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32GBのタブレットで使いこなすWindows 8.1 第1回

~Windows 8.1のUIとストレージ構造を理解する

レノボ・ジャパンの「Miix 2 8」

 各社の8型製品やMicrosoftの「Surface」シリーズが、量販店の店頭から在庫が無くなるほど好調な売れ行きを見せているWindows 8/8.1タブレット。しかし、Atom Z3000シリーズを搭載している8~10型液晶を採用しているWindowsタブレットは、ストレージにeMMCと呼ばれる低消費電力のフラッシュメモリを利用しており、大容量の製品でも128GB、ローエンド向けの製品では32GBに留まっている。そのため、少ないローカルストレージをどのように使うかが使いこなしの鍵となる。

 4回の短期連載となる本連載では、こうしたストレージ容量の少ないWindows 8.1タブレットを、どのように使いこなしていくかを紹介していく。

 第1回目となる今回は、Windows 8.1がどのような仕組みになっていて、少ないストレージで使い回すにはどうしたらいいのか、復習も兼ねて基本的なことを紹介していきたい。

Modern UI、Windowsデスクトップという2つの顔を持つWindows 8.1

 2013年の10月リリースされたWindowsの最新バージョンであるWindows 8.1は、2012年10月にリリースされたWindows 8のマイナーバージョンアップ版という位置付けになる。このため、基本的な構造はWindows 8を引き継いでおり、それをブラッシュアップしてより使いやすくしたものとなる。

 Windows 8/8.1の最大の特徴は、新しいユーザーインターフェイス(UI)としてModern UI(モダン・ユーアイ)を採用していることにある。このModern UIは、大きめのフォントと大きなアイコンとなるタイルを組み合わせて、タッチ操作に最適化されたユーザーインターフェイスとなっている。

 このModern UIは当初、Metro(メトロ)という開発コードネームで呼ばれていたのだが、リリースの直前になり(理由は公表されていないが)Metroの名前は使われなくなり、“Modern UI”という現在の名前に落ち着いた。

 しかし、Windows 8/8.1でも従来のWindowsのユーザーインターフェイスである「Windowsデスクトップ」が廃止されたわけではない。Modern UI上にタイルとして表示されている「デスクトップ」をタッチすることで、Windowsデスクトップを利用できる仕組みになっている。

 こうしたユーザーに対して操作体系を提供する仕組みのことを、ソフトウェアの用語では「シェル」(Shell)と呼ぶが、Windows 8/8.1ではModern UIとWindowsデスクトップの2つのシェルが用意されていることになる。Windows 8では、OSの起動時に表示できるシェルがModern UIに固定されていたが、Windows 8.1ではWindowsデスクトップを表示するオプションも用意されており、普段はWindowsデスクトップを利用して、タッチ操作をする時だけModern UIを利用するという使い方も可能になっている。

 また、Windows 8/8.1ではModern UIの導入に併せて、新しいプログラミングモデルも導入しており、Modern UI上だけで動くアプリケーションが導入されている。かつては「Metro Apps」と呼ばれていたそのアプリケーションは、現在ではMicrosoftの公式アプリケーションストア「Windowsストア」のみで配布されるという意味で「Windowsストアアプリ」と呼ばれている。

 ただし、従来のWindows 7までで一般的に利用されてきたアプリケーションも、Windowsデスクトップ上で実行することが可能だ。例えば、Microsoft OfficeやAdobe Photoshopなどの従来のWindowsアプリケーションは、Windowsストアアプリと区別するために「デスクトップアプリケーション」と呼ばれており、依然としてWindows 8/8.1でも動作させることができる。

 これらをまとめると、Windows 8/8.1は以下のような構造になっていると言える。

【図1】Windows 8.1の構造

 こうして図にすると分かりやすいと思うが、Windows 8/8.1とは、2つの顔(Modern UIとWindowsデスクトップ)と、2つのアプリケーションプラットフォーム(Windowsストアアプリとデスクトップアプリケーション)から構成されているOSである、ということになる。

Windows 8.1のスタートメニューとなるModern UI
Windows 8.1のWindowsデスクトップ。スタートメニューこそ無いが、スタートボタンはあり、見た目はWindows 7に近くなっており、従来のWindowsユーザーとの親和性が高くなっているのが特徴
Modern UI用のアプリケーションWindowsストアアプリ、標準で導入されている「ニュース」アプリ
WindowsデスクトップではOfficeなどのデスクトップアプリケーションが利用できる
標準で用意されているWindowsストアを利用するとWindowsストアアプリをダウンロード、インストールできる。デスクトップアプリケーションはWindows 7時代と同じようにインストーラーを利用してインストールする

Modern UIを使いこなすポイントは、チャームを出すことを覚えること

 まずはWindwos 8.1がこうした2つの顔を持つOSであることを理解して上で、Windowsタブレットでどのように使うのがベストなのかを考えていこう。

 まず明確に言えることは、Windowsタブレットをタッチで利用する場合には、Modern UIを使った方が使い勝手がよいということだ。その理由は、Windowsデスクトップのユーザーインターフェイスは、解像度の高いポインティングデバイス(具体的にはマウスやタッチパッドなど)を利用することを前提に設計されており、それらに比べると解像度があまり高くないタッチでは操作しにくいからだ。マウスやタッチパッドなどでは細かな場所の指定ができるのに、タッチではより大きな面積を1度で押してしまうことになり、細かな場所の指定に向いていないのだ。

 これに対してModern UIでは、フォントも大きなものが利用されているほか、閉じるボタンが大きいなど最初からタッチを前提とした設計になっており、タッチで操作する場合は圧倒的に使いやすい。

 このModern UIを扱う上で重要な操作が、「チャーム」と呼ばれる画面の右側に表示されるメニューバーを出すことだ。Modern UIでは、画面の右端から指をスワイプ(指を画面に触れたまま動かすこと)させると、チャームと呼ばれるサブメニューが表示されるようになっている。チャームには「検索」、「共有」、「スタート」、「デバイス」、「設定」の5つのボタンが用意されており、それらの機能を利用してModern UIやWindowsストアアプリのさまざまな操作ができる。

 例えば、Modern UIに戻りたい場合には「スタート」を選べばModern UIのスタート画面に戻れる。あるいは「設定」を選べば、さらに表示されるサブメニューから各種設定やWindowsの終了などの操作を行なえる。とりあえず、Modern UIまたはWindowsストアアプリで操作に困ったら、とにかくこのチャームを出すということを頭に入れておこう。また、Modern UIのメイン画面で指を下から上にスワイプすると、アプリケーションのリストが表示されて、その一覧からストアアプリもデスクトップアプリも起動できる。

【図2】Windows 8.1 Modern UIの基本操作
Modern UIの操作は画面の右からのスワイプで表示されるチャームで行なえる
チャームの設定画面を開いたところ。ネットワーク周りやWindows終了や細かな設定などを行なえる
Modern UIは従来のWindows 7までのスタートメニューの代替でもあるので、Windowsストアアプリも、デスクトップアプリもModern UIから起動できる

 Modern UI用のアプリであるWindowsストアアプリは、Modern UIのアプリケーションの1つとして用意されている「ストア」というアプリからインストールできる。なお、Windowsストアアプリを利用するには、後述する「Microsoft ID」というIDを登録しておく必要がある。また、有料のアプリケーションを購入する場合にはクレジットカードか「Windowsストア ギフトカード」というプリペイドカードが必要になる。もちろん、無料アプリの場合ならクレジットカードやギフトカードは不要だ。すでにFacebook、Twitter、LINE、foursquareといった代表的なSNSや、Yahoo!、Googleなどの検索サイトを利用するアプリケーションが用意されており、それらはタッチで快適に利用できる。

 ただ、Modern UIの歴史は、現時点で約1年半と、ほかのタッチ操作前提のOS(AndroidやiOS)などに比べて歴史が浅いため、十分にアプリケーションが揃っているとは言えない状況だ。そのため一部サービスへのアクセスには、Webブラウザを利用することになる。

 ちなみに、“Modern UI用のWebブラウザ”というのは厳密に言えば存在せず、「Internet Explorer 11」(IE11)の「没入型表示」と呼ばれるモードが、事実上Modern UI専用のブラウザと言える状況だ。以下、これをModern UI版IEと表記する(Modern UIでのブラウザに関しては山田祥平氏の別記事が詳しい)。Modern UI版IEは、タッチに最適化されており、操作(タブの切り替えやブックマックの呼び出しなど)がタッチで行なえ、快適にWebブラウジングできる。

 なお、このModern UI版IEを利用するためには、IE11がWindowsのデフォルトブラウザである必要がある。ほかのブラウザをデフォルトブラウザにしている場合には、常にそのブラウザが表示されてしまうことになる。

 なお、GoogleのChromeには「Windows 8モード」と呼ばれるModern UI的表示モードが用意されており、デスクトップモードと切り替えて利用できるようになっている。このWindows 8モードはChromeがデフォルトブラウザの場合のみ利用できる。ただし、IE11ではModern UIから呼び出されたのか、デスクトップアプリから呼び出されたのかを自動で判別する機能が用意されているのに対して、Chromeの場合はModern UI的表示か、デスクトップ的表示かをユーザーが手動で切り替える必要があることが大きな違いとなる。

Windows 8.1に付属しているInternet Explorer 11(デスクトップ版)
Windows 8.1のInternet Explorer 11の没入型表示(Modern UI版と呼ばれる)。タッチで操作しやすいようにメニューが調整されている
GoogleのChromeブラウザのデスクトップ版表示。メニューに「Windows 8モードでChromeを再起動」というスイッチが用意されており、有効にするとIE11のModern UI版に似た表示へ移行できる
Google ChromeブラウザのWindows 8モード表示。Modern UIのような表示になるが、あくまでアプリケーションとしてはデスクトップアプリケーション。通常表示に戻すにはメニューから手動で戻す必要がある

内部ストレージとmicroSDカードのOSからの見え方は異なる

 さて、ストレージ32GBのWindowsタブレットを使いこなそうとしているユーザーが知っておくべきことは、Windows 8.1のストレージ構造と、microSDカードの扱いだ。

 Windows 8/8.1のストレージ構造は、基本的に従来のWindowsと大きな違いはない。SSDやeMMCなどのストレージは、パーティション(日本語で言えば仕切り)と呼ばれる領域で論理的に複数に分割することができる。今回の連載でモデルケースとして利用するLenovoの「Miix 2 8」(32GBモデル)の場合は、標準状態で以下のような4つのパーティションに分割されている。

【図3】Miix 2 8(32GB)内蔵ストレージのパーティション構成

 先頭にある回復パーティション(1GB)は回復環境(Windows RE)を起動するための環境で、Windowsがなんらかのトラブルで起動しなくなったときには、このパーティションに格納されているWindows REが自動で起動する。2つ目のEFIパーティション(260MB)は、3つ目のWindowsのパーティションを起動するための環境で、OSをブートするためだけに存在している。WindowsのPro版で利用できるディスク暗号化機能「BitLocker」で暗号化が行なわれている場合もこのパーティションは暗号化されない。3つ目のパーティション(21.59GB)がWindows OS本体が格納されているシステムドライブで、通常、ここがCドライブとなる。4つ目の領域は回復パーティション(6.17GB)で、リカバリ用のデータが格納されている。これで見ても分かるように、ストレージの容量が32GBであっても、実際にはリカバリ領域などがあり、22GB程度がOSを含めたシステムドライブの領域であることが分かる。

 Windows OSでは、ユーザーがアクセスできるドライブには、アルファベット順で名前をつけている。システムドライブがCドライブ、その次がD、その次の次がE…と順番に名前を自動で割り振っていく。Miix 2 8では、システムドライブがCドライブとなり、microSDカードがDドライブとなる。なお、余談になるが、Aドライブ、Bドライブが無いのは、その昔、A、BはFDD用に予約されていたためで、FDDが使われなくなったといっても差し支えない現在では、言ってみれば永久欠番のような扱いになっている。

 さて、Windowsではシステムのファイルを全てCドライブに格納する仕様になっている。それだけでなく、ユーザーがインストールするWindowsデスクトップのアプリケーションは、C:\Program Filesなどに格納していく仕様になっている(厳密に言えばアプリケーションによっては別のドライブにインストールすることもできるが、不具合が起きたりする場合もあるのでお勧めしない)。また、ユーザーからは見えないが、Modern UI用のWindowsストアアプリの実体やデータも、やはりCドライブに格納する仕様になっている。つまり、Cドライブが大きければ大きいほど、インストールできるデスクトップアプリケーションやWindowsストアアプリの数を増やせることになる。

 もう1つユーザーが知っておくべきことは、microSDカード上にあるデータのWindowsからの扱いだ。Windowsでは物理的なストレージを2つに分類している。HDDやSSDなどは「ローカルディスク」と呼ばれており、OSそのものをインストールしたりできるストレージとして扱われる。それに対してUSBメモリやSDカードなどは「リムーバブルディスク」と呼ばれ、一時的にPCに接続されたストレージという扱いになる。Windowsタブレットに用意されているmicroSDカードスロットに挿入されたmicroSDカードもSDカードではあるので、やはりリムーバブルディスクという扱いになる。

 この違いに注意が必要だ。ローカルディスクはHDD扱いとなるので、デスクトップアプリケーションのインストールなどに利用できる。しかし、リムーバブルディスクにはインストールできないデスクトップアプリケーションもある(むしろその方が正しい)。また、Windows 8/8.1 Proに用意されているBitLockerという暗号化を利用する場合にも注意が必要だ。BitLockerで暗号化できるのはローカルディスクだけなので、リムーバブルディスク扱いになるmicroSDカードは暗号化できない。従って、microSDカード側には重要なデータは入れないという運用をするか、「BitLocker to Go」というリムーバブルディスク用の暗号化機能を利用して暗号化する必要がある。

 よくWindowsタブレットの紹介で、microSDカードスロットを利用してストレージを拡張できると書いてあることが多いが、同じストレージでも内蔵のストレージとは位置付けが違うので、実利用シーンではなんらかの制限がかかる場合があるということは覚えておこう。

 こうして見ていくと、Windowsタブレットを少ない内部ストレージで利用するためには、

1.できるだけ内部ストレージを圧迫しないように工夫しながら利用する
2.重要ではないデータ(例えば動画とか音楽データ)などを外に逃がす

というのが基本戦略ということになるだろう。次回以降では、その方法論について、具体的な例を挙げながら紹介していきたい。

LenovoのMiix 2 8(32GBモデル、59404411)のパーティション構成
Miix 2 8にmicroSDカード(64GB)を挿した時の表示。内蔵ストレージがローカルディスクと表示されるのに対して、microSDカードはリムーバブルディスクとなり、扱いが異なることが分かる

(笠原 一輝)