、「Thunderbolt 3(USB-C)- Thunderbolt 2アダプタ」(3,200円)、「Apple 87W USB-C電源アダプタ」(8,800円)、「Apple 61W USB-C電源アダプタ」(7,400円)、「Apple 29W USB-C電源アダプタ」(5,200円)、「USB-C充電ケーブル(2m)」(2,200円)。なお、「USB-C Digital AV Multiportアダプタ」、「USB-C VGA Multiportアダプタ」、「USB-C - USBアダプタ」は期間限定(10月27日~12月31日)の特別価格

Touch Barの完成度は高いが、アプリごとに自由にカスタマイズしたい!

 ファンクションキーの代わりに新開発されたRetinaクオリティのマルチタッチディスプレイ「Touch Bar」は、新型MacBook Pro最大の売りだ。MacBook Proのニュースリリースで最初にTouch Barについて触れていることからもAppleの力の入れようが分かる。

 まず、Touch Barのハードウェア的な完成度について触れておこう。Touch Barは今回初めて搭載された入出力インターフェイスとしては、非常に高いレベルで完成されているというのが率直な感想だ。Touch BarのディスプレイはRetinaクオリティだけあって、ぱっと見レーザー刻印されているように見えるほど高精細だ。また、視野角が広く、斜め45度どころか60度ぐらいの角度でも実用的な視認性が確保されている。さらに、表面にはアンチグレア(非光沢)処理が施されており、デスクライトが映り込んだり、指紋が付着したりすることはほとんどない。Touch Barに対してハードウェア的な注文があるとすれば、Taptic Engineによる振動で押した感触を再現して欲しかったことぐらいだ。

 ソフトウェア的な振る舞いも実にこなれている。Touch Barは1分間操作しないと半分ぐらいの明るさになり、その15秒後に消灯する。いったん消灯しても、キーボード、トラックパッド、Touch Barのいずれかに触れれば再び素速く復帰する。

 カスタマイズも容易。「システム環境設定→キーボード→コントロールストリップをカスタマイズ」を選べば、Touch Barの設定モードに切り替わるので、項目をマウスカーソルでつかんで画面下へドラッグすれば、直接Touch Barの任意の位置に割り当てられる(詳しい挙動は動画を参照)。どんなに複雑にカスタマイズしたとしても、「デフォルトセット」(標準設定)が用意されているので、すぐに元に戻せる。「fn」キーを押せば、いつでも従来の「F1」~「F12」キーがずらりと表示されるのも分かりやすい。

 Touch Barに対応しているアプリは予想していたよりも多かった。Safari、メール、連絡先、カレンダー、メモ、マップ、写真、メッセージ、Pages、Numbers、Keynote、iTunes、iBooks、iMovie、GarageBand、プレビュー、計算機などなど多くのアプリがTouch Barに対応している。ただし、新型MacBook Pro発表時に対応アプリとして紹介された「Adobe Creative Cloud」や「Microsoft Office 365」は、記事執筆時点でTouch Barをサポートしていなかった。利用者が多いアプリだけに、できるだけ早期の対応に期待したい。

 さて、Touch Barでいくつかのアプリを試していて、強く感じた疑問点がある。それはTouch Barにサムネイルやアイコン、選択候補を出すことは見栄えが良いが、実際にはあまり使いやすくないということだ。

 例えば、縦約11mmのTouch Barにサムネイルが表示されていても、その内容はほとんど判別できない。写真アプリでは画像のサムネイルが表示されているが、よほど大きく写っている被写体でなければ内容を判断することはできなかった。iBooksのようにTouch Barにはスライダーを表示しておいて、スライダーを動かした瞬間にディスプレイ上にページのサムネイルを表示する方が、実際の使い勝手は良いと感じた。

 また、Safariにはブックマークアイコンを、日本語入力時には変換候補をTouch Barに表示する機能が用意されているが、一度に多くを表示可能なわけではないので、実用的な一覧性は確保できていないように思えた。そもそもブックマークアイコンも変換候補も画面に表示されているのだから、わざわざ画面からTouch Barに目を移動させる必要はない。

 一方、Touch Barを非常に便利に感じたのは、メニュー内のコマンドやショートカットキーを利用できるときだ。例えば、写真アプリでは「回転」コマンドが、標準のコントロールストリップでは「スクリーンショット」が個人的には大変重宝した。

 ファンクションキーにはアプリごとに異なる機能が割り当てられているので覚えるのは非常に困難だ。ファンクションキーの代わりに、どんな機能が割り当てられているか一目でわかるTouch Barを採用したことは、タッチパネルのない新型MacBook Proとしては非常に理に適っている。ただし、ワンタップで実行したいコマンドはユーザーごとに異なる。標準のコントロールストリップや、Safari、メール、メモなどの一部のアプリではTouch Barをカスタマイズ可能だが、すべてのアプリで自由にコマンドをTouch Barに割り当てられるようなアップデートに期待したい。

これは45度の角度からTouch Barを撮影した写真。筆者が普段ノートブックを使用する際の角度だ
これは30度の角度からTouch Barを撮影した写真。Touch Barの正面から60度ずれても、実用上問題ない視認性が確保されている
LEDデスクライトに至近距離で照らされていても、なにがTouch Barに表示されているのは判別できる
主なTouch Barの割り当てを並べてみた。上から、コントロールストリップ(縮小)、コントロールストリップ(拡大)、Safari(ブックマーク)、Safari(タブ選択)、メール、連絡先、カレンダー、マップ、写真、iMovie、GarageBand、アプリケーションインストーラー起動時のTouch Barの表示。並べて見ると、単なる機能キーではなく、スライダーや情報表示の画面としての役割を持っていることが分かる
Touch Barの使い方、カスタマイズ方法などを短く動画にまとめた。写真などでは分かりにくい挙動などをぜひご確認いただきたい

生体認証機能「Touch ID」でセキュリティと利便性を両立、Apple Payにも対応

 指紋認証センサー一体型電源ボタン「Touch ID」を搭載したことも新型MacBook Proの大きなトピックだ。新型MacBook ProのTouch IDはiPhone 7/7 Plusと同様に、ロックの解除、iTunesやApp Storeの購入認証、Apple Payの支払いなどに利用できる。

 Touch IDは物理的なボタンになっているが、新型MacBook Proでは押し込む機会はほとんどない。ディスプレイを開ければスリープから目覚めるので、Touch IDに触れるだけでOKだ。ただし、ディスプレイを開けたままスリープに移行して20秒が経過した場合は、Touch IDやTouch Barに触れても反応しない。この場合は、Touch IDを押し込んでロックを解除するか、キーボードまたはトラックパッドを押してからTouch IDに触れてロックを解除することになる。

 ちなみにシャットダウンしていても、ディスプレイを開けるだけで自動的にOSの起動が始まる。電源ボタンを押す必要はない。ただし、OSの起動時とユーザーのログイン時はTouch IDは使用できない仕様となっているため、ユーザーアカウントのパスワードを入力する必要がある。

 ほかにTouch IDを押し込む機会はOSがフリーズしているときぐらいだ。新型MacBook ProはTouch IDを5秒以上押し続けると強制的にシャットダウンされる。

Touch IDはTouch Barの右隣に位置する。Touch Barはアンチグレア(非光沢)仕上げだが、指紋を読み取るTouch IDはもちろんグレア(光沢)仕上げだ。
OS初回起動時に指紋を登録する
Apple Payも初回起動時に設定する
前面上部の720p FaceTime HDカメラにかざすだけで、Apple Payへクレジットカートを登録できる
Touch IDの設定画面。Touch IDには指紋を3つまで登録可能だ
iTunesやApp Storeでの購入時に表示される「今後もTouch IDを使って購入しますか?」で「はい」を選択しておけば、以降はTouch IDに触れるだけでコンテンツを購入できる

第2世代のバタフライ構造キーボードは打鍵感を大幅に改善

 新型MacBook Proのキーボード全体のサイズは実測約273×104mm(幅×奥行き)、キーピッチは実測約19.36mm。「1」キーを除けば、すべての文字キーが等幅となっており、素直な配列と言える。また、新型MacBook ProのキーボードはMacBookのキーボードを進化させた第2世代のバタフライ構造を採用。各キー下のドームスイッチを最適化したことにより、より優れた反応を返すようになったとのこと。

 実際にMacBookと新型MacBook Proのキーボードを打ち比べてみると、後者のキーボードの方がキーストロークが深く、そして強くタイピングしたときに指に伝わるショックが少ないように感じた。また打鍵時の音量はほとんど変わらないが、新型MacBook Proのほうが音が軽く聞こえる。

 キーストロークの深さについては、打鍵感が変化したことにより錯覚している可能性がある。しかし、MacBookで強くタイピングした時のテーブルを直接叩いているかのような硬い感触は大幅に改善されているのは確かだ。

 一方、感圧タッチトラックパッドが従来比で46%大型化したことにより、カーソルやジェスチャー操作が快適になる代わりに、親指の付け根が触れたことによる誤操作が頻発することを懸念していたが、これはまったくの杞憂だった。

 ホームポジションに指を置くと、親指の付け根がトラックパッドに常に触れている状態となるが、広い面積が接地しているときは無視する仕様となっている。感圧タッチトラックパッドの大型化が操作性を損なう恐れはまずない。

キーボード全体のサイズは実測約273×104mm(幅×奥行き)
キーピッチは実測約19.36mm
トラックパッドのサイズは実測約135.33×84.20mm(幅×奥行き)。従来比で46%大型化している
新型MacBook Proの感圧タッチトラックパッドはiPhone 7 Plus/6s Plus/6 Plusの画面よりも広い
せっかく広大なスペースを持つ新型MacBook Proの感圧タッチトラックパッドで、Apple Pencilを使いたいと考えるのは筆者だけではないはずだ

DCI-P3に対応し色域の広いディスプレイ、最大音量でも破綻のないスピーカー

 新型MacBook Proのディスプレイは13.3インチIPS液晶タイプで、解像度は2,560×1,600ドット、画素密度は227dpiと据え置き。しかし、輝度は従来の300cd/平方mから500cd/平方mに引き上げられ、コントラスト比は67%向上し、色域はsRGBからDCI-P3へと広げられている。

 今回は検証機材の都合で色域が公表されていないMacBookと比較してみたが、その差は明らか。まず、黒と白の再現性がそれぞれ段違いで、新型MacBook Proと比べてみるとMacBookの黒はかなりグレーがかっており、また白も少し青みがかって見える。

 今回の比較にはiPhone 7 Plusで撮影したsRGBの写真を使用しているが、それでも赤の鮮やかさや、緑の葉脈の微妙な色の変化などで、新型MacBook Proのディスプレイの方がより階調、色彩ともに豊かに表現できているのがよく分かる。

 サウンドもノートPCらしからぬ音量、クオリティで楽しめる。新型MacBook Proではスピーカーが再設計されており、ダイナミックレンジが2倍、音量が最大58%、低音が2.5倍大きくなっている。最大ボリュームでもビビリ音はほとんど発生しないし、低音を重視しているわりには解像感も保たれている。

 常に最大ボリュームで聞くなら外付けスピーカーを用意するべきだが、アパートやマンションで音楽を聞く際の上限と思われる11/16ぐらいのボリュームで音楽を手軽に楽しむのであれば、無理に外部スピーカーを用意する必要はないと感じた。

新型MacBook Proのディスプレイは13.3インチIPS液晶タイプで、解像度は2,560×1,600ドット、画素密度は227dpi
左が新型MacBook Pro、右がMacBook。赤の鮮やかさや、緑の葉脈の微妙な色の変化を新型MacBook Proはより階調、色彩ともに豊かに表現している
新型MacBook Proはキーボード面左右に加えて、底面左右下部にもスピーカー用の開口部が設けられている。テーブルなどを共鳴板として活用しているのだろう

macOS SierraとWindows 10両方の環境でベンチマークを実施!

 さて最後にベンチマークのスコアを見てみよう。今回借用したMacBook Pro13インチTouch Bar搭載モデルのスペックは、CPUがIntel Core i5-6267U(2.90/3.30GHz)、iGPUがIntel Iris Graphics 550、メモリが8GB 2133MHz LPDDR3、ストレージが512GB PCIe SSD(APPLE SSD AP0512J)、OSがmacOS Sierra バージョン10.12.1だ。

 今回のベンチマークは、本製品本来のmacOS Sierra環境に加え、Boot CampでインストールしたWindows 10環境の両方で実施した。

 macOS Sierra環境で実施したベンチマークは、CPUとGPUの性能を計測する「CINEBENCH R15」と「Geekbench 4.0.1」、ストレージの読み書き速度を計測する「AmorphousDiskMark 1.0.2」、「Adobe Photoshop Lightroom」によるRAW現像、「Adobe Premiere Pro CC」による動画書き出し、YouTube動画を連続再生した動作時間となる。

 Windows 10環境で実施したベンチマークは、総合ベンチマーク「PCMark 8 v2.7.613」、GPUの性能を計測する「3DMark v2.1.2973」、CPUとGPUの性能を計測する「CINEBENCH R15」と「Geekbench 4.0.1」、ストレージの読み書き速度を計測する「CrystalDiskMark 5.2.0」、ゲーミングPCとしての性能を計測する「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」、「Adobe Photoshop Lightroom」によるRAW現像、「Adobe Premiere Pro CC」による動画書き出しとなる。

【ベンチマーク結果】
MacBook Pro13インチTouch Bar搭載モデル(macOS Sierra環境)
CPUIntel Core i5-6267U(2.90/3.30GHz)
GPUIntel Iris Graphics 550
メモリ8GB 2133MHz LPDDR3
ストレージ512GB PCIe SSD(APPLE SSD AP0512J)
OSmacOS Sierra バージョン10.12.1
CINEBENCH R15
OpenGL36.72 fps
CPU335 cb
Geekbench 4.0.1
32-bit Single-Core Score3437
32-bit Multi-Core Score6781
64-bit Single-Core Score3915
64-bit Multi-Core Score7610
OpenCL30635
SSDをAmorphousDiskMark 1.0.2で計測
Q32T1 シーケンシャルリード3,290 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト424.5 MB/s
4K Q32TI ランダムリード580.03 MB/s
4K Q32TI ランダムライト25.12 MB/s
シーケンシャルリード1153 MB/s
シーケンシャルライト899.57 MB/s
4K ランダムリード56.62 MB/s
4K ランダムライト27.11 MB/s
外付けストレージ「SanDisk Extreme 900 Portable SSD」をAmorphousDiskMark 1.0.2で計測
Q32T1 シーケンシャルリード238.47 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト386 MB/s
4K Q32TI ランダムリード27.67 MB/s
4K Q32TI ランダムライト90.47 MB/s
シーケンシャルリード601.63 MB/s
シーケンシャルライト628.8 MB/s
4K ランダムリード27.42 MB/s
4K ランダムライト96.79 MB/s
「Adobe Photoshop Lightroom」で50枚のRAW画像を現像
4,912×3,264ドット、自動階調2分6秒97
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分のフルHD動画を書き出し
1,920×1,080ドット、30fps11分27秒04
YouTube動画を連続再生した動作時間
ディスプレイの明るさ6/167時間57分58秒
MacBook Pro13インチTouch Bar搭載モデル(Windows 10環境)
PCMark 8 v2.7.613
Home Accelarated 3.03711
Creative Accelarated 3.04261
Work 2.03889
3DMark v2.1.2973
Fire Strike Ultra356
Fire Strike Extreme708
Fire Strike1552
Sky Diver6227
Cloud Gate7991
Ice Storm Extreme60519
Ice Storm78787
CINEBENCH R15
OpenGL68.3 fps
CPU331 cb
Geekbench 4.0.1
32-bit Single-Core Score3556
32-bit Multi-Core Score7094
64-bit Single-Core Score3959
64-bit Multi-Core Score7661
OpenCL30645
SSDをCrystalDiskMark 5.2.0で計測
Q32T1 シーケンシャルリード3,084.491 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト2,282.227 MB/s
4K Q32TI ランダムリード528.873 MB/s
4K Q32TI ランダムライト347.083 MB/s
シーケンシャルリード1,324.086 MB/s
シーケンシャルライト1,424.076 MB/s
4K ランダムリード17.202 MB/s
4K ランダムライト35.914 MB/s
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】
1,280×720ドット7803
「Adobe Photoshop Lightroom」で50枚のRAW画像を現像
4,912☓3,264ドット、自動階調2分16秒11
Adobe Premiere Pro CCで実時間5分のフルHD動画を書き出し
1,920×1,080ドット、30fps6分9秒99

 新型MacBook Proのスコアはおおむね順当な結果だ。13インチの新型MacBook ProはdGPUを搭載していないので、3Dグラフィック性能は振るわない。もし、3Dグラフィック性能を重視するのであれば、dGPUを内蔵する15インチの新型MacBook Proを選ぶべきだろう。

 1つ気になったのがmacOS Sierra環境でのAdobe Premiere Pro CCの動画書き出し時間。複数回計測を実施してみたが、macOS Sierra環境のほうがWindows 10環境よりも5分18秒も遅い。新型MacBook Proを購入するユーザーの中にはAdobe Premiere Pro CCのユーザーも多いことだろう。書き出し速度が改善されることを強く期待したい。

 なお高負荷時の発熱を、サーモグラフィーカメラ「FLIR ONE」でチェックしてみた。室温25度の部屋で、「CINEBENCH R15」の「CPU」を連続で5回実行した際のキーボード面の最大温度は46.5℃、底面の最大温度は44.2℃だった。

キーボード面の最大温度は「7」と「8」キー周辺で46.5度
底面の最大温度はヒンジ部付近で44.2度
排気口はヒンジ部左右の底面側に設けられている

トータルな完成度は極上、価格帯性能比に納得できるか?

 所有感であったり、ユーザー体験であったりを一切省いた「価格帯性能比」だけを物差しにするのであれば、ゲーミングPCなどはもっと安価に、はるかに高性能なノートブックを購入できる。しかし、いっさい妥協のない質感、Touch Barによるこれまでにないユーザー体験、iTunesやApp Store、Apple Payも含めた世界観はAppleならではのもので、ハードウェアとソフトウェアを含めたトータルな完成度は他メーカーの追従を許さない。価格帯性能比を追求するか、トータルな完成度を重視するかは人それぞれで、同じ尺度でどちらが優れているかと判断するべきものではない。

 新型MacBook ProはAppleが提案する次世代のノートブックだ。ディスプレイや電源とはThunderbolt 3ポート経由でケーブル1本で接続し、撮影した写真はSDカードスロットなど使わずにワイヤレスでスマートに転送する。そしてキーボードの最上段には、今までにないTouch Barが鎮座している。そんなちょっと未来のノートブックを先取りする代わりに、移行期の多少の不便はアダプタを活用して喜んで受け入れる……という人々には新型MacBook Proは非常に満足度の高い製品と言えるだろう。