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新世代RADEON 8000シリーズ発表会レポート |
8月13日(現地時間) 開催
ATI Technologiesは、8月13日深夜(現地時間)、ハリウッドのParamount Studioにおいて、新GPU「RADEON 8000シリーズ」を発表した。このRADEON 8000シリーズは、コードネームR200で知られる同社のフラグシップチップで、今年5月にラスベガスで開催されたE3で技術仕様が公開されたTRUFORMや、6月半ばにシアトルで開かれたMeltodownで明かされたSMARTSHADERなどの機能を搭載する。
■すべてが変わった新世代RADEON
Paramount Studioの第30スタジオに設けられた発表会場には、階段状の踊り場もある立体的な舞台装置が組まれ、“THIS CHANGES EVERYTHING”をテーマに、ラップ調の音楽に乗って登場した男女4人が掛け合いを演じるパフォーマンスから、セッションはスタートした。
冒頭に登場した社長兼COO(Chief Operating Officer)のDave Orton氏は、「パワフルで革新的な新世代のRADEONファミリーによって、メインストリームからタフなゲーム環境、そしてミッドレンジのワークステーションまで、すべての領域で最高品質を実現。マーケットにおけるテクノロジリーダーシップとシェアを確立する」と高らかに宣言。会場のテンションは一気に高まり、冒頭から全米各地から訪れた報道陣と、米国および台湾のベンダー関係者からの喝采と歓声に包まれた。
また、セッションの合間には、Microsoft、Intel、AMDと、x86陣営のビックネームが揃い踏み。まるで、GeForce 3の発表でApple Computerをメインゲストに迎えたNVIDIAへの当てつけとも思える演出だった。
■RADEON 8000シリーズのアーキテクチャ
RADEON 8500 |
Dave Orton氏に続いてステージに登場した Desktop Marketing Group DirectorのJewelle Schiede-Webb女史と同Product Marketing ManagerのToshi Okumura氏は、初めに新しいRADEONが「RADEON 8000シリーズ」であることをアナウンス。そして、そのRADEON 8000シリーズのキーフィーチャーとなるSMARTSHADERの技術的なアドバンテージ紹介からプレゼンテーションを開始した。
SMARTSHADERでは、CPUの持つプログラマビリティと視覚効果に対する柔軟性をGPUに持たせ、これまでビデオチップでは不可能とされてきた、“BIG SCREEN(映画)”品質のグラフィックスをリアルタイムでレンダリングすることを可能にするものだと言う。そのキーテクノロジとなるのは、MicrosoftがDirectX 8でサポートしたProgrammable Pixel ShaderとProgrammable Vertex Shaderであるが、ATIは新RADEONにおいて、Programmable Pixel Shaderをさらに進化させ、1つのレンダリングパスで6つまでのテクスチャ処理を実現。これにより、高品質のグラフィックスをリアルタイムでレンダリングする際のボトルネックになっていたメモリ帯域幅の制約を大幅に減少させることに成功している。
DirectX 8.0と8.1の比較 |
さらに、Pixel Shaderのプログラム最大許容長を従来の2倍以上となる28(DirectX 8では12)に増やすことで、1つのレンダリングパスで複数の光源処理と色処理が可能となる。この機能を利用すると、複雑な光源処理が必要となる水面の描画にも、複数のライティングとそれに伴う色変化を与えることができ、よりリアルなグラフィックスを生み出すことができる。
しかも、このSMARTSHADERは、Windows XPでサポートされるDirect X 8.1に盛り込まれるほか、OpenGL 1.3でもサポートされる。これにより、3Dゲーム開発者やCGコンテンツクリエータは、すぐにでも、より高機能で使いやすい環境を得ることができると言う。
また、この新RADEONには、DirectX 8で採用されたN-Patchと呼ばれる表面処理技術をサポートするTRUFORM技術も採用されており、トライアングルで構成されている現在の3Dアートワークを、GPU内の処理により、なめらかな曲線を持つサーフェイスに再現することができるようになる。現在、大半の3Dゲームプログラマは、コンシューマPCのハードウェア性能でもスムーズでストレスのない動きを再現できるよう、キャラクタを構成するトライアングル数を抑えることを強いられている。しかし、このN-Patchを使えば、同じトライアングル数のキャラクタでも、より自然な再現ができるようになり、3Dゲーム全体のクオリティを引き上げることができる。しかも、少ないトライアングル数でキャラクタ表現ができることで、GPUが利用可能なメモリ帯域をほかの処理に使えるようになるというメリットも持つ。
さらに、今回初めて明かされた新機能として、強化されたAnti-aliasing技術であるSMOOTHVISONがある。この新技術は、DirectX 8.1でサポートされるMulti sample Bufferをサポートし、プログラマブルな16個のサンプリングによる高度なアンチエイリアシング処理を実現。しかも、そのサンプルはピクセルあたり最大8サンプルまで選択可能と、既存のアンチエイリアシング技術よりも強力な内容を持つ。
■RADEON 8500/FireGL 8800
もちろん、こうした“革命的な新機能”を支えるには、膨大なメモリ帯域が必要となる。そこで、ATIは、RADEONで採用したZ-Bufferの圧縮技術であるHYPER Zをさらに進化させ、効率的なバッファの圧縮と高速な消去を実現することにより、ピーク性能で12GB/secのメモリ帯域を確保することに成功した。また、同様にこれら新技術を取り込んだ3Dエンジンは、ハードウェアT&LエンジンのCARISMA ENGIEと3DレンダリングエンジンのPIXEL TAPESTRY、ビデオ補間技術のVIDEO IMMERSIONももそれぞれ第2世代となるCARISMA ENGIE II、PIXEL TAPESTRY II、VIDEO IMMERSIONへと進化している。その概要は以下のとおり。
●CARISMA ENGINEII(ジオメトリエンジン)
・ピーク性能7,500万Triangle/sの処理能力
・Programmable Vertex Shaderのサポート
●PIXEL TAPESTRYII(レンダリングエンジン)
・4本のパイプライン
・パイプラインあたり6個のテクスチャ処理能力
・ピーク性能2.4Gtexels/sのフィルレート(32bitカラーモード時)
●VIDEO IMMERSION II
・de-interlacing とフレームレート変換アルゴリズムの強化
・プログラマブルなビデオオーバーレイ表示時のガンマ補正機能
FIRE GL 8800 |
これらの特徴を持つRADEON 8000シリーズは、DirectX 8.1に最適化されたRADEON 8500と、OpenGLに最適化されたRADEON 8800の2チップが用意される。
その基本仕様は共通で、6,000万個のトランジスタをTSMCの0.15μmプロセス(アルミ配線)で集積。メモリにはDDR SDRAM/SGRAMを採用し、300MHzのDDRメモリと組み合わせた場合、9.6GB/secのメモリ帯域を実現する(これをHYPER Z IIで12GB/secにする)。チップにはRGB各色10bit/400MHz動作のビデオDACと1,600×1,200ドット表示をサポートする165MHz動作のTMDSトランスミッタを内蔵する。
この新世代のRADEONチップを搭載するカードは、DirectX 8.1にハードウェアレベルで唯一対応したカードにして、ATI曰く“野蛮なまでのパフォーマンス”を発揮するRADEON 8500と、OpenGLに最適化され、CGコンテンツ製作などに最適な3Dレンダリングソフト対応も進められるRADEON 8800搭載のFireGL 8800の2種類だ。
このうち、コンシューマ市場向けビデオカードとしては最上位モデルとなるRADEON 8500は、コアクロック250MHz、メモリクロック275MHz動作のRADEON 8500チップを採用し、64MBの高速DDR SDRAMを搭載。ピーク性能で6,000万Traiangles/secの処理能力を実現する。北米市場における発売は 9月末の予定で、市場価格は399ドルを想定している。
■RADEON 7500
このRADEON 7500チップは、現行RADEONの高速版、A22コアをベースに0.18μmプロセスから0.15μmプロセス(3,500万トランジスタ)にシュリンクしたもの。もちろん、RADEON VE同様、デュアルモニタ出力をサポートし、チップにはセカンダリDACとTMDSトランスミッタが内蔵される。ここまでは、誰もが予想し得たスペックであったが、その搭載カードであるRADEON 7500の仕様が公開されると、発表会場に集まった報道陣やベンダー関係者からどよめきが起こった。
それもそのはず、バリューPC市場に投入されるはずのRADEON 7500は、コアクロック270MHz、メモリクロック230MHz(DDR)と、ライバルとなるNVIDIAのGeForce2 MXシリーズのスペックをはるかに上回り、アプリケーションによってはGeForce 3クラスのパフォーマンスを発揮することが明らかにされたためだ。あまり知られてはいないが、現行のRADEONシリーズは発売当初のA13コアからA22コアに進化を果たし、コアクロックとメモリクロックも引き上げられている。そのパフォーマンスは相対的にNVIDIAのGeForce2 Proを上回り、アプリケーションによってはGeForce2 Ultra以上の性能を発揮することすらある(ベンチマーク結果)。しかも、RADEON 7500では、このA22コアのメモリインターフェイスをRADEON 8500相当のものに切り換えており、その動作クロックだけを見ても、ATIが言うGeForce3クラスのパフォーマンスという話が、あながちウソではないことがわかる。
その発売はRADEON 8500と同じ9月下旬、価格もRADEON VEの登場時と同じ199ドルが想定されている。発表会の冒頭に同社社長兼COOのDave Orton氏がシェア奪回に絶対的な自信をみせたのもRADEON 7500がコストパフォーマンスにおいて、圧倒的なアドバンテージを持つことができたことにあるようだ。
□ATI Technogiesのホームページ(英文)
http://www.ati.com/
□関連記事
【8月16日】ATI、第2世代RADEONチップ搭載の「RADEON 8500」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010816/ati.htm
(2001月8月16日)
[Reported by DOS/V POWER REPORT編集部]
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