COMDEX Fall 2001レポート そのほかパーツ編

書換型DVDの真打ちがついに登場
~松下電器が「ランボー2」ことDVDマルチドライブを展示など

会期:11月12日~11月16日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center


 COMDEX Fallは4日目になると、来場者も一通り回り終える時期で、会場にくる来場者の数は明らかに減っている。初日は非常に厳しかったゲートにおけるボディチェック、荷物チェックもだんだんといい加減になってきており、爆発物をチェックする為の犬の数なども減ってくるなど徐々に終わりに近づいている感が漂い始めている。このレポートでは、COMDEX Fallの会場において展示されている、マザーボード、CPU以外のパーツ関連のレポートをお届けする。


●真の“ランボー”となれるか? 松下電器のDVDマルチドライブがデビュー

 松下電器が出展したDVDマルチドライブ。インターフェイスはATAPIで、型番、出荷時期、価格などは不明だが、価格帯は現行のDVD-RAM/Rドライブに近い価格になるという

 書き換え可能なDVDを推進するRDVDC(Rewritable DVD Council)のブースでは、松下電器が今夏に発売し、話題を集めたDVD-RAM/Rドライブの後継となる、DVDマルチドライブが展示された。このDVDマルチドライブは、「ランボー2」のコードネームで呼ばれており、松下電器からOEMメーカーに対して2002年の第1四半期に出荷すると説明していたドライブだ。

 すでに松下電器より発売されていたDVD-RAM/Rドライブは、従来のDVD-RAMに加えてDVD-Rを書き込めるようになっていた。しかし、CD-R、CD-RWに書き込むことができないという弱点を持っていた。この点は、すでにCD-RWドライブを持っているユーザーがターゲットとなるアフターマーケットではそれほど弱点となり得なかったため、多くのユーザーの支持を得て売り切れ店続出となったわけだが、PCメーカーがDVD-RAM/Rドライブを採用しようとするとこの点は大きな問題となる。

 現時点において、もっともローエンドなマシンでもCD-RWドライブを搭載しているのは当たり前になっており、今やPCメーカーにとってCD-R/RWへの書き込み機能は必要条件となっている。しかし、DVD-RAM/Rドライブではその必要条件を満たせないため、仮にDVD-RAM/Rドライブを採用しようと言うときには、もう1つCD-RWドライブを搭載しなければならなくなってしまうのだ。

 たとえば、DVD-RAM/Rドライブを搭載したマシンの例として日立製作所のPrius Deckシリーズがあるが、DVD-RAM/RとCD-RWドライブのツインドライブ構成になっている。いくらCD-RWドライブが低コストになったといっても、ドライブである以上は50~60ドルはしてしまうため、結果的に1万円程度は価格に上乗せしなければならなくなってしまうのだ。これでは、ハイエンドの製品のみにしか搭載することができず、PCメーカーがDVD-RAM/Rドライブを搭載する際のネックとなっていた。

 そこで、今回のランボー2ではDVD-RAM/Rドライブに、DVD-RW、CD-R、CD-RWへの書き込み機能が追加され、いってみれば書けないDVDメディアはDVD+RWぐらいになってしまったのだ。DVD-RWはともかく、CD-RW、CD-Rの書き込み機能はPCメーカーへの売り込みという観点では非常に重要で、今後CD-RWドライブに変えてランボー2を売り込むということも可能になるわけだ。なお、松下電器の説明員は「本製品はあくまで参考出品であり、書き込み速度などの仕様、発表予定、価格など一切未定となっている」と述べているが、すでに述べたようにOEMメーカー筋の情報によれば、2002年の第1四半期にOEMメーカーへの出荷が開始されるといい、価格は現行のDVD-RAM/Rに近いレベルにとどまるという。

 こうしたDVDマルチドライブは、松下電器以外にも、日立製作所とLG電子のジョイントベンチャーである日立LGも「GMA-4020B」として発表しており、DVD-RAMが2倍速、DVD-Rが2倍速、DVD-RWが等倍速、CD-Rが12倍速、CD-RWが8倍速となっている。このGMA-4020Bも2002年1月よりOEMメーカーへの出荷が開始されるという。このほかにも、RDVDCのブースにはサムスン電子がブースを出しており、サムスンによれば同様のドライブを2002年の後半には出荷する予定があるという。

 現在ある書き込み型DVDの規格のうち、DVD+RWをのぞくすべてのメディアに書き込みが可能なDVDマルチドライブの登場により、競合規格といえるDVD+RWを推進する陣営は苦しい立場に追い込まれる可能性が高い。

 “ランボー”というコードネームは、シルベスター・スタローン演ずる敵中に単身で飛び込み相手を倒す最強のヒーローからとっているのだが、もちろん“敵”であるDVD+RWを叩きのめすという意味が込められていると言われている。DVD+RW陣営が低価格なり、DVD-Rを読めるようにという別の付加価値を用意できない場合には、その通りの展開になってしまうかもしれない。

日立LGのGMA-4020B。やはりDVDマルチドライブとなっており、インターフェイスはATAPI。2002年の1月よりOEM出荷が開始される サムスンのDVD-RAMドライブ。マルチドライブは2002年の後半に出荷予定


●ATIはOpenGLに特化したエントリーワークステーション向けチップをデモ

ATIブースに飾られたOEMメーカーによる製品群。RADEON 8500などを搭載したビデオカードが展示されていた

 COMPUTEX TAIPEIとはことなり、COMDEX Fallはどちらかと言えば完成製品がメインターゲットとなっており、ビデオカードやビデオチップなどの出展はあまり多くない。ビデオチップメーカーとして、NVIDIAとATI Technologiesが出展しているが、今年はビデオカードメーカーの出展はなかった。例年大きなブースを出しているクリエイティブテクノロジーも出展しておらず、そうした意味ではやや寂しい感じがしなくもない。

 OEMメーカーやメディア向けのアポイントメントオンリーで、一般向けの展示をしていなかったNVIDIAにたいして、ATI Technologiesは一般の来場者も入ることができるエリアで展示を行なっていた。

 ATIはこのCOMDEX Fallの直前に発表した、新しいエントリーワークステーション向けのビデオカードであるFIRE GL 8700/8800、モバイル環境においてプロフェッショナルユースの3Dグラフィックス向けとなるMOBILITY FIRE GL 7800などの展示を行なっていた。

 FIRE GL 8700/8000は、OpenGLに特化したワークステーション向けビデオカードとなっている。ビデオチップそれ自体はコンシューマ向けのRADEON 8500と同等であり、ドライバレベルでOpenGLに特化したという製品だ。ちょうどNVIDIAのGeForce3とQuadro DCCの関係であると考えるとわかりやすいだろう。MOBILITY FIRE GL 7800は、やはコンシューマ向けのMOBILITY RADEON 7800とチップそれ自体は同等だが、OpenGLに特化したドライバが用意されている点が大きな違いとなっている。こちらもGeForce2 GOとQuadro2 GOの関係と同じだと考えていいだろう。

MOBILITY FIRE GL 7800のデモ。OpenGLのアプリケーションをノートパソコンで動作させていた FIRE GL 8800。カード自体はRADEON 8500とほぼ同じ


●液体クーリングが再び大ブレイクか? オール液体クーリングも参考出展

3D POWERのPOSEIDON。ビデオチップを水冷するシステム。ビデオカードマニア御用達の製品となるか?

 CPUを水冷方式で冷却する液体クーラーは、一時日本でも発売されて話題になったが、COMDEX Fallではさらにそれを進化させ、ビデオチップを冷却する液体クーリングシステムが公開された。

 展示していたのは3D POWERというイギリスの会社で、奇しくも“POSEIDON”という日本でも発売されていたCPUクーラー用の液体冷却システムと同じ名前になっている(みんな同じ発想ということなのだろうか)。システムは簡単でPCの外部に冷却部分を置き、そのコンセントをさすだけでよい。最近ではPowerStripなどを利用してビデオチップのクロックアップを行なうことが半ば流行となっているが、これがあれば、さらに高いクロックにクロックアップしたりすることが可能になる。価格はまだ未定ということだったが、おもしろそうなグッズではある。

 韓国のCOOLANCEは、さらに強力な液体冷却システムを公開していた。それがオール液体クーリングシステムだ。見てわかるように、PCの内部の熱源のほとんどがオイルの中に沈んでおり、そのオイル自体を冷却することにより、PCの放熱を行なうという強烈なシステムだ。利用しているオイルは非電導性オイルとのことで、オイルの中を電気が流れることはなく、PCは動き続けられるという。実際に、オイルに沈められた状態のままPCは動作しており、その様子は圧巻だ。なお、このシステムは現時点では参考出品であり、このまま出荷される予定はないというが、ハイエンドのユーザーには気になる製品だろう。

COOLANCEの全油冷システム。非電導性オイルを利用しており、オイル自体を冷やすことで、PC全体を冷却するシステム。ただし、今回はあくまで参考出品


●省スペースベアボーンケースもPentium 4の時代へと突入

今は亡き日本ゲートウェイが4月に発売した省スペースデスクトップに採用されていたケースの後継となるFICのSamba SM-1845。本体前面に独自のスリットが設けられ、デザインを損なうことなく優れた放熱性を発揮する「エアーインレットパネル」などは、前のモデルの特徴を受け継いでいる

 また、今回の1つの傾向として、各マザーボードベンダが展示する省スペースのベアボーンシステムが、Pentium IIIベースのものからPentium 4ベースのものに移り変わりつつあることが確認できた。たとえばAOpenの省スペースPentium 4マシンは秋葉原などでも発売されているが、これ以外のベンダーでも省スペースのPentium 4マシンが展示されていた。

 たとえば、FICは「Samba SM-1845」という型番の省スペースデスクトップPCを展示していた。一見すると、以前FICが日本ゲートウェイにOEM供給していたケースにそっくりで、それのPentium 4バージョンだと考えていいだろう。Brookdale-Gにも対応可能となっているが、とりあえずはIntel845 Bステップで作られている模様だ。このほかにも、MSI、ECSなどCOMDEX Fallに出展していたベンダーは軒並みPentium 4省スペースのベアボーンキットを展示しており、まもなく秋葉原などにもこうした製品が並ぶようになるだろう。


□COMDEX Fall 2001のホームページ(英文)
http://www.key3media.com/comdex/fall2001/

(2001年11月19日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]

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