|
TECHXNY/PC EXPO会場レポート:モバイル編IBMがウェアラブルPC、カシオがPalm対抗PDAなどを展示
会場:Jacob Javits Center
IBMブースには、頭にヘッドマウントディスプレイ、腕にはキーボード、腰にPC本体をくくりつけた怪しい人々がうようよしていた。声を掛けてきいてみると、本人達は大マジで、XYBERNAUTという会社のウェアラブルPCのデモであるという。製品名はMobile Assistant V(MAV)というもので、一見色物かと思ったのだが、話を聞いていくと、既に出荷されておりバーチカルマーケットで採用例があるという。
確かにスペックはなかなかのものだ。腰につけられているマシンのスペックは、CPUが超低電圧版モバイルCeleron 500MHz(1.1V駆動)で、128MBのメモリ(最大256MB)、最大5GBのハードディスク、CFスロットなどの仕様で、USBポート、IEEE 1394などの外部インターフェイスも備えており、マシン本体の重量は445gとなっている。ユニークなのは、この本体を付属のドッキングステーションに接続すると、デスクトップPCとしても利用できることだ。これにより、インストールなど面倒な作業をCRTなどを利用して行なうことが可能になる。
腰につける1つめのディスプレイは6.4インチのVGAないしは、8.4インチのSVGAとなっており、特にヘッドマウントディスプレイを利用する必要がないときには、こちらを利用して利用することも可能。ヘッドマウントディスプレイは、800×600/640×480ドット表示が可能になっており、マイクやスピーカーなども内蔵されている。 なぜ、XYBERNAUTの製品がIBMブースに展示されているかと言えば、製造をIBMが行なっているからということだ。ただ、本製品はバーチカル向けということで、リテール向けに販売される予定はないということだが、ハードモバイラーの多い日本ではこの製品を欲しがるユーザーも少なくなさそうだ。このMAVをつけて歩いている担当者によれば、将来はリテール向けにも販売したいとしており、期待したいところだ。
カシオ計算機の現地法人である米国CASIOは、BE-300と呼ばれるWindows CEベースの携帯端末を展示している。といっても、Pocket PCではなく、カシオ独自のインターフェイスを採用しており、見慣れたPocket PCのインターフェイスとはやや趣が異なっている。展示員によれば、Pocket PCにするとインターフェイスなどがマイクロソフトのものを使わなければいけないため、自由度が減ってしまうので、Windows CE 3.0のエンベデッド版を使用し、独自のインターフェイスを採用しているという。
CPUにはVR4131/166MHzを採用し、16MBのROMとRAM、さらにはCFスロットを備えており、CF上からアプリケーションを実行することが可能だ。付属のツールを利用して、OutlookのPIMデータなどを複数のPCとのデータの同期が可能になっている。また、後面にiPAQのようなジャケットを取り付けてPCカードスロットを増設することもできるという。液晶は240×320ドットのSTN液晶で、32,000色表示が可能であるという。 実際に触ってみたところ、アプリケーションの動作は軽快で、Palm OS搭載端末に近い操作感を実現しているといってよい。カシオとしては、Palm OS搭載端末の対抗製品として育てたいようで、APIなどを積極的に公開し、ISVへの働きかけを行なっていくという。 ソフト開発を担当しているB-SquareによるISVへのサポートも行なわれるようで、近日中にデベロッパーズカンファレンスも行なわれる予定であるということだ。現在、Palm OS向けアプリケーションを作っているISVや開発者は無数におり、それがPalm OSの1つの財産になっている。それに対抗してISVなどの支持を取り付けるのは並大抵のことでは難しく、それに成功できるかどうかが本製品の成否をわけるだろう。
□関連記事
ur thereは、応答速度が非常に高速と評判のiPAQと同じCPUであるStrong ARM/206MHzを採用したPocket PC「@migo(アミーゴ)」を展示していた。
iPAQは非常に応答速度が高速で人気を集めているが、その秘密はStrongARM/206MHzという携帯端末向けとしては処理能力の高いCPUを採用しているためと言われている。実際のところ@migoも触ってみたが、応答速度は高速で、iPAQに十分匹敵するものだった。そういう意味ではiPAQのライバルになりうるとも言えなくはない。 スペックはCPUにIntel StrongARM/206MHz、32MBの内蔵RAM、Type2 PCカードスロット、内蔵リチウムイオンバッテリ、240×320ドット/16bitカラーのTFT液晶ディスプレイというスペックになっている。価格は599ドル(日本円で約7万2千円)と決して安くなく、ボディがiPAQに比べてやや厚いことなどが弱点といえるが、もうすこし値段が下がれば魅力的なPocket PCになりそうだ。なお、日本語モデルの発売は未定ということだ。
ニコンは米国向けにCOOLPIX 775を発表し、展示している。COOLPIX 775は日本で既に発売されているCOOLPIX 880の廉価版という位置づけで、CCDの画素数を214万画素に絞ったモデルで、そのほかはほぼCOOLPIX 880に準じるスペックとなっている。
レンズは光学3倍ズームを備え、焦点距離は5.8~17.4mm(35mm換算で38~115mm)となっており、イメージサイズはUXGA(1,600×1,200ドット)、XGA(1,024×768ドット)、VGA(640×480ドット)となっている。液晶モニターは1.5インチ11万画素ポリシリコンTFT液晶で、光学ファインダーも用意されている。メディアはCFで、付属のUSBケーブルでPCに転送することも可能だ。このあたりのスペックは基本的にCOOLPIX 880と同じだ。 なお、店頭予想小売り価格は449.95ドル(日本円で約54,000円)で、7月より米国で発売されるという。なお、展示員の説明によれば、米国専用で日本向けに発売される予定は今のところないようだ。
東芝は自社ブースで、5GBの1.8インチハードディスクを展示している。既に東芝は2GBの1.8インチハードディスクを利用したPCカードハードディスクを発売しているが、今回展示されていたのはその上位バージョンといえる。
PCカードが利用できるデジタルカメラを持っているユーザーや、家と会社にそれぞれノートパソコンをおいておき、データだけ持ち歩きたいという用途に向いている。PCカードでも5GBが実現されるとは、思えばすごい時代になったものだ。
ティアックは自社ブースでBEATMANというMP3と8cmCDを再生できるプレーヤーを展示していた。ユーザーは8cmCD-Rにデータを書き込み、それを本製品で再生できるという。
既に米国ではCD-Rを再生できるMP3プレーヤーが主流になってきており、どうせMP3なら8cmCD-Rでも十分な時間データを収録できるだろうというコンセプトからでてきた製品であるようだ。実際にMP3であれば、8cmCDの容量(180MB)で十分といえ、8cmCDのみに対応とすることでプレーヤーのサイズを小さくすることができるのでメリットがあると言える。 既にこうしたコンセプトの製品は、1月のInternational CESでもいくつかのベンダーが展示していたが、ティアックのような大手が展示するのは初めてだ。発売は今年の秋を予定しているようで、価格などは未定だという。
一昨年は、コンベンションセンターの1F、2Fをフルにつかっていたのだが、昨年は1Fは半分だけ、今年はついに1Fはなくなってしまい、2Fだけになってしまった。さらに心なしか来場者も少なくなったように思える。このように徐々に規模は縮小していく傾向にあるのは間違いないだろう。ただし、PC EXPOに限らず米国のこうしたPC向けショーは全体的に縮小傾向にあり、秋に開催されているCOMDEX/Fallも、昨年は会場の規模が縮小されていた。 多くの関係者はこれをPCの衰退ととらえているようで、悲観的な記事があちこちのニュースサイトなどに掲載されている。筆者個人の感想としては、PCが衰退しているのではなく、PCが発展を続ける過程として、PCと家電などとの融合が進んでおり、業界全体がシフトしているため、PCが衰退しているように見えるのだと考えている。 新しい流れは家電側のショーへと移りつつあり、単にPC EXPOなどのトレードショーがそうした流れを見誤ったということなのではないかと思う。その証拠に、デジタル家電をテーマとしているInternational CESはますます発展を続けており、今後はそちらでPC EXPOでは見られなくなったPC系の話題を見つけることができるだろう。
□TECHXNYのホームページ(英文) (2001年6月29日)
[Reported by 笠原一輝ユービック・コンピューティング] |
I |
|