L2キャッシュオンダイのAthlon 1GHzがついに登場!
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AMDが6月5日にCOMPUTEX TAIPEIで発表したL2キャッシュがオンダイとなったThunderbirdことAthlonは、既に800/700MHzについては「L2オンダイAthlon&Duron徹底レビュー~ 最強のパフォーマンス&バリューCPU ~」で取り上げた。また、3月に登場したAthlon 1GHzについても、「特別編:対決!Pentium III 1GHz vs Athlon 1GHz~高速なメモリの性能を引き出すギガヘルツCPU」でPentium III 1GHzとの対決という形でレポートした。その時のまとめで、筆者は「やはり本命はThunderbirdコアを採用したAthlonか?」と書いた。そのThunderbirdコアを採用した新Athlon 1GHz、さらにはこれまで秋葉原には出回っていなかったPentium III 1GHzの単体が秋葉原に出回り始めたので、早速その2つをレビューしていこう。
Athlon 1GHz |
Pentium III 1GHz |
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●単体でも出回り始めたPentium III 1GHzだが……
AKIBA PC Hotline!の2000年7月1日号の記事「新型Athlon 1GHzとPentium III 1GHzの単体販売スタート」でも紹介されているように、今回発売された新Athlon 1GHzはSocket A(462ピン)で利用されるPGAタイプとSlot Aで利用されるモジュールタイプの両方が、Pentium IIIはSC242(いわゆるSlot1)で利用されるSECC2タイプのみとなっている。
特にPentium IIIではパッケージがSECC2になっていることが、マザーボードの選択に大きな悩みをもたらす。現時点で、Pentium IIIを利用するためにベストなマザーボードは何だろう? と考えていくと、多くの人がIntel 815/815E、ないしは440BXを搭載したマザーボードを挙げるだろう。しかし、このどちらもPentium III 1GHzでは利用できない。まず、440BXだが、ご存じのように440BXは、66/100MHzのシステムバスしかサポートしておらず、システムバスが133MHzのPentium III 1GHzでは利用することができない。確かに440BXを搭載したマザーボードでも、ほとんどの製品が133MHzのシステムバスに対応するが、一般的用途として考えれば「オーバークロック」は論外だし、正しい製品の評価ではないと思うので、今回は除外しておきたい。
また、Intel 815/815Eでは133MHzのシステムバスをサポートしているが、IntelがIntel 815/815Eでサポートしているのは、PGA370(いわゆるSocket 370)のみで、SC242をサポートした製品は本来はあり得ない。マザーボードメーカーは理論的にはIntel 815/815EでもSC242マザーボードを作ることも可能だが、マザーボードを設計する際に参照されるIntel 815/815Eのデザインガイドには、PGA370を利用した場合の設計ガイドラインしか掲載されておらず、マザーボードメーカーは自社の能力だけでSC242マザーボードの基板を起こす必要がある。マザーボードメーカーのほとんどが、Intelのデザインガイドを基本にマザーボードを設計している現状を考えると、Intel 815/815EでSC242マザーボードが登場するのは期待薄だろう。となると、現状ではPentium III 1GHzを利用できるマザーボードは、Intel 820搭載マザーボードか、VIA TechnologiesのApollo Pro133Aに限られることになる。
Athlonの場合は、Slot AでもSocket Aでもチョイスできるが、今後はSocket Aが主流になることが既に明らかになっており、Slot AからSocket Aへ変換するCPUアダプタも発売になっていない現状を考えると、やはりSocket Aを選択した方が長期的な視野で考えれば正しい選択となる可能性が高い。しかし、現状でSocket AのAthlonを選択した場合には、マザーボードはVIA TechnologiesのApollo KT133を搭載したものしかチョイスできなくなる。AMD純正のAMD-750を搭載したマザーボードは、現時点ではSlot Aのみでありそうした意味ではチップセットの選択の幅はこちらも広くはない。
●強力なCPUクーラーを必要とするギガヘルツCPU
今回編集部で購入した両1GHzのCPUは、新AthlonがSocket Aのもので、Pentium IIIがSECC2となっている。早速Windows 98をインストールして利用しようとしてみたが、どちらもインストールが途中で止まるなどのトラブルが発生し、丸一日正しく利用することができなかった。結局、いろいろ試してみてわかったのは、両方とも熱暴走している可能性が高いということだ。
Athlon 1GHzにはこれまでAthlon 800MHzで問題なく利用できていた、Pentium III 600E MHzのリテールパッケージに付属してきたIntel純正CPUクーラーを利用していた。しかし、これでは放熱が追いついていないようで、CPUクーラーがAthlon 800MHzとは比較にならないぐらい熱くなっている。さらに、手元にあったCPUクーラーをいくつか試してみたが、それでも動作しなかった。そこで、秋葉原で購入してきたアルファ製の巨大CPUクーラーに変えてやってみたが、これでもエラーが発生した。そこで、基本に立ち返ってもう一度熱伝導をよくするためにシリコングリスを塗り直したところ、今度は問題なく動作しだした。最近のCPUはとても発熱するため、CPUクーラーには細心の注意を払わなくてはならないと、CPUクーラーメーカー関係者などから聞いてはいたが、実際に体験してみると「本当にこれでいいのか?」と言いたくなるような心境だった。もし読者の方が、Athlon 1GHzを購入されるのであれば、かなり大きなCPUクーラーとシリコングリスを同時に購入することをお勧めしたい。
Pentium IIIの方はとりあえず手元にあったCPUクーラーでも動作したが、こちらはApollo Pro133Aを搭載したマザーボードでは動作しないという奇妙な現象に遭遇した。Intel 820を搭載したIntelのVC820では問題なく動作したものの、Apollo Pro133Aを搭載したASUSTeK COMPUTERのP3V4X、SOLTEK COMPUTERのSL-67KVではWindows 98のインストール時に行なわれるハードディスクのチェックでハングアップしてしまうのだ(CPUを交換したところ問題なく動作するので、マザーボード側の問題ではないようだ)。結局時間切れで、なぜApollo Pro133Aで動作しないのかはわからなかったが、今後時間があれば再度チェックしていきたい。
●テストによって軍配がひっくり返る大混戦!
今回はベンチマークテストとして、通常本連載でCPUに対して行なっている7つのテスト(Business Winstone 99、High-End Winstone 99、CPUmark99、FPU WinMark、3DMark99 MAX、3D CPUMark、MultimediaMark99)に(これらの詳細に関してはバックナンバーを参照)、今回からMadOnion.comの3DMark2000とBACPOのSYSmark2000という2つのテストを追加した。
3DMark2000はもやは説明の必要がないほどメジャーな3Dベンチマークテストで、複数の3Dシーンを再生して、PCの3D描画能力を総合的に計測するテストだ。今回は、1,024×768ドットの16bitカラー(65,536色)、32bitカラー(1,677万色)の2つのモードで、CPUを利用してジオメトリ演算を行なった場合と、GeForce256に内蔵されているハードウェアT&Lのエンジンを利用してジオメトリ演算を行なった場合の合計4つを計測した。SYSmark2000は、Ziff DavisのWinstone 99と同じようなアプリケーションベンチマークで、Winstone 99よりも最新のアプリケーションを利用している点が若干異なっている。
さて、結論からいえば、新Athlon 1GHzとPentium III 1GHzの対決は、どちらが勝ちと明確には言えないような微妙な勝負となった。Business Winstone 99、CPUmark99、FPU WinMark、3D CPUMarkなどに関してはAthlon 1GHzが勝利したものの、High-End Winstone 99、3DMark99 MAX、MultimediaMark99、3DMark2000、SYSmark2000などに関してはPentium III 1GHzが勝利した。旧Athlon 1GHz対Pentium IIIの時には、Pentium IIIの方が全体的に優勢であったため、Pentium III優勢としたが、今回の結果を見る限りでは、テストによってはAthlon優勢、逆にほかのテストではPentium III優勢というほかない。ただ、High-End Winstone 99のスコアがやや低かったり、3D系のテストでいずれもPentium IIIに後塵を拝すなどで、ややAthlonが不利という印象は否めない。
Athlon 1GHz(フルスピード) | Pentium III 1GHz | |
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Business Winstone 99 | 42.9 | 42.3 |
High-End Winstone 99 | 33.4 | 36.3 |
CPUmark 99 | 89.3 | 86.2 |
FPU WinMark | 5,440 | 5,290 |
3DMark99 Max | 6,798 | 7,202 |
3D CPUMark | 15,303 | 14,461 |
MultimediaMark 99 | 2,259 | 2,641 |
3DMark2000 Version1.1 | ||
1024x768,16bit,16bit(CPU) | 4,998 | 5,386 |
1024x768,16bit,16bit(H T&L) | 4,583 | 5,290 |
1024x768,32bit,32bit(CPU) | 4,050 | 4,244 |
1024x768,32bit,32bit(H T&L) | 3,539 | 4,060 |
Sysmark2000(1024x768,16bit) | ||
SYSmark 2000 Rating | 192 | 196 |
Internet Content Creation | 190 | 198 |
Office Productivity | 193 | 195 |
Bryce 4 | 246 | 217 |
CorelDraw 9 | 230 | 215 |
Elastic Reality 3.1 | 237 | 239 |
Excel 2000 | 208 | 222 |
NaturallySpeaking Pref 4.0 | 158 | 171 |
Netscape Communicator | 197 | 201 |
Paradox 9.0 | 197 | 189 |
Photoshop 5.5 | 123 | 155 |
PowerPoint 2000 | 205 | 209 |
Premiere 5.1 | 191 | 197 |
Word 2000 | 168 | 167 |
Windows Media Encoder 4.0 | 182 | 190 |
【テスト環境】
Pentium III 1GHz
★マザーボード:Intel VC820(Intel 820搭載)
★メモリ:Direct RDRAM(128MB、PC800)
Athlon 1GHz
★マザーボード:SOLTEK SL75KV(VIA KT133搭載)
★メモリ:PC133 SDRAM(133MHz、CL=3)
共通部分
★ビデオカード:
Sysmark2000、3DMark2000:クリエイティブメディア 3D Blaster GeForce Pro(GeForce256、DDR SGRAM 32MB)
そのほか:カノープス SPECTRA5400 Premium Edition(RIVA TNT2、32MB)
★ハードディスク
Winstone:WesternDigital WDAC29100
WinBench、3DMark99、MultimediaMark99:WesternDigital WDAC14300
3DMark2000、SYSmark2000:Maxtor 93073U6
★OS
Winstone:Windows NT 4.0英語版+ServicePack4
WinBench、3DMark99、MultimediaMark99:
Windows 98 Second Edition 日本語版+DirectX 7.0
3DMark2000、SYSmark2000:Windows 98英語版+DirectX 7.0
●チップセットが原因か? AMD-760の登場に期待
今回、Athlon 1GHzがやや不利という結果がでたのは、今回テストに利用したApollo KT133搭載マザーボードのチューニングがまだ充分ではなかった可能性がある。なにせ、KT133マザーボードはまだ登場してから1カ月もたっておらず、パフォーマンスが充分ではない可能性がある。これに対してPentium IIIではVC820+Direct RDRAMという、いわば「純正環境」を利用したわけで、そのあたりは少々割り引いて考える必要はあるとは思うが、それでもPentium IIIが優勢な結果となったことは事実だ。そうした意味では、Athlon用マザーボードのBIOSリビジョンが上がった後や、Pentium III+Apollo Pro133Aという組み合わせでもう一度テストしてみたい。
やはり、AMDは新Athlonに適合した新世代の純正チップセットを早めに出荷する必要があると言えるだろう。それこそが、AMDが次世代チップセットとして計画しているAMD-760だ。AMD-760はDDR SDRAMをサポートするなど新世代のチップセットにふさわしいスペックになっており、今年の第4四半期にも投入されると見られており、こちらの登場を心待ちにしたい。
以上のように、今回はPentium IIIやや優勢という結論になったが、その差は小さくほとんど互角といっていいだろう。もう少し多様なチップセットとの組み合わせをテストして、再度レポートしたい。
□Akiba PC Hotline!関連記事
【6月17日】新型Athlon 1GHzとPentium III 1GHzの単体販売スタート
Pentium IIIはSECC2タイプ、AthlonはSocket A用とSlot A用
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20000617/i815mb.html
□関連記事
L2オンダイAthlon&Duron徹底レビュー~ 最強のパフォーマンス&バリューCPU ~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000626/hotrev67.htm
特別編:対決!Pentium III 1GHz vs Athlon 1GHz
~高速なメモリの性能を引き出すギガヘルツCPU
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000404/hotrev57.htm
(2000年7月10日)
[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]