■大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」■
「日本に本社を置くPCメーカーであること、そして、日本の拠点で生産し、日本の拠点からサポートをするPCメーカーであるという認知を、さらに高めたい」--。
マウスコンピューターの小松永門社長 |
マウスコンピューターの小松永門社長は、2012年におけるテーマの1つをこう語る。2011年は、東日本大震災や、タイの洪水被害の影響、そしてのインテルのチップセットの不具合問題などが発生したが、こうした数々の課題を乗り切ることができたのも国内生産の強みによるものだったと小松社長は振り返る。
また、法人向けブランドの「MousePro」をスタートしてから、まもなく1年を経過するが、ここでも国内生産による信頼性が強みになったと語る。これらの経験から改めて日本のPCメーカーであることを強調していく重要性を感じたのが2011年だったという。
一方で、2012年は新OSをはじめ、新たな技術が数多く登場する1年となる。「これまで以上に最新技術をいち早く搭載し、ユーザーの期待に応えたい」とするマウスコンピューターの小松社長に、2012年の抱負を聞いた。
--まず、2011年を振り返っていだきたいと思います。2011年はマウスコンピューターにとってどんな1年でしたか。
小松 一言でいえば、激動の1年でした。1月にはSandy Bridgeの出荷遅延の影響によって、その対応に追われたことにはじまり、3月の東日本大震災、年末にかけてはタイの洪水被害の影響など、要所要所で決断を迫られる場面が多かった1年であったといえます。
長野県の飯山工場では、3月の長野県地域への大きな地震により、若干の影響が出ましたが、これも社員の努力によって、すぐに立ち直すことができました。振り返れば、さまざまな困難がありましたが、それらへの取り組みを通じて、我々のビジネスに対する姿勢に、評価が高まったのではないかと考えています。
--それはどんな点ですか?
法人向けのMouseProシリーズ |
小松 たとえば、Sandy Bridgeの問題では、ちょうどそのタイミングで、企業向けPCの新ブランドとして「MousePro」シリーズを投入したタイミングでもありました。しかし、ここでも不具合があった部品を使用して、新たな製品を市場投入するのではなく、出荷時期を遅らせてでも、不具合が解消されたチップセットを使用した製品を投入するということを、いち早く意思決定し、その方向性を真っ先に打ち出したことが多くの企業ユーザーから評価されたと思っています。マウスコンピューターの製品を購入すれば、間違いない、あるいは安心だという評価につながったのではないでしょうか。
また、タイの洪水被害の影響によるHDDの調達面においても、安定した入荷体制の維持に力を注ぎました。調達コストは上昇していますが、必要とされる分に関しては確実に確保する努力を行っています。現時点では計画通りの調達を維持しており、なんとか乗り切れるのではないかと考えています。これも安定供給という点で、評価を得ています。
--一方で、年間を通じた円高は、どんな影響がでていますか。
小松 原価低減という意味での効果があり、それによって購入しやすい価格帯での製品提供が可能になりました。その結果、同じ予算で、よりハイスペックのものを購入するといった動きが実際にでています。Core i7搭載製品の構成比や、高性能VGA搭載製品の構成比が上昇していることからも、それが裏付けられます。製品そのものの単価は下落していますが、より高性能の製品を購入するユーザーが増加していることで、業績に対する価格下落の影響は限定的だったといえます。
--製品投入ではどんな点が挙げられますか?
小松 法人向けブランドのMouseProの立ち上げは、2011年の大きなトピックスでしたが、それ以外では、ノートPCのラインアップが広がったことは大きな成果の1つでした。11.6型液晶を搭載したハイスペックモバイルノートPCの「Sシリーズ」の投入のほか、17型液晶を搭載した製品も急速な勢いで伸びています。
また、タブレットの「LuvPad」では、Windows搭載モデルとAndroid搭載モデルとを用意し、用途に応じた提案を可能としました。さらに、ゲーミングブランドのG-Tuneにおいては、「NEXTGEAR」シリーズ、「MASTERPIECE」シリーズで、インテルのスマートレスポンステクノロジーにいち早く対応。デスクトップPCにおけるSSDによる高速化を実現しました。これは予想以上に高い評価を得た製品となりました。
11.6型液晶を搭載したSシリーズ | 2011年のノートPCのラインアップを強化した |
LuvPadシリーズでは、Windows搭載モデルとAndroid搭載モデルとを用意 | G-Tune MASTERPIECEシリーズ |
--その一方で、反省点といえる部分はありますか。
小松 2011年は、国内生産の大切さや、その強みというものを、私自身、強く意識した年でもありました。部品に問題が発生した際や、震災の影響などがあった際にも、柔軟な対応が行なえるのが国内生産の強みですし、特に法人ユーザー向けブランドの新製品を新たに投入したことで、信頼性という点で、その強みが生かされたともいえます。
しかし、マウスコンピューターというと、日本のPCメーカーであるという印象よりも、外資系のPCメーカーだというイメージが一部にある。カタカナの社名であることが、そうした誤解を生じる理由の1つだといえますが、その反面、我々の訴求不足を大いに反省しなくてはなりません。日本に本社を置き、日本で生産し、日本のコールセンターからサポートをするマウスコンピューターならではの強みをもっと訴求していきたい。そう考えています。2012年はその点での認知度向上が大きなテーマとなります。
●2012年のマウスコンピューターはどうなるのか?--2012年はマウスコンピューターにとって、どんな1年になりますか。
小松 2012年は、Windows 8という新たなOSが登場する年になります。また、Ivy Bridgeのような新たなCPUも登場する。PCは大きな変革期を迎えるといっていいでしょう。その中で、マウスコンピューターの存在感を発揮していきたいと考えています。
--存在感とは?
小松 一言でいえば、どれだけユーザーの期待に応えられるかということになります。具体的には、新製品において、新たな技術をどれだけ早く取り入れることができるか、ということに尽きます。Ultrabookに関しても、いち早く投入するという方向で、すでに社内では製品投入の検討を開始しているところです。
また、法人ビジネスに関しても、まだ伸び切れていない部分があります。ここも強化していきたい。一方で、製品品質やサポートといった点でも期待に応えることができるような体制づくりに取り組みたいと考えています。修理作業も、国内生産体制、国内修理体制の強みを生かして、最終的には24時間で完了するようにしていきたいと考えています。2012年は、それに向けた改善に取り組んでいく1年になります。
さらに、ダイレクトショップも強化したい。2011年12月に、名古屋にダイレクトショップをオープンし、東京・秋葉原、大阪・日本橋、福岡・博多、埼玉・春日部とあわせて5店舗体制としましたが、2012年には新たなダイレクトショップの出店も計画しています。これは意外なところへの出店になる可能性がありますので(笑)、ぜひ楽しみにしていてください。こうした取り組みによって、ユーザーの方々の期待に応えていきたいと考えています。2012年も、ユーザーの期待に応える1年にしたいですね。