COMPUTEX TAIPEI 2001会場レポート

VIAが年末までに高い3D描画能力を持つZotrobeを投入
~Hammer用チップセットの概要も徐々に明らかに

VIA TechnologiesのPentium 4用チップセットP4X266

会期:6月4日~6月8日
会場:Taipei International Convention Center(TICC)
   Taipei World Trade Center(TWTC) Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center(TWTC) Exhibition Hall 2


 台湾のCPU・チップセットメーカーであるVIA Technologiesは、COMPUTEX TAIPEIでEzraのコードネームで呼ばれてきた0.13μmプロセスのC3 Mobileプロセッサや、Pentium 4向けチップセットであるP4X266のデモなどを積極的に行なっている。本レポートでは、そのVIA Technologiesのキーマンの1人であるマーケティングディレクタ リチャード・ブラウン氏のインタビューなどを交えながら、VIAの現状や今後の戦略について考えてみよう。


●バスライセンスがないままお披露目となったP4X266

VIA Technologiesが行なった。3DMark2001によりIntel 850とP4X266の比較。左側がP4X266で1484、右側がIntel 850で1391という結果を出している

 初日のレポートでお伝えしたように、VIA TechnologiesはP4X266と呼ばれる、Pentium 4用のチップセットを自社ブースで展示した。さらに、C3プロセッサの発表会では、Intel 850チップセットと比較し、P4X266のほうがIntel 850を上回るスコアを出すという大胆なデモンストレーションを行なった(実際には1度ブルー画面が出てハングアップするというおまけ付きだったのだが)。実際に、どのような構成(本当に同じCPUクロックで、同じバージョンのドライバを使っていたのか)であるかを確認できなかったため、この結果をもってP4X266がIntel 850より優れているとは言えないが、Intelを挑発する実に大胆なデモだと言える。

 それではなぜ、VIAはIntelの怒りを買うような危険性を犯してまでこうした大胆なデモを行なう必要があるのだろうか? その理由は、行き詰まるPentium 4のシステムバスライセンスの問題を正面から強行突破しようと考えているためだと思われる。VIAに近い筋によれば、VIAはIntelとバスライセンスに関する交渉を行なっているそうだが、何が原因かは不明だが、未だに交渉妥結には至っていないという。

 だからこそVIAは、今回のCOMPUTEX TAIPEIにおける一連のデモを、Intelに対する交渉のカードの1つにしようと考えているのだろう。特に世界中のプレスが集まるC3発表会で、実際に数字を見せるようなデモを行なうことで完成度の高さをアピールし、「Intelのライセンスさえあればすぐ出荷できる」という世論を形成し、それを武器にIntelにバスライセンス供与を迫るというのがVIAのストーリーである可能性が高い。

 これまでもVIAはIntelに対して正面突破を図る戦略を採ってきた。Apollo Pro133などのPentium IIIの133MHzのシステムバスに対応したチップセットをリリースした時がその端的な例だ。Intel側はVIAとのライセンスは100MHzのみに適用されると主張したのだが、VIAは強行に押し進め実際に市場に出荷した後裁判を戦い、結局和解した。

 今回もそれに近い戦略が採られているのだろう。既にP4X266は、複数の顧客向けに出荷されており、実際にCOMPUTEX TAIPEIのバックヤード(特定の顧客向けだけに公開される特別室)では、いくつかのメーカーがmPGA478ソケットを搭載したP4X266搭載マザーボードを展示しており、ライセンス問題さえ解決すれば第3四半期に出荷することも可能であるという。そうした具体的な製品、さらにはCOMPUTEX TAIPEIでの刺激的なデモ、さらにメディアに対して「VIAはライセンスをもらえない被害者である」という雰囲気を作り出すことにより世論を味方につけるという戦略で、正面突破を図っているという印象だ。

 はてさて、こうした戦略が再びIntelに通用するのかどうか? 実際に第3四半期にP4X266が登場するのか見物であると言えるだろう。


●VIAもHammer向けチップセットを計画

 さて、VIA Technologiesのロードマップだが、今後もIntelプラットフォーム、AMDプラットフォームの両方をリリースしていくのが基本戦略だ。それぞれについて解説していこう。

★Intelプラットフォーム向け

P4X266(ES:第2四半期、MP:第3四半期)
・Pentium 4システムバス/400MHz
・PC133/PC2100/PC1600(SDRAM/DDR SDRAM)
・AGP 4X
・V-LINK(266MB/sec)
・64bitPCIインターフェイス
・P4M266とピン互換

P4M266(ES:第3四半期、MP:2002年第1四半期)
・Pentium 4システムバス/400MHz
・PC133/PC2100/PC1600(SDRAM/DDR SDRAM)
・Savage4内蔵グラフィックス
・AGP 4X
・V-LINK(266MB/sec)
・P4X266とピン互換

PL266T(ES:2000年第4四半期、MP:第3四半期)
・P6バス(AGTL、Tualatin対応)/133MHz
・PC133/PC2100/PC1600(SDRAM/DDR SDRAM)
・Savage4内蔵グラフィックス
・V-LINK(266MB/sec)

 Intel向けとしては既にTualatin対応のPL133T、PLE133T、Pro133T、Pro266Tなどの製品が用意されているが、今後Pentium 4向け2製品が追加される。1つはP4X266で、もう1つがP4M266だ。P4X266は、公開されていないが、実はデュアルCPUにも対応可能になっており、別途Apollo Pro133Aのデュアル版である133DPがリリースされたようにデュアル版、つまりXeon向けとしてもリリースされる予定がある。P4X266のグラフィックス統合版がP4M266で、P4X266から1四半期遅れでリリースされることになる。こちらにはSavage4の改良版となる3Dグラフィックスコア(おそらくモバイル向けのSuperSavage相当)が統合されることになる。シングルCPUのみサポートという点、64bitPCIサポートが省かれている点を除きほぼ同等と言える。

 Pentium III Celeron用統合型チップセットとして、PL266TというDDR SDRAMを製品が用意されている。これまでVIAは外部AGPをサポートしたPM133とPL133というSDRAM用のチップセットを用意していたが、DDR SDRAM世代では外部AGPをサポートした製品はなくなることになる。後で紹介するインタビューでブラウン氏が述べているように、PM133とPL133では圧倒的にPL133の数が出ており、外部AGPをサポートしたバージョンは必要ないという判断が行なわれた模様だ。

★AMDプラットフォーム向け

KL266(ES:2000年第4四半期、MP:第3四半期)
・EV6バス/200、266MHz
・PC133/PC2100/PC1600(SDRAM/DDR SDRAM)
・Savage4内蔵グラフィックス
・V-LINK(266MB/sec)
・PowerNow!サポート

Hammer用1チップチップセット(名称未定、出荷時期未定)
・HyperTransportインターフェイス
・AGP 4X or 8X
・32bitPCI
・LPCインターフェイス
・Ultra ATA/100
・IO/APIC
・シリアルATA(2チャンネル)
・6ポートUSB(2.0対応)
・ハードウェアモデム
・LAN機能(MIIインターフェイス)
・先進のパワーマネジメント機能

KL266に関してはPentium III/Celeron用PL266のAthlon/Duron版だ。

 注目すべきなのはHammer用チップセットだろう。VIAのロードマップではHammer用チップセットについて上記のように、1チップでこれだけの機能を実現しているのに、見てわかるとおりDRAMインターフェイスに関する記述がどこにもない。この件から想像できることは1つしかない。つまりメモリインターフェイスはCPU側に統合されているということだ。この件に関してもブラウン氏はAMDがそうした計画を持っていることを認めているほか、ALiのストラテジックマーケティングセンターマネージャのアンドリュー・リン氏は筆者のインタビューに答えて「HammerはHyperTransportをサポートし、メモリインターフェイスはCPU側に統合される」と述べており、ほぼ間違いないところだと言っていいだろう。

 CPU側にメモリインターフェイスを統合することにより、CPUとメモリ間のレイテンシを下げることができ、メモリへのアクセス速度を向上させることができるというメリットがある。ただし、Hammerのようなマルチプロセッサをサポートするシステムの場合は、各プロセッサに接続されているメモリ間で整合性をとる必要がでてくるので、HyperTransportに非常に広い帯域幅が要求されるようになる。この辺をどう解決するかがHammerファミリーの技術的なポイントの1つになるのかもしれない。


●S3 Graphicsは年末までに3D描画性能を高めたZotrobeを投入

 VIAはSonicBlue(旧S3)とジョイントベンチャーでS3 Graphicsと呼ばれるグラフィックスチップメーカーを持っているが、そちらの方も今後より強力なグラフィックスチップの計画はあるという。現時点では詳細は不明だが、インタビューの中でブラウン氏は「Zotrobe(ゾ-トローブ)というコードネームの3Dグラフィックスチップを年末までに投入する」と述べている。その内容に関しては明らかにされなかったが、注目したい製品といえる。


●VIA Technologies マーケティングディレクタ リチャード・ブラウン氏インタビュー

リチャード・ブラウン氏

Q:P4X266を展示されていましたが、未だVIAはIntelからPentium 4システムバスのライセンスを付与されてはいません。現在の状況を教えてください。

ブラウン氏:法的な問題については、当社の法務部門が対応しており、残念ながら現時点ではお話しすることはできませんが、必ず我々は製品を市場にお届けします。

Q:P4X266のグラフィックス統合版の予定はありますか?あるとすれば、どのグラフィックスコアを統合するのでしょうか?

ブラウン氏:もちろん、あります。P4M266という製品名で、2002年の第1四半期に市場に投入し、グラフィックスコアはSavage4です。

Q:それはPL133やKL133などに統合されているコアを同じものですか?

ブラウン氏:その通りです。もちろん我々は性能を上げるべく日々努力していますが、それよりも大事なのはタイムツーマーケット(速やかに市場に投入できること)です。Intelのメッセージをきいていると、今年の終わりには1,000ドル以下の市場にもPentium 4が下りてくることになっています。OEMメーカーやチャネル関係者の話を総合すると、来年の第1四半期には700、800ドルといったところにもPentium 4が下りてくる可能性が高いと言います。このため、こうした製品は多くのOEMメーカーに必要とされていると考えています。

Q:内蔵グラフィックスコアのパフォーマンスに関してはいかがお考えですか? 本日(筆者注:このインタビューは6月4日に行なわれた)NVIDIAは統合型チップセットであるnForceを発表しましたが、おそらくVIAのKL133やSiSの730Sなどに比べて高い3Dパフォーマンスを発揮すると考えられます。これについてはいかがお考えですか?

ブラウン氏:それはエンドユーザーがどのシステムを買うかによるでしょう。仮にハイエンドユーザーならどういう選択をしますか? おそらくスタンドアロンのGeForce3を買いますよね、そういうユーザーには統合型チップセットのnForceは必要ありません。では、ローエンドユーザーはどうでしょう? 現在、市場はどちらかと言えば非常にローエンドへの指向を強めています。具体的な例を示しましょう。当社ではPM133とPL133、さらにPLE133という3製品を持っています。PM133は外部AGPを使え、PL133は廉価版で外部AGPは使えません、さらにPLE133はPL133に比べて3Dグラフィックスの性能は劣るもののさらに廉価です。

 一見すると内蔵と外部と両方使えるPM133がよいように見えますが、実際に大量出荷しているのはPL133の方です。AMDプラットフォームでも同じです。KM133、KL133ではKL133のほうが圧倒的に数が出ています。ローエンド市場でユーザーはとにかく低価格を望んでいるのです。仮にユーザーが性能を重視している場合には、スタンドアローンのビデオカードを選択するでしょう。その方が柔軟性があり、アップグレードも容易であることを皆が知っているからです。

 NVIDIAはnForceで多分中間層を狙っているのだと思います。実際、nForceのマザーボードは非常に高価だと思います。KL133がOEM価格で50ドルだとしたら、確実に80ドルぐらいにはなるでしょう。現在はこの価格のマザーボードというのは存在しておらず、彼らは市場を、新しいセグメントを作り出さなければならないのです。ALiのAladdin TNT2を思い出してみてください。確かに高いグラフィックス性能を持っていました。しかし、統合型チップセットとしてはあまりに高すぎて成功しなかったではありませんか。

 また、彼らにとってはチップセットは新しいチャレンジです。nForceは昨年のCOMDEXで発表されるというのが流れ、CeBITだというのも流れ、結局COMPUTEXになりました。チップセットを作るというのはそれぐらい難しいことなのです。グラフィックスチップを作るのはそれほど難しいことではありません。なぜなら焦点となるのは性能、ただそれだけであるからです。しかし、チップセットは互換性、信頼性などさまざまな要素があり、マザーボードメーカーに対して技術的なサポートを必要とします、それらを解決するのは容易ではないと思いますよ。

Q:質問を変えましょう。S3 GraphicsはSavage4に次ぐグラフィックスコアを開発していますか? 昨年のインタビュー[ http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000614/via.htm ]では新コアを開発中とおっしゃっておられましたが、そちらはどうなりましたか?

ブラウン氏:今年の終わりまでにZotrobe(ゾートローブ)のコードネームで呼ばれる新グラフィックスコアを開発しています。これは現行のSuperSavageの倍のパフォーマンスを発揮するグラフィックスコアです。

Q:それにはハードウェアT&Lの機能は搭載されていますか?

ブラウン氏:はい、搭載されています。

Q:それを統合型チップセットに利用する予定はありますか?

ブラウン氏:はい、あります。現在では統合型チップセットの比率は全体の10%程度ですが、来年には50%になると考えており、統合型チップセットは今後も重要な製品だと考えており、速やかに最新コアをチップセットにも統合したいと思っています。

Q:Hammer向けチップセットの予定はありますか?

ブラウン氏:もちろん、あります。我々はAMDとの長く良い関係を維持してきました、彼らのCPUをK5、K6、K7とサポートしてきました。従って、当然K8であるHammerに関してもサポートしていきます。ご存じのようにHammerはHyperTransportバスをサポートしており、これは非常によいソリューションだと思います。

Q:OEMメーカーはHammerではメモリインターフェイスはチップセットにはないと言っていますが、これは事実ですか?

ブラウン氏:その通りです。メモリインターフェイスはCPU側に用意されています。サウスブリッジの機能はノースブリッジに統合され、HyperTransportでCPUに接続される形になります。

□COMPUTEX TAIPEI 2001のホームページ(英文)
http://www.computex.com.tw/comp2001/
□COMPUTEX TAIPEI 2001のホームページ(和文、TCA対日輸出促進センター)
http://www.ippc.com.tw/comp2001/frontpage1.asp

(2001年6月8日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]

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