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32GBのタブレットで使いこなすWindows 8.1 第2回
~クラウドストレージの使いこなしを学ぶ
(2014/2/15 06:00)
本短期連載では、現在PC市場で最も熱い製品となりつつある8型のWindowsタブレットを使いこなすための基本知識や、使いこなし術について紹介している。第1回では、WindowsタブレットのOSとして採用されているWindows 8.1の基本知識について紹介した。簡単に振り返ると、Windows 8.1というOSは、従来のWindows 7のユーザーインターフェイスであるWindowsデスクトップと、新しいユーザーインターフェイスであるModern UIが融合した、ハイブリッドOSという形と考えると理解がしやすいということを説明した。
2回目となる今回は、32GBの内蔵ストレージで使いこなすために、もう少し具体的な方法論として、ユーザーのデータを内蔵ストレージではなく、インターネット上のクラウドストレージに持つ方法を紹介したい。
メリットとデメリットがあるクラウドストレージ、うまく活かす使い方を
今回の連載で、8型Winodwsタブレットのモデルケースとして使っているのはLenovo Miix 2 8の32GBストレージモデルだが、Miix 2 8をリカバリしたばかりの素の状態だと、メインストレージの空き容量は9.55GBとなっている。前回の記事で説明した通り、32GBのストレージといっても、全てをOSやアプリケーション、データをおける場所として使えるわけではない。OSの回復パーティションが約1GB、OSをブートさせるEFI領域が約0.26GB、リカバリ領域と呼ばれるDtoD(Disk to Disk)でOSイメージを書き戻すためのデータを保存しておく領域が約6.17GB確保されており、Cドライブとして確保されているのが21.5GBしかないからだ。その上でOSや、プレインストールされているOffice 2013 Personalなどのも含めて12GBが標準状態で利用されており、空き領域が9.51GBとなっている。
Windows OSは、非常に多数の設定パラメータが用意されており、それらを細かく調整していくことで、この空き容量を増やすことは可能だが、空き容量が32GBを超えることは絶対にないわけで、根本的な解決方法を検討した方がいいのは言うまでもない(なお、細かな調整方法に関しては次回以降で詳しく解説する予定だ)。
根本的な方法は2つ考えられる。1つは前回も紹介した通りで、外部のストレージであるmicroSDカードにデータを置いておくことだ。そしてもう1つがクラウドストレージと呼ばれる、インターネット上の仮想ディスクを利用する方法である。今回はこのクラウドストレージをWindows 8.1で利用する場合の選択肢について紹介していきたい。
クラウドストレージをWindowsタブレットで使うメリット、デメリットはそれぞれ以下のような点がある。
クラウドストレージを利用するメリット、デメリット
- 容量をニーズに合わせて伸縮可能
- 物理ストレージに個人データを置かないのでセキュリティ面で安全
- サービスによってはWindowsストアアプリをサポートしている
- ほかのプラットフォーム(AndroidやiOSなど)とのデータ共有が容易
- ローカルにデータのコピーを置かない場合、インターネットに接続されていない環境では使えない
- 大容量データの場合にはアップロードやダウンロードに時間がかかる
- 無料の容量を超える大容量を必要とする場合には追加コストがかかる
- モバイル環境で利用する場合にはパケット料金が発生、またネットに接続していないと利用できない
クラウドストレージを利用する最大のメリットは、内蔵ストレージを圧迫することなく必要なデータをいつでも取り出せる状態で利用することができることだ。データはインターネット上の仮想ディスクに置かれており、インターネットに接続されている環境さえ確保されていれば、いつでもそこにアクセスしてデータを閲覧したり、ダウンロードしてほかの人に送ったりということが可能になっている。
また、サービスによって異なるが5GB程度までなら無料で利用することが可能で、データ量がそれほど多くないユーザーなら無料の範囲内で十分に利用できる。そして、仮にそれ以上の大容量が必要になった場合には、有料コースに申し込めば100GBや200GBといったより大容量を活用することができるようにもなる。
ただし、いいことばかりでもない。クラウドストレージにデータを置いておくということは、データを閲覧する場合にも、常にインターネットへのアクセスが発生する。固定ブロードバンド回線のように、転送データ容量に制限がない環境では問題ないが、携帯電話キャリアが提供するモバイルブロードバンド回線の場合は、定額でも1カ月に7GBや3GBまでという制限があり、それを超えた場合には回線速度が128Kbpsになるなどかなり低速に制限される。従って、モバイル環境で利用することを前提とする場合には、UQコミュニケーションズなどが提供するWiMAX2+やWiMAXなど、容量制限がないモバイルブロードバンド回線との組み合わせを検討した方がよい。
また、ほとんどのクラウドストレージサービスでは、ローカルストレージにデータをキャッシュとしてコピーしておく機能が用意されているが、32GBなどのデータ容量に余裕がない端末では、その方法を利用しにくいので、データにアクセスするには常にインターネットにアクセスできる環境を用意しておく必要がある。とはいえ、現在ではテザリング(スマートフォンなどがWi-Fiのアクセスポイントになり、これを経由してPCなどをインターネット接続可能にする機能)ができるスマートフォンやWi-Fiルーターが増えているほか、カフェには携帯電話会社が提供するWi-Fiサービスの普及が進んでおり、そうした手段を利用することで、どこでもインターネットが利用できる環境が整いつつある。
その意味では、大きな不安を感じる必要はないが、それでも飛行機の中などインターネットにアクセスできない環境も想定されるので、利用できない環境があることは覚えておこう。
クラウドサービスの違いは主にストレージ価格とサポートするプラットフォーム
Windowsプラットフォームで利用できるクラウドストレージは多数あるが、その中でも大手のサービスプロバイダを中心に機能比較をまとめたものが表1となる。
Amazon Cluod Drive | Apple iCloud | Dropbox | Google Drive | Microsoft OneDrive | ||
対応プラットフォーム | Windowsストアアプリ | - | - | ○ | - | ○ |
Windowsデスクトップ同期アプリ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
Windows Explorer 統合 | - | - | - | - | ○ | |
Microsoft Office連携 | - | - | - | - | ○ | |
Android | ○ | - | ○ | ○ | ○ | |
iOS | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
Mac OS | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
価格(年額) | 無料ストレージ容量 | 5GB | 5GB | 2GB | 15GB | 7GB |
10GB | - | 2,000円 | - | - | - | |
20GB | 800円 | 4,000円 | - | - | - | |
50GB | 2,000円 | - | - | - | 2,000円 | |
100GB | 4,000円 | 10,000円 | 99ドル | 59.88ドル (月額4.99ドル) | 4,000円 | |
200GB | 8,000円 | - | 199ドル | 119.88ドル (月額9.99ドル) | 8,000円 | |
400GB | - | - | - | 239.88ドル (月額19.99ドル) | - | |
500GB | 20,000円 | - | 499ドル | - | - | |
1TB | 40,000円 | - | - | 599.88ドル (月額49.99ドル) | - |
ネット通販最大手のAmazonが提供するクラウドストレージサービスがAmazon Cloud Drive。Amazonのアカウントを利用して、クラウドストレージを利用することができるので、すでに通販などで利用しているユーザーであれば手軽に始められる。特徴的なのは、500GBや1TBといった大容量のストレージオプションが用意されていること。
PC/タブレット/スマートフォンのメーカーであるAppleが提供するクラウドストレージがiCloud。特徴は、自社のプラットフォーム(Mac OSやiOS)のデバイスに最適化されていること。Windows用のツールは用意されているが、Android用のツールは用意されていないなど、ほかのプラットフォームで利用するには若干の制約がある。Appleのプラットフォームを中心に利用しているユーザーであれば有力な選択肢となるだろう。
追加のストレージは決して安価ではなく、ほかのサービスが4,000~5,000円で100GBであるのに対して、iCloudは4,000円で20GB、10,000円で100GBとコストパフォーマンスはあまりよくない。
Dropboxはクラウドストレージの老舗といっていい存在で、プラットフォームベンダー(Apple、Google、Microsoft)から独立しているため、どのプラットフォームも公平にサポートしていることが最大の特徴になる。従って、複数のプラットフォームを使い分けるユーザーが第一に検討したいのはDropboxになる。
ユニークな機能としては、友人にDropboxを紹介したり、FacebookやTwitterアカウントとリンクしたりと、Dropbooxが用意しているアクティビティを行なうと、無料の容量が増えたりすること。ただし、元々の無料の容量は2GBとほかのサービスに比べるとやや少なめ。
Google Driveは、Gmailなどのサービスを提供するGoogleが提供するクラウドストレージ。最大の特徴は無料で利用できる容量が15GBと最初から多いこと。追加購入できるストレージはGoogle Driveだけでなく、Gmail、Google+などのGoogleが提供するほかのWebサービスと共有される。さらに自社のプラットフォームであるAndroidとの親和性は高く、Androidでは標準的なクラウドストレージと言ってよい。
ただ、ストレージの価格がやや高めで、100GBで年間59.88ドル(約6,000円)はAmazonやMicrosoftが4,000円であるのに比べてやや高め。しかし、支払いは月額払いのみとなっているので、必要がなくなったら短い間隔で止められることはメリットといえる。
Microsoftが提供するOneDriveは、Windows 8.1に標準機能として搭載されているクラウドストレージ。現在はSkyDriveという名前で提供されているが、今後徐々にOneDriveにブランドが変更されていくので、本記事でも以下OneDriveとして扱うものとする。
OneDriveの最大の特徴は、Windows 8.1に標準機能として搭載されていることだ。Windows 8.1ではログインアカウントに従来と同じローカルアカウントを利用することもできるが、基本的にはMicrosoft ID(以下MSID)と呼ばれるIDを作成してログインしているユーザーが多いだろう。このOneDriveはこのMSIDに紐付けられており、そのままで7GBの無料ストレージが利用できる。料金も100GBが年額4,000円、200GBが年額8,000円と競争力のある価格に設定されている。
Windows 8.1のファイルシステムとの融合が行なわれているOneDriveは使い勝手が最上
このように、現状では複数のクラウドストレージをWindows 8.1上で利用できるが、クラウドストレージが用意しているツールは、Windowsデスクトップ用のツールになっているのが一般的で、Modern UIやWindowsストアアプリはサポートされていないことが多い。
実際、今回取り上げているクラウドストレージで、Modern UI用ツールをサービスプロバイダ自身が提供しているのは、MicrosoftのOneDriveとDropboxのみ。それ以外のクラウドストレージは、標準ではModern UI用のツールが用意されていない(厳密に言えばGoogle Driveは、Google SearchというWindowsストアアプリの中の一機能として利用はできる)。
ただ、標準では用意されていなくても、サードパーティのツールでは対応している場合がある。Windows ストアアプリのFile Brickは今回紹介しているクラウドストレージのうちGoogle Drive、OneDrive、Dropboxに対応している。
ただし、これらの機能はあくまでファイルのダウンロードに機能が限られており、編集後にファイルをアップロードする作業はユーザーが自分でマニュアルでアップロードする必要がある。
これに対して、MicrosoftのOneDriveを利用した場合だけは、その必要がなく、アプリケーションソフトウェア(Windowsデスクトップアプリケーション、Windowsストアアプリを問わず)でOneDriveのフォルダに保存することで自動的にOneDriveと同期され、クラウドストレージ上にあるファイルも更新される仕組みになっている。これは、OneDriveが、WindowsのファイルシステムであるExplorerに統合されているためで、ユーザーはファイルの実体がローカルにあるのか、クラウドストレージ上にあるのかを意識する必要がない。インターネットに繋がっている状態であれば、ユーザーがOneDriveのフォルダにファイルを保存すると即座にクラウド上のファイルも更新され、インターネットに接続していなければキャッシュとして保存され、インターネットに接続された段階で同期がかかる仕組みになっている。
また、Microsoft Officeを使うユーザーにとっても、OneDriveは使い勝手がよい。8型WinodwsタブレットにバンドルされているOffice 2013は、クラウドストレージとしてOneDriveを利用することが標準になっており、Officeアプリケーションから直接OneDrive上のファイルを開き、直接保存することも可能になっている。この点でも使い勝手の違いは圧倒的だ。
このことは、使い勝手の観点から考えると、0か100かと言っていいほどの大きな違いがあると言っていいだろう。ちなみに、この機能はWindows 8.1で実装された機能で、Windows 8まではここでいうOneDrive以外のクラウドストレージと同じような状況だったが、Windows 8.1で劇的によくなった部分だ。
ただし、OneDriveにも弱点はある。ほかのプラットフォーム(例えばAndroid、iOSなど)では、ここでいうそのほかのクラウドストレージと同じ立場になり、OSとの機能融合はされていないので使い勝手がそれほどいいわけではない。つまり、ユーザーのメイン環境がWindowsで、Androidスマートフォンやタブレットではさほど作業をしないというユーザーにはOneDriveが圧倒的にお勧めできるが、逆にAndroidスマートフォンやタブレットがメイン環境であり、Windowsはサブ環境というユーザーであればDropboxやGoogle Driveなどの方が便利だろう。
次回はそのクラウドストレージのOneDriveのより有効的な使い方をするための設定方法などにについて説明していきたい。