COMDEX Fall 2001 ビル・ゲイツ基調講演レポート

次の10年間はデジタルがより生活に浸透していく10年に!
~Windows XP Tablet PC Editionを2002年の後半に出荷

恒例となっているCOMDEX Fallのオープニング基調講演に登場したマイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼CSA

会期:11月11日~16日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Center
    Las Vegas Hilton
    MGM Grand Hotel他



 9月11日にニューヨークで発生した連続テロの影響を受け、厳戒態勢の中で行なわれるCOMDEX Fall 2001が11日より実質スタートした。

 正式には前日となる本日は、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼CSA(最高ソフトウェア開発責任者)によるオープニングキーノートスピーチが行なわれた。この中で、ビル・ゲイツ会長は昨年のCOMDEX Fallの基調講演で初めて明らかにしたTablet PCに関する詳細、.NET、Xboxについてのデモンストレーションを行なった



●厳戒態勢で行なわれたゲイツ氏の基調講演

会場に入る前に行なわれているボディチェックと荷物チェック。金属探知器を利用した検査はまるで空港の搭乗ゲートのよう。メディア関係者は荷物の持ち込みが認められているが、一般の来場者は鞄、カメラなどの持ち込みは一切厳禁。荷物をもってきてしまった女性は、入り口で入場を拒否されていた
 すでにオープニングレポートでも説明したように、ニューヨークで発生した連続テロの余波はCOMDEX Fallを直撃しており、このゲイツ氏の基調講演も例外ではない。来場者は、いっさいの鞄、カメラなどの持ち込みが禁止されており、入り口では来場者に対する荷物チェックやボディチェックなどが念入りに行なわれている。メディア関係者も同じで、鞄、カメラの持ち込みこそ許可されているものの、荷物チェック、ボディチェックはそこかしこで行なわれており、主催者のKey3 Media側の「テロを許さない、安全なCOMDEXを!」という意気込みが感じられる。

 ゲイツ氏の基調講演も、入り口で厳しいボディチェックと荷物チェックを通過しなければ会場内に入ることはできない。一般来場者はカメラ、鞄の持ち込みを禁止されており、一般来場者が鞄を持ってきてしまった場合には、いっさいの例外なく入場を拒否されていた。こうしたことからも、今回のCOMDEXが通常の状態ではないことを伺わせている。まさに「厳戒態勢」の中でCOMDEX Fallのオープニングとなるゲイツ氏の基調講演はスタートした。



●Windows XPは最初の2週間で700万本の出荷を開始

 ゲイツ氏は最初に現在の経済状況にふれ、「Nasdaqの株価の指数は現在下がり続けている。また、PCの販売台数も2001年は昨年に比べて減少するという予測がでているなど、IT業界を取り巻く環境は厳しい」と述べ、現在のIT業界が置かれている現状は厳しいものであるという認識を明らかにした。

 「これをIT業界の終焉の始まりだという人もいるがそうではない。これはIT産業の立ち上がりというフェーズの終わりを意味しているのであって、IT業界そのものが終わりをつげる訳ではない」と述べ、IT業界の発展は終わった訳ではなく、今後新しいフェーズに入り、さらに発展していくだろうという見通しを明らかにした。

Windows XPは当初の2週間で700万ライセンスが出荷されたと説明 2001年から2010年には「デジタルの10年にになる」とゲイツ氏

 その具体的な例として「Eメールのボックス数は2001年に6億7,300万、インスタントメッセージングに接続しているユーザー数は2億ユーザーを超えている。さらに、デジタルカメラは2001年には1,800万台に達し、ワールドワイドのカメラ販売台数のうちの21パーセントを占めるようになっている。さらに、マイクロソフトがリリースした最新版のOSであるWindows XPは、発売後2週間だけで700万ライセンスが出荷され、小売店向けのバージョンは過去のどのWindowsのバージョンと比べても2倍以上の販売を記録しているなど、デジタル産業は成長を続けている」と、具体的な例でもって、デジタルなものの普及が現在も進行中であると述べた。そして、現在の2001年から来るべき2010年までの10年間は「デジタルの革新性は我々の生活の一部となり、景気の回復は技術の進化によってもたらされるであろう」と述べ、今後10年間が“デジタルによる10年間”になるという見解を明らかにした。

 その後、ゲイツ氏の講演では“恒例”となっている、ビデオが上映された。途中、スターウォーズのルーク・スカイウォーカー役にマイクロソフトのスティーブ・バルマー社長兼CEOが扮したり、映画“Matrix”のパロディなどが流されるなど、いつもの通り大きな盛り上がりを見せたが、もっともおもしろかったのは一番最後に流された、マイクロソフトのバルマー社長が狂ったように飛び回る動画に“猿の惑星”をかけたパロディだった。バルマー氏が猿のような奇声をあげながら舞台を飛び回るシーンを、観客席で猿たちがそれを見て大受けという映像だ。

話題の“流出”ビデオを逆利用して、笑いを誘う。このあたりの“自虐的”なビデオはマイクロソフトの伝統? になりつつある

 実はこれには伏線がある。少し前に、マイクロソフトの社内向けのカンファレンスで、バルマー氏が狂ったように「マイクロソフト!、マイクロソフト!」と奇声をあげながら登場する動画がインターネットで流出するという“事件”があり、話題になった。今回公開された、バルマー氏が飛び跳ねるビデオは、それを逆手にとってマイクロソフト自らそれをパロディーに使ってしまったという訳だ。このシーンはそれまで「いままでとあまり変わらないビデオだなぁ」とはすに構えていた人まで大受けだったことを付け加えておこう。


●1年を経てプロトタイプが登場したTablet PC

ゲイツ氏の基調講演で利用されたTablet PCのプロトタイプ。エイサー、コンパック、東芝、富士通、FIC、ViewSonicのプロトタイプなどが利用された
 その“デジタルの10年”を実現するためには、これまでにもましてハードウェアの進化が重要であるとゲイツ氏は述べ、その例の1つとして、Tablet PCについて言及した。昨年のCOMDEX Fallにおいて、ゲイツ氏はTablet PCと呼ばれるペンオペレーションの新しいPCプラットフォームの構想を説明した。昨年の段階ではかなり初期段階のプロトタイプが利用されたが、今年は実際にOEMメーカーが開発したTablet PCのプロトタイプを紹介した。

 壇上にあげられたのは、エイサー、コンパック、東芝、富士通、FIC、ViewSonicなどのTablet PCのプロトタイプで、デモンストレーションにはエイサー、富士通、コンパックのTablet PCが利用された。実際に行なわれたデモはタブレットにより手書きされた文字を一部を指定し識字すること、3Dモデリングソフトウェアをペンにより操作するデモ、Windows Messengerでペンにより書いた画像でコミュニケーションを行なうデモ、さらにはタブレット用のエクステンションを付加されたOffice XPのアプリケーションでペンによる入力を行ない、そのデータを利用する方法などがデモされた。


展示されたTablet PCの1つエイサーのTravelMate。CPUにIntelのモバイルPentium III-Mを搭載し、液晶が回転しTablet PCとしてもノートPCとしても利用可能

 デモに立ち会ったマイクロソフト ビジネスプロダクティビティディビジョン ジェフ・ライケス氏は「2002年の後半にはTablet PCのOSとなるWindows XP Tablet PC Editionを出荷する。さらに、来年の今頃には実際のTablet PCの製品がCOMDEXに展示されているだろう」とし、マイクロソフトがTablet PC用のOSであるWindows XP Tablet PC Editionを2002年の後半にリリースすると述べた。さらに、デモで利用したOffice XPのTablet PC用のエクステンションに関しても2002年に出荷することを明らかにした。

文字認識を行なうデモ。タブレットで入力した手書き文字を識字して入力している Outlookに直接文字を書き込んでいる様子。このOffice XPのエクステンションも、Windows XP Tablet PC Editionと一緒に出荷される


●XMLや.NETが夢を実現すると説明するゲイツ氏だが、観客の注目はXboxの当選者にあつまる

ExcelでXMLのウェブサービスに直接アクセスしているところ
 引き続き、ゲイツ氏はXMLウェブサービス、そしてMicrosoft .NETに関する説明やデモを行なった。実際に、ExcelからXMLを利用してウェブサイトに接続するデモや、ポケットPCなどからXMLを利用してウェブサービスに接続し、汎用に利用できるということをアピールした。

 「XML、そして.NETを利用することにより、これまで夢だったことが実現できる。ユーザーは自分のニーズに合わせてサービスをカスタマイズでき、サービス提供者は新しいビジネスチャンスを得る」と述べ、.NET構想への支持を訴えた。その具体的な進展具合として「.NETサーバーはベータ3を今月に出荷する。高いセキュリティを実現するセキュリティの自動設定や自動セキュリティアップデートなどの機能が付加される」と述べ、.NET構想が快調に進んでいることをアピールした。


Xboxが当たった来場者、ラッキーな人は全部で4人だった(ちなみに、もちろん筆者ははずれた……)
 そして、最後に11月15日に発表される予定のXboxについてふれた。実際に、Xboxをモニターに接続し、その起動画面やゲーム画面などを公開し、実際にPLAYERSの“NFL 2002 FEVER”というゲームをプレイして見せ、Xboxが完成していることを満員の聴衆にアピールしてみせた。

 「Xboxは史上最強のゲームプラットフォームとなる。ゲームマニアであっても十分満足できる仕上がりになっている」と述べ、プレイステーション 2やゲームキューブなどに対するアドバンテージをアピールした(なお、Xboxのデモに関する詳細はGAME Watchの記事も参照していただきたい)。最後には、Xboxのプレゼントの抽選会が行なわれ、ラッキーな来場者にXboxがプレゼントされた。マイクロソフトのXboxの担当者であるシーマス・ブラックレー氏が当選した座席の番号を読み上げると、その度にあちこちからため息が漏れた。この基調講演で最も盛り上がったのが、この当選者の発表だったことを付け加えておこう。

 最後にゲイツ氏は「これから、デジタルの10年間が始まっていく。今回紹介したような新しいテクノロジ、製品がこれから我々の生活に信じられない刺激的な新しいことを体験させてくれるだろう」とまとめ、「デジタルの10年間」に関する講演を締めくくった。

□COMDEX Fall 2001のホームページ(英文)
http://www.key3media.com/comdex/fall2001/
□関連記事
【11月12日】【COMDEX2001】厳重な警備態勢のなか、COMDEX Fall 2001が明日開幕
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011112/comdex01.htm
【11月12日】COMDEX Fall 2001、ビル・ゲイツ氏基調講演でXboxが披露される(GAME)
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20011112/comdex.htm

(2001年11月12日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]

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