山田祥平のRe:config.sys

iOS 7、まったく新しい魔法のような行間を読む

 新iPhoneの発売に先立ち、iOSが更新されiOS 7となった。慣れ親しんだ見かけを、これほど変えてもいいものかというくらいの大規模な更新だ。とまどうユーザーも多いだろうけれど、そのUXは一見に値する。

余白の美、行間の含み

 9月19日の夜中、太平洋時間の朝9時ごろに当たる時間になって、ソフトウェアアップデートを試みると、更新が見つかった。何度かチャレンジするも、ことごとく失敗。きっと混雑しているのだろうといったん諦め、朝になってから再チャレンジして成功した。

 Appleは、iPhoneとiOSを2年ごとに大きく更新する。ハードウェアの世代が変わらない年にはiOSを、iOSの世代が変わらない年にはハードウェアの世代を進ませる。手元のiOSデバイスのうち、今回の更新の対象となるのは2台、新しいiPadとiPad miniだが、OSが変わることで、まるで本体を買い替えたかのような気分になれるのはうれしい。

 6から7になったiOSの変貌をひとことでいうと、それは「行間」じゃないかと思う。これまでよりも、ゆったりとした印象を醸し出している。そして、その行間には饒舌が込められている。下世話な言い方かもしれないが、Windows VistaがWindows 7になったときのようなイメージだ。ホーム画面の密度が変わったわけではない。アイコンは今まで通り、横4×縦5=20個並ぶし、ドックに並ぶアイコンだって数は同じなのに、これまでよりもスカスカに感じるのだ。

 スワイプの方向が整理され、横スワイプはアプリ関連、縦スワイプは通知センター、検索のSpotlight、コントロールセンターなどのOSの機能に割り当てられた。これまでは、ホーム画面を右スワイプしたところにSpotlightが割り当てられていたが、それがホーム画面を下に引っ張る様式に変わった。

 これによって、操作する際に画面の上部まで指を運ぶ機会が減る。いわゆる戻るは多くの場面で左からのスワイプで可能になっている。上部まで指を運ばなければならないのは、通知を見たいときだけだ。

 個人的に嬉しかったのは、ささいなことかもしれないが、週の開始日を指定できるようになったところだ。これで、予定表などが月曜始まりに統一できる。予定表アプリによって、それができたりできなかったりしていたので、これはうれしい。

 さらに、iPad miniをらくらくiPhone的な位置付けで捉えているぼくにとっては、Dynamic Type機能によるフォントサイズの変更がありがたい。これによって、画面サイズに関わらず、好きなサイズでテキストを読むことができるようになる。iOSは、テキスト表示について自由度が低かったが、これをOSが統一感を持って制御することで、世界観を保ちながら個人個人の好みの文字サイズを選ぶことができそうだ。ただし、この機能を使うには対応アプリが必要で、現時点で、もっとも対応してほしいTwitterやFacebookは未対応となっている。ここはひとつ、ぜひ、早期の対応をお願いしたいものだ。

デバイスの処理性能と気持ち良さ

 iOS 7では、マルチタスキングが賢くなっているという。以前との違いをまだ明確に感じることはないのだが、限られたアプリだけに許されていたバックグラウンド処理が、ほかのアプリでも可能になっているという。

 そのせいかどうか、今まで気にする必要がないくらいに永遠に持ちそうだったiPad miniのバッテリが目に見えて減る。とはいっても、丸1日は余裕で持つので、心配はいらないのだが、1泊程度の出張でも、充電用のケーブルは持参した方が良さそうだ。ただ、まだ1日しか使っていないので、もしかしたらOS更新直後のインデックス作成のタスクなどが、それこそバックグラウンドで動いている結果なのかもしれない。

 実際、iOS 7は、iOS 6よりも処理が重く、待たされていると感じられることは少なくないようだ。例えば、設定アプリを開くだけでも、ちょっとした待ち時間がある。ただ、これは、今後、新しいハードウェアに入れ替わることで、デバイスそのものの処理性能も上がっていくのだろうから、あまり気にしなくてもいいと思っている。気持ちよくデバイスを使うために高い処理性能が必要というのは、それはそれで仕方がないことだ。

 それでも、バッテリを交換できないデバイスで、しかも、ほぼ肌身離さず持ち歩くようなモバイル用途のものについては、OSによるいろいろな工夫で、とにかく丸1日はバッテリで運用できるような工夫は必要だ。いつもいうように、目安として16時間は持ってほしい。

 iOSは、あまりユーザーに不便を感じさせることなく、上手にさぼることでバッテリ駆動時間を確保してきたわけだが、今回のマルチタスキングサポートによって、それがどうなるのかが気になるところだ。仮に、1年後にバッテリの性能が2〜3割劣化したとしても、十分に実用に耐えるくらいにもつのかどうか。モバイルバッテリを使えば大丈夫という声もよくきくのだが、5分の充電で半分回復するくらいに急速充電ができるならともかく、そうしたことが難しい以上は、OSやミドルウェアによる裏工作に期待するしかあるまい。ここはひとつ、上手にだましてほしいものだ。

UXと機能の発見

 こうして新しくなったiOSの世界観は、標準アプリの挙動やルック&フィールを見ると、その背景を理解することができる。特に、ミュージック、カレンダー、写真といったアプリを見ると、これまでのUXから大きく方向性が変わっていることがよく分かる。

 機能を無理にデザイン化したのでは、一目見ただけではその機能がなんなのかが理解しにくい。だからこそ、想像を強要するのではなく、きちんと説明しようとしている姿勢も感じられる。多くの場面で機能を表す文字そのものがタップ可能になっているのを見ると、その試行錯誤のあとが感じられる。また、その機能がオンなのかオフなのかも認識しやすくなっている。より饒舌になったといってもいいかもしれない。悪くいえばベタだ。

 かっこいい、かっこわるいという点では賛否両論だとは思うが、iOSを使う層が広がってきている今、これからはこうした配慮が必要だという判断があったにちがいない。ごく一部のよく分かっている層だけに使いやすいOSでは、いられなくなっているということだ。そして、このことは、そうした一部の層がiPhoneから離れていってしまう危惧もはらんでいる。

 個人的には今度のまったく新しいデザインはキライじゃない。むしろ気に入っている。きっと、より多くの人々が、今まで知らなかったiOSの機能を発見することになるだろう。その一方で、ようやく覚えたUXが過去のものになってしまうわけだが、それでも新しいUXを覚えるに際しての負担は、これまでよりずっと少ない。

 それによって、選ばれた人のためのUXというムードが希薄になっていることが、これからのiOSにとって、どんな結果を生むことになるのかが気になるところだ。

(山田 祥平)