AMD Developer's conference Summer '01開催
~チップセットベンダー各社がDDR333のデモなどを実施

AMDのDDRメモリに対する深いコミットメントを述べたComponent EnablementグループマネージャのLevi Murray III氏
8月23日開催



 8月23日、日本AMDは第9回目にあたるデベロッパーカンファレンスを開催した。

 今年のテーマは、DDR(Double Data Rate)SDRAM。残念ながら昨年11月の発表以来、いわゆる大手PCベンダーの採用がなかなか進まないDDR SDRAMだが、10カ月を経て、メモリモジュール、マザーボード共に熟成が進んでいるようだ。この間、互換性の検証作業が進むと同時に、折からの不景気によるメモリ価格の暴落で、DDR SDRAMの価格も低下。もはや価格が採用を拒む理由にはならなくなっている。

 明言は避けたものの、どうやらこの冬(クリスマス)商戦向けのモデルあたりから、大手PCベンダーからもDDR SDRAMを搭載したシステムの提供が始まりそうな感触だった。

 AMDのデベロッパーカンファレンスの大きな特徴は、サードパーティによるプレゼンテーションの比率が高いこと。Intelと異なりマザーボードを全面的にサードパーティに委ね、チップセットもサードパーティ製を尊重するなど、サードパーティを自社プラットフォームを推進するリソースとして活用しようという同社らしい。

 今年は、すでにリリースされて久しいDDR SDRAMがテーマだけに、AMDのプレゼンテーションにもあまり新味がなかったが、それもやむを得ないところだろう。

●SO-DIMMがデスクトップPCに使われるようになる?

 新味という点で最も興味深かったのは、メルコのプレゼンテーションであった。多彩な周辺機器を手がける同社だが、今でもカタログの冒頭を飾るのがメモリモジュールであるように、メモリはメルコのコアビジネスと言っても過言ではない。JEDECでのDDR/DDR IIメモリの標準化作業への参加にも、メモリ重視の姿勢がうかがえる。

 そのメルコによると、現在進められているDDR IIのメモリモジュール仕様策定のうち、現在デスクトップPC向けに使われている184ピンDIMMとほぼ同じ大きさの(つまりフォームファクタ的には直接の後継になる)232ピンDIMMは、サーバーやワークステーションに用いられるRegistered DIMMが優先されているとのことであった。その理由として挙げられたのは、現在主にノートPC向けに使われているSO-DIMMがデスクトップPCにも使われるようになる、ということだ。

 現在DRAMの主流は、128Mbitチップから256Mbitチップに移り変わろうとしている。1枚のモジュールに×8bit構成のDRAMを8チップ実装する一般的なDIMMの場合、DIMM当たりのメモリ容量が128MBから256MBになる、ということを意味する。

 いくら年内にリリースされるWindows XPが大容量メモリを推奨する、といわれていても、一般的なPCの標準搭載メモリ(最小搭載メモリと言っても良いかもしれないが)が256MBというのは、おそらく行き過ぎだ。また、その次の512Mbit DRAMの世代には、メモリの最小増設単位は512MBにまで増大してしまう。

 この最小増設単位が大きくなりすぎるという問題は、Rambusが自社の優位性の1つに挙げているポイントでもある。RDRAMの特徴の1つは、メモリバスに対する最小増設単位がメモリチップ1個である(最低1チップでメモリモジュールが構成できる)ということ。512Mbit DRAMの世代でも、RIMMであれば最小増設単位は512Mbit、つまり64MBで済む。

 DDR/DDR II SDRAMでメモリの最小増設単位を小さく抑えるには、より少ないDRAMチップでモジュールを構成する必要がある。

 一般的な64bitバスに用いるメモリモジュールを少ないチップ数で実現するには、bit構成が大きなメモリを使えばよい。×16bit構成のメモリであれば、4チップで64bitバスを構成できるし、4チップならSO-DIMMに収まる、というわけだ。

 ×16bit構成のDRAMチップは、×8bit構成のDRAMよりダイのオーバーヘッドが大きいためチップあたりのコストが高くなる(これがノートPC用の増設メモリが高い理由の1つ)が、メモリの価格がコストでは決まらないのは今のメモリ価格を見れば明らか。SO-DIMM化することで、A4サイズのノートPCとメモリモジュールを共用化できることによる量産効果、基板面積を小さくできるというコスト低減要因もあるが、実際の価格がどうなるかは何ともいえない。

 また、メモリモジュールが小型化することで、基板上の伝送路を短縮できる。これが、動作の安定性にも寄与するという。動作クロックの上昇を考えれば、これもSO-DIMMに移行する理由になるかもしれない。もちろん、メモリモジュールの小型化は、PCそのものの小型化にも貢献するだろう。

 もう1つ、メルコのプレゼンテーションで興味深かったのは、メモリモジュール市場に占めるDDRの比率を2001年で3%、2002年で15%と、極めて控えめに見積もっていたことだ。

 こうしたイベントでは、メモリベンダーや一部の市場調査会社による、やたらと強気な、実際の市場とかけ離れた市場予想ばかりが強調される傾向があるように思う。まぁ、あくまでも予想ではあるし、一種の景気づけ? と思えば良いのだろうが、ちょっと鼻につくことがあるのも確か。

 それに比べてメルコが示した数字は、実際にメモリモジュールを提供しているメーカーのものだけに、地に足がついている感じがして、かえって好感がもてた。もちろん同社も、DDRのシェアを2003年では50%、2004年では70%と、急伸するものと予想している。

●各チップセットベンダーがDDR333への対応状況を説明

 DDR IIよりもっと近い将来に登場するのは、現行のDDRをさらにクロックアップしたメモリだ。

 メモリとしてはDDR300、DDR333、DDR400とロードマップが描かれている(DDRに続く数字はデータレート。その半分がメモリバスクロックになる)が、チップセットベンダーは現在のところ次のステップとしてDDR333メモリを用いたPC2700メモリモジュールのサポートを想定しているようだ。

SiSはDDR333メモリが実際に動く様子をアピール
 今回顔をそろえたAthlon/Duronプラットフォームをサポートするチップセットベンダー(SiS、ALi、NVIDIA、VIA Technologies:プレゼンテーション順)のうち、NVIDIAを除く3社が製品化の意向を示した(だからといってNVIDIAがDDR333をやらない、ということでもないと思うが)。

 SiSは、展示会で、間もなく登場するSocket A対応のSiS735チップセットをオーバークロックさせて、メモリバス、FSB共に333MHzで動作させるデモ(つまりメモリはDDR333)を行なっていた。

 ALiが明らかにしたM1667は、Socket A対応でAGP 8Xモードをサポートしたチップセット。DDR333メモリに対応すると同時にHyperTransportをサポートするこのチップセットは、間もなくサンプル出荷が始まることになっている。

 DDR333サポートのチップセット4種を含むチップセットロードマップを示し、同メモリが次世代の主役であることを強調したのがVIA Technologiesだ。

 K8T333は、AMDの次世代プロセッサであるHammerシリーズ(x86-64)対応のチップセット。プロセッサバスはHyperTransportだが、South Bridgeの接続には現在用いているV-Linkの帯域を2倍に拡大して対応する。

 これに新開発のZoetropeグラフィックスコアを統合したのがK8M333だ。同じZoetropeコアを内蔵したSocket A対応のチップセットも、デスクトップPC向けのKM333と、モバイルPC向けのKN333の2種類が用意される。

 というわけで、PC2100の次はPC2700で決まりのようだが、上述したメルコの市場予想でも明らかなように、PC2100もまだ完全に立ち上がっているとは言いにくい状況だ。IntelがJEDECの標準に対する追加規定をリリースするといった「横槍」もある。

 次がPC2700だとしても、実際に市場がいつ立ち上がるのかは予想しにくい。そもそも、AMD自身がDDR333をサポートするのか否かも明言していない。マザーボードも含め、もっとAMD自身がプラットフォームにコミットしても良いと思うし、それが同社の懸案であるビジネス市場への浸透につながると思うのだが、それをしないのがAMDの哲学のようだ。

□日本AMDのホームページ
http://www.amd.co.jp/
□関連記事
【7月26日】【海外】DDRの新規格登場、来年DDR333、2003年にDDR IIが登場か
--Platform Conferenceレポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010726/kaigai01.htm

(2001月8月23日)

[Reported by 元麻布春男]

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