山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

ASUS「MeMO Pad ME172V」

〜実売17,800円。コミックセットも用意される7型Androidタブレット

ASUS「MeMO Pad ME172V」
発売中

17,800円

 ASUSの「MeMO Pad ME172V」は、7型カラー液晶を搭載したAndroidタブレットだ。国内向けにはイーブックイニシアティブジャパンが電子書籍コンテンツを提供しており、さまざまなコミックとのセット商品が用意されている。

 イーブックジャパンが、自社オリジナルの7型Androidタブレット端末を投入すると発表したのが昨年(2012年)10月のこと。当初は12月中旬の発売としていたが、いったん延期になり、その後2013年3月18日付であらためて無期延期の発表をしたとしている。その直後に発表された本製品は、同社オリジナルの端末ではなく、汎用のAndroidタブレットにコンテンツをバンドルするという形態でのお目見えとなった。当初の仕様とは異なるが、同社の「電子書籍を身近なものに」というコンセプトには沿ったものであることが分かる。

 一方、バンドルの本体部分に相当するASUS製7型カラータブレット「MeMO Pad ME172V」は、海外では今年1月に発売された端末で、これまで日本国内では販売されていなかった。スペック的にはGoogleのリファレンスモデルである同社製「Nexus 7」の下位モデルに相当し、Android 4.1.1を搭載しながら、実売17,800円というリーズナブルな価格で販売される。ここに「eBook図書券」3,150円分がつくので、実際にはこれよりもさらに安いことになる。

 今回は、発表会でプレス向けに配布された量産モデルをもとに製品の使い勝手をチェックしていく。また「手塚治虫全集」などコミックとのセット製品について、過去に販売された類似コンセプトの製品、例えば日本エイサーのマンガロイドこと「ICONIA TAB A100」とのライセンスの違いについても見ていきたい。

製品パッケージ。右上に「eBook図書券」3,150円分と、特典コンテンツについて案内するシールが貼られている。なお、本体カラーはグレーとピンク。コミックとのセット商品についてはASUSからではなくイーブックジャパンから販売される
同梱品の一覧。いずれも日本向けのパッケージングとなる。Kindle Fireファミリーなど一部タブレットでは別売のAC変換アダプタが、本製品では標準で付属するのは嬉しい

実質的に「Nexus 7の下位モデル」。差額は2,000円+eBook図書券

 まずは汎用タブレットとしての特徴、仕様について見ていこう。

 特定の電子書籍ストア専用のカラータブレットとしては、最近ではAmazonの「Kindle Fire」や「Kindle Fire HD」、東芝の「BookPlace DB50」などが挙げられるが、本製品は汎用のAndroidタブレットであるため、純正のアプリストア、すなわちGoogle Playが利用できる。これにより、eBookJapan以外の電子書籍ストアはもちろん、個人用からビジネス向けまでさまざまなアプリをインストールして使える。

 ただし、こうしたアプリを快適に利用するためには、相応のスペックを備えることが大前提になる。例えば動画鑑賞をしたければ、ある程度のクラスのCPU/GPUや、相応のクオリティの液晶パネルを採用していないと、単にアプリがインストールできるというだけで、スムーズに再生できない懸念がある。であれば費用を多少上積みしてでも、スペックに余裕のある上位モデル、例えばNexus 7を買ったほうがよいということになる。これを念頭に置いて、他機種との比較を見て行こう。

【表1】他機種比較
MeMO Pad ME172V Google Nexus 7 Kindle Fire(第2世代) Kindle Fire HD
ASUS ASUS Amazon Amazon
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部) 119.2×196.2×11.2mm 120×198.5×10.45mm 120×189×11.5mm 137×193×10.3mm
重量 約358g 約340g 約400g 約395g
OS Android 4.1.1 Android 4.2.2 独自(Androidベース) 独自(Androidベース)
CPU シングルコアVIA WM8950(1GHz) クアッドコアNVIDIA Tegra 3 デュアルコアOMAP4460(1.2GHz) デュアルコアOMAP 4430(1.2GHz)
解像度/画面サイズ 600×1,024ドット/7型 800×1,280ドット/7型 600×1,024ドット/7型 800×1,280ドット/7型
ディスプレイ TN IPS IPS IPS
通信方式 IEEE 802.11b/g/n IEEE 802.11b/g/n IEEE 802.11b/g/n IEEE 802.11 a/b/g/n
Bluetooth - -
カメラ フロント:あり(100万画素) リア:なし フロント:あり(120万画素) リア:なし フロント:なし リア:なし フロント:あり リア:なし
内蔵ストレージ 8GB 16GB 8GB(ユーザー利用可能領域は5.5GB) 16GB(ユーザー利用可能領域は12.6GB)
メモリカードスロット microSD - - -
バッテリー持続時間(メーカー公称値) 約7時間 最長8時間 連続8.5時間 連続11時間
電子書籍ストア eBookJapanなど Google Play ブックスなど Kindleストア Kindleストア
価格(2013年3月23日現在) 17,800円 19,800円 12,800円 15,800円
備考 5GBのオンラインストレージが付属
eBook図書券3,150円が付属
32GBモデル、量販店向けの8GBモデルも用意されるほか、32GBモデルではHSPA+モバイルデータ通信対応モデルも存在 - 32GBモデルも用意される

 こうして見ると、実質的な兄弟機であるNexus 7との差は多岐に及ぶことが分かる。なかでもCPUまわりの非力さは、電子書籍の閲覧以外の用途、例えば動画再生などは期待しにくい。また容量についても、5GBのオンラインストレージが付属するとはいえ、システム容量もひっくるめて8GBというのは、決して多い方ではない。海外では16GBモデルも用意されているだけに、どうしてもコストダウンという印象が強い。ファイルサイズの大きい漫画用を標榜しているだけになおさらである。

 もちろんこれで本体価格がNexus 7より圧倒的に安ければまた話は別なのだが、現状では差額は2,000円でしかない。付属の「eBook図書券」3,150円分をどう見るかだが、実際には1,050円のクーポン×3枚という構成でお釣りが出ないシステムで、配分が自由な3,150ポイントがまるまる付与されるわけではないので、17,800円から単純に3,150円を差し引いて実質14,650円とするには無理がある(後述)。

 かろうじて強みと言えるのがmicroSDスロットの存在で、これを活用すれば容量の少なさはカバーできるわけだが、microSDを追加するとその分の価格も本体価格にプラスされるので、価格差はますますなくなる(いまなら16GBで1,000円前後だろうか)。とくに入れ替えなしで常時入れっぱなしにするのであれば、強みと言えるかは微妙なところだ。

 では専用タブレットと比較するとどうだろうか。Amazonの「Kindle Fire」は12,800円と本製品を下回っており、上位モデルの「Kindle Fire HD」も本体価格15,800円に先日までクーポンをプラスしていたりと、価格競争力はかなりのものだ。また発売から1年余りが経つものの、東芝の「BookPlace DB50」は本体価格に5,000円分のクーポンが含まれており、しかも現在は1万円を切って販売されているケースもあって、ストア自体がBookLive互換ということもありお得感は高い。

 といったわけで、仕様面でも価格面でも、かなり“微妙な”ポジションの製品であることが分かる。以上を踏まえて検証していきたい。

パフォーマンスは低め。視野角の狭さやバッテリ持続時間の短さに注意

 外観およびサイズはごく一般的な7型タブレットであり、実質的な上位モデルであるNexus 7とよく似ている。キーや端子のレイアウトはかなり違うが、ベゼル周りや背面の形状など、あきらかにNexus 7とつながりがあるモデルであることが分かる。本体サイズも前述のとおりほぼ同じで、質感も同等だ。重量はNexus 7よりもわずかに重いが、持ち比べてもほとんどわからないレベルである。

 解像度は600×1,024ドットで、800×1,280ドットのNexus 7に比べるとわずかに縦長である。画面はグレア調でギラギラしており、ベゼル部の指紋が目立ちやすい。また視野角はNexus 7に比べると明らかに狭い。特に上から見た場合は色の変化が極端なので、使い方によっては気になるだろう。ただし正面から相対して電子書籍を読む分には、それほど大きな問題にはならない。

サイズはNexus 7とほぼ同一。ちなみにNexus 7向けの保護フィルムが使えそうだが、カメラ位置が微妙に異なるため実際には難しそうだ
購入時には画面右上にホログラムシールが貼られているが、保護フィルムなどを用いる際は必然的に剥がすことになる
Nexus 7では本体下部にあるイヤホンジャックは、本製品では本体上部にある。側面の電源/音量キーも、Nexus 7では右側なのに対して本製品は左側にあるなど、内部基板のレイアウトはかなり違うとみられる
底面にはmicroUSBコネクタに加え、Nexus 7にはないmicroSDスロットを備える
左が本製品、右がNexus 7。同じ7型だが本製品の方がわずかに画面の高さがある。発色性はNexus 7が勝る
正面から並べたところ。本製品(左)はやや青みがかって表示される。また解像度が高くないので画像化された小さな文字はやや読みにくい
左方向の視野角の比較。本製品(左)は全体的にアンバーがかって表示されるほか、手前と奥でも色味が違う
上方向の視野角の比較。本製品(左)の方が微妙に角度が浅いのだが、それでも階調の変化が著しい
背面の比較。表面加工が異なるほか、スピーカーの配置も異なる。なおスピーカーは最小値にしてもそこそこ大きな音が出るので、細かい調整がしにくい

 セットアップはまず言語を選び、続いて無線LANを検出して設定し、というAndroidタブレットの一般的な手順に沿っている。途中でアカウント追加の画面でGoogleアカウントを登録することもできるが、スキップしてそのまま進めることもできる。他製品に比べて特に難しいところはない。

 セットアップが完了すると、Androidのほぼ素のままのホーム画面が表示される。左下に特典コンテンツ「老人と海」が置かれているのと、下部メニューの中にeBookJapanのアイコン(ebiReader)があるといった数点の違いを除けばベーシックな構成だ。ロック画面もAndroidのそれである。

電源投入後、まずは言語を選択。ステップ数が下段に表示されているため進捗が分かりやすい
Wi-Fiの設定を行なう。このあたりの手順は一般的な無線LAN機器のそれと変わらない
Googleの位置情報サービスの設定を行なう
アカウントの追加。この時点でGoogleアカウントを追加できる。スキップも可能
セットアップが終わるとホーム画面の使い方が表示される
ホーム画面。Android 4.x系のレイアウト。左下には特典コンテンツの「老人と海」へのショートカットが置かれている
アプリ一覧。電子書籍(ebiReader)と「老人の海」、いくつかのASUS製アプリを除いては、かなりすっきりとした内容。標準ブラウザとChromeが両方インストールされているのが面白い
Androidバージョンは4.1.1。セットアップ直後にアップデートがかかったため、これはアップデート後の状態
ASUSカスタマイズ設定の画面。いずれもNexus 7にはない項目。システムパフォーマンスは省電力/バランス/ノーマル(パフォーマンス)の3種類から選べる
Google Playも利用できる

 ざっと使った感想だが、アプリの起動やウェブページの読み込み時にはやや待たされる感があるなど、システムパフォーマンスをノーマル(パフォーマンス)にしていても、パフォーマンスの低さは随所に感じる。アプリによっては「バックグラウンドでなにか別のプログラムのアップデートが行なわれていて重いのでは」と確認したこともあったほどだ。

 ただ、これは筆者がNexus 7に慣れているのが大きな要因であり、Nexus 7と本製品を併用しなければ、まあこんなものかと思ってしまうかもしれない。少なくとも、Nexus 7以前のAndroidタブレットの多くのように、しょっちゅう再起動を余儀なくされたり、キャリブレーションが不十分なためかタップの位置がずれていたりといった致命的な問題はない。そこはさすがにAndroid 4.1系といったところだろう。

 もっとも、動画再生など高いパフォーマンスが要求される処理においては、実用レベルでつらさを感じることがあった。たとえば動画再生アプリ「VPlayer」を使った場合、Kindle Fire HDではサクサク再生できる動画が、Nexus 7ではたびたび停止してバッファを読み込むことがあるのだが、本製品だとそのバッファの時間が分単位に及ぶことがある。体感値ではKindle Fire HD>Nexus 7>Kindle Fire>本製品という序列だろうか。ベンチマークの結果も参考にしてほしい。

 なおバッテリ持続時間は、公称値ベースではNexus 7とそれほど差はないはずなのだが、実際に使うとかなりの差を感じる。厳密に実験したわけではないが、Nexus 7であれば体感的に30%くらい残っていておかしくないタイミングで確認したところ残りわずか数%ということがあったので、通勤通学などで持ち歩く場合は気を付けたい。

「Quadrant Professional」によるベンチマークの比較。左が本製品で、トータルが2274、CPUが2328、メモリが1475、I/Oが5584、2D描画が265、3D描画が1718。右がNexus 7で、トータルが3683、CPUが11395、メモリが2852、I/Oが1445、2D描画が249、3D描画が2473。CPUとI/Oまわりの差は相当ある

操作手順は他ストアに比べて煩雑。特典コンテンツはなぜか見開き仕様

 続いて読書まわりの機能について見ていこう。

 ホーム画面右下のeBookJapanアイコンをタップするとeBookJapan専用のアプリ「ebiReader」が起動する。ライセンスにOKを押すとアプリの紹介画面が表示され、下段にある「同梱版書籍を読む」をタップすると、プリインストールされている3冊の書籍を選んで読むことができる。

「ebiReader」の起動画面。このあとライセンス認証の画面が表示される
同梱版書籍の1つである「スティーブ・ジョブズ I」は、テキスト中心の書籍ではあるが、eBookJapanでは画像形式で収録されているため、文字のリサイズなどには対応しない。ただしテキスト型の書籍がすべてこうというわけではない

 本製品の特典コンテンツである「老人と海」は、プリインストールされているわけではなく、会員としてログインしたあとにダウンロードする必要がある。ホーム画面上のアイコンをタップするとブラウザが起動し、ログインしたのちダウンロードする流れになるのだが、ホーム画面上のアイコンだけ見ると、それがショートカットであることに気付きにくい(注意書きはあるが)。

 またブラウザ側とebiReader側、それぞれでログインしたあと、同社独自のクラウド上の書庫「トランクルーム」から手動でダウンロードするので、Kindleやkobo、BookLive!などを使ったあとでは、操作はおそろしく煩雑に感じる。今回掲載しているスクリーンショットはいくつかの画面を省いているのだが、それでもこの多さである(しかも新規購入時にはここに決済プロセスが加わるのだからなおさらである)。トランクルームシステムおよび使い勝手については4月以降に大規模なアップデートが予告されているので、他ストア並みに使い勝手が向上することを期待したい。

ホーム画面の「老人と海」アイコンをタップすると、標準ブラウザとChromeのどちらを使うのか尋ねられる。これだけでも悩みがちだが、そもそもこれがダウンロードのショートカットであることを知らなければ初心者には理解不能だろう
ブラウザを選択した状態。ここで初めて、トップページのアイコンがコンテンツそのものではなく、ダウンロードページへのショートカットであったことが分かる
まずはブラウザ側でログインする。会員登録がまだであれば、ここで会員登録が必要になる。初めての利用であればかなりの根気が必要になる。現実的にはPCで先に会員登録を行なっておくべきだろう
書籍の確認画面。端末へのダウンロードではなく、トランクルームに入れる操作である点に注意したい
書籍がトランクルームに入った状態。初めて使う場合にはデバイス登録も必要になることが書かれている。説明書きが異常に多いのは同社ストアの特徴だが、それよりもステップ数を減らしてわかりやすくする努力を望みたいところ
トランクルームを表示し、ダウンロードを行なおうとしているところ。ダウンロード先のフォルダが1つしかない場合も選択肢が表示されるなどやや冗長
ダウンロード開始。完了するとようやく読書が行なえる

 さて、特典コンテンツである六田登氏の「老人と海」は本製品向けに書き下ろされたオリジナル作品とのことだが、この画面サイズにしてなぜか見開き対応である。7型、しかもワイド比率の画面を横向きにするわけだから、1ページのサイズはiPhone 4Sよりひとまわり大きい程度でしかなく、かなり窮屈である。試しにトランクルームに戻してからNexus 10で表示したところ、迫力はまるで違っていた。このサイズでの見開きに無理があるとしか言いようがない。

 また画面もワイド比率に最適化されておらず、左右に広大な余白ができてしまう。もしかすると発注した時点では4:3比率の9〜10型タブレットで見開きにすることを想定していたのではないか、と邪知してしまうほどだ(ただし実際には4:3比率で表示しても左右に余白が出る)。文字サイズはやや大きめなのでまったく読めないわけではないのだが、最初に目にされることが多いであろうコンテンツで、コンテンツの中身とは関係のないところでアラが目立ってしまうのは実に残念というか、むしろ不思議である。

 さらに(バンドルとはいえ)自社で販売するタブレットでありながら、音量大小キーを使ったページめくりに対応しないなど、ハードウェアの特性に合わせた仕掛けもない(Nexus 7であればGoogle Play ブックスで音量大小キーを使ったページめくりが可能)。市販のAndroid端末にアプリをインストールしただけの状態とは異なる、プラスアルファのこだわりが見たかったのだが、使った限りでは特に感じられなかった。

 もっとも、「老人と海」自体はカラー液晶画面で読まれることを想定してフルカラーで作画されており、また(これは読んだ時のお楽しみだが)インタラクティブな仕掛けも用意されているので、チェックしておいて損はない。また、このコンテンツ以外も含めて、閲覧するうえで端末のパフォーマンスが足りなかったり、レスポンスの不安定さを感じることはなかった。電子書籍の閲覧には、大きな問題はなさそうだ。

本製品向けに書き下ろされたオリジナルコンテンツ「老人と海」。なお以下のスクリーンショットは作業の関係上立ち読み版を用いているが、フル版でも同様の操作である
ページをめくると見開き前提であるとの説明が表示されるが、この時点では意味するところがよくわからない
本編の1ページ目で初めて、縦向きでは読めないことが分かる
横向きにした状態。このように見開き前提で作画されている
以降ずっとのこの縦横比で表示される。左右の余白は常時白のままで、背景色を変えて目立たなくすることもできない
ページ移動はスクロールバーのほか、本文、奥付などの具体的な位置を指定してジャンプすることもできる
漫画には不向きな表示モード切替のメニューもそのまま表示される。グレーアウトさせておくべきだろう
右上にしおりを挟んだ状態。しおりのデザインはオプションから変更できる
ページを自動的にめくってくれる「自動送り」は便利な機能だが、今回はうまく動作しなかった

 なお、ebiReader以外の電子書籍ストアのアプリも、Android用であれば原則として利用できることになる。ただし一部のストアのように、新しいタブレットが出るたびに修正アップデートを繰り返しているようなアプリでは、ストア側が本製品をサポート対象から外すと手の打ちようがなくなる。メインストリームの機種でない以上、十分に考えうる話なので、その点は注意したい。むしろ本製品よりもメジャーなハードウェア、それこそNexus 7を買ってeBookJapanを含む電子書籍アプリを入れる方が、ebiReader以外を使うにあたっては賢明だろう。

コミックセットは平均22.2%引。eBook図書券の制約に注意

 さて、今回の製品の目玉の1つである、コミックセットについてもチェックしておこう。今回は「手塚治虫全集」とのセットモデルをはじめとして、25種類のセットが用意されている。以下の表は同社サイトに掲載されている一覧をまとめ直したものだ。なお、並び順は電子書籍版の合計額が高い順にソートし、値引率などの情報は独自に追加している。

【表2】セット一覧
セット商品名 巻数 電子書籍版の合計額 通常価格(電子書籍+タブレット) 価格 値引額 値引率
手塚治虫全集(手塚治虫/全400巻) 400 125,475円 143,275円 103,050円 40,225円 28.1%
かわぐちかいじセット(かわぐちかいじ/全79巻) 79 41,475円 59,275円 44,250円 15,025円 25.3%
島耕作シリーズセット(弘兼憲史/全73巻) 73 38,325円 56,125円 42,040円 14,085円 25.1%
カバチタレ!、特上カバチ!!、極悪がんぼセット (原作:田島隆 漫画:東風孝広 監修:青木雄二/全67巻) 67 35,175円 52,975円 39,840円 13,135円 24.8%
代紋<エンブレム>TAKE2(作:木内一雅 画:渡辺潤/全62巻) 62 32,550円 50,350円 38,000円 12,350円 24.5%
パタリロ!シリーズセット (魔夜峰央/全54巻) 54 29,735円 47,535円 36,030円 11,505円 24.2%
男塾シリーズ (宮下あきら/全69巻) 69 28,980円 46,780円 35,501円 11,279円 24.1%
梶原一騎セット(原作:梶原一騎 画:ちばてつや・川崎のぼる・辻なおき /全64巻) 64 26,880円 44,680円 34,031円 10,649円 23.8%
BE-BOP-HIGHSCHOOL(きうちかずひろ/全48巻) 48 25,200円 43,000円 32,860円 10,140円 23.6%
ふたりエッチ(克・亜樹/1〜45巻セット) 45 23,961円 41,761円 31,990円 9,771円 23.4%
修羅の門、修羅の刻セット(川原正敏/全47巻) 47 19,740円 37,540円 29,030円 8,510円 22.7%
ドラゴン桜、エンゼルバンクセット(三田紀房/全35巻) 35 18,375円 36,175円 28,080円 8,095円 22.4%
ガラスの仮面 (美内すずえ/1〜46巻セット) 46 18,161円 35,961円 27,930円 8,031円 22.3%
生徒諸君!シリーズセット(庄司陽子/全37巻) 37 18,060円 35,860円 27,860円 8,000円 22.3%
サラリーマン金太郎シリーズ (本宮ひろ志/全42巻) 42 17,640円 35,440円 27,560円 7,880円 22.2%
孔雀王シリーズ (荻野真/全42巻) 42 17,115円 34,915円 27,740円 7,175円 20.5%
カイジシリーズ (福本伸行/全39巻) 39 16,380円 34,180円 26,681円 7,499円 21.9%
大和和紀セット(大和和紀/全26巻) 26 13,020円 30,820円 24,330円 6,490円 21.1%
はじめの一歩(森川ジョージ/1〜30巻セット) 30 12,600円 30,400円 24,040円 6,360円 20.9%
のだめカンタービレ(二ノ宮知子/全25巻) 25 10,500円 28,300円 22,570円 5,730円 20.2%
ホーリーランド(森恒二/全18巻) 18 9,545円 27,345円 21,900円 5,445円 19.9%
柊あおいセット (柊あおい/全13巻) 13 5,460円 23,260円 19,040円 4,220円 18.1%
寄生獣(岩明均/全10巻) 10 5,250円 23,050円 18,890円 4,160円 18.0%
動物のお医者さん (佐々木倫子/全12巻) 12 4,738円 22,538円 18,530円 4,008円 17.8%
進撃の巨人(諫山創/1〜9巻セット) 9 3,780円 21,580円 17,861円 3,719円 17.2%

 セットのうちもっとも巻数が多いのが「手塚治虫全集」の400巻、少ないのが「進撃の巨人」の既刊9巻で、30〜40冊前後のセットが多くを占める。値引率は合計額とほぼ比例していて、「手塚治虫全集」400巻セットが28.1%引、「進撃の巨人」既刊9巻セットが17.2%引である。平均すると22.2%引で、これは420円の単行本を1冊買うたびに100円の割引券を使った場合(23.8%)とおおむね同じである。

 この割引率をどう見るかだが、数十冊もの数をまとめて買う割にはイマイチ、というのが個人的な感想だ。というのも、キャンペーンなどで同程度の割引クーポンを配布している電子書籍ストアはあるし、キャンペーン以外でも例えばGALAPAGOS STOREなら即時ポイント20,000円で2400円分が上乗せされる。こちらは割引率でかなわなくとも、選べる作品の自由度は高い。他との兼ね合いはあろうが、もうひと押し欲しかったところだ。せめて端数を切り落とすなどしてお買得に見せる工夫があればよかったのではと思う。

 こうした点を補完するのが、本製品に付属する「eBook図書券」3,150円分ということになるわけだが、こちらは3,150円分のポイントが振り込まれるわけではなく、1,050円の図書券×3枚という内訳なので、仮に420円の電子書籍をばらばらに3冊買うとそれぞれで1,050円の図書券を1枚ずつ使い果たしてしまい、お釣りは出ない点に注意したい。また最大5枚までの図書券をまとめて使うことはできるが、ほかの支払方法との混在ができないので、例えば4,000円のセット商品を買って残り850円はカードなどで支払うといったこともできない。

 従って、3,150円という制限の中でなるべく多くの本をカートに詰め込み、図書券3枚の同時利用で一気に購入する、というのが現実的な使い方になる。この使い方を間違えると、電子書籍の単価が500円前後として、額面3,150円の約半分の1,500円前後しか使えないケースも出てきかねない。冒頭で「17,800円から単純に3,150円を差し引いて実質14,650円とするのは無理がある」と述べたのはこのためだ。こうした制限はサイト上にもっとわかりやすく表示すべきではないかと思う。

添付のeBook図書券。1,050円分が3枚という構成であることが記載されているが、探した限りではサイト上のわかりやすい場所には記載されていない
この画面では500円の単行本(大東京トイボックス 1巻)の購入に1,050円のクーポンを使用している。お釣りは出ないので、このまま買うと差額の550円が無効になる。なるべく多くの単行本をまとめて買うとよい

 また、今回のラインナップのうち「手塚治虫全集」以外のほとんどは他のストアでも買えるので、どうしてもeBookJapanでなければ、という必然性はそれほど高くない。筆者個人も、今回のセット商品は「すでに電子で持っている」「欲しいがセットの冊数が多すぎて総額が高すぎる」「もともと興味がない」のいずれかの理由で、欲しいと思えるものがなかった。

 筆者個人は、eBookJapanにしかないはずの横山光輝作品や松本零士作品のセットがあれば飛びついていたはずなので、ラインナップひとつで他ストアを中心に使っているユーザも引っ張り込めるのでは、と思う。あるいは例えばコンテンツが自由に選べて50冊セットはいくら、100冊セットはいくらといった体系があれば、選ぶ楽しみができてよいかもしれない。現行のセット商品は4月18日までの期間限定とのことだが、その後ほかのセットモデルが登場することに期待したい。

 と、苦言は述べたが、例えば購入したコンテンツが別の端末に移動できなかったり、かつてのマンガロイド「ICONIA TAB A100」のように有効期限があったり、月額料金制で退会すると読めなくなるといったライセンス体系ではなく、一括買い切りで他端末でも読める点は評価できる。DRMがあること、またトランクルームという分かりにくい仕組みは差し引いても、所有欲を満たすことはできるからだ。

大人買いする人をターゲットにした製品

 以上ざっと見てきたが、まずハードについては、本サービスを使うだけなら問題ないが汎用タブレットとしては価格的にそれほど優位性はなく、高解像度化が進む現在では様子見した方がよいのでは、というのが率直な感想だ。ただし今回のコミックセットは4月18日までの期間限定とのことなので、これらに魅力を感じるなら悩ましい。ロースペックなだけで致命的な欠点があるわけではないので、入門用としては悪い選択肢ではないが、相応の品であることは理解しておきたい。

 続いてコンテンツについてだが、割引率はそれほど突出して安いわけではなく、ボリュームディスカウントと言うにはパンチが弱い。同社サイトではセットモデルについて実質端末代無料といった表記も見られるが、総額が大きくなればどこかのタイミングで「割引額>端末代」となるのは当たり前であり、シビアに判断すべきだろう。ただ、こうした点もひっくるめて、細かいことを考えずに大人買いする人をターゲットにした製品と見るのが正しいのだろう。

 ユーザー視点での結論は以上だが、売る側の視点からすると、まとめ買いにターゲットを絞った戦略は正しいと感じる。他のストアでも、まとめ買い機能に対応したところ売上が一気に伸びたという話は聞くし、またKindleやkoboは現状まとめ買いに対応していないので、差別化要因としても通用する。なにせコミックでの品揃えは随一であり、他のストアにないラインナップも山のようにあるからだ。

 そうした意味で本製品がどれくらい売れるかは、関係者ならずともなかなか興味があるところだ。売れても売れなくても「何が決め手になったのか」が検証しにくそうだが、電子書籍と端末のバンドル販売のロールモデルになるのは間違いない。これまでコンテンツバンドルで目立った成果を残した電子書籍端末はないだけに、これからしばらく売れ行きに注目したいところだ。

(山口 真弘)